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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~

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フレイズ領に出発

「キララ、まさかとは思うけれど、ダンジョンに入ろうとしているわけじゃあるまいね?」

「そ、そんな気は、なくはありませんけど……」


 私が呟くとフェニル先生は両頬に手を当て、押しつぶしてくる。

 そのまま、目を見られた。


「絶対に駄目。ダンジョンに入るのは一年生の後半の授業を受けていないと危ない。それを受けていたとしても、攻略されていないダンジョンに入るのは命に係わる。そんな中に学生を入れられるわけないでしょ」


 フェニル先生のごもっともな発言に、私はぐうの音も出ない。

 だが、私が行かなければ、フロックさんとカイリさんは最悪ダンジョンに食べられてしまう。

 時間が経てばたつほど、二人の意識はダンジョンに侵食され、廃人のようになってしまうかもしれない。


「フロックさんとカイリさんは私の命の恩人なんです。なにがなんでも助けたい相手なんですよ」

「だとしても、絶対に許可されない。攻略されたダンジョンですら毎年のように死者が出ている。優秀な冒険者だって、魔物の大群に襲われたらひとたまりもない。ダンジョンは命を懸けるしかない冒険者達が行く博打みたいな場所だ。子供が行くところじゃない」


 フェニル先生から完全に封じ込まれ、彼女とダンジョンに潜るのはほぼ絶望的。

 フェニル先生とニクスさん達だけでダンジョンを攻略できるのだろうか?

 もし、二組もダンジョンに飲まれてしまったら……。

 そう考えると、私の身が震える。

 夏が近づいてきているのに寒気がするなんて、おかしい。


「フロックとカイリはものすごく優秀だ。私もあいつらのことをよく知っている。Sランク冒険者は軟じゃない。他の冒険者が力をあわせれば、どんなダンジョンでも必ず踏破できる。そうすれば、すぐに会えるようになるさ」


 フェニル先生は微笑みながら、私の頭上に手を置く。

 確かに、Sランク冒険者は軟じゃない。ダンジョン内で生きているのは魔力の光方でわかっている。

 けれど、心配でたまらないのだ。

 もう、今すぐ会ってぶん殴ってやりたいくらい。がみがみ説教して、泣かせてやりたいくらい会いたい。

 フロックさんの持っていた形見を握りしめて、胸の苦しみを少しでも和らげる。


 フェニル先生にさっさと寝ろと言われ、背中を押される。それに従い、私も部屋に戻って椅子の上に座る。軽く勉強してからベッドに座った。


「やけに落ち込んでるじゃねえか……」


 フルーファはイケメンかと思うほど優しい声を出しながら私の膝に顎を乗せてくる。

 角が危ないので、真正面から来ないでほしい。顔を横に向け、ベッドの上に寝かせた後、軽く撫でてあげる。

 黒い毛がびっしり生えた尻尾を大きく振り、喜んでいるのが目に見えてわかった。

 ペットは飼い主の心の疲れを癒してくれる存在。確かに、フルーファに触れている間、凄く落ち着いていた気がする。その穏やかな気持ちのまま、枕に体を落とし眠りについた。


 五月一五日、私は眠りから覚めた。窓を開けて、外を見る。

 まだ暗いが、東の方から白い明りが伸びている。もうすぐ日の出だろう。午前六時頃に目を覚ましたらしい。

 フルーファの散歩の後、自分の鍛錬と勉強。朝食を食堂で取る。食堂でローティア嬢の隣に座った。


「ローティアさん、おはようございます。今日から、少しの間離れ離れですね」

「そうね。私は別に大したことないけれど、寂しすぎて泣かないようにね」

「自信がありません。私、ローティアさんと離れ離れになるのが、凄く辛いですから……」

「も、もう、そんなかわいい子ぶっても、お菓子はあげないから」


 ローティア嬢は私の性格も軽く理解し始めたのか、ぶりっ子のような私を突っぱね、パンにかじりつく。

 一ヶ月半で、心を大分開いてくれた。彼女を少しの間守れなくなってしまうが、ビー達が常に見張ってくれている。最悪の場合を想定し、何かあればすぐに離脱させるようにしている。

