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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~

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パーティーを開く

 あの化け物に勝とうとしているライアンは、無謀としかいいようがない。けれど、軽く笑っていた。


「あれくらいじゃなきゃ、倒しがいがねえよな」


 どうやら、ライアンも少々狂った感性をお持ちのようだ。

 男は勝負するのが好きだな、まったく。


 午後の授業も終わり、私たちはフレイズ家の建物の中に戻った。

 広間に入ると、ニクスさんに抱き着くディーネさんの姿が。


「ニクスちゃん、おかえりなさい。もう、ずっと待ってたんだからね~」

「か、母さん。抱き着かれるのは恥ずかしいんだけど……」


 ディーネさんは緑色の長い髪を背後に流し、綺麗な赤色のドレスを身にまとっていた。やはり、赤色が映える女性だな。

 ニクスさんのほうが身長が高いのでディーネさんを胸で抱くような形。

 息子の成長が嫌な母親はこの世に存在しないだろう。

 ニクスさんが家を出ていった当時は一五歳、なんなら冒険者育成学校に通っていたのなら、その三年前だからざっと一二歳のころに親元を離れている可能性があった。

 ちょくちょく帰省しているだろうが、しっかりと会うのは久しぶりなのかもしれない。


「ニクスちゃんがこんなにたくましくなって帰ってくるなんて、ほんと嬉しいわ。ミリアちゃん、ハイネ姉さん、ニクスちゃんを守ってくれてありがとう」


 ディーネさんはニクスさんの後方にいる獣族のミリアさんとディーネさんと背丈が違うだけでほぼ瓜二つのハイネさんに微笑む。

 両者とも苦笑いを浮かべながら頷いた。


「ニクスお兄ちゃん、おかえりなさ~い!」


 メロアはニクスさんと先ほどあったのに、家で会うのは格別なのかすぐに走り込んだ。

 前はブラコンを隠していたのに、隠す気がさらさらない……。兄に甘えたい妹そのもので、かわいらしさ全開だ。


「メロアってあんなにお兄ちゃんっこだったんだな」

「ほんとだね、いつもオラオラしているのに、あんな猫みたいな……」


 ライアンとパーズはメロアの変わりようを見て、はにかんでいた。同級生のちょっとかわいいところを見て笑っているのかもしれない。


「家族だと気が緩むんだろうね。はぁ、いいな……」


 レオン王子は複雑な家庭環境なのか、遠い目を浮かべながらメロアを見つめる。

 まあ、何人もきょうだいや家族がいると、仲が良い悪い出てくるだろうな。

 そうじゃなくても、これから結婚するかもしれない相手を見つめているのはえらい。ちゃんと夫婦に成れるかは別として。


「みんな~、おかえりなさいっ!」


 ディーネさんは私たちを見つけるや否や、ニクスさんから離れてすっ飛んでくる。

 走るたび、大きな胸がたゆんたゆんと揺れ、スージアが盛大に興奮し、鼻の穴を膨らませる。そんな姿を見たサキア嬢が彼をぶん殴る。

 ライアンとパーズは言わずもがな、大きなおっぱいに大興奮。

 レオン王子は全く動じていないように見えて案外むっつりだったりしそう。私の勝手な妄想でしかないけれど。


「キララちゃ~ん、むぎゅ~」


 ディーネさんの大きな胸が私の顔にダイレクトアタック。完全に戦意喪失した私はディーネさんのされるがまま。

 いったい何歳なのかわからないが、ディーネさんの肌年齢は三〇代、なんなら二〇代といわれても信じるほど張りがいい。もちろん弾力も……申し分ない。


「はぁ~、キララちゃんを抱くと癒されるわ~」


 ディーネさんは散歩から帰ってきた猫をかわいがるように私を抱きしめ、撫でまくってくる。もう、完全に心開かれているらしい。


「今日はみんなのためにパーティーを開いちゃうわ。とってもいい食材が入ったようだし、歓迎したいの~」


 ディーネさんは両手を握りしめ、長めの耳を上下に無意識に動かす。

 おせっかいというか、過保護というか、とてもやさしい性格なのはわかる。

 だが、パーティーと言われてもドレスは持ってきてない。

 それに、パーティーを開くのはお金が多くかかるはずだ。

 今のフレイズ家にお金を使わせるわけには……。まあ、レオン王子もいるから大貴族としての威厳もあるのだろう。

 無理してもパーティーを開こうとするのは貴族の宿命なのかな。


「じゃあ、皆、お風呂に入った後、衣装室に移動ね!」


 ディーネさんはもう、元気いっぱい。

 私たちはすでに疲労困憊。そんな状態で、彼女のテンションに合わせるのは至難の業だった。

 だが、私は元トップアイドル。歌って踊った後も、ファンとの交流はあった。そのままドラマ撮影とか、テレビ番組の撮影とか、ほんとハードスケジュールだった。

 でも、ちゃんとこなせていたのだから、驚き桃ノ木……。グラサンプロデューサーの手腕かな。そう考えると彼も、優秀だったんだな。

