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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~

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軍曹みたい

 オリゴチャメタなら、意思疎通ができるはずなのだが……、魔造ウトサの影響が出ているのか意思疎通ができない状態だった。

 あれだけの巨体は危険なので駆除する方が適切かもしれない。


「餌ぁあああああああああっ」


 オリゴチャメタはミミズのような魔物。

 だが、あまりに巨体なので出会ったらすぐに逃げるべき。だが、フェニル先生は逃げない。


「こんなデカくなるまで、何を食ってたんだ……。邪魔だから、さっさとぶっ潰す」


 Sランク冒険者の彼女からすれば、大きいだけの敵など恐れない。

 剣を引き抜いてオリゴチャメタの体に一線。

 直径が八メートルはありそうな頭部が完全に切り落とされる。


「う、うおぉ、す、すげぇええっ」


 あれだけ巨大な魔物を見るのが初めてなのか、ライアンとパーズは目をギラギラに輝かせフェニル先生の戦いを見ていた。


「ちょ、男子、外に出ないでよ。魔物に見つかったらどうするのっ」


 メロアは自然界で魔物に会うのが怖いのか、少し委縮した状態で声を荒げる。


「まあまあ、男の子は戦いが好きですから大目に見ましょうよ」


 サキア嬢がメロアを落ち着かせる。

 お姉さん気質なので、妹気質のメロアも言うことを聞いていた。


「すぴぃ……」


 スージアは周りがどうなっているかなど全く気にしていない様子で、完全に眠りこくっている。この状況でよく眠れるな。


「私が戦っても、絶対に勝てない……」


 レオン王子は巨大なオリゴチャメタの存在を目の当たりにして、顔色を青くした。

 まあ、普段は人を滅多に襲わない生き物だ。

 私の友達にも、オリゴチャメタがいる。ものすごく良い子。

 でも、魔造ウトサは感情を狂わせてしまうので何でも食い漁る化け物に変わってしまう。

 オリゴチャメタは掃除屋と呼ばれるほど、死骸を食い漁る生き物だ。

 なので、魔造ウトサを体内に溜めこみやすい。あの巨大化も魔造ウトサの影響が少なからずあるはずだ。


「キララ様、一〇時の方向から別のオリゴチャメタが接近しています」


 ベスパはまた、新しい情報を伝えて来た。

 ほんと仕事が早いが、初っ端から危険な敵が多すぎないか?

