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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
綺麗な街だと思っていたのに… ~街の裏側は真っ黒だった偏~
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終わり良ければ総て良し

子供達は皆、ゴキブリの頭を毟り取り、着ている服を袋代わりにして集めていく。


その光景は、魚のつかみ取りならぬ……、ゴキブリのつかみ取り大会。


久々に見た地獄絵図。


私はその情景に子供達へ話しかける言葉を失ってしまった。


子供達はただただ楽しそうにゴキブリたちをつかみ取り、頭をむしり取るを繰り返し、服から溢れるほど集めていた。


その情景を見て私は『強く生きてきたんだな……』と思うだけだった。


地面にはゴキの頭が散乱しており、ベスパの灯りが反射して黒光りしている。


黒いダイヤモンドが敷き詰められているみたいで綺麗なのだが……ゴキブリの頭だと思った瞬間、怖気が走る。


「キララさん! 見てください~! いっぱい取れました!」


テリアちゃんはボロボロの服の裾を目いっぱい伸ばし、ゴキブリたちを集めていた。


子供の頃、同じようにセミの抜け殻を集めた経験はあるが、さすがにゴキブリでやった覚えはない。


セミの抜け殻でも今思い出すと結構気持ち悪いのだが、テリアちゃんはゴキブリを大量に集めて私に見せてくるのだ。


しかも、ゴキブリたちは頭をむしり取られたにも関わらず未だに少し動いている。


――何という生命力……。こっちの世界にいるゴキブリたちもだいぶ厄介そう。でも……ベスパの命令には一応従ってくれるんだ。それじゃあ、私の視界から外そうと思えば一生見なくて済むのか。料理屋さんを出すならとんでもなく便利なスキルだな。


「テリアちゃん、そんなにいっぱい取ってどうするの?」


「え? 食べるんですよ。『ブラットディア』はこう見えて美味しいんです!」


テリアちゃんは大好物でも手に入れたような顔で目を輝かせている。


「へ……へえ~、そうなんだ……。どうやって食べるの?」


「そうですね……、生でも食べられますけど私は炒ったほうが好きですね。あ、キララさんも食べてみますか! はい、どうぞ!」


テリアちゃんは何とも純粋な表情で私に頭の無いゴキブリを手渡してくる。


もぞもぞと棘の付いた足が未だ動いており、だいぶ気持ちが悪い……。


「生で食べるときは足を取った方が口に棘が刺さらないで済みますよ」


「い、いや私は大丈夫かな……」


「そうですか~、美味しいのに……。ハぐ」


――うわ、食べちゃったよ。まだ足動いていたのに……。


バリバリ、ボリボリ、ゴックン!


「美味しいです!」


「そ、そう。よかったね……」


――ベスパ、この虫って食べても大丈夫なの。


「はい、問題ありません。彼らは1匹でも無数に増えていきますのでどれだけ食べても個体数は一向に減りません」


――へぇ~、すごい繁殖力だね。主な仕事は?


「森の掃除屋です。彼らがいなければ今頃アンデッドが湧き放題ですよ」


――へ~、凄い大切な虫さんじゃん。じゃあ『ビー』って何かしているの?


「そうですね……、何でこの世界に存在しているのかよく分かりません。そもそも『ビー』とは何なんでしょうね」


――いや……。ベスパがそんな風に言ってどうするの一応『ビー』達の統率を取っているのに。


「そう言われましても……、実際我々のいる意味が分からないのですから、答えようがありませんよ。花粉を運ぶのだって我々の役目ではありません。それは『バタフライ』の役割です」


