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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~

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生キャラメル

 以前、ネード村でブラックベアーが一頭、瘴気塗れのアンデッドになり、村が滅びかけた。

 あの時、大量の聖職者たちと冒険者達がいなかったら、街もどうなっていたかわからない。


 アンデッド化した魔物達に有効な手段は聖職者の奇跡と聖水のみ。

 ものすごく厄介な魔物だ。今の私なら、対抗手段があるので現れても焦らず対処できる。


「聖職者の数はルークス王国が最も多く、小さい国に聖職者は少ないです。シーミウ国はルークス王国の正教会の力を借りるしか、アンデッドに対抗する力がない。正教会は大金を請求してきますから、アンデッドが現れるたびに大金がルークス王国に入る。今更、魔造ウトサが出回らないように売買を制限したところで大きな痛手になるかどうか……」


 サキア嬢は俯きながら、ポツポツと呟く。

 そんな話、以前はしてくれなかった。

 企業秘密とか言って、出来るだけ内情は話さないんじゃないのか?

 そう言うことを言うのだから、彼女は何かしら狙っている。


「サキアさん、どうしてそんな話を私に……」

「キララさんは魔造ウトサについてやけに詳しかったですよね? 加えて、アンデッドが蔓延る村や街の暴動でも、生き残っている。私、ちょこっと調べたんですよ……」


 サキア嬢は微笑みながら、顔を上げた。

 どうやら、私が何かしら魔造ウトサやアンデッドに対抗する策を持っていると、彼女は睨んでいるのだろう。

 正解だ……。


 私は魔造ウトサとアンデッドを両方消せるライト特性の特効薬を持っている。

 これが正教会に知られたら、私とライトはあの世行だろう。

 最悪、考案者のスグルさんが捕まって延々に働かされるかも。


「さすが超優秀な諜報員ですね」

「それほどでもありますよ」

「サキアさん、ただ働きは嫌いですよね。逆に、報酬を渡せばしっかりと働いてくれますか?」

「輸出出来なかったウトサの情報をちょこっといじくってドラグニティ魔法学園に流すことくらいは出来るかもしれませんね。なんなら、私が所属している部活に流すように促すことも出来るかもしれませんね~」


 サキア嬢はうふふっと微笑み、完全に私の持っている情報を狙っている。

 きっとスージアも同じだろう。

 彼も城塞都市アクイグル内で起こっているアンデッドの暴走を止める方法を少なからず探しているはずだ。

 その情報を私が持っていると感づいているのかな……。


「はぁ、私がなんで魔造ウトサについて知っていて、生き残っているかと言えば、運が悪いからです。あと、色々と首を突っ込む性格でして。もう、後に引けないんですよね。もし、正教会に気づかれたらどうなるか……」

「そうですね、正教会に気づかれたら殺されるかもしれません。でも、キララさんの持っている情報が国を救うんです。多くの者を救えるのに、自分の命を惜しんでいる場合ですか?」


 サキア嬢は情に訴えかけてくる。

 その問いかけは私にものすごく効く。

 そりゃあ、自分の周りは大丈夫だけど、他の場所に住んでいる人はずっと危険に脅かされているのだ。

 私だけぬくぬく生きていて、大量の聖水を保持していても何も意味がない。


「サキアさん、あなたはシーミウ国から抜けたいと思っているのに、なんでシーミウ国の人達を助けたいと、言うんですか?」

「……そりゃあ、生まれ故郷ですから」


 サキア嬢に愛国心などないと思っていたのだが、当たり前のように愛国心を呟いている。嘘っぽいな。

 どうする……、教えてもいいけど彼女がまだ信用できない。


「サキアさん、私が教えたことがどういうふうにシーミウ国に伝わるんですか」

「それは……秘密です」


 サキア嬢は口を閉ざした。だが、鞄から袋を取り出す。用意周到なこって。


「ここに、ウトサが八〇〇グラムあります。今の時価総額ざっと大金貨八枚はあるかもしれません」

「はは……、そんな高級品を持ってどうしたんですか?」

「キララさんの情報をください。キララさんはお金よりもウトサの方が欲しそうだったのでこちらを用意しました。情報さえくれれば、私達の方でどうにかします」

「そうですか……。じゃあ、魔造ウトサを消すための特効薬が作れるかもしれない方法を教えましょうか?」

「ほ、本当ですかっ」


 サキア嬢は椅子を吹っ飛ばすほどの勢いで立ち上がる。

 魔造ウトサによって苦しめられている地域に彼女の実家でもあるのかな?


