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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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ローティア嬢を遊びに誘う

「ふふふ、ここまでくればあとは楽勝。私が家庭科部の部員を集めればいいだけ。そんなの簡単簡単」

「はぁ……、簡単だと良いんですがね」


 ベスパは溜息をつきながら、ブンブンと飛び交っていた。

 部活の勧誘を成功させるために、出来る限り宣伝する必要がある。

 家庭科部に入ってくださいというチラシを作り、ビー達に量産させる。

 一〇〇部ほど刷り、百人に渡せば四人くらい興味を持ってくれるだろうと思っていた。


 すでに午後五時を回っていたので、今日はお預けだが明後日の登校日に生徒に渡そう。

 家庭科部の実績を残して、沢山の部費を貰い大量のウトサを仕入れてもらうんだ。

 そうすれば、ウトサやソウルを使い放題。そんな未来があるかもしれない。


「今日は潔く帰ろう。皆、お疲れ様。よく頑張りました」


 私は大量の魔力をベスパに流し、ベスパから多くの者達に私の魔力が供給される。

 大量の虫達が狂喜乱舞し、森の中は虫の竜巻が起こっていた。

 恐怖だったが、私は両手で耳を塞ぎ、蹲っていたので耐えられた。

 昔なら気絶していてもおかしくなかったが、少しは耐性が付いてきたのかもしれない。


 ブラットディアの背中に乗り、地面を滑りながら冒険者女子寮に移動。

 今日もいつもの面々と談笑し、楽しい夜を過ごした。

 モクルさんとメロア、ミーナ、ローティア嬢に私が作った部活の勧誘チラシを見せる。


「料理ができるようになる……」

「裁縫が得意になれる……」

「掃除が楽しく出来る……」

「お金について勉強できる……」


 家庭科部の特徴を大きく描いた見出しを皆は呟いていた。裁縫は苦手だが、練習する時間があれば、得意になれるはず。


「こんな部活を作ってどうするの?」


 モクルさんは首をひねりながら、私に聞いてきた。

 なんて直球な質問。どうするのと言われても、私がやりたいことができる部活だから、作っただけなんだけれど。


「えっと、どうするのと言われても……」

「他の人に需要があるのかな? 別に裁縫なんて出来なくてもいいじゃん。服が破れたのなら新しい品を買えばいい」


 メロアは裁縫が出来る理由を見いだせずにいた。

 確かに、お金持ちの家の者がみみっちくボロボロになるまで服を使い込む気になると思えない。


「掃除って誰でもできるでしょ」


 ミーナは尻尾を振りながら床の埃を軽くはいている。

 尻尾が汚れるから箒でやってといいたくなるが、確かに誰でも掃除は出来る。箒や雑巾で汚れた箇所を拭けばいいだけ。


「お金の勉強なんて経営者以外する必要ありませんわ。お金に詳しくなったところで、自分でお金を稼げない女は大勢いるのよ。ま、お金は適当に使っている者が多いけれど、それで問題が起こっていないのだから、気にする必要があるのかしら?」


 ローティア嬢はお風呂に入ってふわふわとウェーブがかかった髪を自らなびかせた。

 言われれば、お金を沢山持っている人がちまちま節約したり、お金の流れを確認したりするだろうか。

 自分が持っているお金の総額を知っている者が何人いるだろうか。


 私は皆に沢山の質問を投げかけられる。

 質問が出るということはそれなりに、思うことがあるということ。

 質問が思い浮かばない部活だって沢山あるはずだ。興味を持ってくれているのは間違いない。


 沢山の質問に答え、納得してもらおうとするが私と獣族、大貴族の差は大きかった。

 ほんと、生活環境が全然違うものに話を聞いてもらおうとしても、難しい。

 そう理解できただけでも収穫だ。

 庶民ならもっと興味を持ってくれるはずなのだが、自然の中に暮らす獣族は家庭科を学ぶ理由が理解できないらしい。

 大貴族の二名は自分がする必要ないという考えを持っている。

 当初、懸念していた貴族は家庭科とかどうでもいい問題が完全に勃発している。

 学べば確実に生活の糧になるのに、学ぶ必要がないと思っているのだ。

 実際、使わない学問を学ぶほど無駄な時間もない。

 まったく使わない言語を学んだとしても、使わないのなら宝の持ち腐れ。

 趣味ならいいと思うのだけれど、すでに趣味を持っている人からすれば、そんな面倒な部活に入るなど、億劫だといいそうだ。


 ――はぁ……、だれか私の部活に興味を持ってくれる人はいないだろうか。ま、まあ、チラシを配れば誰かしら興味を持ってくれる人がいるかもしれないじゃん。まだ、諦めるのは早い。


