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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
綺麗な街だと思っていたのに… ~街の裏側は真っ黒だった偏~
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ラルフさんの容体

「ベスパ。あの荷台、ちょっと軽すぎるんじゃない。飛んで行きそうで心配になるんだけど……」


荷台に新しい荷台をつなぎ引っ張っている。


新しい荷台は風が吹く度にガタガタと揺れており、私は気になって仕方がなかった。


「そうですね、中に何も入っていないので凄く軽いですから突風が吹くと吹き飛ぶ可能性はあります」


「それだと危ないから、退けてくれない」


「了解です」


ベスパはクーラーボックス型の荷台に飛んでいき、周りから数匹のビーを集めて食べ始めた。


ほんの数秒で塵も残さず食べきり、荷台は跡形もなく消えた。


ベスパが『また同じ荷台をいつでも作れる』と言っていたので、躊躇する必要はない。


何台でも作れるのに、使わず残しておいたら邪魔だからね。


クーラーボックス型の荷台が消えて、気が散る要因がなくなり、不安な思いがのし上がってくる。


「ラルフさん。大丈夫かな……、正直さっきからずっと心配で仕方ないんだよね。ベスパ、ラルフさんの状態は分からないの?」


「それが、未だにリーズさんは治療室に閉じこもったままで、私の友達が中に入れないのです。私なら壁をすり抜けて見れますけど、魔法の結界が張ってある可能性が高いので止めておきました」


「まだ治療室に入っているんだ。あと、ベスパの判断は正しいと思うよ。もし覗き見して魔力でも感知されたら犯罪を疑われるし」


私とレクー、ベスパは大急ぎでリーズさんの病院に向かった。


日が沈み暗くなり始めていたが、道は明かりがなくてもぎりぎり見える。


私達はリーズさんの病院に到着し、レクーを厩舎に入れ、すぐさま入口まで走る。


他のバートンやバートン車が見当たらない。


患者さんやご家族の皆さんは、既に帰ったみたいだ。


『バン!』


私は入口の扉を思いっきり開き中に入る。


「はぁはぁはぁ! あの、済みません。治療室はどこですか」


私は病院にいた看護師さんに尋ねる。


「治療室ですか? 治療室なら、ここの通りを真っすぐいってもらい、右側に曲がった先にありますけど……」


「ありがとうございます!」


私は病院の廊下を走る。


「病院内は走らないようにお願いします」


「す、済みません!」


――早歩きに見えるようにして……走る。


すぐにでも現状を知りたかった私は、危険も承知で走った。


「セチアさん!」


長椅子に座っていたセチアさんは両手をギュッと握りしめ、何かに祈っていた。


その姿は教会にいたマザーのようで、頭上から神秘的な陽光が差しているのではないかと錯覚してしまうほど、私の心を揺さぶった。


「キララちゃん。ラルフはまだ出てきてないの。凄く長い間、戦ってみるみたい……」


セチアさんは祈るのを止めず、目線だけを私に向けて喋る。


「そうですか。それなら私も待ちま……」


私もその場で祈りながら待とうと思っていたが、治療室の扉がいきなり開く。


全身に水色っぽい手術着を着た人が治療室から出てきた。


布で口を覆っていたため、初めは誰か分からなかった。


その人が手袋をした手で口を覆っていた布をずらすと、私はその顔に見覚えがあった。


リーズさんの表情からはラルフさんがどうなったのか読み取れない。


「リーズさん……。えっと、子供の容体は大丈夫なんですか」


「はい。何とか一命は取り留めました。本当に危ないところでしたよ。魔法術やポーションを使ってもなかなか心拍数が正常に戻らなかったので焦りましたが何とか息を吹き返しました。これで命の心配はいらないでしょう」


「命の心配は……? それってどういう意味ですか。元気になるんじゃないんですか」


セチアさんは不思議そうにリーズさんに聞き返す。


「はい。命の心配はいりません。ただ、このまま無事に目を覚ますかは、私にも正直分かりません。経験からすると目が覚めるのは5%から10%ほどだと思います」


「5パーセント? ってどういう意味ですか……」


セチアさんの頭上にいくつもの? が浮かんでいる。


「えっとね、100回同じ出来事があったら、5回しか同じ出来事が起こらないっていう意味です。つまり、ラルフさんはその低い確率を潜り抜けないと目を覚まさないって先生は言ってます」


「そ……そんな……。で、でもラルフなら大丈夫。絶対にそんなパーセント何て吹き飛ばしてくれる……。うん……大丈夫、大丈夫」


「セチアさん……」


セチアさんは不安な感情を全て押し殺したような表情をしている。


その顔を見ている私の方が、心臓を強く握りつぶされてしまいそう。


「今日はもう休んでください。息はありますから簡単には死んだりしません」


リーズさんはセチアさんの頭に手を置いて、優しく微笑みかけた。


「は……はい……」


セチアさんは長椅子に力なく座り込んでしまった。


「キララちゃん、ちょっといいかな」


「え……。私ですか」


私はリーズさんに呼び出され、病院の診察室に置いてある木製の椅子に座っている。


「少年の名前はラルフと言うのですね?」


「はい、そう言っていました」


「なぜあのような状態になってしまったのか分かりますか?」


「はい、ラルフさんは子供達を迎えに行くために地下水路へ入って行きました。その中で落ちてしまったと考えられます。そのまま流されて、川に出たところを私達が助けました」


「地下水路ですか。そんな所で子供たちが生活をしているなんて。そんな事態になっていたのか……」


――リーズさんも街の子供達についてあまり知らないのかな。


「ん? ちょっと待ってください……。よく考えれば、地下水路から出た川はこの病院から反対の位置にありますよね」


リーズさんは顎に手を置いて考え込んだあと、私に問いかけてきた。


「そうですね。ラルフさんを川で救出した後、20分かけて病院まで来ました」


「20分……。彼は20分間も息を止めていたと言うのかい? それとも、キララちゃんが回復魔法を使って命を繋ぎ止めたのかい?」


「いえ、私は色々な魔法が一応使えますけど。回復魔法は一切使えません。ですからラルフさんを助ける時、回復魔法を使えていたらもっと、軽度で助かっていたかもしれないんです」


「回復魔法を使わず、20分間も息が止まったままで一命を取り留めた……。キララちゃんは彼にいったい何をしたんですか」


リーズさんは私の肩に手を置いて、尋問のように問いかけてくる。


「え、えっと……心臓マッサージと人工呼吸をおこない続けました」


「心臓マッサージと人工呼吸? それはいったい何ですか?」


――え……リーズさん、知らないの……。凄く単純な応急処置だと思うんだけど。あれかな、ポーションとか、回復魔法とかに頼り切っているから、物理的な処置を知らないのかも。


「簡単に説明すると心臓マッサージは物理的に心臓を動かす応急処置です。人工呼吸は口から息を吹き込んで肺に空気を送り、脳を死なせないよう血を新しくする応急処置です。総称して心肺蘇生法と言います」


「心肺蘇生法……。それはどうやって、やるんですか。もしかしたら多くの人を救えるかもしれない!」


「え! ちょ、ちょっと! リーズさん何してるんですか」


リーズさんはいきなり寝転がり、死んだふりをした。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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