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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~

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実戦に近い練習

「マルティさんに口が臭いって思われていいんですか? 息のにおいがドブか、ハーブかで、印象がガラッと変わりますよ」

「わ、私、そんなに口が臭いの……」


 モクルさんは両手を口の前に出し、はーっと息を出してにおいを嗅いでいる。

 だが、自分の口のにおいなど、よくわからないはずだ。

 なので、歯を磨く人があまりいない。

 珈琲とか、紅茶のにおいで誤魔化している感じすらある。

 だが、歯は一生もの。それはこの世界でも変わらない。

 歯が折れても魔法で治せるかもしれないが、なんでも魔法に頼るのはよくない。


 おじいさんおばあさんでも健康的な人は歯が残っている。

 歯があれば健康寿命が延びて、死ぬまで美味しい食べ物が得られるのだ。

 歯磨きしない理由はない。


「歯ブラシに水を付けて、口の中に入れます。歯の側面と内側、食べ物を噛み砕く面の三カ所をしっかりと磨いていきましょう。『クリーン』を使って綺麗にしても良いですけど、魔法を使う時、歯の構造をしっかりと理解していないと効果が半減しますからその練習だと思ってください。獣族は魔法が苦手でしょうし、歯磨きをしっかりと覚えましょう!」


 私の歯磨き愛に少々引かれた。

 歯磨きは素晴らしいことだ。

 自分磨きのようなもの。

 歯を大切にすれば、それだけで人間としての魅力が増すというのに……。

 まあ、歯まで大事に出来るほど余裕がないのか、はたまた面倒臭いだけか。

 どちらにしろ、歯があってこそ美味しいお菓子や料理が食べられるのだ。

 歯に感謝して歯磨きで労わってあげないと。


「うぅ、こ、このブラシ、凄い口の中がぞわぞわして頭が冴えそう……」

「歯磨きすると頭がよくなるんだよ」

「えぇ……。ほ、ほんと。じゃあ、やらなきゃ損じゃん!」


 ミーナは力強く歯を磨こうとしたので、優しく労わるように磨かせる。

 傷を付けたら逆効果だ。

 もう、触れるか触れていないかわからないくらいの力加減でいい。

 しっかりと歯を磨いた後、皆の歯並びを見せてもらうとそこはかとなく整っていた。

 やはり、顔立ちが整っていると歯並びもいいのかな。関係ないか。

 多分、貴族だった者は、赤子や幼児のころに癖がなかったのだろう。

 歯並びは遺伝するが、それよりも子供のころの癖による影響が大きい。

 頬杖や親指をしゃぶるといった行為を続けていると歯並びが悪くなる。

 貴族は癖を禁止させるだろうから、必然と歯並びが良くなるのかも。

 所々、歯並びが崩れそうな所はネアちゃんの糸で、少し整えてあげることも出来る。

 最悪、ネアちゃんの糸で、縛り上げれば綺麗に整うだろう。

 まあ、私は医者じゃないから、あまり手出ししない方が良いか。


 皆、歯磨きを終えた後、すっきりした表情を浮かべる。

 やはり、歯磨きは気持ちもあげてくれるいい行為なのだ。

 出来る限り習慣にしてもらいたい。


 私とミーナは部屋に戻り、勉強してから眠りにつく。


 ☆☆☆☆


 学園に行って勉強と運動、放課後にバートン達の調教と部活をこなし、五日ほど経った。

 休みの日に入り、日ごろの疲れを癒せる。

 だが、日本人体質の私は休みでも中々休めない。

 泥のように眠っていたいところだが、社長はそういう訳にもいかないのだ。


「ふぐぐぐぐーっ、はぁ。今日もいい天気。ほんと、五月は梅雨前でちょうどいい天候だよなー」


 私は起きた後、ベッドから降りて窓を開けた。

 新鮮な空気を部屋いっぱいに広げる。

 すぐ下にある花壇を見ると苗が物凄く生き生きしていた。

 雑草は定期的にビー達が抜いている。

 そのおかげで、苗が土内の栄養を一杯吸っているのだろう。

 花を咲かせるのも近いかな。


 私は水を一杯のみほし、運動着に着替えた。

 フルーファの散歩からの運動、勉強。

 その後、私が面倒を見ているバートン場に向かう。

 バートン達に餌と水を与え、地面を綺麗に掃除した。

 まあ、ほとんどビー達やブラットディアたちがやっているんだけど。

 その姿を現場監督のように見つめた後、バートン達を厩舎の近くにあるバートン場に移す。


 今、バートン術部のバートン場はマルティさん達が使っているので使えない。

 この場にいるバートン達の運動と人間に慣れさせる訓練を軽く終える。

 その後、走りに見込みがあるバートンを七頭ほど連れ、バートン術部のバートン場に移動した。


 マルティさんが真っ黒なイカロスの背中に乗り、凛々しい表情を浮かべながら走っている。

