子供達を受け入れる準備
「えっと…寝床の確保は完了したから。次は食料の確保をしないと…」
私は家の中で食料になりそうなものを物色する。
「牛乳とチーズは食べさせてあげられる…。レモネにも栄養があるから体にいいよね…。でもどうやってレモネを食べてもらおう…。そのままじゃ食べられないよね…普通」
この村で野菜はほとんど作られていない。
その為、新鮮な野菜は手に入りにくいのだ。
村なのに農家がいないのは珍しい。
「出来れば農業もやりたいよな…、人手が回らないから出来ないけど…。土地はあるんだ。だからきっと農業もできるはず。こっちの世界での野菜ってあんまり見たことないけど、どんな感じなのかな…。いや今はその話じゃなくて…」
今確保できる食料は黒パン、蜂の子、牛乳、チーズ、レモネ、だけ…。タンパク質、炭水化物、脂質のバランスは悪くない…、出来れば食物繊維もとり入れたいんだけど。あ…黒パンって結構食物繊維が入っているんじゃなかったっけ…。
ビタミンはレモネで取るとして…。
でも、こう考えると結構、しっかりと栄養を取れている。
これなら問題なく生きていけるだろう。
お肉は、今のところ必要なさそうだ。
ボワの討伐は、また検討しよう。
私は、残り6日で20人分の食料をとりあえず7日分用意しようと考えた。
つまるところ、一日2食だとすると…黒パン280個、牛乳瓶280本、チーズ140個、ビーの子多数、レモネ、140個…。
ーーあれ、思ったより多いな…。
「この数だと…一番難しいのが、黒パン…、次に難しいのがチーズ…か。牛乳瓶は問題ないとして…、レモネも結構多いよな一個を半分にして朝と夜に食べようか…。こうなってくると…頼りになるのが、結局ビーの子…またあんた達に助けられるのね…」
ここ数年この山から取り続けてきた蜂の子達は乾燥させ何時でも食べられる状態にしてある。
その量は優に20人2食7日分を超えるだろう。
「私たちの極貧時代を食い凌いだグロテスク食材を受け入れてくれるだろうか…」
乾燥したビーの子を一匹口に放り込む。
ずっと食べ続けてきたのでもう結構慣れてしまった。
乾燥していて、殆ど原型は無い。
皮はシワシワになり、少し硬い。中身は液状から、どろっとした脂肪質になりピーナッツのような味になっていた。
「小腹が空いた時にちょうど良いんだよね…、はぐ…」
お母さんのスキルによって生み出された小さな袋にはビーの乾燥した幼虫が数10匹入っている。
家族みんなは小腹が空いた時、いつでも食べられるようにしているのだ。
「これを持って行くのもありだな…。すぐに取れる栄養分だし…。きっと初めの方は胃が拒絶しちゃうだろうからあまり食べられないよね。だったらこれくらいの方が胃を慣らすためにちょうどいいかも」
ある程度食料を決めた。
結果的に黒パン70個、牛乳瓶280本、チーズ35個、ビーの子多数、レモネ70個に決めた。
初め7日はこれで様子を見ることにして…、もし足りない様だったら少しずつ増やしていこう。
儲けが増えたらその分、良い食べ物も買えるし、まだ野生のお肉も残っている。あまり心配しなくてもなんとかやって行けそうだ。
私は子供たちを養うためにこの6日間をせっせと働き、資金を貯める。
ーーなぜだろう…自分の学費を稼ごうと思って働くよりも、子供たちのためを思って働く方が身の入り方が全然違う。
日が上るよりも先に起床し、日が完全に沈んだ頃に帰宅する。
趣味の料理する時間すら、私は仕事にあてた。
理由は、料理よりも子供たちを助ける方を優先したいからだ。
勿論料理もしたかったのだが、それは私が生きている限りいつでもできる…。
今重要なのは死にそうなほど辛い思いをしている子供たちをすぐにでも救出し、安全な場所で生活してもらうこと。
その為に私は一生懸命に働く。
思ってみれば昔のアイドル時代よりもこの6日間は長く働いていたかもしれない。
だが全然苦ではなかった…。
アイドルの時も同じだが、誰かのためにやる仕事は休まず働けるほど自分の活力になると、あらためて実感する。
雨の日も風が強い日も仕事を行い、お金を稼ぐ。
あっという間に時間は過ぎ去り、6月の後半…。
梅雨がそろそろ明けてもいいのではないかと思いながら、私は7日目を迎えた。
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