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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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バートン達の調教

 私はまだ勉強を続け、少しでも知識を頭に叩き込む。

 仕事ができないなら、遊ぶのではなく勉強や鍛錬する。

 それが出来るのは嬉しいこと、ありがたいこと、それをこの世界に来てから知った。

 今となっては勉強が遊びとなり、鍛錬が適度な運動となっている。

 まあ、そう考えられる私が珍しい気もする。

 今の私があるのはあきらめず学んできたから。

 だから、これからも続けられる。続けていて何かあるかわからないが、止めてしまったらそこで終わり。今までの努力が水の泡。

 そんなの、日本人の私に刷り込まれたもったいないという気持ちが許してくれない。


 勉強と魔法陣をかき終えたら、ある程度頑張ってくれたフルーファを抱きしめながらベッドで眠る。


「はぁー、ベッドの上はやっぱり極楽浄土」


 これだから、睡眠は止められない。

 人間が眠る理由はまだ解明されていないが、私が思うに人間が寝ることが好きだから寝ているのだろう。まあ好き嫌い関係なく寝ちゃうんだけど。


 次の日、今日は学園が休み。

 なにをしても良い、自由な日。

 部活がない私だから、ほぼ何をしても良い。でも、やることは山積みだ。


 昨日の続きで、バートン達の選別をこなす。多くのバートンを選別し終えると、皆をそれぞれの仕事にあった役割を担ってもらう。


「では、冒険者に貸し出す用のバートン達。君たちはとことん走って体力をつけてもらう」

「はいっ、キララ女王様」


 八八頭の内、四〇頭が冒険者が乗っても問題ないと思えるバートン達だった。

 体力作りと技術力が向上すれば、問題ない。

 私のマネキンになっているビー達は何匹でもいるのだ。バートンを同じように育てられる。


 私は人手不足という言葉を気にする必要がない。


 多くの個体がぶつからないよう、出発する順番をずらしながら、バートン術のコースを走ってもらう。体力と技術を両方鍛えられるはずだ。


「じゃあ、もう少し頑張れば冒険者たちに貸し出しできる者達は少しずつ体力を付けよう」

「はいっ、キララ女王様」


 四八頭の内、二〇頭が該当し、バートン場の周りをランニングのように軽く走ってもらう。

 その後は大量に食事をとってもらい、体作りに励んでもらう予定だ。


「冒険者に貸し出しできない皆はバートン車を引く練習をしてもらうよ」

「は、はいっ、キララ女王様」


 二八頭の内、二〇頭は冒険者に貸し出すには少し臆病だった。

 だが、二頭でバートン車を引けるくらいの力はあるので、賢く育てる予定だ。

 二頭ずつバートン車につなぎ、ゆっくりと歩く練習から始める。

 まあ、簡単にいえばタクシーのような仕事をしてもらう予定だ。

 貴族はバートン車を持っているが、一般の者はそんな高価な品を持っていない。

 ビーの巣で仕事を受ける時、荷物や人を運ぶ仕事が結構あったのだ。皆、移動手段に困っている様子だったので、結構需要があるのではないかと睨んでいる。


 お金を払って、王都の中を行き来できるのだから時間短縮になって結構人気になるかも。まあ、維持費は掛かるが需要がゼロということもないはずなので、様子見だ。


「さ、残りは子供達だね。今年入れられたバートン達かな?」

「は、はい。キララ女王様」


 大人の中に紛れていた少々大きめの八頭の子供達。

 大人と間違われて連れられてきたのだろう。

 質良く育て、王宮に献上するのも悪くはない。

 それだけのバートンが育てられれば、殺処分しなくてよかったとなるだろう。


「じゃあ、皆。今日から死ぬほど草を食べてもらいます」

「し、死ぬほど……」


 子供達は少々痩せていたので、食事が細いと思われる。このままでは貧弱なまま大人になってしまいかねない。

 乾燥させた牧草に私の魔力を混ぜて大量に食べてもらえば、それなりに大きく育つはずだ。


 ベスパが立て直したバートン術部の厩舎は結構広いので八頭の子供バートンもこの場で育てるとしよう。

 雄雌四頭ずつなので、ファニーの肩身が狭くなることもない。


「はわわ……、す、すごい……」


 子供バートンはレクーの姿を見るや否や、目を輝かせていた。

 子供からしても、レクーの姿はカッコよく見えるらしい。

 死線を何度も潜り抜けて来た歴戦のバートンなのだから当たり前と言えば当たり前か。


「ちっ、なんだなんだ、あんな白いバートンより俺様の方がすげえに決まっている」