――あ~、あのヒラヒラした綺麗な虫ね。『バタフライ』とは蝶に似た虫である。


「我々に意味をもたらしているのはキララ様なのですよ。神が役割の無い我々に役割を与えるため、キララ様に『虫使い『ビー』』を与えたのですよ! きっとそうです!」


――なんておせっかいな神様……。どうせならもっと可愛らしい動物にしてほしかったよ。


「私は可愛いですよ。ほら~こんなに可愛い笑顔、キララ様見た覚えないですよね」


ベスパは中性的な顔立ちのため、男にも女にも見える……。


髪が金色で短髪のせいで少し男感が強い。しかも艶々で白肌。


あの怖いビーが2頭身の人型になるだけで、なぜ元が判断できないほどまで変わるのか。


その高低差が私を苛立たせる要因の1つになっていた。


――はいはい……分かったから。今のベスパに『ファイア』撃ったら爆ぜちゃうでしょ。そんなに近寄らなすご。すごく眩しいから。


「なるほど~、今の私は無敵って訳ですね~」


ベスパはにんまりと笑い、私の周りを飛び回る。


ミラーボールみたく輝くベスパのせいで、私の目が焼けそう。


子供達はなぜか面白がっているのだが私にとっては眩しいだけなので、命令した。


――ベスパ……、月に向って踊ってきてよ。なるべく綺麗にね。


「え~、仕方ないですね~。もちろんキララ様の期待に応えて見せますよ~」


ベスパは白い光を放ちながら、月に向かって飛んでいく。


ベスパは月の明かりに照らされているにも関わらず、自身から放たれている光の方が強いため、全く幻想的に見えない。


ベスパは8の字に飛び回りながらダンスを踊る。


その姿は暗いダンスホールに浮かぶミラーボールと瓜二つ。


私はその輝きに狙いを定める。


『ファイア』


私は指先に魔法陣を展開し、魔法の詠唱を言い放つ。


魔力を込められた魔法陣から『ファイア』は飛び出し、一直線の軌跡を描いてベスパに飛んで行った。


ベスパはダンスに入り込み、熱中しているため、私の放った『ファイア』に気づかなかった。


『ファイア』は空中をメラメラ燃えながら移動し、赤い光を放つ。


「ラ~ラ~ラ~キララ様~どうですか~。へ?」


ベスパは『ファイア』にようやく気づいたらしく、目を丸くした瞬間に直撃した。


『ドッカ~ン!』


ベスパが放っていたミラーボールのような白い輝きと『ファイア』の赤い輝きによって、透き通った夜空へ真っ赤な大爆発の花が咲く。


「へ~。結構綺麗に爆ぜたな~。というか、この色、形……どう見ても花火だ。懐かしい~」


大きな爆発は赤色と白色が混ざり合った巨大な花火となり、何もない私達の村に一瞬だけ咲いた。


目の前に映る情景を見ていたのは、私だけではなく小さな子供達も一緒だった。


「すご~い! とっても綺麗ですね。キララさん!」


テリアちゃんの瞳に赤色の花が映っている。目の輝きによって花火の美しさがさらに増していた。


「そうだね。炎々と燃え盛るんじゃないかって思ってたけど、綺麗な爆発になったみたい」


子供達の瞳には一発の花火が映り込み、きっとその輝きを脳裏へしっかりと焼き付けただろう。


1日の終わりに良い出来事があれば、その日は良い1日になる。


子供たちは今日を一生忘れないはずだ。


自分たちの人生を変える第一歩を踏み出し始めた記念すべき日なのだから。


「ちょっと! キララ様! どうして私を盛大に爆発させたんですか! せっかく素晴らしい踊りを披露していたというのに!」


ベスパは私の周りを高速で回転しながら、発光する。


「ごめんごめん。でもすっごく綺麗だったよ。さっきの爆発」


「そうなんですか? 私も見たかったですよ~!」


「まぁ……ベスパは一生見れないかもね。玉がベスパ自身だし」


ベスパは悔しそうに飛び回り、私の顔の前で止まる。


「キララ様。もう一回やりましょう! 私も見たいです!」


「え? 止めときなよ。無駄な努力だって……」


「やってみないと分からないじゃないですか!」


「まぁ……、そこまで言うなら……」


私とベスパは先ほどと同じ条件で何度か試したが……やはり、ただ爆発するだけだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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毎日更新できるように頑張っていきます。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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