 普通ならすでに引き返した方がいいと思うほど、危機的状況な気がする。


 一〇時方向の地面から巨大な柱のような肉体を持つオリゴチャメタが現れた。

 頭の直径は八メートルを優に超え、体長は計り知れない。


「ちっ、初日から大仕事ばかりだな、全く」


 フェニル先生は新しく現れたオリゴチャメタ目掛けてバートンを走らせる。

 だが後方にいた頭部のないオリゴチャメタが蠢いていた。

 にゅるりと頭部が再生すると、大口を開け、フェニル先生の背後に齧り付かんとしている。


 ――あいつら、新種なの……。ベスパ『ゼロ距離爆撃』

「了解っ」


 ベスパは光の筋になり、新しく再生された口内目掛け突っ込んだ。

 私はバートン車の中で『ファイア』と『転移魔法陣』を使う。

 ベスパの背後に現れた『転移魔法陣』から『ファイア』が飛び出し、直撃。爆破させた。

 だが、油断はできない。

 通常のオリゴチャメタなら、頭部を破壊されれば再生されないはずだ。

 でも、今、見ている個体は再生能力が高い。また、再生し、襲ってくるだろう。


「なっ、さっき倒した個体が何で。まさか、新種……。ちっ」


 フェニル先生は背後から迫って来た個体を見て、爆破と共にバートン車の方に顔を向ける。

 どうも、私が助けたと理解したのだろう。

 再生能力の高い個体は倒すのが面倒くさい。

 だが、再生するにも魔力が必要だ。

 一度再生するだけでもものすごくきついはず。

 自然発生した個体なら、体内に『再生』の魔法陣が組み込まれた魔石を持っていたブラックベアーのような個体と考えにくい。

 頭部を破壊し続ければ、倒せるはずだ。

 ただ、爆発攻撃を何度もすると、明らかに目立つ。


「フェニル先生、すげぇ。俺たちと戦ってた時は全然本気じゃなかったんだな……」

「あ、ああ、そうだね。あんな巨大な魔物と戦えるなんて、やっぱりすごいな……」


 ライアンとパーズは完全に心奪われており、戦いに目が釘付け状態。

 多くの騎士達が魔物の接近に気を付けているものの、巨体のオリゴチャメタが攻めてきたらひとたまりもない。


 ――ベスパ、新種の魔物の首をネアちゃんの糸で絞めて。そうすれば、頭部が再生しないかもしれない。


「了解です」


 ベスパは焼き焦げている魔物の巨大な傷をネアちゃんの糸でぎゅっと縛った。

 完全にソーセージ状態。時間が経っても頭部は再生されなかった。

 ただ、ウネウネと動き回っている。まだ、生きているようだ。

 頭部がないため、栄養を失えば自滅するだろう。暴れまわられると困るので、このままにしておくわけにもいかない。


「ディア、食いつくして」

「了解しましたっ!」


 ブラットディアたちは蠢く真っ黒な津波のように荒野を走る。

 巨大なオリゴチャメタを食い漁っていく。

 蟻が死んだ生き物に集まる様子と似ており、黒い小山が作られていたが、すぐに消える。

 多くの者がフェニル先生の方に興味を持っていたため、ブラットディアの捕食場面は見られていない。まあ、あいつらは隠密のプロなので、音を出さず仕事を完了する。


 ベスパとネアちゃん、ディアは新種の魔物に対しても完璧に対応できるだけの知性を持ち合わせており、頼りになるったらありゃしない。

 死んでも復活してくれるので、先遣隊として送り込むことが可能だ。

 私は安全地帯で指示を出しているだけ。軍曹みたいだね。


「おらあああっ」


 フェニル先生はもう一体のオリゴチャメタの頭部を切りつけ、完全に断ち切る。

 そのまま、胴体を輪切りにしていった。もう、大根の輪切りみたい。

 そんな、美味しそうに見えないが、切り刻んだらどうなるのかという情報も手に入った。


「な……、面倒なことに……」


 フェニル先生が切った輪切りから頭と胴体が伸び、オリゴチャメタが増えた。

 小さい個体がミミズのようにのたうち回り、フェニル先生に食い付かんとするように動いている。

 一体が八体くらいに増え、周りは騒然とした。

 再生速度が通常の魔物にしてはあまりにも早い。ただ大きいだけの魔物だが、それでも人間にとっては脅威になり得るのだ。


「フェニル様、一人で無理なさらず!」


 赤い鎧を身にまとった初老の騎士が大声を出す。フェニル先生からの助太刀の命令を待っていた。

 騎士達は自分勝手に行動出来ない。そのため、私達を守るためにバートン車の周りをぐるりと囲んでいる。


「こいつに強力な一撃を打ち込めるか? 出来ないならそこで大人しくしていろ。逆に出来る奴はぶちかませっ」


 フェニル先生はバートンに跨り、八体の巨大なオリゴチャメタから距離を取った。

 彼女の発言を聞いた騎士達は強力な攻撃が放てる者が前に出て、数名で呪文を呟き始めた。

 どうやら、一つの魔法を三人かかりで発動するらしい。

 呪文を言うので、それなりに時間はかかるが、三人分の魔力を使えるため威力はそこそこ出るはずだ。


「『エクスプロージョン』」


 三名の騎士が呪文の後に詠唱を叫ぶと八体のオリゴチャメタの上空に三枚の魔法陣が展開した。

 魔力が込められると地上に向って勢いよく爆弾が投下されるような光景が広がる。

 花火が真上から降ってきているような状態だ。地上に落下した球体は衝撃によって地面を抉りながら勢いよく爆破。

 突風がバートン達をビビらせるほどに激しい爆発だった。

 地面が抉れ、八体のオリゴチャメタは肉塊になり、辺りに散らばっている。

 未だに蠢いており、少しずつ再生している様子が見て取れた。


「ディア、全て食べつくして」

「了解しました!」


 ばらばらになったオリゴチャメタの肉体をブラットディアたちが貪り食い、完全に消滅させる。

 ただ、抉れた地面はバートン達で進むのが難しいほど盆地になった。


「ちょっと火力を出しすぎじゃないか?」

「手加減して取りこぼす方が危険だと判断しました」


 フェニル先生と初老の騎士が落ちあい、話し合った。

 進んでいる途中に魔物に遭遇することはよくあるだろうが、あの巨大なオリゴチャメタが攻めてくると予想外だった。

 魔造ウトサの影響がもろに出始めている。

 シーミウ国では魔物達の暴走が始まっていると聞くし、ルークス王国の王都以外は危険区域なんだろうな。

 雨が降り、地面が柔らかくなった影響でオリゴチャメタたちが現れるのはよくあること。

 だが、あんな巨体が何体も出てきたら他の生徒達が危険すぎる。

 今の位置だと、引き返すよりも先にフレイズ領があるらしいのでこのまま進んだ方が逆に安全の可能性もある。


「フェニル先生、あの地面は直しておきますね」


 私はカッパを着た状態で、荷台から降りた。


「ちょ、キララ、一人で行動するのは危ない。またあいつが出てきたら……、まぁ、大丈夫か」


 フェニル先生は背後のオリゴチャメタの頭部が弾け飛んだ瞬間を思い出したのか、私の自由行動を許してくれた。

 生憎、オリゴチャメタ程度ならば負ける気はしない。

 戦って目立ちたくないので、無理に戦おうとしないが自分は自分で守れる。その自信があると前に進む勇気が少しだけ湧いてくる気がした。


 私はレクーに乗り、盆地になっているところまで走ってもらった。

 到着した後、地面に手を当てて土属性魔法で地面を盛り上げる。

 少し地盤が心配なので、真上から加圧してガッチガチにしておいた。


「よし、こんな感じでいいかなー」


 盆地だった地面の色が周りと絶妙に違い、直径八〇メートルほどの大穴が埋まった。


「あの少女、どんな魔力量を有して……」

「抉れていた地面が元通りになったぞ。こりゃ、進んだ方が早いな」


 後方にいた初老の騎士とフェニル先生の顔は苦笑い。

 地面を盛り上げる程度、誰でもできると思うが、まあ範囲が広いからそれなりに魔力量は必要になる。その点に驚かれたのかな。

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