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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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香辛料が欲しい

「うわ~、いろんなお店があるわ。どこに行こうかしら」


 ローティア嬢は外に出るのが初めてなのかと思うほど、笑っていた。

 ここは一般人も使う市場だ。

 露店が多く、手作りの屋台を出して商品を卸売りしている。

 声が張られ、王都に住む一般人たちに商品を進めていた。

 こういう場面を見ると街の市場を思い出してくる。あそこもにぎわっていたが、王都は一味も二味も違った。なんせ、通路が長すぎる……。


 前座席から奥の方を見ても、ずらーっと露店が軒を連ね、何店舗あるのかと数えたくなってくるほどだ。

 大通りに作られた市場は一日じゃ周り切れないほど。何か目的をもって探さなければ、すぐに時間がなくなってしまう。


「ローティアさん、何か見たい品でもありますか?」

「そうねー、わたくしはやっぱり服や宝石が見たいわ。少しでもいい品があれば買いたい。でも、ここは一般人が多くいるし、そこまで高い品はないかもしれないわね」


 私はローティア嬢の言う通りに服や宝石を売っている露店をベスパに探させた。

 服を売っている露店は沢山あり、宝石を売っている店はゼロ。

 やはり、一等地の治安がいい場所で売られているようだ。逆に魔石は売られているらしい。宝石よりも手に入りやすいからかな。


 私が求めている調味料の露店をも探してもらった。ざっと八店舗。

 香辛料と乾燥ハーブ、ソウルなどが多い。

 ウトサは売られていなかった。

 規制の影響か、ごく普通の一般人が売り出せるほど甘くないらしい。

 でも、香辛料と乾燥ハーブ、ソウルが売っているのなら買っておきたいな。

 部費はまだ下りないが、私のお財布は今とても暖かいので、多少使っても問題ない。

 高すぎるなら、物々交換という手段も取れる。

 私のスキルが作る品はどれも一級品。値段を下げるくらいはできるだろう。


 ベスパに調味料が売っている店と服屋が近い場所に案内してもらった。

 レクーを大通りの端に寄せ、私とローティア嬢は歩道に移動する。

 レクーとバートン車を半分近く歩道に移動させ、大通りを少しでも広く保った。

 他の者も同じようにしているので、法律違反ではないと思われる。

 最悪、レクーたちを光学迷彩で見えなくさせればいい。


 人の行き来が多く、私とローティア嬢は大人の人ごみに飲まれそうだった。

 手を握り合って、時に抱きしめ合いながら人の荒波を乗り越え、人気の露店に到着する。

 人気の理由は単純に、服の値段が安い。

 周りの露店が金貨一枚付近をウロチョロしているのに対し、銀貨八枚という絶妙に安い値段。

 王都で働いているといっても、その分、物価が高いのだから生活はかつかつなのか、一般人たちは少しでも安い品を手に入れようと露店の台に置かれた服の争奪戦が起こっている。

 もう、バーゲンセールに集まるマダムのよう。


「す、すごい、これが一般人の物の奪い合いなのね。ここまで激しいなんて……」


 ローティア嬢は一般人たちが少しでも安い品を求め、狂ったように奪い合っている姿を見て、目を丸くしていた。

 きっと、彼女は高級なお店に並べられている糞高い服を吟味しながら、ここからここまでと言うようなタイプだろう。

 だが、一般人はそうはいかない。少しでも安い良い品を見つけたらハイエナのように食らいつき、必ず物にするのだ。


「まあ、これが普通です。ローティアさんは凄く恵まれているんですよ」

「そうね……。でも、わたくしだって、負けていられないわ」


 ローティア嬢は瞳を燃やし、肉団子状態になっている台に向って突っ込んで行った。

 彼女の危険極まりない行動に私は止めようとするも、彼女の少し楽しそうな顔を見るとそのまま行かせることにする。

 これも良い社会経験だろう。

 何かあれば、助け出せばいいのだ。


「うおお~っ、この服は私のよっ!」

「バカ言わないで。この品は私が先に取ったのよ!」

「今年はこの服で一年を超えて見せるわっ!」

「子供用五枚、夫用二枚、私用一八枚!」


 多くのマダムたちがしのぎを削り、大量の服で山盛りになっていた台は数分でなくなってしまった。

 人が多いぶん、消費も多い。

 一着銀貨五枚で仕入れていたとしても銀貨八枚で売れば銀貨三枚手に入る。数百着売れているので、金貨三〇枚は硬いな。

 でも、それだけ売って金貨三〇枚か。

 ビーの巣は半日で金貨八〇〇枚を稼ぐので、彼らの数の暴力は計り知れないな。


「や、やったわ。わたくし、あの戦いを生き残ったわ」


 ローティア嬢は病み上がりなのに、汗を沢山掻き、一着の服を持っていた。

 山のような服の中から選ばれた一着はフリフリのフリルが付いた可愛らしいい品。

 ローティア嬢が普段着るとしたら、あまりにも可愛すぎて魔法少女ですか?