「まあ、出来るかどうかはおいおい考えて、とりあえず聞いてくださいね」


 私は実際に出来ている方法をあたかも、出来ていない可能性を含めて教える。そうすれば、ただの仮説でしかない。


 天才魔法使いを八人近く集めないといけないというあまりにも厳しい作成方法をサキア嬢に伝える。

 まあ、実家にいる化け物は全て一人でこなすのだけれど……。


「魔造ウトサを体内から消すために、様々な魔法を組み合わせた液体又は固形物に変えて物質として形状をとどめ、体内に入れる。な、なんですかこれ。出来るんですか?」


 私はサキア嬢に木製の試験管に入れた特効薬を一本渡した。


「……嘘でしょ」


 サキア嬢はコルク栓を抜き、中を見て苦笑い……。

 ぱーっと光っている聖水のような液体が見えたのだろう。

 だが、聖水の光方のざっと八〇〇倍は明るい。効果も結構違う。


「言っておきますがー、それは試作品でーす。まだ実験は成功していませーん。でも、大きな樽の中に水を入れてそれを入れれば、ざっと八百人分の聖水を作れるかも……しれませーん」


 私はマッドサイエンティストのように、嘘をついているかのような喋り口調で正規品を渡した。


「サキアさんが言っていることが嘘か本当かわかりませんが、助けたい人がいるのなら助けてあげてください。私はもう、目を付けられているでしょうし、目を付けられていない者が長く生きてほしいって心から思ってますから」

「うぅ、キララさん。今度はウトサを八〇キログラム持ってきます」

「…………いや、それはちょっと」


 シーミウ国にどれだけウトサが溜まっているんだろうか。

 私が渡した品が無事にアンデッドの被害を受けている者のもとに届いてくれると嬉しい。まあ、ライトに頼めばいくらでも作れる。


 正教会はもうけるために、わざと危険な存在を生み、自分達で解決している。

 一人芝居というか、汚い手を使っている。

 だが、そこで私の品が安く解決してしまえば、正教会は大打撃を受けるわけだ。

 せっかく聖水を作ったのに、売れず、全く直させてもらえず、手に持っていたお金が消え、何もできなくなる。

 正教会とて、お金がなければなにも出来まい。


 火のない所に煙は立たないというが、金のない所に人は集まらないともいう。


 私は少々あやしい通路からウトサを受け取ってしまった。

 完全に犯罪といってもいいだろう。

 だが、ウトサは金と違って食べてしまえば残らない。

 誰も気付きようがないのだ。なら、使ってしまってもいいかな。


 一応、魔造ウトサの可能性も考え、ベスパにウトサを与える。


「キララ様、綺麗なウトサで間違いありません」

「おぉ……、本当。な、なんか、悪いなぁ……」


 私がサキア嬢に渡した試験管一本の原価はゼロ。なので、無料でウトサを手に入れたといっても過言じゃない。


「丁度牛乳とバターがあるし、ミルクキャラメルでも作りますか」


 私は鍋にウトサを適量入れ、牛乳とバターを入れ一緒に火にかける。沸々と煮立たせる。

 焦がさないように作るのがコツ。

 焦げ付いたら不味いので、しっかりと温度調節ができる機械じゃないと難しいだろう。

 だが、魔法陣は機械も同然。魔力を込める量を調節し、完全に溶かして液を作った。

 クッキングシートを引いた薄い容器に、水あめのような液体をたらーっと流し込む。

 少し高い所から落として空気を抜く。

 冷蔵庫はないので『コールド』で冷やし固めて完成。

 縦横八カ所に線を入れるようにナイフで切り、一口サイズの生キャラメルが完成した。


「ててーん、生キャラメルー。超簡略バージョン」

「な、なんか、すっごい美味しそうなんですけど……」


 サキア嬢は私の作っていた工程をまじまじと見つめていた。

 実家で作っている生クリームを使っているからクリーミーな色合いで、とても綺麗。

 べっこう色と白を混ぜたような色。まあ、簡単に言えばコーヒー牛乳みたいな色になっている。


「サキアさん、あーん」

「あ、あーん」


 私は手でサキア嬢の口の中に出来立てほやほやの生キャラメルを入れた。


「んんんんんんんん~っ、お、おいひぃい~っ!」


 サキア嬢の頬が落ちるのかと思うほど両手を頬に当てて、その場でプルプルと震えた。

 そりゃあ、質の良いウトサと質の良い生クリームを使ったのだから、美味しいのは当たり前だ。

 不純物が混ざっていると、しっかり混ざり合わない。

 質の良い者同士が互いを助け合い、上手く交わった結果美味しいお菓子が出来る。


「こ、これ、これえ、これをシーミウ国で国際的に売りたいんですけどっ!」

「日持ちはあまりしませんよ。生キャラメルなので。ただのキャラメルなら、日持ちしますけど」

「き、キララさんって情報の塊なんですね。こんなの、家庭科部に入り浸らないわけにはいきませんっ」


 サキア嬢はどうも、私に懐いた……。

 いや、私から、お金となりそうな情報を沢山取ろうとしている。

 別に大した情報じゃないから、渡してもいい。

 ただ、部活の研究結果みたいな提出物を出さないといけないので作った品のレシピは学園に公開するつもりだ。


「は~ん、は~ん、は~むぅ~。んん~、紅茶と最高にあいます~」


 サキア嬢は私が作ったお菓子を口の中にひょいひょいひょいっと突っ込んで、紅茶を飲み大変幸せそうな表情を浮かべた。

 それ、私が貰ったウトサなんだけどな。ちゃっかり、自分で還元しちゃっているよ。まあ、部員だから良いか。

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