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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~

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冒険者たちの暗い顔

「今のイカロスなら人は追いつけないし、皆怖がって寄ってこないよ。攻撃されないと言うことを知って、少しずつ慣れて行こう」


 マルティさんの言う通り、少しずつ慣らして行くのが良いだろう。

 ビー達にそのまま人のように動いてもらう。


 マルティさんとイカロスは一緒にバートン場を歩く。

 一時間もしないうちに、イカロスの精神がすり減り、歩けなくなった。

 そうなれば、すぐに練習を止め、療養。

 体力が戻ったらもう一度同じような練習。

 少しずつ慣らして行けば、バートン場内だけでも走れるようになるかもしれない。


 昼頃になると、リーファさんが当たり前のようにやってくる。

 バートン場の周りにいる人に驚いていたが、私が事情を説明した。


「イカロス、頑張れ~。人なんて怖くないよ~」


 私はファニーにお願いし、イカロスを応援してもらう。

 すると、少しばかり心に余裕がうまれたのか、イカロスは軽快に歩く。

 やはり、好きな女の子に声を掛けられて頑張れと言われたら、頑張らなければと精神で思ったのかもしれない。そのまま、走りだした。

 人の数を少しずつ増やし、歓声も浴びせる。そうすると、やはり委縮する。

 人が沢山いて無音はあり得ないので、この状況にも慣れてもらわないとな。


 ファニーの応援に加え、周りを意識しないほどのライバルが欲しい所。そうなると、やはり彼にしか頼めないよな。


 私はレクーを厩舎から出して、バートン場に入ってもらう。

 すると、ビーの喫茶付近の厩舎から連れて来た個体のメスがレクーを見て飛び跳ね、ファニーはお尻を振って完全に発情する。


「イカロス、レクーに負けたらファニーは諦めてもらおうか」

「な……、そ、そんな……」

「レクーに勝てたら、ファニーも靡くかもしれないよ。バートンは強い雄が好きだからね。負け続けても良い。でも、負け続けたら一生ファニーは手に入らない」


 私はレクーと一緒にバートン術をこなす。

 イカロスとマルティさんも一緒に駆けた。

 実力は拮抗している。

 だが、レクーは人込みなど一切気にしないため、多くの人がいる中でも問題なく走った。

 大差がつき、レクーの勝利。

 だが、イカロスは初めのころに比べ、明らかに人を意識していない。

 やはりバートンにとっても子供を残したい欲求はものすごく強いようだ。


 レクーと走りまくっていると、人々の中をいつも通りの速度で走れるようになっていく。

 日が沈むころ、すでにイカロスはヘロヘロだが人に一切視線が行かず、レクーの背中を追っていた。

 それだけ、彼の意識が試合に向いているということだ。

 この練習を続ければ、本番で問題なく走れるに違いない。


 休みがあっと言う間に過ぎた……。それだけ、何もしていない一日だったのだろうか。

 いや、楽しかったから時間が短く感じたのだろう。そう思いたい。


 次の日、食堂で私のところにメロアとミーナがやって来た。


「キララ、外に行って遊びましょう。もう、少しで五月の中旬に差し掛かるし、王都から離れないといけない。その前に遊んでおかないといけないって思ったの」


 メロアは腕を組み、赤い髪を燃やしているのかと思うほど元気よく言い放った。


「私もキララとメロアと遊びたい。王都の中で何か面白いことがないか、見たい。家族に思い出話しないといけないから、一杯思い出を作らないといけないの!」


 ミーナは両手を広げ、家族に思い出を語っている場面を想像しているのか、目がキラキラと光っていた。


「ちょ、ちょっと待って。二人共、そんなにはしゃがないで。外は危険なところなんだよ。ミーナならまだしも、メロアさんは大貴族だし、どんな人がメロアさんを狙っているか……」

「大丈夫、大丈夫。だって、あのローティアでも帰って来れたんだよ? なら、私だって、帰って来られるに決まっているでしょ。なんなら、私はこの前、一人で外に行ってちゃんと帰って来れたんだから」


