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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
綺麗な街だと思っていたのに… ~街の裏側は真っ黒だった偏~
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後悔しないために祈る

「え! 大丈夫なのそれ! 絶対にだめなやつじゃん!」


「セチアさん、落ち着いてください」


――体が跳ねたのは体に電流が流れて、筋肉が緊張した証拠……。これで心臓の痙攣も止まったはず。


「もう一度心肺蘇生術を行います! 今からリーズさんの病院へ向かう間、ずっとやり続けます。たとえ体力が尽きようとも止まってはいけません!」


私はもう一度心臓マッサージをおこなう。


――大丈夫……大丈夫……絶対に助かる……絶対に助かるから……。


「はぁはぁはぁはぁ! はぁはぁはぁはぁはぁ!」


『ボルト』を使ってからどれだけ、心臓マッサージを行ったか分からない……。


だが……私はたったの1秒さえ休まずに動き続けた。


「キララ様、もうすぐリーズさんの病院です!」


「はぁはぁはぁはぁ、分かった!」


レクーは最速で走り、きっとリーズさんの病院へと最速で到着できただろう。


「セチアさん! 私、先生を呼んでくるので、心臓マッサージをしていてください!」


「分かった!」


私は上の服を着るのも忘れて荷台から飛び降り、薄手の白いシャツをはためかせながら病院の入口に走る。


『ドガん!』


思いっきり扉を開けるとすぐそこにお世話になりっぱなしの人がいた。


「な! キララちゃん……」


リーズさんは目を見開き、小さな丸眼鏡が驚き過ぎてずれている。


「すみません! リーズさん! 急患です! 早く来てください! 意識が無い子供がいるんです! このままだと死んでしまいます!」


「今日は何とも忙しいな! 早く見せて!」


リーズさんは眼鏡を右手の中指で直し、眉間に皴を寄せる。


「こっちです!」


「看護師の皆さんは、担架の準備をお願いします!」


「分かりました!」


私はリーズさんを引き連れて荷台のもとに案内する。


「はぁはぁはぁはぁ!」


「セチアさん! どいてください! 先生が来ました!」


私が荷台の帆を持ち、リーズさんに現状を見せる。


「これは……、ほんとに死の淵にいる状態ですね……。すぐ治療室に向います! 『フロー』『ハイヒール!』」


ラルフさんの体に2つの魔法陣が展開され、緑色の光がラルフさんに降り注ぐ。


その間に体が宙へ浮き始め、30㎝ほど荷台の床から離れた。


「先生! 担架を持ってきました!」


「こちらにお願いします。すぐ治療の準備をお願いします!」


「分かりました!」


「せ……先生、ラルフは……ラルフは大丈夫なんですか! いや……大丈夫ですよね!」


「…………っ!」


リーズさんは何も言わず、ラルフさんの乗った担架を数名の看護師さんと共に押しながら病院の中に走り去っていった。


「ラルフ……ラルフ……。いやだよ……私……、こんな風にお別れなんて……」


セチアさんは荷台の中で泣きくずれている。


「セチアさん……祈りましょう。私たちに出来ることは精一杯やりました……。これ以上できないってくらい、やりつくしたはずです。今の私たちに出来るの神様に祈るくらい……。後はリーズさん……、リーズ先生に任せよう」


「う……ううぅ……」


私は濡れてしまった服を『ドライヤー』で乾かし、ゆっくりと着た……。


「それじゃあ……セチアさんは、荷台を降りて病院の中でラルフさんの無事を祈ってあげてください……。今から私は子供たちの所に一度戻ります。その後、用事を済ませてすぐ戻ってきますから……」


「…………」


セチアさんの表情は相当暗い……もう既に、目元が赤く腫れている……。


瞳孔が大きくなったように見えて、表情が一気に暗くなった。


きっとラルフさんが死んでしまったと想像しているのだろう。


「セチアさんがそんな表情をしてたら駄目です! 今もラルフさんは戦っているんですよ! それなのに、あなたがそんな顔をしていたら、ラルフさんは、なんのために頑張ればいいんですか! 顔を上げてください! そして神様に祈ってください!」


「神様に祈ったって……、何も変わらないよ……。私たちがそのいい例だもん……。いくら神様に祈っても……、何も救ってくれなかった……。私のお父さんとお母さんも……同じ……きっと、ラルフだって……」


『パン!!』


「!!」


私は、セチアさんの右頬を叩いた。


それも思いっきり……。


私の小さな手形がセチアさんの頬にくっきりと残っている。


私はいきなり強く叩いたせいか右手に波打つような痛みが走り、血管を流れる血液を肌で感じる。


「バカ!! 大切な人なら……、何にでもすがりなさいよ! すがってすがって! それが例え、願いを聞き入れてくれない神にだとしても、すがるの! 出来ることは全部やる! そうしないと後悔しか残らないよ! あとになって悔やでも遅いんだから!」


「キ……キララちゃん……」


私は昔の自分で叫んだ……。


昔の気持ちをそのまま、セチアさんに伝えた。


セチアさんに上手く伝わったか分からないが少し前のしみったれた顔よりは、多少なりともましになったと思う。


「それじゃあ……私はまだやらなきゃいけない仕事があるので……」


私はセチアさんに背を向けて荷台の前座席に向おうとした時……。


「キララちゃん!」


「!」


「ありがとう! 私……、ラルフのために祈る! それに……頑張っているラルフを応援するよ! 病院の中は大声を出せないけど……、心の中で精一杯応援する。祈りながら……いっぱい応援するよ!」


セチアさんの顔は、涙と鼻水でグチャグチャになりながら……無理やりにでも笑顔を作っていた。


その笑顔に嘘偽りはなく……、きっとこのあのに何があっても後悔しないで生きていけるだろう。


「私も……祈っています。一緒にラルフさんを信じましょう」


私は荷台の前座席に乗り込み、病院を離れた。


「ベスパ……子供たちの状態は」


「はい……問題ありません。特に心配するような事態は起こっていないようです」


「そう……、よかった……」


レクーを走らせて少し経った頃、私達はウシ君のもとに戻ってきた。


「ウシ君、大丈夫だった……?」


「はい、特に何もありませんでしたよ。子供がいっぱい乗っているのがうざいくらいです」


「そう……、ちょっと見て見るね……」


私は大きな荷台の中をのぞく。


荷台には、20人ほどの子供たちがおり、肩を寄せ合いながら団子状にかたまっていた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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