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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~

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謙虚すぎるのも問題

「ベスパ、ちょっとついて行ってくれる。なんか、あの人臭うからさ」

「了解です」


 ベスパはフェニル先生とルフスさんの背後にスーッとついて行った。

 ビーほどの弱い魔力に気付ける存在など、アレス王子やバレルさんほどの実力者じゃないと無理だ。

 加えて、ベスパはほぼ魔力を消せるビーの状態になれば、ただの羽虫としか思われない。

 そこらへんに落ちている小石に意識が向かないように、羽虫もその場にいても全く気付かれない。

 まあ、それでも油断せずに光学迷彩で見えないようにしているけれど。


「はぁ~、疲れた疲れた~。みんな、どこで昼食にする?」


 ミーナは立ち上がって体を伸ばした。


「そりゃ、メロアの実家だろ。あんなおいしい料理が昼も食べられると思うと、体が踊りだしそうだ」


 ライアンは体を動かし、リズムに乗っていた。すでに、踊っている。


「でも、普通のフレイズ領の人たちが食べている食事にも興味があるんだけど」


 レオン王子は美味しい料理もいいが、庶民の味も知りたいという。王子としては百点の発想だ。


「私は断然、家で食べたいけど……、まあ、あんたがそういうのなら、ギルドで食べてもいいわ」


 メロアはツンデレみたいな発言をした後、レオン王子の肩を持つ。物理的に持っているわけではない。


「私はメロアさんの実家で食べようと思います。そのほうが安全だと思うので」


 サキア嬢は視線をスージアに移した。


「僕も、メロアさんの実家で料理を食べようかな。疲れすぎて、バートンに乗るのが面倒くさいけどさ~」


 スージアは疲れている様子を全く見せず、笑みを浮かべながら歩きだした。


 ミーナとライアン、サキア嬢、スージアの四名がメロアの実家に帰っていった。

 皆、強いので人さらいに会っても、そう簡単に捕まることはないだろう。逆に返り討ちにしちゃうかもしれない。


「じゃあ、私たちはルフス冒険者ギルドで食事にしましょうか」


 私とメロア、レオン王子、パーズの四名はルフスギルドに残る。


「パーズはメロアさんの実家に戻らなくてよかったの?」


 私はてっきり、パーズもライアンと一緒に戻ると思っていた。だが、彼はルフスギルドで食事をとると決めたらしい。


「僕はどんなひどい料理を食べても、寝れば治るから、挑戦するのも悪くないなと思って」


 パーズは根っから冒険するのが好きなのか、目を少し輝かせていた。

 まずい料理を期待しているのだろうか……、もしそうなのだとしたら、相当変人だ。

 おなかの痛みも『完全睡眠』により完璧に治るとは。やはり、チートスキルだ。


 私たちは訓練場から室内に戻り、食堂にやってきた。冒険者さんがちらほらと利用している。その中に、見覚えのある人達がいた。


「……不味い。なんだこれ?」

「においからしておかしいと思ったけど、本当にまずいね。これ腐ってる肉を使ってるんじゃない? ルフス様、こんな料理を出してるなんて、知ってるのかな?」

「あのルフスちゃんがそんなへまするわけないと思うけど……」


 私たちの視線に入ったのは、赤髪の青年と青髪の獣族、緑髪の森の民。

 髪色が信号機と同じで、笑いそうになる。

 いたって真面目な冒険者たち。なんなら、Sランク冒険者だ。


「うわぁ~、ニクスお兄ちゃん!」


 メロアは周りに誰もいない(まあ、私たちはいるけれど)そんなことお構いなしで、ニクスさんに向かって飛びついた。


「うわ、メロア。こんなところで何しているの?」


 メロアに抱き着かれたのは『妖精の騎士』のリーダーを務めているニクスさんだ。

 周りに『聖者の騎士』たちがいないのを見るに三人だけで来たのだろうか。


「私たちはルフス冒険者ギルドの見学だよ。園外授業の一環」

「ああ、そういうこと。って、レ、レオン王子!」


 ニクスさんはすぐ近くに王族がいるとわかるや否や、椅子から立ち上がり、床に跪いた。素早い動きで、王族への配慮が見て取れる。


「い、今は一人の学生なので堅苦しい挨拶は必要ないよ。ドラグニティ魔法学園の一生徒として扱ってほしい」

「そういわれても……」

「なんなら、ニクスさんはSランク冒険者なのだから私より立場が上の可能性だってあるよ」

「め、滅相もありませんよ!」


 ニクスさんの腰の低さはルフスさんにも負けそうにない。彼は軽くお辞儀してから、椅子に座りなおした。普通に接したほうが、レオン王子に失敬ではないと判断したらしい。


「四人なのは、半分の生徒は実家で料理を食べるから。私たちはフレイズ領の普通の人が食べている昼食を得に来たの」


