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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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フェニル先生対チーム二

「あぁー、なくなった。もう、疲れたー」


 スージアは両手両足を地面につけた。

 そのまま情けない声を出しながら、スキルも消す。

 魔力を大量に消費し、すでに仲間の三名も戦闘不能。

 フェニル先生に向って土下座しているかのようなスージアの体勢はもう、負けを意味するのとほぼ同じ。


「はぁ……、まったく、最後までしっかりと戦おうという気はないのか」


 フェニル先生は炎を縮めながら歩きだし、私達の方に視線を向ける。


「じゃあ、どうぞ。最後まで、『集結』」


 スージアは地面から手をあげる。

 すると、地面の中に混ざっていたバタフライの鱗粉が舞い上がり、フェニル先生のもとに集まる。

 一瞬の出来事で、彼女も目を見開いていた。

 だが、スージアの魔力そこで尽きていた。ものを浮かせて集めるのは結構大変だ。きっと全ての力を振り絞ったのだろう。


 フェニル先生は少子抜けした表情を浮かべ、もう一度私達の方をむこうとした時、後方から足音なく移動している生徒がいた。

 地面を滑るような動きはプルウィウス流剣術の中の一つの足さばき。

 完全に回復している手の平を巨大な粉塵の中に突っ込む。


 フェニル先生はとっさに振り返る。


「ほっほっほっー、やりおる」


 私とただ一人、闘技場の観客席にいたキースさんだけ、パーズの動きを理解しているようだった。

 手の平に集められているあまりに少ない魔力。

 魔力操作が苦手な彼が努力の末、時間ギリギリ一杯使い、何とか溜めた雀の涙程度の魔力量。それでも……、


「ファイア!」

「つっ!」


 フェニル先生の顔が一気に固まり、周りにある粉塵を吹き飛ばそうとするが、パーズの手に平に浮かんだファイアの小さな魔法陣から火の粉紛いな着火が起こる。


 小さな鱗粉がじりじりと熱せられ、熱量が発生。近くにある鱗粉にさらに引火。連鎖反応が起こり、エネルギーがその場に留まれなくなった瞬間、粉塵爆発が起こり黒い煙が昇る。

