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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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ビーの喫茶

 リーファさんは乗バートン部に戻った。

 休憩時間が短いので仕方がない。

 もう少し話していたかったな。


 私は気持ちを切り替えて、バートン達の調教に明け暮れた。

 言葉が伝わっているぶん、普通の調教より伝達が簡単になっている。

 バートンは会話できるほど頭がいい動物なので、調教するのに時間は掛からなかった。

 根っこにある悪い感情は全て私の愛情という名の絶対王政で消し去る。

 まあ、私に従っていた方が良いことあるよと刷り込みで催眠は消せたはずだ。

 何かあってもビー達がすぐに動けるように待機しているので問題ない。

 すぐ実用に移したいところだが、現実的に考えて少々早すぎる。

 もう少し時間を空けないといけないだろう。せめて一ヶ月くらいか。じゃあ六月ごろに試運転になるのかな。


 八〇頭のバートンは森の方に新設したバートン場の方に移動させる。

 新しく仕入れたバートンは生徒達が利用できる元の場所に入れられるので大量のバートンを維持する場所が必要だったが、学園がバカみたいに広いのでその点は問題なかった。


 ビー達に頼めばバートン達の厩舎が出来上がっている。ビー達が手綱を引っ張り、バートン達を厩舎に入れていき、疲れを癒してもらう。


 ずっと走らせると疲れが溜まるので、昼過ぎからは食べることに力を入れてもらった。

 それだけで、多くのバートン達が元気を取り戻して行く。


「こ、こんなところに厩舎が……」


 同じ自然委員のモクルさんに部活を少し抜けてもらって見せると、目を丸くしながら見張っていた。

 一日で建物が完成しているのがすごいと思ったのだろうか。


「今日から、この子達を世話して行っていきます。モクルさんも手伝ってください」

「あ、ああ。もちろん。にしても、こんな厩舎あった?」

「作りました」

「つ、作った……」


 モクルさんの表情が苦笑いに変わる。

 額に手を置き、少ししてからいい笑顔を浮かべる。


「モクルさん、バートンを育てた経験はありますか?」

「世話ならあるが、育てた覚えはないな」

「なるほど。まあ、してもらうことは皆に話しかけるとか、触れ合って人慣れさせてもらうことくらいなので、あまり気負わないでくださいね」

「掃除や餌やりは?」

「全て、私のスキルがやってくれますからご心配なく」


 餌やりはビー達が、掃除はブラットディアが、全て賄ってくれる。やはり人手というのは何事にとっても大切だな。


「じゃあ、モクルさん。バートン達に挨拶しに行ってください」

「わかった」


 モクルさんは大きな乳が揺れるくらい大きく頷き、厩舎の中に入ってバートン一頭一頭に触れながら挨拶をかわしてくれた。

 雄のバートンはモクルさんの乳を突き、尻尾を振っている。やはり、バートンも雄なのだな。私の胸に一切興味を示さなかったのに……。


「皆、いい子じゃないか。この子達が本当に暴れたの?」

「はい。もう、形相を変えて暴れたそうです。なので、殺処分されないように私がもう一度調教しなおして安全を保障したら、殺処分されずに済みます」

「責任重大だな。私も微力ながら力を貸そう。力仕事なら任せておけ」


 モクルさんは大きな力こぶを見せる。


「ありがとうございます」


 私は頭を下げる。

 モクルさんは部活に戻っていき、私は森の中でバートン達の様子が見られる場所に新たな部室を作ることにする。


「キララ様、森の中に好き勝手建物を作ってもいいんですか?」


 ベスパは私の頭上をブンブン飛び回りながら、聞いてきた。


「良いんじゃない? だって、私は自然委員だし、森の中に小屋を作るのだって自然環境を守る一環だといえば、何ら問題ないよ。そもそも、ディア達に頼めば建物は全て食べてくれるし、自然に何ら悪影響を与えていない」

「物は言いようですけどね」


 ベスパはうだうだ言いながら、すでに建設を始めていた。

 木製の小さな喫茶店。ビーの喫茶……。

 まあ、私が勝手に作った部室兼お店だ。私が望んでいた部活がないから、自ら作るしかなかった。

 部活内容は単純に家庭的な生活を送る部活。

 料理を作ったり、苦手な裁縫をしたり、森の中で花や野菜を育てたりといった部活。

 部活の目的は仲間との関係を築くこと。

 まだ、仲間はいないが、最低四人集めなければならない。

 兼部でもいいのだから、結構簡単に気がしているけれど、どうだろう。

 とりあえず、私は新しい部活の誕生を祝って、ビーの喫茶の周りに花壇を作り、ずっと保管していた種を取り出す。


「キララ様、ようやく育てる気になったんですか?」

「うん。ルドラさんにも悪いし、森の中なら私が寝る場所じゃなくて丁度良いかなと思って」

「ひゃほ~っ」


 ベスパは私が植物を育てようとしている姿を見て、大変喜んでいた。

 鱗粉を辺りにまき散らしているかのようなキラキラと光る姿で螺旋回転を繰り返す。

 辺りに住まうビー達に喜びを拡散させていた。彼らが喜ぶのも無理はない。


 私が育てようとしている品は去年の八月、ルドラさんから誕生日の贈り物でもらったビー達が好きな花の種だ。どんな花が咲くのか、お楽しみと言われておりずっと放置してきた。

