泥棒の青年?
「はぁはぁはぁはぁ…ざまあみろ婆! 俺たちを言いように使いやがって…」
青年は老人の持ち物を奪い逃走していた。
「誰か! あの人を捕まえて!!」
老人は叫ぶが周りにいる人達は誰も動こうとしない。
周りに騎士団はおらず、老人の足では到底追いつけなかった。
「さてと…どうやって逃げるかな…。ん? いい所にいるじゃないか」
青年はとあるバートンに目を向けた。
「ご立派な荷台を繋いでるじゃないか。お~何か乗せているみたいだ。合わせて奪ってやろう…」
青年はそのまま一目散にバートンに飛び乗った。
「おい! 今すぐ動け! 命令だ!」
「はい? 何を言っているんですか? それに、僕はここで待っていなければいけないんですよ」
「は? …バートンが口答えした…」
青年はこの時、初めての出来事を2度経験した。
1にバートンが命令に従わなかった。
2にバートンが口答えした。
どちらも青年にとっては初めての出来事だった為、大きく動揺してしまった。
「と、とりあえず走れ! 走らねえとぶち殺すぞ!」
「だから…ダメだって言ってるでしょう。それにあと少しで戻ってくると思うので待っててくださいよ。運んでほしいならその人に頼んでください。僕だけの考えで貴方を乗せては動けません」
「な! …だ~、どうしてだよ! こっちはスキル使ってんだぞ! それなのにどうしてバートンが俺の命令を聞かねーんだ!」
この青年がレクーの上で何とかして動かそうとしている姿を、周りの人がおかしいと思いどんどん集まってきてしまったらしい…。
「あのー、レクーから降りてもらえませんか。レクーが怒ったら大変ですよ」
「あ! 7日前に邪魔したガキ! またお前かよ! 何で今回も俺の邪魔をするんだ」
――手に持っているバッグは…、この人の物じゃないよな…。どう考えても服装と合ってなさすぎる。
青年は綺麗なスーツっぽい服を着ていた。バッグはぎっしりと宝石が散りばめられている。見るからに高そうだ。
「また盗んだんですか?」
「盗んだ? 人聞きの悪い言い方をするんじゃねえよ。俺はこれを拾ったんだ。地面に落ちてたんでな、落ちてる物は拾ってもいいだろ、何か間違ってるか」
「落し物は騎士団かギルドに持って行くべきじゃないんですか?」
「何いい子ぶってるんだ。誰が落とし物をそんな所に持って行くかよ。落とす奴が悪いに決まってるだろ!」
青年はレクーの上でバッグを振り回す。
「はぁ…ここで大っぴらに話してても、誰が来るか分からないし…。もういっそ騎士団かギルドに持って行こうか…」
「ちょっと待てよ! こっちにはこのバートンがいるんだぞ、何か不穏な動きをしたら、こいつごと…っておい! 暴れるな!」
レクーは体を強く揺さぶり上に載っている青年を振り落とそうとしている。
「ぐ! 暴れすぎだぞ! この!」
――凄い…レクーに乗ってるのに振り落とされてない…。
「どわ!!」
数10秒間レクーの動きに耐えたが…結果に振り落とされてしまった。
「痛った…。まさかスキルを使ってる俺が振り落とされるとか…どうなってるんだよ…」
「さ、早くそのバッグを返して。持ち主を探して返してあげないと」
「チッ! ほらよ」
青年はバッグを私に投げつけた。
同時に、全速力で走り出した。
「あ! ちょっと!」
バッグはやけに軽い…そう思い、私は中をのぞいたが。
「何も入ってない…」
中身だけを綺麗に持って行かれたみたいだ。
「仕方ない…ベスパ。あの人を拘束できる?」
「はい。お安い御用です、すぐ取り掛かりますね。」
――あ…できるんだ…。
ベスパが飛んで行くと、青年はいきなり転んだ。
「な! 何だ! 足が動かねえぞ!」
青年は地面に靴裏がくっついて離れないみたいだ。
靴を脱ぎだした青年の周りに『ビー』達は群がり、ロープ状の物を即座に巻き付けていく。
10秒もしないうちに青年は繭の状態になった。
頭だけ出ており、叫んでいる。
「それじゃあ…、ベスパあの繭を荷台に乗せて、騎士団にでも連れて行こう…」
「了解です!」
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