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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~

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料理がまずい?

「なにか用?」

「うーん、別に用と言う訳じゃないんだけど、キララのいない所だと妙に息苦しくてさー。ずっと一緒の部屋だからかな? 一緒の部屋にいないと、寂しいって思っちゃう」


 ミーナはベッドに転がり、ひたりとくっ付いてくる。可愛い奴め。

 彼女の頭を撫でながら、モフモフの耳を堪能した後、懐中時計を開く。

 午後六時四八分。多分、七時頃に夕食だと思われる。

 私とミーナはベッドの上でゴロゴロ、だらだらしながら、一緒に過ごした。

 いつも通りと言うか、特に変わったところはない。部屋を出てサキア嬢を呼びに行く。


「サキアさん、そろそろ夕食時ですよー」


 扉を叩いてみるが、返事がない。すでに眠ってしまったのだろうか。


「は、はーい……」


 サキア嬢は眠そうな眼を擦りながら寝室から出て来た。その表情は暗い。いつも笑みを浮かべているのに、なんなら先ほどまで表情が明るかったのに妙に雲がかかっている。


「長時間の移動で疲れましたか?」

「そ、そういう訳じゃないと思うんですけど。なんか、体が……、んー、あれ、特に何ともないです。目が冴えてきました」


 サキア嬢は目をしばたたせ、息を吸ったあと深く吐く。いつも通り笑顔に戻った。そのまま、椅子に座る。


 ――寝不足かな?


 私は少々疑問に思いながらも、椅子に座る。

 ミーナも隣にどっしりと座り、料理を待っていた。扉が開き、息切れしているメロアが入ってくる。


「ニクスお兄ちゃん、いなかった。もう、家が広すぎて移動するだけでも大変。いつもより疲れた気がする……。はぁー、なんか、皆の顔を見たら落ち着いてきた」


 メロアは息を吸って吐き、そのままスタスタと歩いて椅子に座る。

 先ほどの疲れはどこに行ったのか、もうすでに元気な状態に戻った。

 午後七時。私達の部屋に料理が運ばれてきた。執事とメイドたちがテーブルに料理を並べる。

 どれも見た目は美味しそう。匂いも悪くない。ただ、疲れているシェフが作っているかのような、絶妙なアンバランス。

 見た目が少し崩れていたり、皿の縁にソースがついていたり、食事に気を使いそうな大貴族の料理人が出す料理にしては粗末? な気がする。

 まあ、料理人でもない私が文句を言える立場ではないけれど。


「じゃあ、いただこうか」


 メロアは神に祈り始めた。両手を握り、食事に感謝する仕草。私達も同じように祈り、料理に手を付ける。


「ん…………、まっず……」


 メロアの第一声が私達の心の声を表していた。見た目は良いが、味が悪い。これいかに。

 お腹が減っていたミーナは我慢して食べようとしているが、普通に腐った食べ物のような味がした。こんな料理を食べていたら体を壊してしまうよ。


「ちょっと、なんて料理を出してるの。ふざけているの」


 メロアは自分の家が出した料理とは思えないとばかりに激怒した。


「も、申し訳ございません。すぐに取り替えます」


 執事とメイドたちは料理を運び直し、八分ほどして料理を再度出した。

 その料理を食べたら、これまた仰天、糞不味い。

 二度同じ轍を踏むバカが大貴族の料理を作って良いだろうか。明らかにおかしい。

 メロアは噴火寸前。執事を殴り飛ばそうとしている。

「あの、少し良いですか? 執事さんはこの料理を味見しました?」

「い、いえ、ですが、料理人たちは何も問題ないと」


 私は綺麗な部分の肉をソースに絡め、執事の口に運ぶ。


「んんんんっ、こ、こりゃ酷い。ど、どうなっているんだ!」


 執事も激怒、メイドたちも一口食べ、顔面蒼白。だが、怒りの声が轟いているのは私達の部屋だけ。この料理を得て、他の者達は何も感じないのだろうか。


 私は反対側にいる男子たちのもとに向かった。すると、料理をパクパク食している。

 ヘドロのように糞不味い料理を平然と、なんなら美味しそうに食べている。


「皆、その料理食べられるの?」


 気になって付いてきたメロアは男子たちにむかって声をかけた。


「え、ああ、美味い……、ん……、美味い? うぐ……、な、なんか、いきなり不味く感じて来た……。どうなってんだこれ……」


 ライアンは口に含んでいた肉を無礼ながら吐き出し、トレイに駆け込んでいく。

 パーズは完全睡眠で腹痛を癒し、レオン王子とスージアはトイレに駆け込む。

 初日から炎上案件だが、始めは美味しそうに料理を食べていたのだから、美味しいと思える時と不味いと思える時で何かが関係している。


 見てわからない時は魔法か何かの類の可能性が高い。そのため、私は瞳に魔力を溜めた。

 キアン王子のアンテナを探すように魔力を透かして空気中の魔力を見た。


「うーん、普通だ……」

「いえ、キララ様。普通ではありませんよ」


 ベスパは私に話しかけて来た。


「今はキララ様の魔力が闇属性の魔力を浄化し、普通の空間になっています。ですが、この建物内、なんならフレイズ領内が闇属性の魔力に侵されている状況です。以前、ネード村が瘴気で覆われていた時より酷くありませんが……」


