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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~

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チートな人生

 モクルさんは引っかからないように布で隠されているボタンを首元から二つ、三つ外す。

 肩をがばっと出すと少しテカっている上半身が浮き彫りになる。

 筋肉質な肩や太い腕が男の教師よりも明らかに発達している。

 今の時期、長袖長ズボンは運動すれば熱がこもるので、筋肉量の多いモクルさんならサウナスーツを着ているような状態に近い。

 腕を袖から抜き取り、作業着の腕部分を腰に巻き付ける。

巨大な胸はスポーツブラでしっかりと包まれており、露出度は低い。

 ただ、括れた腰と割れた腹筋など、もうアスリート越えの肉体美だった。


「もう少し脂肪が付いてくれてもいいんだけどな」

「それ以上、胸をぶくぶく大きくしてどうするんですか? 赤ちゃんが窒息死しますよ?」

「ちょ、キララちゃん、そんなふうに言わないで~」


 乙女状態のモクルさんは下胸に手を当て、ここにばかり脂肪が付くんだと呟く。

 私に喧嘩でも売っているのだろうか?

 まあ、真剣に困っている様子。簡単に太らず、全て筋肉になってしまうらしい。


「こんな体を見せたら、マルティさんに嫌われてしまう。リーファさんのスラッと美しい女性の美を完璧に映し出したみたいな体に負けてしまう。ただ胸に魅かれているだけの糞男達なんかまったく興味ないのに、マルティさんにならいくらでも見せるのに」


 モクルさんは相当重症らしい。

 リーファさんに危害を加えなければいいのだけれど。

 まあ、どちらも三年生。卒業するときに戦う機会はいくらでもあると思われる。

 その時に、溜めに溜めた鬱憤を発散してもらおうか。


「モクルさん、女性は脂肪を体に溜めやすいですから、運動を止めれば脂肪は自然に尽きます。まだ部活があるでしょうし、卒業まで鍛錬は続くと思いますけど、無理しなくてもマルティさんは筋肉質な女性だろうが気にしませんよ。逆に個性だと言って褒めてくれるかも」

「そ、そうかな。うぅ、そんなこと言われたら私、マルティさんの赤ちゃんを産みたくなっちゃう……」


 考えが大人すぎるというか、飛躍しすぎというか、獣族の感性はよくわからない。

 多分、子供を産みたくなってしまうほど相手を好きになってしまうという意味だろう。

 それでも簡単に相手の赤ちゃんを産みたいとは思わないけれど。


「獣族の皆さんは子だくさんですか?」

「うーん……、そうとも限らないよ。赤ちゃんは生まれてからすぐに死んじゃうかもしれないし、育っている間に病気にかかって死んじゃうかもしれない。子だくさんというより、子供を沢山生んでいる家系が多いかな……。そうじゃないと、後継ぎが生き残れないから」

「なるほど、獣族の女性達は皆体力があるんですね。体が頑丈といっても、赤子のころは人間と変わらない訳ですか……」

「うん……、もっと回復魔法が使える治癒師とか、魔法使い、教会の人達がいてくれたらいいんだけど、ビースト共和国は人間を嫌ってる。だから、ちょっと胡散臭い薬草や薬剤に頼っているのが現状かな。そのせいで、正教会にも嫌われているんだよ」