 以前、メロアはニクスさんが怪我を負ったと言う話を聞き、ウルフィリアギルド目掛けて走った。

 彼が結婚するんだと言って、メロアは逃げた。

 その後、バートン車に捕まってキアン王子にアンテナを付けられたと思われる。

 そんな事態に陥っているのに、彼女は知らない。なんせ、捕まっていた時の記憶がないんだから。


 ――彼女の性格じょう、何を言ってもついてくるんだろうな。今回は私が付いているから大丈夫か。ベスパ、ビーを一匹ずつ二人につけておいて。


「了解しました」


 ベスパは発信ビーを両者にくっ付ける。

 髪の裏とか、服の影とか、隠れられるところに小さなビーが止まった。

 これで、二人が結界の中に入らない限り見つけられる。


「じゃあ、行こうか……」

「うわぁ~いっ。キララ、ありがとうっ!」


 メロアとミーナは私にムギュっと抱き着いてくる。

 二人共、部活は良いのだろうか。

 毎日行くのは疲れるから、たまに休むのは問題ないのか。まあ、学園の休日なんだから休みたいか。


 ローティア嬢も行きたがっていたが部活があるとのことなので、部活を優先した。

 私とメロア、ミーナは外に行ける恰好になる。

 私はいつものオーバーオールと長袖の服。

 あと、何かあっても良いように武器やポーションが入ったウェストポーチ、剣を腰に掛け、羽織っているローブの内側に魔法杖を仕込む。


 メロアはもとから持っていた、冒険者服を着こんでいた。

 いつか、使いたいと思って買っていたのだろう。

 全体的に赤い服。でも、半袖半ズボンで、どこかボーイスカウトみたいに見える。

 剣を掛けているので少し野蛮な子供のよう。

 彼女は拳で戦うので、ニクスさんから貰った赤いグローブを大切そうに握りしめ、ギュッとはめ込む。


 ミーナもほとんど冒険者服を着こんでいた。

 私が作ってあげた、品でいつかハンスさんと一緒に冒険したいという夢をかなえようとしている。

 モフモフの耳が可愛らしい。尻尾が尾てい骨当たりから、生えているのを見るに、やはり背骨と尻尾は繋がっているのだろう。

 尻尾が折れたら、背骨はどうなってしまうんだろうか……。


 私達はバートンに乗って行動することにした。

 こんど、園外授業のためにフレイズ領に行かなければならない。

 その時の移動手段はバートンだ。

 公道を走るのは危険かもしれないが、すでに乗バートンの基礎は覚えているはずなので、私の指示のもと一緒に走ってもらう。


 実際、バートンは無免許運転が許されている。

 ほぼ自転車みたいなものだ。

 自転車を乗るのに、いちいち免許が必要ないように、バートンも免許が必要ない。

 危ない気もするが、それが当たり前の世界。なんなら、バートン車を運転するのも免許が要らないんだから、危ないよな。


「ぱから、ぱから、ぱからー」


 メロアはバートンの背中にのって、ご満悦。


「ぱから、ぱから、ぱから~」


 メロアに共鳴するようにミーナもご満悦。

 まだ、学園の中をゆっくり移動しているだけ。よろよろ運転で、ものすごくじれったいが、初心者に合わせなければいけない。

 私だけ突っ走るわけにはいかないのだ。


 どこか、教習所の先生になったような気分でメロアとミーナを先導し、ドラグニティ魔法学園の入口に到着。

 外出許可書を書き、三人で王都の中に出た。


「おぉ~、私、王都の中をバートンで走ってる~。凄い凄いー」


 メロアは王都の中でバートンに乗るのが初めてなのか、ものすごく喜んでいた。

 ミーナも、手綱を放しそうなほど手を振り上げ、尻尾を振っている。

 どちらも、元気があり余っているので、どこかで消費してもらいたいが、そいう遊び場が王都の中にあるのだろうか。

 子供の遊び場なんて、悪い人からすれば誘拐の恰好の的。そんな場所を王都の中で作ると思えないな。


「じゃあ、ウルフィリアギルドに向かいます。私の後ろをしっかりとついて来てください」

「はーいっ!」


 メロアとミーナは返事して、レクーのお尻を追ってくる。

 レクーにいつもより遅い速度で走ってもらい、一時間ほどかけてウルフィリアギルドに到着。


 バートン達を厩舎に移動させ、大きな門をくぐり、そのまま、人通りが多い通路に入る。

 両脇に多くのお店が並び、ここに来れば冒険者になれてしまうほど品ぞろえが良かった。


「おぉー、すっごい大きい。ここが、ウルフィリアギルド。私が将来働く場所だ!」


 ミーナは前にも来た覚えがあるはずだが、毎度興奮するのか両手を上げていた。


「私も冒険者として働きたいな……」


 メロアは腰に手を当て、胸を反らせながら周りを見渡す。

 周りを見れば、厳つい大人ばかり。

 とても、子供が来るような場所じゃないのだけれど。まあ、見学だと思えばいいか。


 私はメロアとミーナを連れてウルフィリアギルドの建物内に向かう。


「おおおお~、冒険者がいっぱいいるよ。凄い凄いっ!」


 ミーナは辺りを見渡し、走りだそうとしていたので手を掴んで暴れさせないようにする。

 目を放したら、どこかに行ってしまいそうだ。

 冒険者たちは数が多かった。でも、今日はいつもより表情が暗い。どうしたんだろう。


 冒険者達は悲しみに暮れている中、それでも仕事はしなければならないと言いたげな表情で、仕事を受け、外に歩いていく。


 私は何か不穏な雰囲気を感じ、受付の女性に聞いた。

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