家族の役割分担
チュンチュンと鳴く鳥のさえずりが空気を震わせ、私の耳にまでとどく。
「う……うん……ああ、もう朝か。さっさと起きて、子供達を迎えに行こう……」
私はベッドから立ち上がり、眠いのを我慢して目をこすりながら服を着替える。
キャミソールの上からボロボロの長袖シャツと継ぎはぎだらけのオーバーオールを着る。
大抵はいつもこの服装だ。
今は可愛さよりも動きやすさを重視したい。
「ふわぁ~~ぁ。もっと寝ていたいけど、今日もいっぱい仕事があるんだよね。すやすやと寝ていられる時間は無いんだよ。さ、顔を洗ってから歯を磨いてと……」
私は朝の日課を終わらせ、家を出る。
そのまま、子供たちのいる家へと向かった。
「ん~~! やっぱり天気がいい朝は最高だね~~! 起きた瞬間はまだ寝ていたいって思うけど、歩き始めると起きてよかった~って感じるんだよな。不思議~」
朝の運動に散歩は最適だ。
ちょっとした距離なら、私は散歩をしながら移動する。
目も覚めるし、頭もよく働く。
調子のいい日は駆け足気味で牧場まで向かうときもある。
シャインは毎朝、村の周りを走っているらしい。さすがに私はそこまで出来ない。
朝に走れるほど気力は湧かないし、続けられる気もしない。
ただ散歩していただけで私は、子供たちのいる家に到着した。
『コンコン』
私は扉を叩き、合図を送る。
すると『ドドドド』という足音を響かせ『バン!』と扉は開いた。
「おはようございます! キララさん!」
勢いよく扉を開けたのはテリアちゃんだった。
テリアちゃんは昨日よりも顔色が良く、青白かった肌が血の通った褐色になっていた。
「どう、テリアちゃん。よく眠れた?」
「はい! 凄くよく眠れました。ちゃんとした家で寝るなんて久しぶりです。そのお陰か体調がとてもいいみたいなんです。起きた瞬間から走りたくなるほど元気になりました!」
「それなら、よかった」
――一晩ぐっすり眠るだけでここまで回復するんだ。やっぱり睡眠は何よりも大事なんだな。他の子供たちも、元気いっぱいになっているだろうか……。
「他の皆は?」
「まだ寝ています。ぐっすりと寝ていて、とても気持ちよさそうにしていました」
「そうなんだ。それじゃあ、私は先に朝食を持ってくるよ。テリアちゃんも手伝ってくれる?」
「はい! 私も頑張ってお手伝いします!」
私はテリアちゃんと一緒に、牧場に向かう。
牧場までの道を少し歩いていると、テリアちゃんは朝とは思えない程はしゃぎ、目を輝かせていた。
「うわぁ~~! すっごく綺麗~~! ひろ~~い!」
はしゃいでいるテリアちゃんは、ガンマ君の言う通り、本当に真っ白な羽を背中に生やしている天使に見える。
私達は思ったよりも早く牧場に到着し、牛乳とパン、水、少量のチーズ、乾燥したビーの子を荷台に乗せて子供たちのいる家までガラガラと運ぶ。
「あ! お兄ちゃん! 起きてきたんだ」
ガンマ君は家の前をきょろきょろと見回しており、何かを探しているようだった。
「何だ、キララさんと一緒にいたのか。起きたらテリアの姿がなかったからどこに行ったかと心配してたんだよ」
「そうだったんだ。お兄ちゃん、心配かけてごめんなさい。でも、キララさんと散歩できて、すごく楽しかったよ!」
テリアちゃんはガンマ君に満面の笑みを見せる。
その笑顔は天使そのもので、きっとどんなに怒っている大人でも、テリアちゃんの笑顔を見ればすぐ穏やかな表情になってしまうだろう。
「それなら良いんだ。えっと、キララさん。後ろの荷台は何ですか?」
ガンマ君は私達の引いている荷台を指さして聞いてきた。
「これは皆の朝食だよ。子供たちに取りに来るよう伝えてくれる」
「分かりました。すぐ呼んできます」
ガンマ君は家の中に戻り声を掛けている。
すると、子供たちは家の中から姿を現した。
私は1人につき黒パン半分、牛乳瓶1本、チーズ少々、ビーの子一袋を手渡していく。
子供達はテリアちゃんと同じように目を輝かせながら『ありがとう、お姉ちゃん!』という一言と共に受け取ってくれた。
この一言を貰えるだけで、私の笑顔はこぼれてしまう。
皆に朝食を配り終えたあと、牛乳の配達を行うために私はその場を少し離れる。
いつものように手際よく牛乳の配達を行った。
今日は子供達に仕事の説明をするだけなので、実際に仕事に参加してもらうのは明日からだ。
「よし、配達は終わった。次は子供たちを牧場に連れて行って仕事を教えてあげないと」
私は子供たちのもとに戻る。
既に子供達は朝食を食べ終え、外で待っていた。
「それじゃあ、行こうか」
「はい!」×子供達
私は子供達を引き連れて牧場まで歩いて行く。
牧場の広場には家の皆が待っていた。
「皆、おはようございます。今日から宜しくね」
お母さんは優しく微笑み、子供たち数人を連れて倉庫の方に向う。
「お、元気そうな子たちがいっぱいいるな。これから、一人前になって社会を生きていけるように指導してやるからな」
お父さんはお手本のような笑顔で子供たちに接した。
数人の子供達を引き連れ、バートンの厩舎へと向かう。
「初めまして。……えっと、ライトと言います。まだ年も変わらない人ばかりだと思うんですけど。よろしくお願いします……」
ライトは緊張しているのか、硬い表情で喋っていた。
数人の子供達を引き連れ、モークルの厩舎へと向かう。
「どうも初めまして。シャイン・マンダリニアと言います。気軽にシャインと呼んでください。分からない部分があれば手取り足取り教えますから、心配しなくても大丈夫ですよ」
シャインはこなれた感じで、自己紹介まですんなりとこなした。
――いったいいつ練習していたのだろうか。最後の笑顔まで完璧だったよ……。
シャインは数人の子供達を引き連れ、お爺ちゃんと一緒にメークルのいる厩舎へと向かう。
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