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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
大口契約が決まって順調そのもの! ~でも、街の様子がやっぱりおかしい偏~
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嗜好品

――凄い行動力。それもそうか、未知の味なんだもんな。今までどうして飲まれてこなかったんだろう。普通に食べられるのに……。きっと、ふぐを初めに食べた人は死んだだろう。でも、このレモネを食べて死んだ人はいないはず。いや、酸っぱすぎて死んでしまったのかも。だとしても、ふぐより安全なはず。こっちの世界では『酸っぱい食べ物は毒』と言う意識なのかな。地球では『苦い食べ物は毒』という潜在意識があったからそれに近いのかも。確かにゴーヤを生で食べようとは思えない。でも、ゴーヤだって野菜なんだから生で食べられるけど普通食べないよな。


私はレモネティーを飲みながらミルクティーも同じように飲み続けている。


――入れる食材を変えるだけでここまで違う飲み物になるなんて。すごく面白い。そうだ、紅茶があるんだから緑茶と烏龍茶もこの世界にあるはず。緑茶を飲みながら甘い砂糖菓子。烏龍茶を飲みながらギトギトの揚げ物料理。ああ……食べたい。私がもっと頑張ればお菓子、揚げ物、その他の料理、なんだって食べて作ってやる。日本料理だってこの世界で作り出してみせるぞ。その為にはやっぱり資金調達だよね。


「キララちゃん出来ましたよ。このレモネの葉をティーポットへ入れてください」


「分かりました」


私はカロネさんから細切れにされたレモネの葉を受け取り、お湯の入ったティーポッドに入れる。


受け取った時から既にレモネのさわやかな香りは漂っており、酸味の香りではなくレモネ本来の香りとでも言うのか、心が落ち着く……。


「さっきの果汁部分とはまた少し違った香りですね。レモネの葉の方が尖りが少ないように感じます。この香りなら花たちとの調和もとりやすいです。あとは味ですけど……」


「そうですね。レモネの葉部分ですからそこまで酸っぱくはないと思います。ハーブティーですから香りと色を楽しめればいいですよね」


「まぁそうですね、確かに味も美味しければいいですけど、ここまで香りが良ければ楽しんでくれる方は大勢いるでしょう。もちろん不味すぎるのはダメですけどね」


「はは、それはそうですよね……」


私とカロネさんは砂時計を使って3分ほど待った。


――ん? 砂時計、この世界にもあるんだ。


「これは、砂時計ですか……」


「そうです、キララちゃんよく知ってますね。ここら辺では売ってないと思うんですけど」


「そ、そりゃあ、知っていますよ。ほ、本で読みましたから……」


私は小さな嘘をついた。


「私のように料理をする人にとって時間は切っても切り離せませんからね。この砂時計は高かったですけど毎日使う物なのでとてもいい買い物をしました」


「えっと、その砂時計はいくらだったんですか?」


「そうですね。確か……、金貨200枚くらいだったと思います。5年ほど使っていますから、もう十分元は取れてますけどね」


「金貨……200枚」


――その金額は車と同じだよ。いや、この世界は地球と年収が全然違うから車より高いのか。でも、5年で元が取れてるって相当凄いんじゃないの。


さらさらと落ちる小粒の砂は海の浜を思い出す。


海に行けば、塩が取れるのに……。などと考えていたら、あっという間に3分経ち、砂は上段から下段に全て落ちた。


「3分経ったので飲んでみましょう」


「はい」


カロネさんは新しいカップにレモネハーブティーを注いでいく。


すこし緑色をしたお湯がティーポッドの先から流れ出る。


これまでもレモネの香りは十分強かった。


それでも、レモネハーブティーをカップに注ぐとさらに香りは広がる。


それはまるで、レモネの木がすぐそこにあるような感覚に近い。


すでに香っているレモネの香りと、今一気に充満したレモネの葉の香りは相性抜群で森を想起させた。


私達は一口レモネハーブティーを飲んだ。


「こ、これは凄い落ち着く香りですね……。花の甘い香りとは違い、しゃきっとすると言いますか。この後の仕事を凄く頑張れちゃいそうです。そう考えるとコーヒーに近いのかもしれないですね。味も悪くありませんし、これは売れますよ」


