街で放浪している子供達の人数は
「キララ様、マザーさんは大変疲れておられましたね。このままだとドリミア教会に潰されてしまいそうでした」
「そうだね、でも私たちが何かしたところで教会なんて大きな組織を動かせるとは思えない。そのドリミア教会って言うのがどれだけ酷いのか……。それと、街の領主がどんな人間なのかをちゃんと知らないと正しい判断もできない。情報収集が必要なのかな。でも私にそんな時間は無いし」
「キララ様、情報収集なら私達ビーの出番ですよ。人を特定し、張り付いて情報を聞き取ります」
「でも、それは盗聴と同じでしょ。犯罪行為だよ」
「犯罪行為というのは悪いことをすることです。ビーが盗み聞きしているなんて誰も気づきません。悪い奴らを懲らしめるために犯罪を実行するならいいんじゃないんですか?」
「犯罪は犯罪、たとえ悪を裁く為であっても、むやみやたらに犯罪を起こしたらそれはその人自身も悪の犯罪者と同罪。何を悪、何が善なのかは人それぞれ違う。きっとこの街にもそれに沿った法律があるんじゃないの? 私は正義のヒーローじゃない。ただのもう少しで一一歳になる女の子。犯罪に手を染めるつもりはないけど、だからって子供たちを放置する街の領主は許せない。とりあえず、街を放浪している子供たちが死なないようにしないと。ベスパ、この街で放浪している子供たちの数を確認してくれる。数しだいでは考えがあるから」
「了解しました。ただ今から、街を放浪している子供たちを一斉に調べます。死の危険がある場合はすぐにお知らせしますね」
「お願い」
ベスパは日が落ち込み、伸び切った夕日に照らされながら、上空へ飛んで行く。どこからともなくビーはべスパへ集まり、波紋状に広がって行った。
しばらくして、死の危険がある子供は今の所いないらしい。
その情報を聞いて安心した私は、今日のところは帰ろうと思った。
☆☆☆☆
家に帰っている途中。
既に暗くなり、見えにくくなっている村までの道を私達は進んでいる。
「はぁ……、どうしよう私が考えても仕方ないかもしれないけど。放っておけないよな。まずは子供の数から確認か。ベスパ、街に放浪している子供たちは何人いた?」
「はい、私の調べによると二〇人でしたね。男児が一〇人、女児が一〇人どの方も成人していない一五歳未満である可能性が高いです。状態からするに重度の栄養不足、過剰暴行による打撲痕、犯された形跡があり病気を持っている可能性がある子供もおりました」
「うわぁ、結構酷いな。でも二〇人か。それくらいなら養えるかな」
「何を考えていらっしゃるのですか?」
「いや、まだ決めてないんだけど。その子たちに牧場で働いてもらえないかなと思ってさ」
「なるほど。人手不足を子供たちで補おうというのですね。素晴らしい考えです!」
「でもこれにはいろいろ問題があって」
「問題?」
「そう、勝手に子供を攫って来たらそれこそ犯罪だし、住む場所も探さないと行けない。そもそも働ける状態じゃないかもしれないでしょ」
「確かにそうですね。キララ様の宅では二〇人もの子供を寝泊まりさせられないでしょうし…」
「とりあえず、七日後にもう一度ギルドに行くから、その時街の現状と子供たちの話、牛乳の話、諸々シグマさんに相談してみよう。焦っても仕方ない。子供たちを連れてこれるかが重要だから慎重に行かないと…」
「そうですね。なんでも簡単には行かないですからね。出来る準備をしていかなければ。ドリミア教会や領主が関わってくるかもしれませんし」
「うん。その時のために何か情報はやっぱり必要だね。街の人たちがどういった不満や苛立ちを覚えているのか、シグマさんに聞いてみよう。シグマさんはきっと協力してくれるよ。顔は怖いけど、性格は良さそうだし」
「なら、私は子供たちを見張りつつ、仕方なく入ってきてしまった情報を集めてみますね。もしかしたら、ビーがたまたま飛んでいる所、偶然領主が通りかかるかもしれませんし」
「飛びながら聞いちゃった情報だったら、仕方ないもんね。だって仕方なく聞こえちゃったんだから」
「キララ様。今の私達、どういった顔をしているんでしょうね」
「そうだね、きっといい顔してると思うよ」
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