物件探し
「いや…すまんかったな。最近何も食べてなかったから、腹が減りすぎて真面に動けんかった。食わせてくれてありがとうな…えっと、確かキララだったかな。ジークの娘の…」
「はい、キララ・マンダリニアと言います。今日は聞いてほしい話があって、ここまで来ました」
「話? 何かな」
村長さんはベッドに座りながら私の話を聞く。
「はい、話と言うのは、この村にある空き家を貸してほしんです」
「空き家…、まぁ確かにこの村には使用されなくなった多くの空き家がある…。いったい何に使うんだ?」
「街の子供たちが住める場所にしたいと思っています」
「街の子供たちが住める場所…。はぁ…いったい何をする気なんだ?」
「子供たちにこの村で生活してほしいんです。今この村には子供が全くいませんよね。それに多くの空き家もある。それなら空き家を子供たちが住める家にしてしまえばいいんです。だから空き家を貸してくれませんか…」
何とか了承を貰うためにあらゆる手を使う、初め村長さんを助けたのは大分ポイントが高いだろう、上目使いに軽度なボディータッチ…出来ることはなるべくやる。色目とか今の私に全くないんだけどね…。
「ああ、別に使ってもらって構わんよ。そもそも儂の家でもないしな」
「え…そんな簡単に貸してもらってもいいんですか?」
「別に構わんよ。多くの空き家はこの村に住んでいた者たちが作った建物だ。その時に料金は支払われている」
「でも…」
「何十年も前に建てられた家だからな、もう所々にガタが来ているだろう。だが、まだ十分住めるが…誰も住もうとしないんでな、いつか解体しようと考えていたんだ」
「そうだったんですか…」
「ただ…解体するにも金がかかるらしく、そんな金は村に無いからずっと放置してたんだよ。使ってくれるというのなら、喜んで貸そう…と言うかもう貰ってくれても構わない」
「え、いやいや…家を貰うなんて出来ませんよ…」
「人がどんどん減っていくもんだから、空き家もどんどん増えていく一方なんだ。儂も歳だし、いずれ管理できなくなるからな…、そうなったらこの空き家をどうしようかずっと考えていたんだよ」
「そうなんですか…。でも家を貰うなんて…」
「構わん構わん、おんぼろの家など持っていても何の価値もない。それなら誰かに使ってもらったほうが家たちもうれしがるだろう。机の上に空き家の場所と外装が書かれた紙がある。これを持って好きな所を使ってくれて構わん」
「本当ですか。それなら凄くありがたいんですけど…、ん~と料金の方は銀貨5枚とかでどうですか…これ以上払うのは難しいかもしれないんですけど…」
――まぁ金貨1枚とかならなんとか行けなくもないけど…。そこまで行くと大分きついからな、出来れば家賃は少なくしたい。
「金など要らんよ、こんな老いぼれにもう金など必要ない。妻に先立たれてからもうずっと何も感じなくなってしまってな…。さっさと天に召されたいんだが…無駄に丈夫な体で生まれちまったらしくて…。三日以上飯を抜いてもまだ死ねんらしい…。こんな老いぼれが金を持ってもむなしいだけだ」
「え…いや…そんなんで良いんですか…。まだまだ村長さんは若いですよ、人生これからです…、奥さんが亡くなったのは辛い経験かもしれませんが、奥さんだって村長さんには長生きしてほしいって思っていますよきっと。お金の方は…ありがたいですが、やっぱり恩を受けたら返したくなるタチなので私は勝手に村長さんへ会いに行きますね」
「そこまで言うのなら…まぁむだに死ぬのは止めておくか。しだいに天へ召されるまで気長に待つとするよ」
「はい、その方がいいと思います。人生何があるか分かりませんからね」
私は村長さんの家を後にする。
「いや…まさかタダで貸してもらえるとは思ってなかった…。それに空き家もこんなに…」
私の手には数10枚の空き家情報が書かれた紙がある。
1つ1つ回って居たら日が暮れてしまいそうなので、私は良さげな所を見て回る作戦を立てた。
「ここは…古いけど、一番広い家…。部屋の数も結構あるし皆で住むのなら仲が深まりそうで良さげな家だ。ただ…古い分、家自体にガタが来ているだろうから、そこは気を付けないと…」
そして次の空き家へ移動する。
「えっと…こっちは比較的新しい家で…、広さも悪くない…20人は難しいかもしれないけど、10人くらいなら住めそうな家だな。この家がタダなんてどれだけ村長さんには欲が無いんだろうか…。街で買えばきっととんでもない金額になるんだろうな。…村では需要が無いらしいけど…」
また次の空き家へ移動する。
「ここの家は小さいけどしっかりとした創りの家だな…。多少の雨風なんかじゃビクともし無さそうだ。それに子供たちを分けて住まわせるならこれくらいの方が使いやすいかな…」
良さげな空き家を数軒あげておき、住み始めるようになったらまた考慮すればいい。
そう考え、空き家巡りを終了した。
その後帰宅し…私は次の準備に取り掛かる。