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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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バートン達の適性

 キースさんは羽根ペンを持ちながら頬を撫でる。

 まあ、多くの学園が規則をしっかりと決め、生徒達の安全と成長を促す組織だ。

 自然体でのびのび育てることがドラグニティ魔法学園の良い所であり、悪い所。

 日本の多くの学校がほぼ同じなのは、偏りが出ないようにするためであり、学習の平等のためでもある。

 平等という言葉が、ルークス王国でも浸透しつつあるのだろうか。


「平等であるべきなのは、全ての者が等しく同じ知識を得られることのはずだ。貴族や平民を上手く操ろうとしている五大老の考えていることは理解できんな……」


 どうも、洗脳教育じゃないけれど貴族は平民の上に立ち全て優秀で優越、完全に上位の存在だという教育を全ての学園に取り入れようと考えているらしい。

 それでも、三大学園の学園長は反対している。

 ドラグニティ魔法学園とフリジア魔術学園、エルツ工魔学園だ。

 強い力を持つ学園が反対しているから、平等化が図られていないとお叱りを受けたらしい。


 今回の事件も、学園の教育方針が悪いから生徒を危険にさらしたのだと、揚げ足を取ってくる始末。

 五大老、まあ、政治家や大臣たちといってもいいか。

 彼らのつけ入るすきをドラグニティ魔法学園は許してしまった。

 五大老と正教会、キアン王子は繋がっている可能性が高いため、全て計算されている可能性もある。


「じゃあ、私はキースさんが提唱する自然な教育を立証してみせますよ。バートン達を全て私に預けてください。その子達が他の者に害を与えなければ問題ないんですよね。処分ではなく、別の方法を取り、バートン達が暴走したのは事故だったといえばいい」

「はは……、それが出来れば、五大老は髪を減らすだろうな。して、その方法はいかに?」


 キースさんはもとから、五大老の話に付き合う気はないようだ。

 私の、いや生徒の話に耳を傾けてくれる。さすがとしかいいようがない。


 私はキースさんにバートン達で、新しいお金儲けの話をした。キアン王子だって、国にお金が流れるのなら、文句はいわないはずだ。お金はそう簡単に裏切らないからね。


「なるほど、冒険者たちに貸し出すバートンにするのか。だが、調教が大変だぞ。冒険者たちの危険な仕事をこなすバートン達の調教は普通ではない」

「バートン達は皆、走りたいと思う生き物です。加えて、多くの者が人間の足になりたいと願っています。乗バートンのようにシトシト歩くのはバートン達の鬱憤を溜めているんですよ。だから、激しく走って人間の足になれるのなら、皆、頑張って働くはずです。調教の方は私がこなします。一〇〇頭近くいますが、全てに適性があるわけじゃありません。適性がない子は別の方法で活用します。なので、私に預けてください」