 私をぎりぎり殺さない程度に働かせ続けるとは。


「ディーネさんと一緒にパーティーができるなんて、とっても楽しみです」


 私は疲労困憊でも一二〇パーセントの笑顔を浮かべ、ディーネさんの善意に応える。

 その姿を見た、彼女は泣きそうなほど笑顔になった。周りは若干引いていた。

 ディーネさんが広間から手を振って離れる。


「女って怖いな……」

「うん、あんなに疲れていたのに、あんな笑顔ができるんだね」


 ライアンとパーズは頬を引きつらせた。


「やっぱり、キララは諜報員に向いてるんじゃないかな……」

「そうですね、キララさんなら、すごい仕事達成率だと思いますよ」


 スージアとサキア嬢は私のほうを見ながら、にやついている。


「うぅー、お腹減った。早く、何か食べないと死んじゃう……」


 ミーナはずっとお腹を空かせている様子。魔力水を飲ませても普通の空腹が襲ってくるらしい。魔力は満たされているので、ごく一般人の空腹具合だろう。

 男子と女子で別れ、寝泊まりしている部屋に入った。そのまま浴槽にお湯を張り全裸になって入り込む。


「はぁ~、あったけ~。きもちいぃい~」

「キララ様、おじさんみたいな声を出すのは淑女としてどうかと思いますよ」


 ベスパはトイレに飾られている花に座り、体を揺らしながら話しかけてくる。

 ユニットバスなので、カーテンを閉めないとトイレが丸見えなのだ。


「いいじゃん、別に。今は私しかいないし……」


 一人で入ると浴槽も大きく感じ、脚を延ばしても問題ない。そのため、お湯に浮いているような気分になる。

 これくらいのお風呂なら、家にも置けそうだなと思うも、置くとなったら配管とか、下水とか、いろいろ考えないといけないので新しい家を作った方が速そうだ。


「ふふん、ふふん~」


 私は石鹸を粉末にして浴槽に入れ込み、シャワーであわあわにする。

 あの泡は見た目をよくするためにしているわけではない。その泡を使って、体を洗うためにあるのだ。

 日本のお風呂文化と海外のお風呂文化は全く違う。

 海外の人はお風呂を軽視しているというか、水が貴重なのでそう簡単にお風呂に入れない。

 だから、お風呂に泡状の石鹸を浮かべ、体を温めながら洗う。なんとも合理的な入浴だ。

 体を温め、洗い終わったらシャワーの石鹸を流し、浴槽に入ったお湯も捨てる。

 それが、お風呂を楽しむより効率を優先している海外の者の入り方。

 だが、私は一味違う。このお風呂も楽しむのだ。


「うふふ~ん、あはは~ん」


 私は体に泡を塗り、貴族の令嬢になった気分を味わう。場所は高級ビジネスホテルの一室のようだが、浴槽が広く周りに空間があるので窮屈じゃない。

 やはり、お風呂は一人で入るに限る。これほど、心が穏やかになる時間もなかなかない。


「キララ~、お風呂の入り方、わかんなーい」


 私が一人で楽しんでいたら、ミーナがすでに全裸になって風呂場に入ってくる。

 せっかく楽しんでいたのに、という感情は心にしまった。


「うわー、あわあわー。すごい、すごい! ナニコレ~!」


 ミーナは泡まみれのバスタブを見て、目を輝かせた。しっぽと耳を大きく動かし、興味津々のご様子。

 彼女を浴槽に入れ、お風呂のお湯に浮いている泡を手で救い上げる。そのまま、ミーナの髪に乗せた。髪をしっかりと洗ってあげる。


「はふぅ~、きもちいぃ~。やっぱり、お風呂はみんなと入るべきだよ~」


 ミーナはお風呂にみんなで入りたい派らしい。まあ、それも楽しいが、一人のお風呂が好きな人もいるのだ。

 彼女の体に石鹸を塗り手繰った後、お風呂のお湯で軽くすすいで、栓を抜く。


「うわあー、お風呂がぬるぬるだー。滑っちゃうよ~」


 ミーナは浴槽のぬめりを楽しんでおり、脚を動かして笑っていた。


「ちょ、ミーナ、あんまり動くと滑って危ないよ。じっとしてて」


 私はシャワーのお湯でミーナと私の体についた石鹸を洗い落す。

 だが、ふとした瞬間に彼女の体が傾いた。ぬめりに足を取られたらしい。もし、浴槽の縁に頭をぶつけたら最悪死んでしまうかもしれない。


 私はシャワーヘッドを手放し、ミーナの手を握りしめて引っ張る。だが、慣性力は強く、私の体はミーナに引きずられた。でも、彼女の後頭部に浴槽の縁が当たることはなく、浴槽の中で転ぶ。


「あ、危ないなー。ミーナ、だから言ったのに」

「えへへ、ごめん、ごめん」


 私とミーナはほぼ抱き合う形で、倒れ込んでおり、彼女が上半身を持ち上げたと同時、私も膝立ちになって頭をもたげる。

 すると扉があいた。


「お、お邪魔だったかしら~」


 サキア嬢がユニットバスの扉を開けており、頬を赤らめながら笑みを浮かべる。


「ちょ、サキアさん、何を言って……」

「でも、キララが手を握って押し倒さなかったら私、こらえられたのに」

「…………」

「きゃぁ~、そういうことなのね~」

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