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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
綺麗な街だと思っていたのに… ~街の裏側は真っ黒だった偏~
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心肺蘇生法

ラルフさんの体はしだいに水面から上がり、私達の方に飛んでくる。


「ラルフ! ラルフ! 大丈夫!」


セチアさんが一目散に向かい、ラルフさんに呼び掛けるも応答が帰ってこない……。


「ラルフ! 起きて……起きてよ……」


「セチアさん、少しどいてください!」


私はラルフさんの胸に耳を当て、心音を確認するも全く聞こえない。


左手首の付け根を中指と人差し指で押さえ脈を測るがやはり全く動いていない。


三度目の正直……。


私はラルフさんの首にある太い血管に指を当て、脈を測るが……やる意味はなかった。


――口元、四肢、共に紫色になっている。相当、酸素濃度が低いんだ。早く心肺蘇生しなきゃ!


私はラルフさんの胸に自身の小さな手を重ね合わせ、一気に押し込む。


本当は5センチほど押し込みたいのだが私の力だけでは押し込めず、全体重をかけて押し込む。


私は前世で心臓マッサージをした経験がない。


実際、アイドルと一緒に救急救命というテレビ撮影で知識を学び、人形に心肺蘇生法を試した程度だ。


――これであっているか分からないけど、やるしかい。


「ふっ! ふっ! ふっ!」


――1秒に2回……、1分間に120回……、やり続けろ……。


「セチアさん! ラルフさんの顎を持ち上げて! 鼻を摘まんだら、口で口を塞ぎながら息を数回に分けて肺に流し込んでください! 息継ぎをしながら何度もお願いします!」


「え…ど、どういう意味!」


セチアさんはおどおどと動き回り、冷静さを失っている。


「セチアさん、私の言う通りしてください! ラルフさんが死にますよ!」


「わ、分かった!」


セチアさんは私の言った通りに動き、肺に空気を送り始める。


――心臓マッサージを行って何分経った。時計がないから分からない。でも、全然よくなっている気がしないよ。早くリーズさんの行院に向かいたいのに、移動手段がレクーの引く荷台しかない。救急車何て、この世界にはない。くっ! 荷台にラルフさんを運んで心臓マッサージを行いながらリーズさんの病院に向うしかない。ベスパ達に運んでもらっても、その間に心肺蘇生が出来ないから、ラルフさんの死ぬ確率が逆に高くなっちゃう。


「ベスパ! ラルフさんを荷台に運んで!」


「は、はい! 分かりました」


「セチアさん、いったんレクーの引く荷台に移ります。レクーなら手綱を引かなくても病院に向かえるはずです! すぐ荷台に乗ってください!」


「は、はい!」


ベスパとビー達はラルフさんを持ち上げ、レクーの引く荷台に移動させた。


私達も追いかけるようにして、荷台に乗り込み心肺蘇生法を再開する。


「レクー! リーズさんの行院に向って! ベスパはレクーの移動を支援して!」


「は、はい!」「了解しました!」


――ちくしょう! ここからリーズさんの病院は逆方向、レクーがどれだけ急いでも15分以上かかる。その間、私達だけで心肺蘇生法を行い続けるのは体力的にきつすぎる。いや、そんな甘ったれた弱音を吐いている場合じゃない。何としてでも助ける、助けなきゃいけない!


「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ! 動け、動け、動け!」


頭を大きく振り、髪がだらしなく垂れ下がっているのを手で耳に掛け直す余裕など……今の私にはない。


何度も何度も、全体重を乗せている私の両手と腕は鬱血し、しだいに赤黒くなっていく。


血流が悪くなっているのは見て分かるが、ラルフさんの苦しさを考えれば軽い痛みだ。


ラルフさんの全身に巡っている血液は、いま私が心肺蘇生をして送り出した血液だ。


私が止まってしまえば、血流が止まり脳が死ぬ。


言わば、今の私はラルフさんの心臓そのもの。


だが、私の体は頭で考えているよりも……幼かった。


「ぐ!」


腕に激痛が走り、痺れてしまっている。


指が痙攣し、電激を当てたような痛みが脳までといた。ビリビリペンを何度も何度も押している感覚に近い。


――電撃受けたみたい。電撃……、電気ショック……。医者でもない私が電気ショックなんて使っていいの。AEDでもあればAIが判断してくれるのに。もし心臓が止まってたら、電気ショックをしても意味がない。でも私には心臓が止まっているか、痙攣を起こしているか分からない……。


「キララ様! 私には分かります!」


「ベスパ!」


ベスパが俯いている私の目の前に現れ、お尻から針を出している。


「私ならラルフさんの心臓が止まっているか、動いているか、この針で敏感に感じ取れす!」


「ほんと……、それなら早く!」


「分かりました!」


ベスパはお尻の針を、服の上からラルフさんの胸に突き刺した。


「……………」


「ど、どうなの!」


「心臓が微細に動いています……、どうやら痙攣しているようです!」


「ほんとに! それなら、やる意味がある!」


私はラルフさんの服を脱がせる。


「セチアさん、今からラルフさんの体に付いている水を拭き取ります! 協力してください!」


「え……。わ、分かった!」


私は着ている上の服をおもむろに脱ぎ、タオルの替わりとして利用する。


別に汚れても構わない、洗えば汚れは簡単に落ちる。


胸、腕、脇、濡れていると危ない部分を全て拭いていく。


セチアさんも服を脱いで、ラルフさんの髪に付いている水分を拭きとっている。


「よし……、水気は大分取れた。ここからはどうなるか分からない。でも、やらないと絶対にラルフさんが死ぬ……」


私はラルフさん胸に掌を当てる。


「キララちゃん……いったい何を……」


「今から、ラルフさんの体に電気を流します」


「で……電気?」


「説明は後です、離れてください!」


――私は、魔法で電気を生み出した経験がない。電気を上手く想像できないからだ。ファイアやウィンド、ウォーター、などは比較的簡単に想像が出来る。でも、電気となると実際に生み出した覚えが無いからよく分からない。ただ、アイドル時代に護身用で持ってた、あれなら想像できる……。


「スタンガン……」


「へ……スタンガン?」


私は意識を両手に集中させ、右手をラルフさんの右上胸あたりに置く。


左手を左下胸あたりに置き、両手で心臓を挟むよう意識する。


『「ボルト!」』


私の右手から左手に電気が流れたような刺激が走る。


『ドッツ!!』


ラルフさんの体が一瞬跳ね上がった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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