「はは……、ほんと強引な少女だ」


 キースさんはドラグニティ魔法学園が持っていたバートンの権利を私に委託した。

 まあ、私というか、自然委員に託すという。私を信じてくれた以上、想像通りの結果を出さなければ。


「カーレット先生の方はどうするつもりですか?」

「そうだな、彼女は、バートン達は何も悪くないと言っている。加えて、バートンが暴走した原因が彼女にあったという証拠もない。解雇させることはできないな」

「なるほど……。わかりました」


 私はキースさんに頭を下げ、学園長室の外に出た。

 そのまま、学生たちが使う厩舎ではなく、学園が貸し出せるバートン達の厩舎にやってくる。

 柱に縄で縛られ、一応動けるものの大きく動くことは出来ず、息苦しそうにパンパンに詰められたバートン達を見た。


 皆、覇気がなく疲れ切っている様子。全力で暴れ回った結果だろう。

 怪我している個体を見つけたら治していく。全個体に魔力を流し、私の配下……というと聞こえが悪いので友達にした。


「今、皆さんは危機的状況にあります。このままだと、皆さんは殺処分されるでしょう」


 私が話しかけると、バートン達は暴れそうになる。やはり殺されるのは嫌らしい。そりゃ、そうか。


「ですが、皆さんが安全だと証明できれば、殺処分は回避できます。そのために、皆さんを鍛えますから覚悟してくださいね」


 バートン達は私の姿を見て、身震いしている様子だった。

 私はレクーしか真面に育てていない。

 というのも、しっかりと面倒を見た個体はレクーだけで、他の個体の飼育はちゃんとしていた。

 お爺ちゃんがいたら、絶対に殺させないし育てるというだろう。生き物は大切しなければ。


 とりあえず、オスとメスにわける。

 その後、大きな個体と小さな個体という具合に分類わけする。

 成体のオスが四〇頭、メスも四〇頭。

 子供らしき個体が八頭。

 八八頭のバートンがいる。


 子供のバートンは今以上に大きく育てるとして、成体のバートン達はすでに成長してしまっているから、今以上の大きさになるのは難しい。

 八頭ずつ移動させ、マルティさんが使っていないバートン術部のバートン場を使い、それぞれの個体の性能を調べる。

 全個体の背中に乗って、調べていたら、私の身が持たないので、ビー達に私のマネキンになってもらい、八頭ずつ一気に調べる。

 まあ、わたしより少し重い人の方が良いかもしれないが、走れる個体と走れない個体に分ける必要があるので今は問題ないか。


 冒険者の使うバートンで最も重要なのは体力だ。

 頑丈さや恐怖心の感じにくさなども必要になってくる。

 皆の体力を回復させてからバートン場で八頭走らせた。

 すぐにへばる個体は除外し、良く走る個体と分けていく。今日一日で全て終わるわけない。

 すでに午後七時だ。暗くなってきている。


 今日で授業参観が終わって気が楽になったと思ったのに、なぜ私はこんなに頑張っているんだろう……。よくある変わった気持ちだ。

 なぜ、自分はこんなに頑張っているのだろうと、自問自答するが答えは出ない。


「今日は寮に帰ろう。すぐに殺処分されるわけじゃないみたいだから、多少の時間は掛けられる」


 冒険者女子寮に戻り、夕食を得る。肉とパン、野菜、豆、何とも健康的で美味しい料理。

 怪我や病気なく、美味しい料理が得られるだけで幸せを感じられるよ。


 バートン達もただ殺されるのではなく、全力で走って生きて死にたいはずだ。

 人間だって、ただ殺されるのは嫌だろう。

 何か抗い、何か結果を残し、自分が生れて来た理由を見つけて死にたい。そう思うものじゃんじゃなかろうか。

 だから、不慮の事故や病気にかかって死んだら、輪廻で鬱憤を抱えた魂として、神に引き抜かれる可能性が上がる。まあ、勝手に考えているだけなんだけど。


「はぁ、歩きにくいと不便ですわー」


 ローティア嬢は私の背後で躓いたふりをした後、ムギュっと抱き着いてくる。

 大貴族の威厳を保ちながら私に抱き着いてくるという離れ業。さすが、ローティア嬢。


「もう、足下を見ないと危ないですよ」


 私はローティア嬢に肩を貸しながら、椅子に座らせる。脚は包帯が撒かれているが、まつばづえもなく歩けているのが魔法の凄さを物語っている。

 日本で骨が折れたら、全治三カ月ほどかかるのではないだろうか。

 なのに、ローティア嬢の骨折はすでに治りかけている。

 医学が進歩しない理由に魔法の万能性があげられる。

 なんせ、骨折が半日で治る世界なのだ。なんなら、強力な魔法で一分と経たず治るかもしれない。

 そんな世界で骨をくっ付けるボルトを装着する外科手術が必要だろうか?

 ずっと固定し、骨がずれないようにするギプスが必要だろうか。必要ない。

 痛み止めも、必要ない。縫合する技術も必要なければ、消毒液すら必要ない。

 そりゃあ、医療技術が発展するわけがない。

 そのせいで、病気で死ぬ確率が高い。

 危険な生き物や戦いが絶えない世界だから、病気を治すよりも怪我を治す魔法が進歩している。

 病気になったら、正教会で治療してもらうのが一般的。

 試験管一本で金貨五〇枚もする聖水を飲まされ、治療終了……。

 本当に治るか怪しいもんだ。

 薬学がギリギリ研究対象になっている。

 ただ、正教会が認めた薬でなけれが使用不可。回復魔法だってポンポン使っていい訳じゃない。皆、正教会の許可が必要になる。

 だから、フェニル先生などのスキルで人を治せる人はものすごく重宝されるし、正教会から嫌われているだろう。

 つまり、私も魔力を注ぎ込んで体を活性化させるという回復方法は法に触れないが、正教会から目の敵にされる。慎重に事を運ばないと。


 ローティア嬢は先ほどより元気になっており、気分がいい。何か良いことでもあったのだろうか。


「ローティアさん、嬉しそうですね」

「え、そうかしら。骨を折った日に嬉しそうに見えるなんて、わたくしの顔、そんなに笑っているのかしらー」


 ローティア嬢は微笑みを浮かべ、料理を食べていた。

 いつもむすっとした表情で、和やかな雰囲気になりにくいのだが。


「今日、キアン王子がお見舞いに来てくれたの。レオン王子がいて、最悪だったけど……」


 ローティア嬢の雰囲気が変わる。あぁ、やられた。そう思ったのだが。


「わたくし、下着姿だったの。レオン王子にあんな情けない姿を見せてしまうなんて、恥ずかしすぎて死にそうだったわ」

「そ、そうだったんですか。あ、あぁー、良かった」

「なにも良くありませんわ。でも、お見舞いに来てくれただけでも、凄く嬉しかった……」


 ローティア嬢に獣族の尻尾や耳がついていたら大きく動いているだろうなと優に想像できてしまう。


「わたくしの家族は誰もお見舞いに来てくれなかったから……」

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