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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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カオス

 フレイズ家は強い者を集めているのか。

 だから、一番強い家と言われているんだな。

 才能がある者達を家に引き入れて、子供達と結婚させて強い子を産み、さらに家を強くしている。

 ものすごく合理的で賢い。

 貴族ではなく村人の私まで許容範囲ということはそれだけ、幅広く強い者を欲しているということ。

 どれだけ、実力主義な家なのか。こりゃ、ニクスさんが逃げたくなる気持ちもわかるな。


「え、えっと、えっと、私、もう、そう言う話をしている人がいるので……」


 私はフロックさんが貸してくれたネックレスを軽く見せる。

 初めてこのネックレスが役に立った。


「あら、そのネックレス。あぁ、そう言うこと。はぁー、残念だわ~。本当に残念」


 ディーネさんは察してくれたのか、私から手を引いてくれた。

 フロックさんのネックレスがなかったら、私はフレイズ家に無理やり嫁がされていたかもしれない。

 お父さんとお母さんは泣いて喜ぶかもしれないが、私としてはごめんこうむりたい。


「じゃあ、メロアの友達と言うことで、私達とも友達と言うことでいいかしら?」


 ディーネさんは微笑みながら、私の手を握りほど良く長い耳を上下に動かしている。

 森の民特有の喜び方で、フリジア学園長などが良く見せる表現だ。

 やはり、彼女にも森の民の血が流れているのだとひしひしと感じる。


「はい、友達なら、かまいません」

「あなた、キララちゃんはもうこれがいるそうよ」


 ディーネさんは小指を立て、イグニさんに話を振る。


「そうなのか? はぁー、惜しいことをした。本当に惜しい。今からでも乗り換える気は」


 イグニさんが少々最低なことを言おうとしたら、ディーネさんが鳩尾に腰が入った良い拳を打ち込んだ。

 イグニさんは一瞬で伸び、前のめりに倒れる。パンイチの男性が地面とキスしている姿はあまりにも滑稽だった……。


「まったく、女心のわからないおバカさんなんだから。ごめんなさいね、キララちゃん。イグニに悪気はないのよ」

「は、はい。わかります。ただただおバカなだけ見たいですね」

「ほんとそうなのよー。毎日困っちゃうわー」


 ディーネさんは微笑みながら、口もとを小さな手で覆う。

 仕草がとても上品で、ゴリラと熊を合わせたような男性を一撃でノックアウトするような攻撃を放つ女性に見えない。


「か、母さん、父さんは死んでないよね?」


 フェニル先生は苦笑いを浮かべ、イグニさんの方に視線を送る。イグニさんはピクリとも動かず、失神しているだけ。死んではいないが、彼ほどの耐久力がなければ死んでいるかもしれない攻撃だった。


「あなたも、お父さんが今の一撃で死ぬわけないってわかるでしょ。ちょっとした薬みたいなものよ。その辺に転がしておきなさい。せっかく高い燕尾服を買ったのに、すぐに破っちゃうんだから。でも、そういうところが可愛いのだけれどねー」


 ディーネさんは頬を赤らめながら手を当て、乙女のような表情を浮かべた。

 可愛らしいと綺麗が丁度良い具合に混ざった奥さんで、イグニさんが羨ましい限り。

 まあ、少々暴力的な所は目をつぶらないといけないが……。


 イグニさんとディーネさんに解放された私は、すぐにレオン王子とメロアの方に視線を向ける。

 両者は『聖者の騎士』とトラスさんに戦いを挑んでおり、問題なさそう。


「うぅん、あの二人から攻撃を掻い潜るとは、本当に村娘なのかな。スキルや魔法を使っている様子は見えなかった。どういう理屈なのか、理解できないなぁ……」


 キアン王子は私の方に視線を向け、蛇が暗闇で獲物を待ち続けているかのような陰湿な雰囲気を得る。

 ほんと、なんであの清楚な王様の血を引き継いでおいて、こんなねちねちした王子が産まれただろうか。捻くれているとしか言いようがないよ。


「キアン王子の目から見て、彼女はどう見えますかな? わしも少々手を焼いておってな。どういうふうに育てるか、未だに方針が決まっていないんだ」

「そうだなぁ、私なら殺し屋にする」

「ほほう、なんとも彼女と正反対な仕事ですなー。して、その心は?」

「顔良し、性格は悪い、魔法、剣術、体術、動体視力に優れ、相手の懐に容易に入れる人心掌握術。あの子は相手の心が読めるのかと思うほど人に好かれやすそうだ。もう少し胸と尻があればさぞかし多くの国が恐れる殺し屋になっていただろうなぁ」


