子供達を運ぶ
「倉庫の時と同様、荷台の中が二重構造になっております。扉も分厚く作ってありますが木材で作るより断然軽いです。それに加えて、丈夫にできております。収納箇所も大きく確保いたしました。氷の減り加減は倉庫で確認済みですので、必要最低限の大きさを確保するため、氷置き専用の場を設けました。この大きさでも材料費は0円です。キララ様の魔力を頂戴しておりますので、実質キララ様が作ったと言っても過言ではありませんよ」
ベスパは作成した荷台の各箇所を飛び回りながら良い点を説明してくれた。
「色々と突っ込みたいところだけど、こういうところは凄い便利だよね……」
「私はいつも便利ですよ! えっへん!」
あまりにもベスパが威張るものだから、私はつい、燃やしたくなってしまった……。
「『ファイア』」
「何でぇええーー!」
ベスパは夕日色に輝きながら燃えていった。
その後
「もー! キララ様。何するんですか! いきなり燃やすなんてひどいですよ!」
「ごめんごめん……、ちょっと燃やしたくなっちゃって……」
「燃やしたいから、燃やしたなんて言ったら放火魔と同じじゃないですか!」
「ごもっとも……」
――今回は私の方が悪いかな、平謝りしておこう。
私はパン屋さんの近くから時計台を見る。
既に午後7時を回っていた。
――このまま、子供たちと一緒に病院に行ったら、相当暗くなっちゃうな。
きっと暗い夜道を歩くのは、ウシ君でも危ないだろう。何が起こるか分からない。
6月も終わりが近いため、日が落ちる時間は伸びてきている。
それでも午後7時を超えると流石に暗くなってくる。
「ウシ君、先に子供たちと村に向かってくれない? 私達もあとで追いつくから。もちろんベスパの友達護衛も付ける。私達と一緒に移動してたら、帰る時間がもっと遅くなっちゃう。私とレクーだけなら、すぐ追いつけると思うし。ウシ君でも夜道は危険でしょ?」
「まぁ、そうですね。夜道は明かりが無いと何も見えないですから……。それにベスパさんの護衛が付くなら、別に構いませんよ」
「そう言ってくれると助かる」
私は抱えている大きな紙袋をウシ君の荷台に乗っている子供たちに渡す。
「皆! パンを貰って来たよ。多分20個以上あるから、皆一個ずつ取ってね。焦らなくても大丈夫だから」
「わ! 見てお兄ちゃん! こんなにいっぱいパンがあるよ!」
「ほ……ほんとだ、いいんですか。こんなにいただいても」
「いいのいいの、貰い物だから。ほんとは捨てちゃうパンなんだって。だから遠慮せずに皆で食べて」
「わ~~い!」×子供たち
ウシ君の荷台は子供たちの移動で、てんやわんや状態……。
「皆静かに。街の人たちに気づかれたら駄目だからね。面倒事を起こしたら、村に連れていけなくなっちゃう」
私が指元で人差し指を立てると、子供たちも同じように、私のまねをして口元へ指を持って行く。
「うん、物分かりがよくてよろしい。えっと、ガンマ君。子供たちの面倒をお願いできるかな。私、今から怪我をした子供のところにもう一度行こうと思うから」
「はい、任せてください。子供の御守は慣れていますから」
「ほんと、凄い助かる。私も、病院で話を聞いたらすぐ駆けつける予定だから。ウシ君と私の仲間が皆を守ってくれると思う、だから心配しないでね」
「分かりました。出来るだけ静かにしていればいいんですよね」
「そうだね、あんまり大声を出さなければ荷物を運んでいるだけにしか見えないと思う。出来れば、ウシ君の手綱を持って、門に立っている兵士さんに挨拶してほしいんだ。誰も乗って無かったら不自然過ぎるから。えっと……『でっかいバートンに乗っている美少女の友達です』と言えば、多分何も聞かれないと思う」
「了解です。失敗しないように頑張ります」
――聞き分けの良い子なんだな。面倒見も良いなんて。いったいあの生活環境からどう成長すればこんないい子に育つのだろうか。ぜひともシャインとライトの友達になっていただきたい。
「それじゃあ、ウシ君は皆をお願いね。ベスパはウシ君の周りに『ビー』の護衛をお願い」
「了解……」
「了解です! キララ様」
私達とウシ君達はオリーザさんのパン屋前で解散し、それぞれ別の道を行く。
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