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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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ローティア嬢と出かける

「まあ、遊びといっても一緒にウルフィリアギルドや市場で散策するくらいですけどね」

「な、なによ。私を遊びに誘う村娘なんて、ありえないわ。あり得ないけれど……、今日はたまたま、何もすることがないから、社会を見る一環で、ついて行ってあげる……」


 ローティア嬢は視線を反らし、薄桃色の唇を動かしながら呟いた。

 まったく、素直じゃない人だ。でも、私と一緒に遊ぶ気になってくれたなら、もう友達を越えて親友なのでは?

 さすがに、考えが浅はかすぎるか。


「じゃあ、ローティアさん。私が服を貸しますから、あまり目立たない恰好になってください。大貴族のローティアさんを見て、多くの人が困ってしまう可能性がありますし、悪い人間がいたら、捕まえに来るかもしれませんから」

「そうね。出来る限り素朴な恰好がいいわね。でも、あなたのぼろきれみたいな服は嫌よ」

「あはは、ぼろきれって。まあ、ぼろきれを繋ぎ合わせたような服ですけど……」


 私はローティア嬢にあう、質素な服をベスパとネアちゃんに作ってもらった。

 目立ちにくいブラウン色の服で、ところどころに六角形の刺繍が入っている。

 森に入ったら、迷彩になりそうな見た目。


「お、おぅ……」

「な、なによ。こんなダサい服を着てるんだから、ダサく見えるのは仕方ないでしょ」


 いや、そうじゃない。そうじゃありませんよ、ローティア嬢。

 確かに服はダサい。

 だが、着ている人が絶世の美少女なら話は別だ。

 上下同じ色の服なのに、なぜここまで纏まりのある恰好になるのだろうか。

 つばの広いお嬢様風の帽子を被ったら完璧。そう思い、顔を隠すために、ベスパに作らせる。

 もう、旅行に出かけるお嬢様風の恰好。

 長袖の白い内服は動きやすい生地で、茶色の上着は内着と相性抜群。

 胸をそこはかとなく隠し、大人の印象を膨らませていた。

 膝丈ほどのスカートは真っ白な脚を包むようにふんわりとしており、風に靡けば捲れ上がってしまいそう。

 昨日見た彼女の下着姿が目に浮かぶ。いやぁ、神秘だね。


「ローティアさん、良く似合っていますよ。丁度いいです」

「なによ、丁度良いって……。まったく……」


 ローティア嬢は以前、新入生歓迎パーティーで着ていた藍色っぽいドレスを加工して作った小さなバックを手に持った。

 少々豪華すぎる。宝石がちりばめられたバックを持っていたら、せっかく衣装を変えた理由がない。


「これは譲れないわ。だって、まだ一度も使っていないんだもの」


 ローティア嬢はバックを抱きしめ、頬を膨らます。可愛すぎて困る……。

 幼稚園児がキラキラしたバックを持ちたがる衝動が彼女の中で起こっているのかもしれない。

 今日は遠慮してもらい、質素なバックにしてもらった。


「はぁ、こんなんで遊びに行くと言えるのかしら」


 ローティア嬢は長い金髪も巻かず、ふわふわのウェーブ髪のまま、化粧もほとんどせず唇に少し油を塗った程度。

 靴もスニーカーのような歩きやすい品なので、靴擦れを起こす心配もない。


 どこからどう見ても大貴族のローティア嬢と気づける要素はない。

 われながら完璧な変装だ。

 元トップアイドルとしての変装術が生きている。

 まあ、当時は私服でいても現実と夢の差が大きすぎて、ほぼ気づかれなかったけど。


「ローティアさん、バートン車に乗るか、バートンの背中に乗るか、どちらがいいですか?」

「そうね。じゃあ、バートンの背中に乗ろうかしら。あぁ、でも、それじゃあ、休みにならないかしら……」


 脚に負担がかからないバートン車の方を選択した。

 私はレクーがいる厩舎に向かい、彼をバートン房から出す。

 その後、バートン車を縄で繋げる。よく見かける普通のバートン車。

 ローティア嬢ならほぼ乗った覚えがないだろう。

 高級車を乗り回す上級国民が軽自動車に乗せるようなものだ。

 でも、レクーとバートン車を見たローティア嬢は文句を言わず、私の手を取ってバートン車に乗り込む。


「キララは乗らないの?」

「私は御者をしようと思っていたんですけど」

「そう……。まあいいわ。その方が自然だもの」


 ローティア嬢は少々不機嫌になった。


 私はバートン車の前座席に座り、レクーと繋がっている手綱を握って撓らせた。

 ゆっくりと動き出すバートン車と地面をかく車輪の音が心地よい。

 後方に乗っているのが大貴族のローティア嬢だと思うと緊張するものの、安全運転をすれば大丈夫と胸を撫で、呼吸を整える。


「今から、どこに行くのかしら?」


 ローティア嬢はバートン車の前に付いている小窓を開け、話し掛けて来た。かまってちゃんかな?


