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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~

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正義の味方か

「ま、学生の内は位関係なしに生活できます。その間に気持ちを伝えて切り替えましょう。何か奇跡が起こるかもしれません」

「奇跡……、はは……、そんなバカな……」


 モクルさんは立ちあがり、そのまま大きく息を吐く。椅子に座る。


「奇跡なんて起こらないさ。私はこのままでいい。何か言って、今よりも状況が悪くなる方が辛い。今のままなら、友達として近くに居られるかもしれないだろう」


 モクルさん、それは少々つらたん過ぎますよ。

 いっそ振られて清々しい気持ちになった方が楽になれますよ。

 といくら言っても変わらないだろう。

 彼女は頑固者っぽいし。

 自分で、友達のままで良いと思っているのなら、私は彼女の意思を尊重しよう。


 発情止めのような品を作れたらよかったが、少々難しい。

 でも、生き物は体調が良い時に発情しやすい。

 なので、体調が悪くなるようにすれば、マルティさんに発情しなくなるはずだ。


「モクルさん、沢山食べず、適量にしてください。沢山眠らず、少々夜更かししてください。体調を悪くすれば、発情しにくくなります。マルティさんと友達として過ごしたいなら、私が居ない間は少しだけ無理してください」

「な、なるほど……。わかった」


 私はモクルさんに出来る限り無理するように伝えた。

 食事の量を減らすだけで、モクルさんの体調は悪くなるだろう。

 そう伝えた次の日、効果はすぐに現れた。


 朝起きて、モクルさんの様子を見ると……。覇気がなく、ボーっとした様子で、目の下に熊が出来ている。相当体調が悪そうだ。


 食堂の椅子に座っているモクルさんは体の力が出ないのか、ヘロヘロ状態。ここまでしたら、逆に仕事が出来なくなってしまう。


「モクルさん、大丈夫ですか?」

「あ、あぁ……。こ、これくらい何ら問題ない……」


 モクルさんはそう言っているが、明らかに大問題。

 私は大量の魔力を含ませたパンを食べさせる。

 すると、お腹は空いているようだが体調は良くなった。

 その状態で午後まで過ごしてもらい、六時頃マルティさんとリーファさんの二人と遭遇する。


 私も陰ながら、三名の様子を確認した。

 厩舎の入口付近に隠れ、三名の掛け合いを見る。


「こんばんは、マルティさん。えっと、昨日はごめん。発情期の影響で……」

「気にしないで。獣族の発情期の周期はわかってる。マドロフ商会は獣族達の体調を考えて商品を売っているから、僕も詳しくなったんだよ。相当辛いんだよね? 今度、発情期の辛さを押さえる薬草でも持ってこようか? 意外に安いんだよ」


 マルティさんの笑みとモクルさんに対する配慮、さらに彼女を労わる口調からして完全に素でやっている。

 モクルさんの表情はもう嬉しすぎるのか顔が赤い。

 けれどかなわぬ恋だとわかっているのか、泣きそうになっている。


「モクルさん、体調が悪そうだけど、大丈夫ですか?」


 リーファさんはモクルさんの顔色が悪いことに気づいた。

 さすが、生徒会長。生徒の体調の悪さを一目見ただけでわかるとは。


「あ、ああ。問題ない……。昨晩は少し眠れなくて、なんなら食欲もなくて……」

「そ、そんなに……」


 リーファさんは少し下がり、モクルさんの発言を重く受け止めていた。

 発情期の辛さだと認識しているのかな?