 写真一枚お願いしますと言われてしまいそう。絶対着ないじゃん……。


「えっと、それ、着るんですか?」

「着るわけないじゃない。あの戦いを生き残った思い出に取っておくのよ」

「はは……、なるほど」


 そういう買い方も悪くない。自分が満足する買い物が出来れば、お金の使い方として正しいのだから。


 ローティア嬢は服をたたみ、質素なバックの中に大切にしまう。

 その表情は今の時間を最大限楽しんだ者の顔だった。


 私はローティア嬢と手を繋ぎ直し、近くにある調味料を見に来た。

 こっちは人だかりが少なく、じっくりと品定めできる。

 調味料なら何でもいい訳ではない。やはり、質の良い品の方が雑味が出ず、美味しくなるはずだ。

 シーミウの潮をただ乾燥させて作っただけなら濁りや酷いアクが出てくるだろう。

 香辛料だって、質が悪ければ香りが出ず、味も雑ならただのゴミ。

 見極めが肝心なので、にらみつけるようにして品定め。

 まあ、ベスパが小さな小さな結晶を取り、舌にのせて判断してくれるのを待っていれば、良質か悪質かわかる。

 犯罪じみているが、虫が野菜を食べるなどよくあること。

 

 露店の棚に並べられている箱の中に多くの香辛料が入っており、種類が豊富だった。

 カレーが作れるんじゃなかろうかと思うくらい。

 香辛料を一八種類使った本格カレーを作ってみようかなどと考えれば、一食いくらになるだろうかと計算してしまう頭になっている。


 一種類の香辛料が小瓶で金貨一枚ほど。粉ではなく、乾燥された木の実や香草でその値段。

 すりつぶして粉にしたら、小瓶の八分の一が埋まるかなといった程度。結構高い……。

 でも、匂いやベスパの証言から考えると、カレーを再現するのは無理ではなさそうだ。


 カレーといっても最近の日本はカレールーを使うのが一般的。

 でもそんな便利な品はない。

 カレールーの主は小麦粉。そこに多くのスパイスを混ぜている。なので、作ろうと思えばこの世界でカレーが食べられるかもしれない。

 ライスではなく、小麦からナンなら作れる。

 バターチキンカレーでも作ってやろうか。そんなの食ったら、皆飛ぶぞ……。


 私は乾燥していく喉を唾液で潤し、交渉に移るとしよう。


「そこのカッコいいお兄さん、少し良いですか?」

「ん……、カッコいいお兄さん……、もしかして俺のことか?」


 露店を見守るようにむっすーっとした表情で椅子に座っていた四〇代近いおじさんに、私は話し掛けた。

 頭部にターバンのような布を巻きつけ、髪を隠している。多分はげ隠しだろう。

 だが、私は満面の笑みを浮かべながら店主に話しかけた。


「そうですよ。あなた以外に、カッコいいお兄さんがどこにいるんですか?」

「あ、ああ、そうだな。いやぁー、カッコいいお兄さんか~」


 店主はそんな見え見えの言葉で、大変うれしがっている。

 男は褒められるととても嬉しくなってしまう生き物だ。

 子供からカッコいいお兄さんなんて言われた日にゃ、その日を永遠に覚えているだろう。

 何十年経っても、俺はカッコいいお兄さんと言われたんだと言う謎の自信を持ち続ける。

 その相手が私のような超絶可愛い女の子なら、確実にね。


「私、お父さんから香辛料を買ってきてって言われたんですけど……」

「そうかそうか、お使いかー、偉いねー。どれが欲しいんだい? 良い品を選んであげるよ」


 店主は気分を良くしていた。このまま、押しても良いが少し弱いかな……。


「えっと、一八種類の香辛料なんですけど……」


 私は指さしで、一八種類の香辛料を選ぶ。店主は台の上に小瓶を一八本並べて行った。

 ベスパが質の良い品だと判断した品を選んでいる当たり、結構良い人だと思われる。


「全部で金貨一八枚だ」

「えぇっ、き、金貨一八枚……、そ、そんな……。他のお店を見たら、もう少し安かったですよ」

「ほかの店は悪質な香辛料ばかり売っているからな。だが、俺の店は良質な香辛料しか売っていない」


 店主は腕を組み、自信満々に言ってみせた。

 確かに、見るからに粗悪品は売られていない。だからと言って全て良質と言う訳でもない。今は気分がいいから全て良質な品を提示してくれているが……、値切らせるためには……。

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ずっと思ってたけど岩塩の鉱床は探さないの?
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