 黒毛のイカロスは鼻を鳴らしながら、子供達を睨む。子供達は委縮して離れて行った。

 まあ、始めは威圧感が強いから仕方ない。少しずつ慣れてもらえばいいだろう。


 バートン場で、大量のバートンがビー達によって調教され、子供のバートンは牧草に食らいつく光景が、昼のほど良く暖かい晴れの日に繰り広げられていた。


「はぁー、いい天気、バートン達が頑張っている姿を見るのは懐かしい気持ちになるなー」


 牧場でレクーを育てていたころを思い出す。

 不手際がないか見つつ、私も木剣を握り振ったり、魔法と共に扱ったり、練習を繰り返しているとお腹が鳴り響いた。


「あぁ、朝食を抜いたから、さすがにお腹が減って来た……」


 バートン場の近くにあるベンチに座っていると、ガサゴソと草を踏みつける音が聞こえる。

 バートンの足音ではなく、人間の足音。


「キララさん、こんにちは」


 懐中時計を見て、現在の時刻が一二時三〇分ごろだと知り、彼女がこの場にくるのも何となく想像できていたが、本当にきた。


「リーファさん、こんにちは。どうかしたんですか?」

「乗バートンの昼休憩になったから、マルティ君が寮を抜けだして練習していないか見に来たんだけど、いなかったからさ」


 リーファさんはバスケットを抱いていた。

 今日もマルティさんと一緒にお昼を食べられたらいいなと勝手に予想しながら作って来てしまったのだろう。


「キララさん、お昼は食べた?」

「いえ、お腹ペコペコですー」

「じゃあ、私が作ったサンドイッチ、食べる?」

「はい、食べます」


 リーファさんは私が座るベンチの横に腰かけた。

 バスケットを開けた後、薄手の紙に包まれたサンドイッチを手渡してくれた。

 質がいい野菜とガッルスの卵、焼かれた肉、真っ赤なソラルムソースが綺麗に挟まれたお店で売られていても不思議じゃないほどのサンドイッチだった。

 毎日作っているからか、質が上がっている気がする。


「リーファさん、料理上手ですね」

「あはは……、前、マルティ君にちょっとしたサンドイッチを渡したら、凄くよろこんでもらえたことがあって、その時、すっごい嬉しくて、毎日作っていたらいつの間にかサンドイッチだけ異様に上手くなっちゃって」

「サンドイッチ以外は作らないんですか?」

「つ、作りたいのは山々なんだけど、せっかくうまく作れるサンドイッチを作らず、下手になっちゃう別の料理を出されたら、嫌かなと思って」

「もう、そんな訳ありません。挑戦しないと、成長出来ません。マルティさんなら丸焦げの料理だって、美味しいといって平らげるに決まっています。気にせず、作ってあげたら良いと思いますよ」

「そ、そうかな。キララさんにそう言われると、がぜんそんな気がしてくる。でも、サンドイッチ以外に何か作れる料理ってあるかな?」

「そうですね。じゃあ、サンドイッチはそのままで、お菓子を作ってあげるのはどうですか? そうすれば、サンドイッチはそのままでお菓子作りを覚えられますよ」

「なるほど。小さなお菓子なら、サンドイッチを食べた後でも軽く食べられるね」


 リーファさんは満面の笑みを浮かべ、自作のサンドイッチに食らいついた。

 唇に真っ赤なソラルムソースが付き、舌舐めづりして嚥下する姿が何とも色っぽい。

 まだ、一四歳ですよねと疑問が浮かぶが、もう成人前なら別におかしなことじゃないか。


 私もサンドイッチに食らいつく。

 焦げ目がつくほどしっかりと焼かれたパンはザクっと音がなるほど歯ごたえが良く、シャキシャキの野菜と風味豊かなガッルスの卵、味の濃いソラルムソースが疲れた体に沁み渡る。


 ――ちょっと濃い気もするけれど。さすが、毎日作っているだけある。こりゃ、マルティさんの胃袋が捕まれるのも仕方ないな。


「はぁ~、マルティさんが羨ましいですね。こんな美味しい料理が作れるお嫁さんがいるなんて」

「も、もう、キララさん、褒めすぎだよー」


 リーファさんは体をくねらせて、頬を赤らめていた。


「えっと、聞いてもいいのかな。このバートン達は一体何しているの?」


 リーファさんは至極当然の質問をして来た。

 私は彼女にこのバートン達は処罰される対象になっているから預かって調教し直している途中だと伝えた。


「調教中? でも、キララさんはここにいるし」

「まあ、スキルを使って頑張ってもらっています。というか、もう、お昼時なんですよね」


 私はバートン達に牧草を与えていく。ビー達が大量に集められるので食料に問題はない。

 まあ、私の魔力を与えれば食事しなくても生きていけるだろうけれど、偏食は体に良くないのでしっかりと食べてもらおうかな。


「じゃあ、私はそろそろ乗バートン部に戻るね」

「はい。頑張ってくださいね」

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