「確かに香りが凄い爽やかです。あと、紅茶とはまた違った味がするんですね」


「そうですね。紅茶は味や香りを、ハーブティーは香りや色を楽しむ嗜好品です。それぞれの役割は違いますし、入れ方や調合も全く違います。ですが、皆さんを楽しんでらもうという点では同じです。楽しんでもらえる品が増えればそれだけお客さんは増えますし、比例して楽しんでくれるお客さんも増えていくんです。それが私の仕事をしていて一番楽しい時ですね」


カロネさんはハーブティーを飲みながら笑う。


「カロネさんは仕事が好きなんですね」


「ええ、そりゃ楽しいですからね。私の紅茶で皆さんが笑顔になる瞬間はたまりません」


「そうなんですね」


「あ、そうだ。私まだキララちゃんにお金渡してませんでしたね。すぐに持ってきます!」


――あ、いってしまった。レモネも買ってもらえないか交渉したかったのに……。この感じだとレモネはダメかな、こっちの人にとってはゴーヤ汁みたいなものっぽいし。私だってゴーヤ汁なら飲みたいと思わないもん。レモネ1個銅貨2枚くらいになってくれたら、夏の商品になったのにな。


「キララちゃん、今レモネはどれだけありますか~! 全部買いたいんですけど~!」


「え! 買ってくれるんですか!」


「そりゃ、これだけ美味しいんですから、私の創作意欲を刺激されちゃいましたよ。もっと改良を加えたらさらにおいしくできる自信があります。なのでレモネを全部買わせてください」


「え、えっと……、今日は10個しか持って来てないんです。レモネティーを作るために1個使ってしまったのであと9個だけしかありません」


「それなら9個買わせてもらいますね。銅貨3枚くらいでいいですか?」


「銅貨3枚……。はい、お願いします。9個なので銀貨2枚と銅貨7枚です」


「分かりました。それじゃあ私はキララちゃんに金貨5枚と銀貨2枚、銅貨7枚を支払えばいいんですね」


「はい、そうです」


カロネさんはお店の奥の方でガチャガチャと音を立てている。


いったい何をしているんだろうか。私の方からは全く見えない。


「ふぅ~、疲れました。えっと、これがキララちゃんに渡すお金です」


カロネさんは小さい麻袋を私に手渡してきた。


「ありがとうございます。確認させてもらいますね」


私は麻袋の紐をほどき、中を見てお金を確認した。


「はい、確かに全額入っています」


「それと、こっちが私の特製ブレンド茶葉。これは今日飲めなかったブレンドコーヒーの豆。キララちゃんは飲み方を知っていますか?」


「え……。は、はい一応知っています。でもどうしてそれを私に?」


「キララちゃんのお家にも楽しいをとどけてもらいたいなと思いまして。今回はお試しという形ですから、お金はいりません。もし次も飲みたいと思ってくれたら買って貰いたいなと……」


「そうですか。ありがとうございます。確かに受け取りました」


私はカロネさんから茶葉とコーヒー豆の入った袋を2つ貰った。


――この商品の値段を見たけど、確か両方とも金貨1枚。なかなか高級な茶葉とコーヒー豆だ。貧乏家庭には手の出せない値段だよね。それをぱっと渡せちゃうなんて。カロネさん、相当儲かっているんだろうな。いや、誰かに喜んでもらいたいからやっているだけか。その気持ちは回り回ってカロネさんの財布に入ってくるお金となるわけですね。私も見習わないと……。


「それじゃあ、カロネさん。私は7日後にまた来ますね。レモネの評判が良ければまた買ってください。今度はもう少し多めに持ってきますから」


「はい、よろしくお願いしますね」


私はカロネさんの喫茶店を出る。


こちらも長話をしてしまった為、お昼時になっていた。


「いや~良かった良かった。お試しだけどレモネも買ってもらえたし、私はカロネさんから茶葉とコーヒー豆を貰ってしまったし。家で嗜好品を飲めるなんて、ちょっと前までの生活じゃ全く考えられなかったよ」


私は3人の待つ荷台に急いで向かう。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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