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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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三者面談

 大人たちは観客席に戻る。

 フェニル先生の前でレオン王子が感謝の気持ちを伝え、頭を下げた。私達も同じように頭を下げる。この後は四限目ではなく、三者面談が行われる。


 私が一番にフェニル先生と教室で話し合わなければならないらしい。その間はスージアとサキア嬢にメロアとレオン王子を見張っておいてもらう。


 私はウキウキ気分の『聖者の騎士』と共に一年八組教室に入った。


「はぁ、四人で来る必要はなかったでしょ。多すぎなんですよ」


 四台の机を給食の時のように向かい合わせて並べ、椅子が四脚ある状況が目に入ってくる。

 一脚に先ほど戦っていたフェニル先生が腕を組みながら座っていた。


「いやー、キララに呼ばれちまったもんだからついなー」


 つるつる頭をパシパシと叩きながら『聖者の騎士』のリーダーであるタングスさんは笑っていた。絶対に調子乗っているよ。


 ロールさんと、イチノロさん、チャリルさんも、ほくほく顔で私を囲うように立っていた。まるで王族を守る騎士のようだ……。


「私はキララ一人でもよかったんだがな。タングスさん達に話すことはないし」

「いや、あるだろう。キララの日ごろの生活態度とか、これからの進路の話とか、授業にちゃんとついて行っているかとか、友達との関係はどうとかさ」


 タングスさんは私のお母さんかと言うほどフェニル先生に根ほり葉ほり聞こうとしていた。

 私のお父さんが昔所属していたパーティーということもあり、本当の子のように思ってくれているのかもしれない。


「まあ、仕方ない。キララとタングスさんが椅子に座ってくれ。後は後ろに待機」

「はーい」


 ロールさんとイチノロさん、チャリルさんは子供のように返事した後、私達の背後に立つ。

 何気に、この場にSランク冒険者しかない。私は仮だけど……。


「まず、キララの生活態度はとても良い。さすが特待生に加え主席といったところだ。他の者が知りえていないから普通の村娘だと思われているが、頭一つ飛びぬけておかしいのは確かだ」

「うんうん、キララならそうだろうなー。俺たちも助けられたし」


 フェニル先生とタングスさんは私の方に視線を向ける。

 その眼差しは少女に向けていいような生暖かい視線ではなく、どこか異質な存在、はたまた天才児を見るかのような疑いの視線。

 どちらも、私が普通じゃないと認識しているようだ。

 えっと、私が普通じゃないとするとライトはどうなるのかな? 気象現象? 怪奇現象? そんな類に分類されるのかも。


「キララ、授業はついていけているか?」


 フェニル先生は私に質問してきた。まだ、筆記試験は行われていないので、情報が少ないから仕方ない。

 普通に生徒に聞いたほうが速いので、聞いてきたのだろう。


「ついていけています。まあ、フェニル先生の戦闘学基礎実習が一番怖いです……」

「はは、そうかそうか。なら、問題ないな。今のところ、キララはずっと過去の自分を超えている。このまま訓練を続ければ問題ないから安心しろ。なんなら、私と一対一になって魔法やスキルを封じされてから私と相打ちに持っていけるほどの実力があるんだ。逆になにを怖がっている?」


 フェニル先生は苦笑いを浮かべながら、生足を机の上に乗せた。

 傷はすでに塞がっているが、ここに攻撃が当たったんだとばかりに指先を向けていた。

 女性や教師が行っていい行動ではないが、まあ、すぐに脚をおろしたので良しとしよう。


「キララの問題と言っては何だが、まだ部活に入っていない。別に入らなければならない規則はないが、二年、三年になるにつれて時間が出来る。その間、部活に入っていなければ、結構暇になるぞ。二年、三年から部活に入るのも難しいだろうし、何か入っておいた方がいいんじゃないか?」


 フェニル先生のいう通り、授業の数は学年が変わるごとに減っていく。

 九〇分もある授業が一個なくなるだけで、時間が大きく開くのだ。その間を何もせずに過ごすのはもったいない。

 軽く部活に行くだけでも、時間を有効に使える。

 でも、私が学園に来たのは運動するためでも、読書するためでもない。


「私、新しい部活を作ろうと思うんですけど、可能ですか?」

「新しい部活。キララが作るのか。なんだ、面白そうな話じゃないか」


 フェニル先生は食い気味に私の方に視線を向けて来た。腕を組み、何かを思い出そうと唸っている。


「部活は申請を出せば作れるが、最低四人いないと部費は下りないし、部活としても認めてもらえないぞ。けん部してもらうのも手だが、そこまで時間が取れるかどうか」

「でも、作ろうと思えば作れるんですよね。じゃあ、何も問題ありません。家庭科部でも作ろうかな」

「家庭科? そんな学科、ドラグニティ魔法学園にはないぞ」

「あぁ、別に学科の話をしているわけじゃありません。家庭で行うことを学ぶ部活ですよ。料理が作れる環境が欲しいですね」

「き、キララの料理だと……」


 タングスさんとロールさん、イチノロさん、チャリルさんは私に鋭い視線を向けてくる。

 彼らは私の作った料理を食べた経験があるので、どういった品を作るのが想像しているっぽい。


「お、俺が入りたい……」


 タングスさんは涙を流しながら、拳を握りしめ歯をぐっと噛んでいた。そんなに料理が美味しかったのかな。ありがたい限りだ。


「家庭科部か。だが、貴族が多いこの学園で料理人のような技術を学ぼうとするやつがいると思えないが……」

「ちっちっちっ、甘いですよ、フェニル先生。家庭科は料理だけではなく、掃除、洗濯、裁縫、お金に関することまで、網羅しています。メイドに成れてしまうくらいの知識を私は持っているので、女の子達は多少なりとも興味が湧くはずです」

