表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
綺麗な街だと思っていたのに… ~街の裏側は真っ黒だった偏~
158/1148

酷い顏

「皆、はじめまして。そんなに怖がらなくても大丈夫。私はあなた達の味方だから……」


「キララさん!」


テリアちゃんが荷台から降りてきた。


「テリアちゃん、大丈夫だった」


「はい、いきなりウシ君が走り出したのは驚いちゃいましたけど……、全然大丈夫でした」


「そう……よかった。ガンマ君……これで皆かな?」


「はい、僕が連れてきた子供たちが9人、ここで新しく顔を合わせたのが10人います。えっと、僕たちを合わせて……21人います」


「21人。分かった、えっと……今から皆に食べ物1袋ずつ配るから、気にせずに食べてね。あと水も1本ずつ配るよ」


私はレクーの荷台から残っている子袋を取り出し、みんなに配っていく。


水の入った牛乳瓶も一緒に……。


「皆、体調はおかしくない? 苦しくない? テリアちゃんも……」


「はい、大丈夫です。逆に居心地がいいくらいですよ。友達も沢山できました!」


「それならよかった……」


「あの……大丈夫ですか、キララさん。顔色がよくないように見えるんですけど……」


私はガンマ君に指摘され、宙に浮いていた魂が体に入ってきたように、はっと意識が戻ってきた。


顔をグリグリと指圧し、無理やりにでも笑う。


「だ、大丈夫、大丈夫。こんな天気だからちょっと暗く見えちゃってるかもしれないけど……、体調は全く問題ないよ!」


「キララ様……。無理はよろしくないと思いますよ」


――大丈夫……、無理してなんていないよ。ただ……心配なだけ。でも、この心配している気持ちは子供たちに通じちゃうから……、何とか隠さないと。


「そうですか……。でも隠しきれてないですよ……。その表情じゃ。水面に映る顔を一度見てきてください。あ、何なら私の視覚を共有しましょうか?」


――そんなに酷い? 分かった……。『視覚共有』


その時見た顔は……、まぁ……酷い顏だった。


色々と無理している顔……、それこそ過労死寸前のサラリーマンがしている表情と全く同じ……。


「はは……確かに、こりゃ……酷いね。……気分を変えないと次行く所でこんな顔してたら、私達の印象が悪くなっちゃう……」


私はレクーの引く荷台から、牛乳瓶を1本手に取り、牛乳を金属製の小さな鍋に入れた。


『ファイア』で無理やり温め、ホットミルクにして体に流し込む……。


ほどよい甘さと、風味によって緊張が解されて行く……。


先ほどよりも体が温まり、血流も良くなったような気がした。


「ありがとう……ミルク、チーズ。あなた達の牛乳で私の心は大分楽になったよ……。よし! 切り替えて行こう! 今から子供たちの将来がかかった大勝負なんだから!」


私は右腕を曇り空に高らかに掲げ、大声を出す。


「す……凄いですね……。温めた牛乳を飲んでそこまで回復するなんて……。何かの魔法か何かですか?」


ベスパは目を丸くして、空中を漂う。


「いや……違うよ。ただの思い込み……。温かいものを飲むと体が温かくなって、気持ちが上がるの……。体温が下がるとどうしても嫌な考え方をしちゃうから……。体外から無理やりにでも体温を上げて、気持ちも上げる。そう……ただの思い込み。魔法みたいに何でも解決できるものじゃないけど……、思い込みの力は凄いんだから」


「はぁ……なるほど…。元気になった要因は思い込みの力だったんですね」


「まぁね。それじゃあ、今からオリーザさんのパン屋さんに行く。そこで待っている人たちと話をしてこれからの売買を決めてくる。その間、ベスパは子供たちを見ていてくれる」


「はい、お安い御用です。なにが来ようとも指一本触れさせません」


「はは、頼もしいね……。何かあったらすぐ連絡と対処をお願い」


「了解しました!」


私は子供たちのいる荷台に戻り……少し話しかける。


「皆、今からも待っていてもらうんだけど……大丈夫かな。トイレに行きたい子とか……いない?」


チラホラと手を上げる子がいたので、誰にも見つからないようにベスパの『光学迷彩』を使い、私が反応しない程度のドームを作ってもらう。


そのドーム内に穴を掘り、そこでトイレを済ませてもらう…。


少年が拭くものを求めてきた。


「拭くもの……。そっか、拭くものか……どうしよう……、私……紙を持って来てないんだった……」


「紙くらい我々で用意できます。どれくらいの厚さ大きさが必要ですか?」


「え……それじゃあ……出来るだけ薄くて、破れにくい厚さで……。大きさは……1人の子供が使うくらい……。抽象的すぎるかな……」


「いえ……問題ありません。ほんの数秒で作成してまいりますので、少々お待ちください」


ベスパはロケットのように飛んで行く……。


そしてほんとに数秒たったころ……戻ってきた。


「キララ様、紙でございます」


ベスパはティッシュのような茶色の紙を持ってきた。


「ほ……ほんとに紙が出来てる。それに薄くて軟らかい。なのに破れにくい……。いつも思うけど……よく作れるね、こんな物……」


「特技ですから」


ベスパは胸を張り、エッヘンといった具合で威張る。


「とりあえず、使わせてもらうから」


私は少年にその紙を手渡し、使ってもらう。


「す……凄い。凄いよこれ。全く痛くない。いつも布で拭いてたから凄く痛かったんだよ」


「そうなんだ……」


――凄い食いつきよう……。確かにこんな軟らかい紙ないもんな……。私たちも、紙袋みたいな硬さの紙で拭いたりしてたから凄くいいかも……。


子供たちは皆、トイレを済まし荷台に戻った。



最後までお読みいただき、ありがとうございます。


続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします。


評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます。


毎日更新できるように頑張っていきます。


これからもどうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