「今から、ウルフィリアギルドに行きます。丁度、ローティアさんの服を見てくれている方の関係者がいるので、一緒に挨拶に行きましょう。今日は扱ってくれるか報告してくれるはずです」

「そ、そう。じゃあ、もっとちゃんとした服装にすればよかったじゃない」

「いやいや、その方も大変気楽な方なので、何ら問題ありません」


 私は後方で声を荒げるローティア嬢を宥める。

 ドラグニティ魔法学園の玄関に来て外出許可を二人分取った後、門を出た。

 そのまま、ウルフィリアギルドに向けてレクーに走ってもらう。


「……はわぁー」


 ローティア嬢は学園を出てから王都の街並みを、口を開けながら見ていた。


「なんか、振動がほとんどないわね……。なにこのバートン車、どうなっているの?」

「車輪に魔力の厚みがあってですね、振動を吸収してくれているんですよ。まあ、王都のほとんどの場所に石畳で補修されているので、走りやすいっていうのもありますけどね」

「お尻が痛くなくて良いわ」

「ありがとうございます。大貴族のローティアさんにそう言ってもらえると、嬉しいですね」

「あなた、ほんと明るいわね、いつもそうなの?」

「いつもじゃありませんよ。誰かといる時は明るい方が良いから明るくしているだけです。癖ですかね? 勝手に明るくなっちゃうと言いますか……」

「癖ね……、疲れるでしょ。敬語だって……ね」


 ローティア嬢は私に気でも使っているのだろうか。

 だが、ドラグニティ魔法学園の中ですら敬語なのに、学園を出て敬語ではなくため愚痴で話すわけにもいかない。


「ありがとうございます、ローティアさん。お気持ちだけで充分です。ほんと、ローティアさんはお優しいですね」

「……う、うるさい。別に優しくなんかないわ」


 怒り慣れていないのも、彼女の優しさのせいだろう。

 どこか、幼馴染みたいな雰囲気で、嫌味がなく一緒にいて疲れないのだ。

 彼女と遊べると思うだけで、私も気分が高揚してくる。


 ――ベスパ、いつもよりも警備を厳重に。まあ、彼女の執事たちも付いてきていると思うけれど、何かある前に阻止しないと。


「了解です。警戒している警ビーの数を増やします」


 ベスパは通常個体よりも強く動きが速い警ビーの数を増やし、私達の護衛に付かせる。

 まさしくビップに付くボディーガード。まあ、ボディーガードよりも力は期待できない。でも、いないよりましだ。


 ローティア嬢と共にウルフィリアギルドに到着し、レクーとバートン車を駐車場に止める。

 御者兼メイドの私は地面におり、扉を開けて階段を設置し、ローティア嬢の手を持つ。


「なんか、やりなれているわね……」

「以前、中級貴族の方の御者を経験したことがありまして」

「そう、まあまあね」


 ローティア嬢は厳しく評価する方のようだ。

 でも、彼女からまあまあと言われるだけマシかな。

 私はエスコートの勉強など、した覚えがないんだから。

 バートン車の中に階段を仕舞い、扉を閉じる。


「じゃあ、レクー、戻ってくるまで大人しくしていてね」

「わかりました」


 レクーはコクリと頷き、私達を見送った。


 私ははぐれないよう、ローティア嬢の手をしっかりと握り、一緒にウルフィリアギルドの大門を通る。

 現在の時刻は午前九時三〇分ごろなので、早朝に比べ冒険者の数は少ない。


「噂に聞いていたけれど、本当に大門が開いたのね。にしても、綺麗な建物……」


 ローティア嬢の黄色い瞳がウルフィリアギルドの巨大な建物に向けられる。

 やはり大貴族から見ても、この建物は綺麗らしい。

 遠くから見た方が全貌を掴みやすいが、間近で見ると大きさに圧倒される。

 そういった楽しみ方は富士山と似ているかもしれない。


「わたくし、冒険者ギルドにはじめてきましたわ……。本当に大丈夫なの?」


 ローティア嬢は辺りを見渡し、委縮している。まあ、無理もない。

 私だって初めは怖かった。何度もくれば慣れるが、慣れるまでは大変かな。


「安心してください。ここの一番お偉いさんと知り合いで、ちょっかいを懸けられたら、その人の名前を出せば問題ありません。一番偉い人と仲良くなってくのは交渉の中で結構大きく働くので、お勧めですよ」

「そう言えば、あなたはやり手の仕事人なのよね……」


 ローティア嬢は胸に手を当て、腹式呼吸。

 仕事モードに切り替わったのか、凛々しい態度をとる。

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