 キアン王子の視線が一層鋭くなった。

 なぜ、今の小一時間で私のことがそこまでわかるのだろうか。ほんと、やめてほしい。

 私の体を蛇が這いずり回り、舌でちろちろ舐められているかのような不快感が全身を襲う。

 私も彼の本性を探っていたが、彼もまた私の本性を探っていた。

 互いに探り合い、動きまくっている私の方が多くの情報を露出してしまったらしい。大きな痛手だ。


「殺し屋という選択肢が無理ならば、あの少女に向いている職種は……女優だろうか」


 どうやら、キアン王子は人を見る目があるらしい。

 スキルではなく、本当に観察眼に長けている。

 私はトップアイドルだったが、女優としてもそこそこ評価されていた。魂を覗かれているんじゃないかと錯覚してしまう。


「まあー、胸もないし、尻もない子供体型の少女は永遠に子役だろうがな」


 キアン王子はクスクスと笑うように口角を上げ、私をさげすんでくる。

 本当に嫌な王子だ。あんな人が才能を持っているから、そりゃあ嫌われても仕方ないよ。

 悪いことにも手を出すとわかっている。手段を択ばない残虐性も兼ね備えている。

 彼を王様にしたらこの国が世界を征服してしまうのではないかと思うほどのカリスマ性は感じられるが、逆に国を滅ぼしかねない。

 穏健なアレス王子の方が王様として正しい在り方になってくれると思うが、世界を狙っている正教会や五大老の者達はさらに上を目指そうとする過激派のキアン王子に付く理由もわかってしまう。

 どちらも良い面があり、悪い面がある。そう言う話しだ。


 キアン王子を嫌う者が多いから、多くの噂が流れているだけで、近くでしっかりと彼の本性を探れば、ただただねちっこくてうざい奴という可能性も出て来た。


「他の子供達も、質が高いのは間違いない。キース学園長の指導で良くも悪くも未来が変わってくるだろう。私は良質な人材がこの学び舎で生れることを望んでいる。ルークス王国が他の国に後れを取らず、常に前を走り続けられるよう、尽力してほしい」

「もちろんです。そのために、教育者として身を固めるようにしたのですから」

「ほほう、そうかそうか。やっと決心したのか。だが、そうなるとウルフィリアギルドは大変だろうなぁ。誰が次の顔になるのやら……」

「わしはあやつを推薦しているのだが、性格に難ありですからなぁ」


 キースさんの視線の先にいたのはあくびしているフェニル先生だった。

 やはり、キースさんもフェニル先生をウルフィリアギルドの顔にしたいのだろう。彼女にその気がないが、もったいないといわんばかりの呆れ顔を浮かべている。


「あの女は止めておけ。ウルフィリアギルドの株を落とすだけだ」

「ですね……」


 どうやら、キアン王子とキースさんの話は噛み合っているようで、フェニル先生の仕事の出来なさを両者共に理解していた。

 まあ、キアン王子やフェニル先生は、元はキースさんの教え子だろうから仲が良いのも理解できる。


 キースさんは何が起こっても良いようにずっと右手は杖が持てるよう開いていた。彼の隙の無さは異常だ。敵に隙を隠していることすら、悟らせない技量……。

 何十年も最前線を走っている魔法使いだからこそできる技。私も、盗まないとな……。

 キアン王子とキースさんが話し合っている姿を見ているだけで、時間が流れた。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

「どうしたどうした、レオン王子。まだまだ出来る、君なら出来るっ」


『聖者の騎士』のリーダーであるタングスさんはレオン王子の前に立ち、一切不満を漏らさず彼を励まし続けている。

 さすが、努力し続けて三〇代を越えてSランク冒険者パーティーに上り詰めたリーダーだ。

 気持ちの入り具合が違う。その応援に感化された、レオン王子の動きはすでにふらふらだが、表情は笑みを浮かべており、大変質がいい鍛錬をこなしていた。


「はあっ、はあっ、おらあああっ!」

「にゃははっ、当たらないニャー。そんな大ぶり、目を瞑っているだけでも躱せちゃうのにゃー」


 メロアはトラスさんに拳を振るっているが一切当たらない。

 トラスさんの危機感地能力は異常なので、目をつぶっていても周りの雰囲気を肌や音、匂いで感知し完璧に躱している。

 やはり彼女も元Sランク冒険者というだけあって、さすがの身のこなし。

 スキルによって何歳になっても体が最も質の高い年齢で維持しているため、運動していなくても問題なく動けてしまう。

 毎日運動しているメロアを陵駕しているのがその証拠だ。


 今、『聖者の騎士』とトラスさんも良い具合に子供達の可能性を感じ取っているのだろう。

 その証拠に笑顔を浮かべており、声が張り上がっていく。

 どちらも、自分たちが身に来た子供じゃなく別の子に意識を向けているのだから、その気持ちの盛上り具合がわかる。


 スージアとサキア嬢、ミーナは大勢の騎士達を相手に集団戦の訓練を受けていた。

 一対五で多勢に無勢。

 だが、魔物や集団を相手にする時は、よくある。

 しっかりと連携が取れている騎士達の動きはウォーウルフと同じくらいの連係速度で、一対一ならフェニル先生と互角に渡り合っていたミーナでもコテンパンにされている。

 スージアはずっとスキルを使い演算処理で回避行動はとれているものの、実に体力がない。

 サキア嬢は魔法を使って逃げに徹している。セクハラされても何も言えないのだ。なんせ、これは訓練だから。

 多くの大人と子供が入り乱れているカオス(混沌)な状況の中、三時間目の授業の終わりを告げる鐘の音が聞こえてくる。

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