「いや、私は一切湧かないが……」


 フェニル先生は女なのに、私の発言に一切興味を示していなかった。

 まあ、想像はしていたけれど、彼女は女子力皆無。

 まさしく家庭科を習うべきだろう。そうすれば、婚約相手もすぐに見つかる。

 そんな話をして、ぜひとも顧問になってもらおうと思っていたが、そう上手くも行かなかった。


「ま、キララは問題がほとんどなくて手のかからない優秀な生徒だ。才能が多彩すぎて、怖いくらいだよ。これから、どういうふうに成長するのか楽しみだね。じゃあ、次のレオン王子を呼んできてもらおうか」

「は、はい」


 私は特に問題なく三者面談を終えた。素行が悪くないとすぐに終わって楽だ。『聖者の騎士』たちも私と一緒に面談が出来てご満悦なのか、ものすごく嬉しそう。

 そんな笑顔を浮かべられると、今度は来ないでくださいねと言いづらい……。


「レオン王子、フェニル先生が呼んでいました」

「わ、わかった」

「さて、行こうか、レオン」


 レオン王子とキアン王子は教室の外の廊下に並べられた椅子から共に立ち上がり、私達の横を通って教室に入っていく。

 レオン王子はあまりにも緊張しており、顔が青い。緊張しすぎだ。まあ、近くにキアス王子がいるから仕方ないか……。


「お忙しい所、ありがとうございました。また、こういう時があったら呼びますね」


 私は『聖者の騎士』に頭を下げる。ほんと、地味な活躍だったけれど、彼らがいてくれたからバートンの暴走も迅速に解決できたはずだ。ほんと、地味だったけど……。

 でも、その地味な縁の下の力持ちが冒険者ギルドには必要なのだろう。


「気にするな。逆に俺達の方が感謝したいくらいだ。本当の娘をもった気分だったぜ」


 タングスさんは大きな手を私の頭に乗せ、ガシガシと撫でてくる。子供を撫で慣れていないその手つきに少々痛みを生じながらも、心の中でお父さんと被ってしまう優しさがあった。


「もう、あんたが子供に触りすぎたら、捕まっちゃうでしょ。手を放しなさいよ」


 青髪の魔法使いであるロールさんはタングスさんの大きな腕を持ち上げ、私に抱き着いてくる。そこはかとない母性が、温かい。


「いやー、キララがフレイズ家と戦っているところはビビったが、まあ、キララだし、で片付けた。フェニルが言うように、入学する前より確実に強くなっている。毎日、訓練しているようで何よりだ。さすが、ジークの娘だな」


 茶髪で眼付きの悪いイチノロさんは腕を組みながら、そこはかとなく私を褒めてくれた。

 ずっと見ていたわけではないのに、私の努力がわかるなんて、さすがSランク冒険者。


「ほんとですね。ジークも毎日剣を振ってましたからね。負けず嫌いな所はキララちゃんにもちゃんと受け継がれているようです」


 金色の長い毛がふわりと浮かび、私をロールさんと共に包んでくる聖職者のチャリルさんは胸が大きくて息が苦しくなる……。


「お父さんが毎日剣を振っていたんですか……。初耳です」

「あいつは木を切るスキルって言う何とも木こりが欲しがりそうなスキルを持っていたが、冒険者に憧れていた。まだ駆け出しだった俺たちと一緒に冒険に出ていた。毎日毎日剣を振っていたのをよく覚えている。まあ、女が出来たら、さっさと抜けやがったがな」


 タングスさんは腕を組み、頷きながら呟いている。

 お父さんはなかなかタフな人だと思っていたが、昔かららしい。

 私も少しくらい体格が遺伝していればよかったなと思いながら、性格だけでも遺伝していればいいかと思う。

 この場にお父さんがいたら、きっと顔を赤くして四名に怒鳴っていたところだろう。

 あぁ、お父さん、遠い所から私を思ってくれているかな。別に死んでないけど……。


「じゃあ、俺たちは仕事が立て込んでいるから帰らせてもらう。キララも、学園生活頑張れよ」


 タングスさんは手を振り、残りの三名も彼の背中を追うように私のもとから去って行った。

 その瞬間、しゅんと者寂しくなる感覚を得る。

 あんな人達でも、私は親近感を得ていたんだ。

 年齢も昔と合わせたら近いだろうし、友達みたいな感覚で話せるから。

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