 ベスパは私の周りをブンブン飛び回りながら話す。

 先ほどベスパの目を介してフェニル先生たちの会話を盗み見た時、光景が妙に黒かったのは闇属性の魔力が充満していたからと言う。

 私の魔力量が多すぎるのに加え、闇属性を消せるほどの密度があるらしい。

 私の周辺は闇属性の魔力が浄化されているそう。

 直径八メートルほどは無害らしいが、それを超えると、少し危険な状態。料理を見ても、闇属性の魔力が籠っていたから美味しくなかったと言う訳ではなく、料理人の味覚が狂ってしまったのだろう。

 せっかくの食材がもったいない。

 もしかすると腐っていた肉を使用している可能性すらある。

 そうなれば、食べられないのは明白だが、真面な判断が出来なくなっていると考えると、仕方がない。


「なんで、領土を包むほどの闇属性の魔力が。って、闇属性……、ダンジョンの影響?」

「可能性はゼロじゃありません。なんなら、最も可能性が高い。今、扉が開きっぱなしになっているのを発見しました。すぐに閉じます」


 ベスパは森の中にあるダンジョンの扉に向かい、溢れ出ていた闇属性の魔力をすぐに封鎖した。


 ――ニクスさん達は急いでいたとはいえ、しっかりと封鎖してから逃げたはずだ。なのに、なんで開いているのか。単純に、誰かが開けたと考えるのが妥当か。


 フレイズ領にダンジョン内の闇属性の魔力を満たすために何者かが扉を開けた。多くの者達を気づかぬ間に、判断能力を鈍らせている。

 火災が起こっていたのも、その影響があるのかもしれない。


「はぁ、何者かが扉を開けているのなら、その者が来るのを待っていた方が良いかもね」

「そうすれば手掛かりになり得ます。ただ、フェニル先生と言う存在がいるので下手に動かない可能性もあります」


 敵はフェニル先生に感づかれないように行動をひそめる可能性も十分あった。

 そのため、フェニル先生をすぐに治さない。彼女が鈍れば、敵も侮るはず。

 なにしようとしているかわからないが、きっと目的を遂行するため、再度扉を開けようとする。その時を見計らう。


「私、お姉ちゃんに言ってくる」


 メロアは何かおかしいと感づいたのか、フェニル先生のもとに向ってしまった。

 ここで引き留めるのも、おかしいと思われそう。そのせいで私の作戦はすぐに失敗すると思われた。

 だが、ビーからの情報によるとメロアは私から離れた影響でフェニル先生が食べている料理が美味しいと感じてしまったらしい。

 別に問題ない? と言う話しに発展した。

 メロアもその言葉通り、何ら問題ないと判断力が鈍っているような口調で理解。私達のもとに戻ってくる。


「な、なんか、私達の料理だけ不味いみたい……?」


 メロアは私のもとに近づいて来て、お腹の当たりを摩る。顔色が悪くなりトイレに駆け込んでいった。完全にお腹を壊している。

 人間の体が闇属性の魔力によって鈍っているせいで多くの者が体調不良にも拘らず、普通に生活していた。


 ――こりゃ、だいぶ重症化しているな。闇属性の魔力を一気にかき消したら、不審がられるだろうし、少しずつ浄化していかないと。


「明日から園外授業が本格的に始まります。その時にちょこちょこっと消していきましょう」


 ベスパは私の周りをブンブン飛びながら話し掛けてくる。

 ただ、そうなると八日間の食事はどうすればいいのか。

 料理場の人達だけでも治した方が良いかもしれない。そうしないと、私達のお腹と背中が引っ付いてしまいそうだ。


 料理を吐き戻し、グロッキー状態の男子とメロアは料理を食べられる気がしないと言うので、すぐに休んでもらった。

 ただ、大食いのミーナは何かお腹に入れないと体が持たないと言うので、サキア嬢と一緒にフレイズ家の料理場に向かう。


 料理場までメイドさんに案内してもらった。

 料理場のにおいは結構酷い。悪臭が漂い、ところどころ、瘴気のような靄も見える。


 私が料理場に入ると、空気中の闇属性の魔力は膨大な魔力によって薄まり浄化される。

 ただ、大量に吸ってしまっている料理人たちは空気をよくしただけでは元に戻りそうにない。

 私は特効薬を魔法で生み出した水に混ぜ、全員にお口直しに飲んでもらった。

 顔色が悪かった料理人たちは眠気から解放されたかのように顔色が良くなり、悪臭が漂う料理場で顔を青ざめさせた。

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