 それとも、他のことかな……。


 モクルさんの体調が悪くなってから、三名の間で喧嘩が起こることはなくなった。

 マルティさんとリーファさんがモクルさんを労わっている姿が見て取れる。良くも悪くも、三名は纏まる。


 マルティさんはモクルさんを労わり、モクルさんはマルティさんに労われて喜んでいる。

 だが、発情する兆しはなく、普通の表情。

 その姿を見てリーファさんも少なからず安心している。


 どろどろになりかけていた関係は、そこはかとなくほろ苦い珈琲のような状態。

 砂糖が入っていないカフェラテと言うべきか。


 私は三人の様子を見終わり、ビーの喫茶に向かう。

 花壇を見ると、葉っぱが大きくなり、皆、頑張っているのがわかる。

 土が乾いてきたので、魔法で水を与えると、皆が生き生きして喜んでいるように見えた。

 やはり、何かを育てるのはものすごく楽しい。

 子供を育てているような感覚。

 人間の保護欲や愛情を刺激され、心が穏やかになる。


「皆、頑張って綺麗な花を咲かせてねー」


 私は笑顔で、葉っぱたちに声をかける。

 植物は言葉がわかると言われているが、本当だろうか。

 言葉をかけないより、かけたほうが大きくなるのなら、そのひと手間を加えてみても良いか。


「キララさん、植物に話しかけるのは少し、気味が悪いですよ……」


 サキア嬢は窓から私の姿を見ていた。

 確かに、はたから見たら植物に話しかけている人は変人に見えるかもしれない。


「えっと、こうした方が、大きくなると聞いたことがあって」

「植物が人間の言葉を理解できるとは思えませんけど」

「まあ、物は試しですよ。なんでも、出来ないかもしれないじゃなくて、やってみることが大切なんです」


 私はビーの喫茶の中に入り、サキア嬢と一緒に部活を開始する。


「サキアさんは魔術部の方に全然行ってませんけどスージアが悲しまないんですか?」

「スージアさんと教室で会えますし、男がいる魔術部よりもほぼ人がいない家庭科部の方が安心できるって言ってました。なんなら、キララさんの情報を盗んできてって」

「なんか、大切なことを言っている気がするんですけど……」

「報酬も貰っていないのに、仕事はしませんよー。ただ働きはごめんです」


 サキア嬢は紅茶を飲みながら、ものすごくプロっぽい発言。

 確かに、アマチュアなら、ただ働きで自分の実力を示してもいいかもしれない。

 だが、プロフェッショナルになれば、ただ働きなど考えられないだろう。

 仕事をするなら、それなりの報酬が必要だ。


「ちゃっかりしていますね。いくらくらい払えば、雇われてくれるんですか?」

「そうですね。諜報作業なら、金貨二〇枚くらいですかねー」

「へぇー、現実的な金額ですね。どういう方が利用するんですか?」

「そりゃあ多くの場合、不倫だったり、夫の浮気だったり、そういう類が多いですね。貴族の方でも、気にするんですよ」


 サキア嬢はちょっと探偵っぽい方だった。

 まあ、探偵と殺し屋が混ざっている職業といっても良いか。

 悪い奴を倒すというのだから、一応正義の味方なんだろうけど、誰にとって良い者になるかわからないんだよな。


「諜報員と別の仕事ですよね、それって」

「まあ、そうですねー。副業ですよ。そうでもしないと、いつ切られるかわかりません。捨てられて家にずっといるのもつまらない。お金は稼げるだけ稼いで、さっさと自由気ままな生活を送りたいです」


 サキア嬢は現実主義者だった。

 仕事するのは好きなのか嫌いなのか、どちらかわからない。

 お金がもらえるから、仕事しているだけという感覚かな。

 そうなると、正義感もあったもんじゃない。

 以前、力を貸してくれたのは、キースさんに身元がばれたからだし……。


「逆にキララさんは貴族でもないのに、どうしてドラグニティ魔法学園に。学歴は村娘に絶対必要ありませんよね? ただでさえ仕事ができるのに美人なら、男の人は引く手あまたでしょ」

「んー、まあ、これからは村人だからって学歴が必要ないとは言い切れない時代になると思いまして。というのは建前ですけど。実際は大量のウトサを使ってお菓子作り生活を夢見ていました。現実は程遠いですが……」


 ビーの喫茶に置かれているウトサは一グラムもない。ソウルは以前貰った品が少しだけ残っている。


「ウトサを使ってお菓子作り生活。村人からしたら夢みたいな話ですね」

「今の社会情勢が悪くなければ沢山のウトサを買ってお菓子を作りまくっていたところなんですけど。ウトサに制限が掛かって、以前より高騰した影響で、一般人じゃ手を出せない値段にまで。学園も、部活のためにウトサを買っている余裕はないでしょうし」

「まあ、そうでしょうね。私も、初めはどうしてウトサを買ってもらえなくなったのか、調べていたんです。キースさん達に全て教えてもらいましたから、情報はすでにシーミウ国の方にわたっています。だから、多少なりとも国の間のイザコザは薄まったはずです」

「いつの間に……。でも、それは大きいですね。シーミウ国が他国にウトサを売ろうとしているという噂がルークス王国内でも広まりつつありました」

「すでに以前から売っていますけど、キースさんから聞いた魔造ウトサなる物質のせいで、シーミウ国の中で最も売れているウトサがなかなか輸出できなくなっている。きっと、他の国も少しずつ異変に気付き始めるでしょう。シーミウ国内でも、謎の瘴気事件が多発しています……」


 サキア嬢は少々暗い表情になり、両手を握った。

 彼女の話を聞くに、シーミウ国内で瘴気を放っているアンデッドたちの暴走が起こったらしい。


 今、ハンスさん達が国内にいる魔物や動物の体に溜めこまれた魔造ウトサを消し回っているから、国内で魔物の暴走が起こっていないだけで他国ではすでに魔物のアンデッド化が進んでいるようだ。


 正教会が実験で使用していた魔造ウトサは自然に消えない。

 人間や動物が排除する器官を一切持っておらず、体の中に少しずつ蓄積されていく。

 そのまま、限界を超えるとアンデッドのように体がドロドロになり、瘴気を発する危険な存在に変わる。

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