 だって、ビー達が好きな花とか、良いことなさそうだし。


 ベスパは完璧な土壌を作り、レンガで区切った花壇に自ら穴をあけていく。

 そこに種を植えて行けばいい。

 小さな種を三粒ほど取りぱらぱらぱらと落としたら優しく土をかぶせる。その工程を三方向で繰り返した。

 ビーの喫茶はバルディアギルドより小さいくらいの大きさで、中型トラック二台分くらいの大きさ。

 一階建てだが、天井が解放的で、とても清々しい雰囲気。窓を開ければ、森が広がっており、片手にバートン達の厩舎が見える。

 入口以外の周りに花壇を作り、ビーが好きな花の種をすべて植え終えた。

 地面に魔力を込め、種に魔力をそそぐ。不活な種も活性化させ、芽が出るように配慮した。


「うーん、日当たりはどうかな……。でも、絶妙な隠れ家感も欲しいからあまり日が当たるのも困る。ベスパ、木の隙間から陽光が差す程度に伐採して行ってくれる」

「了解です」


 ベスパは完全にやる気を取り戻し、ブーンと飛んで、生い茂っている森の木の枝を伐採していく。

 木は全ての枝があった方が良い訳ではない。あまり多すぎると、地面に光りが届かず、地面に住まう植物たちが育たない。

 そうなると地面の栄養が絶妙に偏り、木の生育にも悪いのだ。

 地面の病原菌も陽光によって殺菌すれば、根っこから腐ることもない。簡単にいえば、散髪みたいなものかな。


 大量の枝が切られ、丁度良い具合に森の天井に隙間が空き、陽光が差し込んでくる。

 森の中が神聖な雰囲気に包まれる。

 もう、聖域かな? と思うくらいビーの喫茶が輝いていた。


「良い感じ良い感じ。多くの自然委員が仕事してなかったせいで、森は結構荒れ放題。モクルさん一人じゃここまで手が回らなかったんだろうな。この大量の枝を使って食器や布、糸を作ってもらおうか」


 私は髪留めに擬態しているネアちゃんを手に取り、山積みになっている大量の枝の上に乗せる。

 ビー達が租借し、ばらばらになった枝をブラットディアの粘液でドロドロに溶かし、軽く乾かして水洗い。

 食物繊維のような強い繊維だけが残るとネアちゃんたちが器用に巻き取っていき、縒り合せながら糸にしていく。

 その糸を使い、布を編んでいた。

 他の食器などはビー達が粉砕した品を唾液でくっ付け合わせていく。他の人が見れば、完全に地獄絵図。

 私にとってはすでに慣れた光景だ。


 大量のビーがいるので視線は避け、ビーの喫茶に入る。

 六角形の模様が一つ彫り込まれた扉はそこそこ可愛げがある。

 ブラウン色の扉はニスが塗られているかのように艶めいており、高級な木材のような見た目だった。

 鍵付きの取っ手を掴み、捻って外側に開く。

 するとL字型のカウンターテーブルがあり、奥に木製のキッチンがあった。

 食材置き場や魔石コンロを置くための場所も完備され、広々と使える。

 バーテンダーになるつもりはないが、やはりお洒落なお店の雰囲気は作っておきたい。

 通の人が休みの日に通ってくれるかもしれないし。まあ、いつ営業するか知らないけれど。


 カウンターテーブルの近くに丸い椅子が八個ほど置かれ、二人組のテーブルが二個、四人組のテーブルが一個置かれた広めの空間もある。

 部室にしては、おしゃれ過ぎるかな?

 まあ、秘密の場所みたいな雰囲気があって、私は結構気に入った。


「うん、綺麗に建てられている。釘を使っていないから腐りにくく耐震性にも優れているだろうし、すぐにまた作り直そうと思えば出来るのも良い点かな」


 地面を抉り、大きなブロック石を置き、水に触れないように木を置いて作っている。

 ただ、木製故に白蟻のような生物に食い荒らされる可能性がある。

 だが、ベスパがこの家にちょっかいを出さないようにと命令すれば問題ない。


 水栓トイレとお風呂がないので少々不便だ。

 でも、ブラットディアが全て食べてくれるので……、うん、ここで用を足すのは止めた方が良いかもしれない。

 きっと他の人が気絶してしまう。

 用を足している最中にブラットディアがかさごそと出てきたら、失神する自信がある。


 ベスパ達が作った食器や道具を棚に並べていき、ネアちゃんが編み込んだテーブルクロスを敷く。

 全て森の中の材料だけで作ったビーの喫茶が完成した。

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