 メロアは事の経緯をニクスさんに報告していた。


「そうなんだ……、でも、この料理を食べるのはお勧めしないよ。前はこんなにまずくなかったはずなんだけど、すごく不味くなっていてさ。料理人が風邪なのかもしれない」

「食べたらお腹壊してしまうかもしれませんから、実家に戻って料理を食べられたほうが安全です」


 ニクスさんとミリアさんはメロアに向かって優しい言葉をかけた。


「むぅ……、ミリア、どうせ、ニクスお兄ちゃんと私の間を引き裂きたいだけでしょ。料理がまずいって言うのも嘘なんじゃないの?」


 メロアは疑り深くなり、事実を言っているであろう二人の言葉に耳を傾けなかった。

 こうなったら、とことん自分の納得がいくまで突き進む性格だ。それを知っているニクスさんとミリアさんは溜息をつく。

 ニクスさんが食していた肉料理をフォークで取り、メロアの口に持っていく。


「うえぇ、臭い……。ナニコレ、腐っている?」

「だから言ったのに。フレイズ領全体が少しおかしくなっている。この状況、少し見覚えがあるんだ。もしかすると、最悪な事態になるかもしれない。メロア、父さんか母さん、フェニル姉さんの近くから離れないようにするんだ。皆も、できる限り大人と一緒にいたほうがいい」


 ニクスさんはバルディアギルドがある街で起こった、巨大なブラックベアーの暴走事件を経験している人物だ。

 その時の雰囲気を知っているから、今のフレイズ領が危険事態に陥っているのだと感づいている様子。

 ミリアさんとハイネさんは巨大なブラックベアーがいたとき、眠っていられるくらい図太い性格なので、表情から恐怖心はあまり感じられない。

 ただ、ニクスさんは仕事中でもないのに、張り詰めた雰囲気だった。

 やはり、生き延びる素質はしっかり持ち合わせているようだ。ただ、タングスさんの件を引きずっていなければいいけれど。


「キララさん、ちょっと……」


 ニクスさんは私の手を取る。そのまま別の場所に移った。メロア達は首を傾げ、なぜ私がニクスさんに連れていかれているのか理解できていない様子。


 ルフス冒険者ギルドの階段付近に移動した私とニクスさんは立ち止まる。


「父さんからダンジョンの話を聞いてきた。加えて、キアズさんからの返事ももらってきた」

「聞きましょう」

「父さんはダンジョンについて知らなかったらしい。全部、ルフス兄さんに任せていたんだ。ルフス兄さんから事前に問題ないと言う話を聞いた。だから僕たちにも問題ないと教えてくれたらしい。ただ、ダンジョンの件をどうしてルフス兄さんも知らなかったのか……」

「多分その件の話は今、フェニル先生が聞いています」

「フェニル姉さんが……。よかった、僕だったら何を言われるかわからなかった。フェニル姉さんが怒ったら、ルフス兄さんでもそう簡単に手が付けられない」

「ルフスさんって、ギルドマスターをするくらいですから、ものすごく優秀なんですよね?」

「うん。すごく優秀な兄さんだよ。魔法の扱いにたけていて、小さな村くらいなら焼き滅ぼせるんじゃないかな。母さんの魔力量を引き継いでいるから僕じゃ手も足も出ないよ」


 ニクスさんは現にSランク冒険者だというのに、どれだけ謙遜しているんだ……。

 さすがに謙遜しすぎじゃないだろうか。

 だって、ウルフィリアギルドもニクスさんをSランクと認めているわけだし。

 まあ、その件は私が一枚かんでいるのだけれど。そのせいで、彼は未だに謙遜しているのかな。


「ニクスさんはSランク冒険者なんですから、もっとしゃきっとしたほうがいいですよ」

「む、無理だよ、無理! 冒険者に成ってまだ二、三年くらいしかたっていない。こんなに早くSランク冒険者に成れると思っていなかった。僕が未熟だったせいでタングスさんが……」


 ニクスさんは萎れた小松菜かと思うほど、なよなよしている。

 タングスさんが大けがを負ったのはニクスさんのせいかもしれない。だが、それでも両者ともに生きているのだから、すごいことだ。


「ニクスさん、生き残ることも立派な才能ですよ。タングスさんは運が悪かっただけです。あと彼から何か言われたんじゃありませんか?」

「期待しているって言われた。次に冒険者たちを引っ張るのはお前たちだって……」

「ほら、もう期待されちゃっています。なら、期待に応える以外に、ニクスさんができることはありません。ぐずぐずしているほうが、身を挺して守ってくれたタングスさんに怒られちゃいますよ」

「うぅ……、そういわれても……」


 ニクスさんの謙虚さは折り紙付きだ。簡単に頷きそうにない。まあ、そういう性格のものが悪いわけじゃないのだけれど、Sランク冒険者の人が謙遜していたら、ほかの人も謙遜してしまうじゃないか。

 オラオラしているほうが冒険者っぽいのに。

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