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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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三人でお茶会

「す、すごい。これが絵なの?」

「まるで本物じゃない……」


 クレアさんとローティア嬢は出来上がった品を見て、目を丸くしていた。

 まあ、写真だから上手いのは当たり前。

 この世界に写真はないから、肖像画と言っておく。

 肖像画にしたらうますぎるんだけど……、二名の反応からして同じ品が八〇枚も出てきたら、さすがに不振がるだろうし、一枚だけにとどめておくか。


「クレアさん、この一枚で十分ですか?」

「え、ええ。もう、完璧よ。凄すぎて額縁に入れて飾っておきたいわ」


 クレアさんは紙の上に描かれている絵を何度もみて、笑っている。

 自分の姿をほぼ完璧に書いてくれたのが嬉しいのだろうか。彼女の言う通り、額縁に入れる。この絵を見せ、売り込むらしい。


「こんなの売れるに決まってるわ。じゃあ、この品はルドラ様に渡してくわね」

「はい、お願いします」


 私はクレアさんに頭を下げた。仕事の話はこれくらいにする。

 せっかく三人も女子がいるのだから、テーブルでお茶でもしようと言う話しになる。

 私がクレアさんとローティア嬢に紅茶を淹れた。

 クレアさんとローティア嬢は互いにお菓子を用意する。

 クレアさんはすでに買ってきていたお菓子をテーブルの上に出し、ローティア嬢は手を叩いてお菓子を出した。まあ、持ってきたのは執事だけど。


「ローティアさんっていいとこのお嬢様なの?」

「ま、まあー、そこそこですわ」


 ローティア嬢はいつもの癖が出てしまったのか、クレアさんの顔を見ずに視線を反らす。


「べ、別に気にしないでください。ささ、一緒に楽しみましょう」


 ローティア嬢はテーブルの中央に置かれたお菓子を小皿に分け取り、三分割していた。

 平民の私にも同じ量を与えてくれた。ほんと優しい……。


 私は紅茶をカップに注ぎ、クレアさんとローティア嬢のもとに差し出す。

 自分のカップにも入れ、楕円のような形をしているテーブルで向かい合うように椅子に座る。


「えっと一〇時のおやつと言うことで、いただきましょうか」

「そうね、お昼前の軽食でいただきましょう」

「これはもう、お茶会も同然ね」


 ローティア嬢は気分がいいのか、声色が高く部屋に響くほどだった。

 表情も柔らかい。

 三人のお茶会というだけで、嬉しいのかな?

 ローティア嬢ならもっと多くの人を集められそうだけれど。


 私はベスパにケーキを食べさせる。毒見役だ。ケーキは問題ないらしい。紅茶を淹れた私が先に飲み、毒が入っていないことを証明してケーキを食す。

 ウトサが控えめのお菓子だった。でも、わたしにとっては丁度良い具合の甘味。

 甘いのは良いが、ショウさんのケーキのほうが美味しいと思ってしまうのは私の舌が悪いのだろうか。

 彼が使っている素材の質が良すぎるから、王都のケーキに負けず劣らずの味だった。


「ん~っ、美味しい~」


 クレアさんの頬が持ち上がり、イルカのような甲高い音が鳴る。

 相当美味しいらしい。ローティア嬢もコクコクと頷き、満足している様子。


 クレアさんはショウさんのケーキを食べているはずなので、私と舌が同じはずだが……すでに忘れてしまっているのだろうか。それとも演技か。演技なら、迫真的過ぎる。


「紅茶も甘味と丁度いい具合に溶けあって、美味しいわ」


 ローティア嬢は頷きながら私の入れた紅茶を美味しいといってくれた。

 お世辞でも、美味しいといってくれると、心が温まる。私の腕もいい具合にあがっているのかな。


「今度、学園でお茶会を開こうと思うのだけれど、誰を誘えばいいか悩んでいるの。わたくしが誘ったら、ほとんどの人が来る。でも、あまり多くの人を呼んでワイワイとお茶会するのは好きじゃないのよね。呼ばれなかった人が私、呼ばれなかった、と言ってくるのも嫌だし、少なくするわけにもいかなくて……」


