カイト君のお姉ちゃん
「ベスパ、カイト君のお姉ちゃんは今どういう状況か分かる? リーズさんに運ばれているところまでは見たんだけど」
「それなら、リーズさんの近くにいるビーの視覚を共有します」
「お願い。あと、私が見ている間、レクー達の先導もお願い」
「了解です」
私は、目を瞑りビーの視界を借りる。
視界の先にはリーズさんと看護師さん、弱っている女の子の姿がいる。
「はぁはぁはぁ…この子相当ひどい状況だな…『ヒール』」
「先生、この子どうしたんですか? 相当ひどい状態ですよ」
「僕もさっき出会ったんだ、いきなり背中にもたれ掛かられて…、私を買ってくれって…」
「なるほど…、だからこんなひどい状態なんですね…。顔を見ると…13歳くらいだと思いますが…、出るところが出てますからね…。でもこの状況からするに放浪者ですよね…」
「そうですね…、親が居るか居ないかは分からないですが、とりあえずこの子は入院させます。体調の回復が最優先です。病室の準備をお願いします」
「分かりました」
看護師さんは、病室を出ていく。
「あ…あの…」
「意識が戻りましたか…大丈夫ですよ。ここは病院です、あなたは相当体力が削られています。相当危険な状態なんですよ」
「私…帰ります…、病院何て…お金払えませんし…、私はまだお金を稼がないといけないので…」
「ダメです。あなたにはしっかりと体を休めてもらいます。退出は禁止です」
「いや…でも。お金払えないんじゃ…」
「今は自分の体を心配してください、お金の心配をする必要はありません。病院1回分の治療費くらい、この先の人生でいくらでも稼げます。死んだら終わりですよ」
「は…はい…分かりました…あの、弟…橋の下に弟が…いるんです」
「弟…。分かりました。いったいどこの橋の下ですか?」
「えっと…確か、門の近くにある…」
「キララ様、病院に付きました。視覚共有を解除します」
私が映像を見ている間に病院に付いたらしい。
私は目を開けて、視界が元に戻るのを少し待つ。
病院の広い土地に荷台を駐車したあと、カイト君の乗っている荷台に向う。
「カイト君のお姉ちゃん、ちょうど目を覚ましたみたいだから会いに行こうか」
「はい!」
私はレクー達を厩舎に連れて行き、待っていてもらう。
さっきまでぐったりしていたカイト君は走り出し、病院の中に入っていく。
病院の中で行き場所が分からなくなったのかその場で硬直していた。
「カイト君、こっち」
私はカイト君の手を取り、お姉ちゃんのいる病室に向う。
『ドタドタ』と床を激しく蹴りながら走っていると病室の明かりが見えた。
私が病室の扉を一気に開けると、カイト君が飛び込む。
「お姉ちゃん!」
「カイト…どうしてここに…」
少女はいきなり現れたカイト君に驚き、自身の情けない姿を見せてしまった恥じらいと心配していた緊張が解け、瞳の奥に溜ずっとめていた涙をこぼす。
「はぁはぁはぁ…カイト君、今さらだけど…病院内は走ったらダメだよ…」
「キララちゃん、どうして。ここに…」
リーズさんは私の顔をみて目を丸くしている。
「あ、リーズさんこんにちは。診察中すみません、弟君を連れてきてしまいました」
――この子がカイト君のお姉ちゃんか…。やっぱり実際、この目で見てもすごく大人っぽいな…。これでまだ15歳以下なのか…。
そこにいた女子は診察台に寝ころび、リーズさんの治療を受けていた。
服装は勿論…ボロボロだが、それをうまく利用してオシャレに見せている…いわゆるダメージファッションをしており、服が汚れていなければ普通の服に見えてしまう。
それを着こなす少女の体系はモデル体型…出るところは出ており引っ込むところはしっかりと引っ込んでいる為、女性の完璧な体に近い。
私と同じブロンドの髪も細く長い絹の様につややかだ。
あの環境下で綺麗なキューティクルをどうやって守っていたのか疑問に思う…。
ただ…腕や足…上手く隠してはいるが体にも打撲痕がある…、青地味も痛々しい。
靴を履いていなかったため、相当足が傷だらけの泥まみれ…。
そんな状態じゃ病気になるのも必然だ。
「えっと、今からこの子を病室のベッドまで移すから、弟君とキララちゃんは病室の外で待っててね」
「分かりました」
私はカイト君を連れ、診察室を出る。
「お姉ちゃん、生きててよかったね」
「うん」
会えたのが相当うれしかったようで、カイト君の表情からは風邪をひいていると感じさせない。
女子が病室に移ったと聞かされ、私達は面会する。
病室に入ると、体を洗って綺麗になった女子が入院着を着てベッドに腰を掛けていた。
「えっと…カイトを助けてくれてありがとう…、私の名前はメリー・ポーシャ、あなたは?」
「あ、私の名前はキララ・マンダリニア。初めまして…」
「キララさんがね、美味しい物をくれたの。お姉ちゃんにも食べてほしいって」
カイト君は小さな袋をメリーちゃんに渡す。
メリーちゃんは小袋の中身を掌に出し、私の眼を見て聞いてくる。
「これは…食べてもいいんですか?」
「うん、食べられるよ。栄養満点だからすぐ元気になるよ」
「ありがとうございます。いただきます…」
メリーさんは一粒も残さず食べてくれた。
「えっと…ずっと気になってたんですけど。何歳ですか?」
「え? ああ、私は13歳ですけど、キララちゃんは?」
――13歳…。その見た目で、確かに身長は中学生くらいだけど…全体像からしたら全く逆年齢詐欺なんだけど。
「私は10歳、もう少しで11歳になる予定です…」
「なら私の方がお姉さんね。キララちゃん」
「あはは…えっと、メリーさん…ですね」
メリーちゃん改め、メリーさんはきっと疲れているだろう。それなのに私に笑顔を向けてくれた。
私は疲れているメリーさんの為に、すぐ本題に入る。
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