 リーファさんは乗バートン部の方に行っているのか、見当たらない。


「マルティさん、おはようございます」

「ああ、キララさん。おはよう。えっと、その子達は……」

「マルティさんと一緒に走ってもらおうと思いまして。やっぱり実戦形式の練習も必要ですよね」

「なるほど、確かに」

「武神祭の学生の部門には今年しか挑戦できませんから、万全を尽くしましょう。武神祭のバートン術の大会で優勝してリーファさんにカッコよく告白してやってください」

「キララさん……。ありがとう」


 ビー達が私の分身となってバートン達の背中に乗り、手綱を握る。そのまま、マルティさん達と一緒にバートン場を走る。

 実際は命の保証などないが、今は私がビー達を使って安全に配慮するため、全力を出してもらうことにした。


「最悪、こけてもビー達が支えます。怖がらずに全力で駆けてください」

「わかった。イカロス、人は見ていないから走れるよね」

「ああ、こんなへなちょこ共に負けるほど、俺は落ちぶれちゃいないぜ。俺も大会で優勝してファニーに良い所を見せてやるんだ」


 イカロスもファニーにカッコいい所を見せたいらしい。

 なら、それ相応の力を付けてもらわなければ。


 私は手を上げ、バートン達を走らせる。

 マルティさんも一緒に駆け出した。

 バートン場は広いので、八頭のバートンが並んでも問題ない。

 最も早く前に出たのはマルティさん達。やはり、慣れが全然違う。

 他のバートン達も走るのが好きだが、障害物に苦戦し、少しずつ速度が落ちた。

 マルティさんは槍の如く一切ぶれずに走り切り、ぶっちぎりで勝利する。

 その姿を見るに、もうだいぶ上位の実力を持っていると思われた。

 彼らの問題は身体的な力ではなく、内面的な部分にあるのだろう。

 その部分を克服しなければ、外側をどれだけ強くしても意味がない。


「ふぅ……、どうだったかな?」

「凄かったです。もう、他の選手よりも明らかに強いんじゃないですか?」

「それはないよ。ここは走り慣れたバートン場、あと人がいない。そんな状況だから、僕たちは走れる。でも、本番になるとどうしてもね」


 マルティさんは過去の勝負を未だに引きずっているらしい。どうにか元気づけてあげたいが、心のトラウマはそう簡単に取れないと知っている。

 私だって周りにビーが大量にいる状態で、走るのは不可能に近い。


「人が見えない状況なら、ものすごい実力が出せるのでは?」

「そうかもしれないけれど……、そんな状況はほぼないからさ」


 マルティさんは当たり前のことだと言わんばかりに、苦笑いを浮かべた。

 人が見えないようにすれば両者は勝てるだろうが、その状況があり得ない。

 何かしら魔法で見えなくすると言うことは出来ないだろうか。

 でも、周りからの援助は失格行為だろう。


「人の中に出て練習しないと克服できないか。ちょっと、練習してみますか?」

「え……」


 私はビー達をバートン場の周りに集め、人の姿を投影させる。すると、観客がいるように見えた。


「えぇ、す、すごい。本当に人がいるみたいだ」

「ま、まじかよ……」


 マルティさんと、イカロスは多くの人を見て、目を見開いている。

 私は出来る限り周りのビー達を無視して、話しを進めた。


 マルティさんとイカロスは再度、バートン達と競争する。

 だが、走り慣れたバートン場なのに、明らかに速度が落ちた。


「く……、なんで、こんなに脚が重いんだ……。まだ、全然走っていないのに……」


 イカロスは周りにいる人間を見すぎだった。完全に気を取られている。

 すでに最下位。

 まだバートン術をまったくやっていないバートンに簡単に負けた。


「今年もこうなるのか……」


 イカロスは初心者に負けたベテランのようにものすごく落ち込んでいた。

 運が強い競技ではないため、完全な敗北を味わっている様子。


「この中で、何度も走ろう。少しでも、人に慣れよう」


 マルティさんはイカロスの頭を撫でながら、語り掛けた。

 両者とも、人に何かしらのトラウマがあるのか。そのトラウマをどうにかして払しょくしないと。


「あの、なんで、イカロスは人が苦手なんですか?」

「えっと、イカロスは黒いバートンだからちょっと忌み嫌われていると言うか、子供のころに人間の調教師から虐めを受けていて。僕が引き取ったんだ。始めはものすごく怖がられたんだけど、今じゃ仲良し。でも、子供のころの傷ってなかなか治らないからさ……」


 マルティさんはイカロスを撫でながら、軽く放してくれた。

 子供のころに虐待を受けて大きな傷を負ったから、体が委縮してしまって動きが悪くなってしまう。

 でも、彼はファニーと人前で戦った経験がある。

 その時はレースに全力を注いでいて、周りを気にしなかったはずだ。

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