 ローティア嬢は珍しく悩みを打ち明けて来た。まあ、相談程度だろう。

 今日は高圧的じゃないから、口から洩れてしまったのかもしれない。


「ローティアさんも貴族なら、どこかの派閥に属しているんじゃないの? 八大貴族の下に付いているなら、ついている大貴族の側近とか、親衛隊とかを誘ったら」


 クレアさんはローティア嬢が大貴族だと知らないのだろうか。

 まあ、クレアさんはパーティーにあまり行かなかったと聞くし、ローティア嬢を知らなくても無理はないか。


「えっと、そうね……」


 ローティア嬢が困っていた。そりゃあ、自分がその八大貴族の令嬢なのだから。逆に八大貴族だから困っているのだ。


「とりあえず、八大貴族と王族を誘うっていうのはどうですか?」


 私はクレアさんに聞こえないようにローティア嬢の耳元で呟いた。


「なるほど。それなら、堅苦しくないわね。リーファ様も呼べば場が暗くなることもないだろうし。あぁ、でも、メロアを呼ぶのは……」

「あぁ、確かに……」


 メロアとレオン王子をくっ付けたくもない。ローティア嬢はレオン王子をお茶会に誘いたいはず。

 彼女ほどの地位なら、レオン王子と一緒にお茶できるだろうがすでに婚約していると知られている者をお茶会に誘うのは、少し配慮が足りない気もする。


「お茶会を開くのって難しいですね……」

「そうね。位が上がれば上がるほど大変よ。キララはお茶会を開かないの?」

「私ですか? 私が開いても来る人なんていませんよ」

「そうかしら。わたくしなら、行くけれど……」


 ローティア嬢は視線を少し下に向けながら呟いた。

 なに、可愛すぎませんかこの子。

 ツンデレに磨きがかかっておりまする……。


 ローティア嬢がお茶会に来たら、私の立場は普通に危うい。

 彼女が、平民が開いたお茶会に行くなど、前代未聞だ。多くの女子生徒に恨まれるのは目に見えていた。


「お茶会は絶対に開かないといけないわけじゃないから、今する必要ないし、呼びたい相手を選んで、周りの声なんて気にしなくてもいいんじゃない? 私、気にしたことないし」


 クレアさんは少し特殊なので、真面なことを言っているようだが、貴族の世界では全くの異端児だ。

 彼女の性格でよくルドラさんと結婚出来たな。


「えっと、クレアさんって、貴族ですよね……」


 ローティア嬢はクレアさんの考えがいびつすぎて、疑問を抱いているようだった。

 そりゃあ、いきなり気にしなくていいよ。好きな人を呼べばいいよ。周りの声なんて気にしない。と、言ってくるのだ。貴族なら、気にするのが当たり前なのに。


「でも、クレアさんが言っていることも一理ありますね。ローティアさんが呼びたい相手を呼べばいいんじゃありませんか? 友達になりたい相手とか、まだ、話した覚えがない相手とか、そう言う相手を選ぶのもありかもしれません」

「そうね。教室であまり話した覚えがない相手に声をかけてみるのもいいかもしれないわね」


 ローティア嬢の表情は明るくなり、心のつっかえが取れたように見える。

 やはり、一人で考えているより、他の人の意見を聞くのも大切だ。

 自分が一日考えて出なかった答えを他の人なら一分で言ってしまうかもしれない。

 考えないのも駄目だが、考えすぎるのも駄目、ほんと人間は不完全で他の者と合わさって力を発揮できる生き物だ。


 私とローティア嬢、クレアさんの話し会いは花が咲き、時間が溶けていく。

 すでに仕事を終えたビー達が依頼達成書を持って机の上に大量の紙と金貨を並べていた。


「す、すごい。金貨がこんなに。どうなっているの?」


 ローティア嬢は私の命令を聴いたビー達が受け取って来た金貨の塔を見ながら質問してくる。

 そりゃあ、私達が会話している間にお金が積み上がっているのだから不思議に思うか。


「私の仕事を請け負ってくれているスキルが受け取って来た金貨です。私のスキルはお金を必要としていませんから、魔力を渡すだけで大概の仕事を請け負ってくれます。その結果がこれです。難しい仕事は簡単にこなせませんけど、草むしりとか、お使いとか、簡単な仕事ならこなせるので雑用を集めると沢山のお金になるんです」

「凄い、銅貨も集まれば何とやらね……」


 ローティア嬢は塵も積もればと言うような慣用句じみた言葉を呟いていた。

 まさにその通りである。

 塵も積もれば山、金貨が積もれば大量の金貨の山になる。

 王都の最低賃金は一日金貨一枚なので、一つの仕事を頼むために必要なお金も必然的に金貨一枚になる。

 一日の時間は決まっていない。

 二四時間働いて金貨一枚と言われる場合もあれば、仕事終えれば金貨一枚もらえる場合もある。

 前者はほぼ悪徳企業だ。そういう場合はさっさと逃げた方が良いだろう。

 ウルフィリアギルドに仕事をお願いしてくる者は大概良い相手ばかり。

 少なからず国の目がある冒険者ギルドに闇系の企業がお願いすることはできないのだ。

 そう言うのは闇ギルドならぬ、一癖二癖ありそうなあくどい奴らが請け負うだろう。


 闇ギルドという存在が王都にもあるのか疑問に思うが、たぶんある。

 光があれば影もあるように、表と裏の世界は全く違うのだ。アイドルだって似たような者。

 売れなければAV業界に入らざるを得なくなったり、存在が霞のように消える。

 私は運よく生き残れたが、大概の者は消える運命をたどる。

 アイドルとは幻想と言う意味であり、本当に幻想の存在になってしまう者が後を絶たない。

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