「そう言うことですか……」


 ――病気に聞く薬草や薬剤ならいいけれど、胡散臭い者が持ってくる品はあまり使いたくないだろうな。でも、子供達が死ぬのは辛いだろうし……、仕方がないのか。


 私とモクルさんは一緒に冒険者女子寮に向って歩いた。


「明日から私はフレイズ領に行きます。最悪返ってこられないかもしれないので、バートン達のことはマルティさんと一緒にどうにかしてあげてください」

「凄く重い感情が籠っている気がするんだけれど。フレイズ領に行くんでしょ。なら、別に危険すぎる場所じゃないから、怖がらなくても大丈夫だよ」

「そ、そうなんですけどね……」


 フレイズ領の中にフレイズ家が認知していなかった又は報告していなかったダンジョンがあって、その中に私の命の恩人がいるから助けに行くかもしれないなんて、言えない。


 一応承諾してもらった。

 最悪、私が帰って来られなければ、多くの者が困ってしまう。

 だから、私は死ぬわけにはいかない。

 けれど、命を懸けずにフロックさん達を助けられるほどダンジョンは甘くなさそうだ……。


 寮に到着した後、私とモクルさんは夕食を得る。

 ローティア嬢やメロア、ミーナなどの一年生は明日からの園外授業に向けて早めに眠るのか午後九時頃になったら、フェニル先生と上級生以外食堂からいなくなっていた。

 上級生たちもお風呂に行ったり、部屋に戻ったりして食堂はがらりとする。

 お酒の進みが悪いフェニル先生が食堂の椅子に座っていた。


「フェニル先生、体調でも悪いんですか?」

「私のスキルを知っているだろう? 一〇歳のころから風邪は一切引いていない」


 やはり、フェニル先生のスキルはチートだ。

 毒や細菌、裂傷、を受けても何事もなく治ってしまう。ほぼ、老衰確定の肉体だ。その後、どうなるのか、わからないけれど。


「なら、なんで、そう暗い顔を浮かべているんですか?」

「まあ、何というか、明日から実家に戻ると思うと億劫でね。はぁ……」


 フェニル先生は大きなため息をつき、机に突っ伏した。

 真っ赤な髪がテーブルに広がり、頭が潰れてしまったんじゃないかと思うほど赤い。

 彼女が前髪をどかし、私の方を見つめてくる。

 真っ赤な瞳はルビーのように透明度が高く綺麗だった。けれど、血に染まっているかのようで恐ろしくも見える。


「えっと、何か?」

「キララは親と仲が良いかい?」

「まあ、良い方ですけど」

「そうか、私は以前見てもらった通り、最悪だ。私が女っぽくないからだろうか。それとも、他の男達よりも強いからだろうか。父さんと母さんから何度も結婚しろと言われながら断って来たからだろうか。考えればきりがないほど、私は親と仲が悪い」


 フェニル先生は親とうまくいっていないのは、以前の授業参観で知っている。

 親からボコボコに殴られるくらいに仲が悪いので、家に帰るというのは相当辛いのだろう。

 実の親から嫌われるほど、辛いこともない。

 まあ、前見た感じ、嫌われているというより、ものすごく愛されていてその愛が少し変わっているだけな気もするけれど。


「親と仲良く出来なくなったのはいつからですか?」

「そうだな、スキルを貰ったあとぐらいか。フェニクスと仲良くなれるスキルとかいう、伝説級のスキルを貰って両親とも喜んでくれたが、その後、どうなるかくらい目に見えていた。面倒な鍛錬に、したくもない大貴族のしきたり、学園にも通わされた」


 フェニル先生のスキルはやはり神獣と契約できるだけあって、ものすごく貴重なスキルのようだ。

 勇者や剣聖、聖女、賢者並に凄いのではないだろうか。

 まあ、力の方向が違うので何とも言えないけれど。

 フェニル先生の力は魔造ウトサを消せる可能性を秘めている。

 以前、王都の中が魔造ウトサによって発生した瘴気が蔓延した。

 だが、フェニクスの熱波で相殺できた。

 あの時はディアが魔造ウトサを食べて消滅させた。やろうと思えばフェニル先生は魔造ウトサを消すことも、国を落とすこともできる。

 そんな人を、国が放っておくわけもない。

 正教会や王家から色々な縁談の話を受けて来ただろうが、フェニル先生は全て断って来たらしい。

 彼女に逆らえば、灰も残らず消し炭にされる。

 炎で守られていたら、どんな攻撃も通用しない。

 魔造ウトサを食しても体内に入ったら燃えてしまうだろう。

 とことん、チートな人だ。

 けれど、心はいっぱしの成人女性。

 自分の強さはすでにわかっている。今後もその強さが衰えることは当分ない。

 そんなチートな人でも普通の人生を送りたいと思っているのもまた事実。


「私は貴族と結婚して子供を産んで相手の家に一生を捧げる生き方は嫌なんだ。それがどうしてわかってもらえないんだろうか。母さんなんて、女は男に一生を捧げて当たり前みたいなことを言う。愛してもらったら最高な気持ちになれるとか……、わけわからん」


 フェニル先生はお酒を飲みながら、酔っぱらっている風に見せているが多分、完全に酔っているわけではない。

 スキルの影響でお酒に酔いにくい体質だ。

 魔力を完全に使い切った後なら、酔えるだろうが、そこまで激務ではなく私が近くにいる影響でさらに酔いにくくなっていると思われる。


「まあ……、フェニル先生の考えを理解してくれる人は少ないでしょうね。私はフェニル先生の生き方を応援しますよ。自由に生きるのは人間だれしもに与えられた権利ですからね」

「キララは本当に女神みたいなことを言うんだな。はぁ~、私をわかってくれるのはキララだけだよ~」


 フェニル先生は私を抱きしめ、ものすごく抱擁してくる。少し暑苦しいのでやめてほしいんだけれど。

「フェニル先生、キースさんから話は聞きましたか?」

「あぁー、なんか実家が管理している森の中でダンジョンが発見されたとかどうとかって話?」

「そうです。フェニル先生にも力を貸してほしくて……」


 私はフェニル先生に現状を話した。

 フロックさんとカイリさんがダンジョン内にいること。ニクスさん達がフレイズ領に向っていること。ダンジョンの攻略が物凄く難しいことなど。

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