 彼女が殺されてしまうとしたら、他の目が少ない園外授業中が最も効率的だ。

 だから、その尻尾を掴めば、彼女をもっと安全にしてあげられる……。


 メロアとミーナは今日も今日とて、大量の朝食を食い漁っていた。フレイズ領に行ったらどんな料理が食べられるのだろうか。

 調理場を借りてカレーを作れればいいんだけれど、大貴族に料理を振舞ったら毒入りと思われてしまいそうで少し怖い。

 でも、手料理を振舞えたら、それだけで心の距離はグッと縮まるはずだ。


 私は寮の皆に軽くあいさつ回りした後、いつも通りの時間に教室に向かった。

 メロアは三つのトランクを持って移動していた。

 服とか、ドレスとか、お土産とかを入れているのかな……。

 一年生の皆はこぞって大荷物を持っている。皆、園外授業に行くのだから当たり前か。

 トランク一つ分で済んでいる私が少なく見える。


「キララ、その荷物の量で大丈夫なの?」


 メロアは心配そうに私の方を見て来た。確かに、八日分の衣類が入っているにしては少なく見えるか。

 でも、制服や体操服、下着類を洗って着まわせば問題ない。

 魔法があるのだから、沢山の荷物は必要なく、最低限の量で問題ないはずだ。必要な品があれば、ベスパに作ってもらえばいい。

 教室に入ると、通常のトランクよりも大きなトランクを持っているパーズとライアンの姿があった。大型のトランクの方が二つのトランクを持つより楽そうだ。


「皆、おはよう。今日から、園外授業だね。凄く楽しみだよ」


 パーズは遠足が楽しみで寝られなかった少年かと思うほど元気だった。

 もちろんスキルがあるので、多少の睡眠で問題ないから寝不足ではないだろう。


「荷物って何を持って行けばいいのか、よくわからないよな。服とか、防具とか、でいいんだろうか?」


 ライアンは腕を組みながら困り顔を浮かべている。

 だれしも、完璧なパッキングが出来るわけじゃない。

 その都度その都度、必要な品がなければ代用して生活するのも一つの技術だ。

 そういう点も園外授業する目的の一つだろう。想定されていない事態を解決する力を養えれば、園外授業は成功といっても過言じゃない。

 今回、執事やメイドはついてくるのだろうか。まあ、ついてくるか。危ないもんな。


 メロアやレオン王子の周りに隠れているが、執事やメイドがいる。

 彼らも一緒に移動すると考えると、人が集まりすぎて魔物の被害が増えそうな気もする。

 その点はどうやって解消するんだろうか。

 騎士とかついてくるのかな?

 それとも、冒険者が守ってくれるのかな?

 もしかすると教師たちだけもあり得るか。

 騎士達がくるのなら、ぜひともご遠慮したいところだ。

 だが、多くの生徒達は騎士に守られていた方が安心だと思うだろう。


「ふわぁ~、今日から園外授業か。面倒臭いな」

「もう、スージアさん。そんなこと言っちゃ駄目ですよ」


 紫髪の眼鏡、スージアと黒髪ロングのサキア嬢が教室に入ってくる。

 サキア嬢は荷物を持っているが、スージアの方は大きな魔導書のみ。きっとあの中に荷物を入れているのだろう。

 転移魔法陣のような便利な魔法を覚えているんだな。


 午前八時五〇分ごろ、フェニル先生が教室に入って来た。私達が一番少ないので一番に出発するとのこと。

 荷物はフェニル先生が預かるという。そのまま、バートン車に乗せて運ぶらしい。

 別に預ける必要がなければ預けなくても良いとのこと。

 なら、私は自分で持っていることにした。

 もし、キースさんがバートン車に忍び込んで私のパンツを盗んでも多分気づけない。

 そんな危険を冒すくらいなら、レクーの腰にぶら下げておいた方が安全だ。


「じゃあ各自、バートンに乗って正門に集合。今日はフレイズ領の騎士達が引率してくれるらしい。かなりの好待遇を受けているが、気にするな」


 フェニル先生は預けられた荷物を縄で縛り、軽々持ち上げて窓から外に飛び出した。

 ここは八階なので、落ちたらひとたまりもない。

 だが彼女は軽々と着地し、最短距離でバートン車に向かう。


「はぁ、お姉ちゃん、イライラしているよ……」


 メロアはフェニル先生の行動を見て、感情をある程度把握し、委縮していた。

 彼女も実家に帰るのは嫌そう。


「私達も急いで移動しよう。他の組に迷惑を掛けないように」


 レオン王子はスキルを使って全員に指示を出し、迅速に対応させる。

 ほんと、命令を聞いたら何も考えず体が勝手に動く。考える必要がなく動ける。変な感覚だ。

 多分、ボーっとしていても私はレクーがいる厩舎に移動できるだろう。

 それぞれ違う場所に居るバートン達のもとに移動していった。

 私はレクーがいる厩舎に到着し、彼のウェストベルトにトランクを引っ掻けて固定する。

 隣にも同じくらいの重さにしたトランクを乗せ、体重のバランスが崩れないように配慮した。


「レクー様、気を付けてね~」


 ファニーはレクーの方に声をかけてくる。イカロスはけっと唾を吐くように視線をそらした。

 もしかするとレクーも危険な地帯に入ることになるので、二頭と永遠の別れになる可能性がある。

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