ライトの部屋
『コンコン』
「ライト、私だけど。入ってもいい?」
私はシャインの時と同じように、扉を叩いて合図を送る。
「うん、いいよ」
ライトからの了承を貰い、私は部屋に入る。
「うわっ眩し。ちょっと、ライトなにこれ」
ライトの部屋を開けると、床が全く見えないほど光っている。
色は真っ白、蛍光灯よりも眩しい。
「あーごめん。威力の調節をちょっと間違っちゃったみたい。すぐ修正するね」
ライトが言葉を発して数秒後、光はフッと弱まり、小さくなった。
「何それ。新しい魔法陣? また何か新しい魔法を作ったの」
「うん、牧場の夜があまりのも暗いからさ。魔力を少し流すだけで一定時間光を放つ魔法陣を考えたんだ。これを設置すれば、夜も明るくなると思ってさ。でも……中々上手く行かなくて失敗ばかりなんだよ」
ライトが持っているのはお父さんがスキルで木を切って作った薄い木板。
その上にライト自身の魔力をインクのように伸ばして魔法陣を描いた物。
まぁ、魔法板とでも言おうか。
それが部屋中に何枚も散らばっている。
――それにしても、蛍光灯よりも明るい光を出せるんだったら夜でも安全に作業できるじゃん。魔法を使わないで済むなら両手も開くし、土木工事の人に重宝されるかも。冒険者さん達も夜に明るければ魔物をきっと見つけやすくなるだろうし。なに、私の弟……やっぱり才能の塊なのでは。
「またこんなに散らかして。ちゃんと片付けておかないとダメだよ」
「分かってるよ。ちゃんと綺麗に纏めておくから。それより姉さん。なんかいい方法ないかな? ただ魔力を流しても、光っていられる時間はそこまで長くないんだ。これじゃあ使いものにならない」
「え……いきなり言われてもな。そもそも、何でその魔法陣は光っているの?」
「魔力の流れを遅くしているんだ。魔法陣内を流れる魔力を凄く遅くすると凄く光る。流れを早くするほど光は弱くなる。ただ……最大まで明るくするとほんの数秒しか流した魔力が持たないんだ。でも、遅くしないと光が弱すぎて使いものにならない。魔力は魔法陣内を循環するようにしているんだけど、光るとその分だけ減っていくんだ」
「う~~~ん。あ、それなら。ぶつけ合わせればいいんじゃない?」
「え? ぶつけ合わせる……」
「そう。魔法陣の中で魔力を遅くしたいわけでしょ? それなら、弱い魔力同士を左と右からぶつけ合わせれば、魔法陣内で凄く遅くなるはずじゃない。まぁ……そんな単純じゃないか」
「…………バッ!!」
「え! ちょっとライト」
ライトはいきなり机に置いてある木版に魔法陣をスラスラと書き始めた。
――うわぁ……。なんかスイッチ入っちゃったよ。書き終わるまではこの状態だな。でもさっきの光、すっごい眩しかったな。私も『フラッシュ』で視界が白くなるくらい光らせられたらいいんだけどな。私が今、出せる限界は蛍光灯の光くらい。それでも十分明るいけど、光は目つぶしとかにも使えるからな。もしくは危険な動物から逃げるときとかにも応用が利く。まぁ『スタンガン』以上の威力がある『ボルト』を使えれば、そこまで人や動物に怯える必要もないけど。
私は部屋で小山座りをして、ライトの作業が終わるまで待っていた。
――ライトの部屋はシャインの部屋と全く違うな。ほとんど魔法関係の物しかない。
「出来た!! 見てよ姉さん!! これなら絶対に上手くいくよ!!」
ライトは満面の笑みで描いた魔法陣を私に見せてくる。
「わー凄い凄い……。頑張ったね……」
――私にはほかの魔法陣と何が違うのか全く分からない。さっきの魔法陣とどこが違うの……。
「それじゃあ、魔力を流すよ」
ライトは魔法陣に振れ、魔力をすこし流した。
「ピカ―!」
「うわ、明るい……。これだけ明るいと目が冴えちゃうよ。ライト、聞いてる?」
「……14、15、16、……」
ライトは数え続けていた。
どうやら魔法陣の可動時間を調べるているらしい。
「ライト、明日子供たちが仕事に参加するから。ライトのやってる牛乳作成を教えてあげて」
ライトは親指と人差し指で丸を作り、私に見せる。
どうやら時間を数えている為、言葉を発せないらしい。
「それじゃあ、よろしく。お休みなさい、ちゃんと寝ないとダメだよ」
私はライトに念を押しておく。
ライトは何かに集中しちゃうと体力のある間、没頭し続けてしまうのだ。
「はぁ……。何とか2人には話を付けて来たけど。上手くいくのかな、少し不安になってきた」
このままだと多少の間違いは起こるかもしれない。
子供達の安全を考えて行動しないと。
私は階段を使い、1階に下りて自分の部屋に向かった。
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