 次の日、私はウルフィリアギルドに向かう準備をしていた。

 休みはビーの巣に顔を出すのが恒例となっている。

 加えて、ウルフィリアギルドの現状も気になる。

 服装を仕事着に整え、各種武器も身に着け準備完了。

 まだ、朝早いので勉強してから向かうことにする。

 バートン達の世話はビー達が行ってくれるので、あまり気にする必要はない。


「ビーの喫茶に品を入れておかないとな。えっと、転移魔法陣の中に食べ物が入ってたかな。足りない品は市場で補充しないと。まだ、部活じゃないから部費が下りないし、あまり高い品は買いたくないな」


 私はビーの喫茶で部活するため、香辛料や小麦、大麦、調味料などの必要不可欠な品を欲していた。だが、ここは王都。何もかも高い。

 真面に買える品は少ないだろう。

 魔造ウトサが裏で流通していないか、調べに行くついでに色々な物資を見たいな。


「ふわぁ~、キララ、今日も早いねぇ。休みの日の朝は出来るだけ休めばいいのに……」


 ミーナは枕を抱きしめ、はだけた内着を気にせず、尻尾をゆっくりと振っていた。

 愛くるしい表情が何とも心擽られる。


 本物のペットは地面で真っ赤な舌をだらりと垂らしながら、後ろ足で体をボリボリと掻いているおっさんみたいなウォーウルフ。

 この見た目で案外強いのが、何ともいえないギャップだ。


 午前八時になったので、椅子から立ち上がる。


「フルーファ、お留守番お願いね。ベッドの下の魔力を込めた干し肉は朝、昼、で二個までだから」

「ふわぁ~い」


 フルーファは寝返りを打ち、匍匐前進しながらベッドの下に潜り込み、魔力が込められた干し肉を食べに行く。

 別に、隠しているわけではなく日の当たりにくい場所で、フルーファに丁度食べさせられる場所だっただけ。まあ、ベッドの下に頭を突っ込むフルーファの恰好が変態に見えるが気にしない。


 私は服装の乱れがないか姿見で確かめた後、部屋を出て食堂に向かう。

 部活動がある生徒たちばかりなので、朝から沢山料理を食べ、活力を補充していた。

 一人前から一〇人前まで、食べられるのなら何度でもお替りできる。良心的な食堂だ。

 だとしても、私は一人前しか食べられないので、潔くお盆に乗った品だけをいただく。

 パンにスープ、サラダ、肉、というのが定番。昔はお菓子も出ていたそうだが、ウトサの高騰により廃止されてしまったらしい。あぁ、正教会め……。


 両手を合わせ、食事に感謝しながらいただく。

 家の料理が恋しいが、味があるので贅沢はいえない。塩味のあるスープと肉はほんのり甘いパンと相性抜群で、一食なら無理なく食べられる。


「ふわぁー、あぁ、まさかこのわたくしが部活を休むなんて……。大貴族失格ですわ」


 ローティア嬢はドレスかと見間違えそうなほど綺麗な寝間着のまま食堂にやって来た。

 何とも珍しい。

 いつも念入りに力を入れている縦髪ロールも今日はウェーブが掛かっただけの長髪。

 夢の国のお姫様ですかといいたくなるほどの容姿、すっぴんでそれは中々に反則。

 いつも化粧が濃いのか、透き通る肌は生まれたての赤子のようで、少し切れ長の目は影がはっきりと出ていないのが愛くるしい。

 アイシャドウを入れていないから、力強さではなくふんわりと柔らかい印象を受ける。


 ローティア嬢、普通にすっぴんで生活した方が友達出来るのでは。

 そのゆるふわな服装も好印象なんだが。

 どうもローティア嬢の大貴族の見栄が多くの女子を遠ざけているように思える。

 なんせ、ほかの女子たちが皆、ローティア嬢の姿を見ているのだ。


「今日はパンと紅茶だけで済ませますわ……」


 ローティア嬢はいつもよく食べるのに、拳二つ分のパンと暖かい紅茶だけお盆にのせて私の隣に座る。

 元気がないように見えるが、療養するように言われたからだろう。

 病弱な姫という印象が強く、いつも高圧的な彼女の真逆。

 自信の大きな損失により、性格が陽ではなく陰に引っ張られている。

 そんな時こそ、友達の出番。まあ、本当はそっとしておいてほしいかもしれないけれど、かまってほしいから部屋を出てきたのだろう。

 ときおり、ちらりちらりと私の方を見てくるのだから、不器用な人だ。


「ローティアさん、大丈夫ですか?」

「ええ、問題ないわ。昨日、部活は休むようにとリーファ様から言われましたの。だから、今日は寮の中で寂しくボーっとしている生活ですわ。はぁ、このわたくしがボーっとだなんて。ちらり……」


 ローティア嬢は私の方をチラチラ見てくる。そこで、ようやく理解した。


「ローティアさん、私と一緒に遊びませんか?」

「……な、なによ急に、あ、遊びですって? 遊びって、あの遊びですの?」


 ローティア嬢は思っていた以上に焦っていた。あたふたする姿も可愛らしい。もう、ギュッと抱きしめてあげたくなってしまう。力強い眼力がなくなった彼女は弱々しいお嬢様。

 あまり、意地悪せずに目を見て話しかける。

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