 爆風が辺りに吹き荒れ、着火したパーズは火傷を負いながら地面を転がる。


 風が吹き、黒い煙が晴れると炎で身を包んでいる繭のような物体があった。


「まったく、危ないじゃないか」


 繭が割れると、炎が翼のように変形しているフェニル先生が現れる。

 炎の翼が生えた人間なんていない。身を包む白鳥の如く巨大な翼を生やしている天使か……。

 人間なのは間違いないが、中々強烈な爆発を食らっても、炎に守られていた彼女は無傷。

 規格外にも程がある。


「はぁー、あれに勝つ方法ある?」


 ライアンは溜息をこぼした。

 私だって、ため息をつきたい。

 攻撃を当てるにしても、私と炎は相性最悪。

 何かしら対策を取らないとフェニル先生に攻撃を当てるのは無理だろう。


「スゥ……はぁ……」


 メロアは赤色のグローブをしっかりとつけ、手を握りしめている。

 大好きなニクスさんから貰ったグローブから力でももらっているのだろうか。だとしても、フェニル先生に攻撃したら燃えてしまうかもしれない。


「さあ、最後はチーム二だね。どこからでもかかって来な。先制攻撃を譲ろうじゃないか」


 フェニル先生は炎の翼を消し、また私達に余裕の表情を見せる。

 多分、常時発動していたら、その都度魔力が奪われるのだろう。

 だから、余裕のあるうちは炎を出さず、厳しくなってきたら出す感じか。

 でもそれなら、フェニル先生はそこはかとなく追い詰められていた。

 私達はそれなりに強いのか。でも、大した魔法を使われていないし舐められているのに変わりはない。


「『ファイアーバレット』」


 メロアは魔法杖を握りしめ、空中に魔法陣を展開。魔力を流して大量の火の塊を連射する。その状態で突っ込んで行った。


「無駄な魔力を消費するのはいただけないな」


 フェニル先生は真横に走りながら『ファイアーバレット』を回避し、そのままメロアに向って弧線を描くように接近してきた。

 拳を握りしめ、勢いよく振り抜く。


「『シールド』」


 ライアンはフェニル先生とメロアの間に割り込み、魔力の壁を作る。

 やはり、周りがよく見えている。


「ちっ!」


 ライアンの『シールド』に当たった物体は、一瞬でもその場で止まってしまう。

 運動力が完全に奪われているのだ。

 そこから、前に進もうとしても何かしらの動作を挟まないと筋肉は動かない。


「はあああああっ!」


 メロアの鬼気迫る叫び声と共に燃え盛る拳がフェニル先生に打ち込まれる。


「つっ」


 フェニル先生は後ろに下がるわけでも前に出るわけでもなく、横に倒れ、長い脚でメロアの脚を掬い上げるように蹴った。


「くっ、まだあああっ!」


 メロアは肘から炎を噴射して、空中で無理やり体勢を整えた後、フェニル先生と空中で蹴り合う。

 互いの力に差はなく、その場で停滞している後方からライアンの剣が迫った。


「プルウィウス流剣術、マゼンタ撃斬!」


 頭上に振り上げた木剣に炎が纏っているように見える火力の高い剣術は、フェニル先生の手に防がれそうになっていた。

 だが、ライアンは手の平に当たる前に剣を振り抜く。


「ぐうううううううううっ!」


 攻撃は当たっていなかった。

 だが剣に溜められたライアンの魔力がフェニル先生とメロアの体を地面にたたきつけるように働く。

 隙をつくのに完璧な攻撃だった。


 完全に隙をついたころ、壁の陰に潜み死角に隠れていたフルーファが勢いよく駆ける。

 フェニル先生に噛みつこうとしたころ、彼女は一瞬で窮地に達したと判断したのか、勢いよく炎を噴射し、メロアとライアン、フルーファを後方に引かせる。


「まったく……、八日程度しかなかったのに仲良くなり過ぎだろう」


 フェニル先生は背中に炎の翼を生やし、服に付いた砂を叩く。

 私達の作戦はフェニル先生が本気を出す前に仕留め切る前提だったが、予想よりも本気にさせるのが速かった。

 沸点が低いのか、二連戦からの三連戦目がきつかったのかもしれない。


 皆が思った以上にフェニル先生を消耗させていたらしい。今なら、炎の隙を突いてフェニル先生に攻撃を打ち込めるかもしれない。


 ベスパは未だに戻って来ていない。

 呼べば戻ってくるかもしれないけどバートンの暴走が思った以上に長引いている。

 フェニル先生の炎を掻い潜れる物体がいるとするのなら、黒光りする益虫くらいか。

 以前、キースさんに見せたような魔法を突っ切るブラットディアの矢をフェニル先生にお見舞いしてやれば、攻撃が通るだろうか。

 だが、闘技場の壁を粉砕するほどの威力は危険すぎる。

 ディアはスキルも貫通するはずなので、キースさんの結界も貫通してしまう。魔法耐性だけは異様に高いため、確実だ。使わないほうがいいな。

 弱く放てば牽制くらいにはなるか。


 私はメロアとライアンがフェニル先生を引き付けている間に、魔力操作で弓を形成する。

 魔力で矢も作りディアを先端に配置。ぐぐぐーっと引っ張りフェニル先生に狙いを定めようにも、動きすぎて狙いが定まらない。


「ほらほら、どうした、キララ。そんな、ところから狙っていても私には当たらないよ!」


 フェニル先生は私に向って大きな声で吠えて来た。

 その通りだ。ベスパのアシストがないと、当たる確率が著しく下がる。

 彼女の体にビーをくっ付けたいが、くっ付こうとすれば炎で燃やされるので効果がない。

 グワングワン動き回る人に弓矢を当てるのは至難の業だった。

 上下左右、さまざまに動かれあまりにも狙いが定まらない。


 ――ベスパ、バートンの方はまだ収束させられないの? 早く来てくれないと、フェニル先生に一発入れられないんだけど。


「それが、結構厄介な状況に発展してまして」


 ――厄介な状況? 簡単に一言で説明して。


「えっと、バートン術部のバートン場で、暴れ回っていたバートンを拘束したまではよかったのですが、追って来たカーレット先生が土壇場の中、糸を燃やしてしまい、またしても暴れ回っている状況でして……」


 どうやら、カーレット先生がアラーネアの糸を燃やして拘束を解除しているらしい。


 ――なんで、カーレット先生を拘束しないの?


「その、最初に燃やし始めたのはバートンが暴走したという情報を聴いて授業を飛び出してきたマルティさんで……、バートン達を助けようとしたらしいですけど、裏目に出て完全にバートンの中に取り残され、それをカーレット先生が助けようとしている状況です。周りに騎士もいますし、ここでカーレット先生を拘束すると我々の方が攻められる可能性があります」


 どやら、カーレット先生はマルティさんを救出する名目のもと、拘束されているバートン達の糸を燃やしているらしい。

 なぜ、騎士達はそうする必要があるのか理解できていないだろう。

 だが、バートンの専門家といっても良いカーレット先生がしているから、正しいことだと認識してしまっている可能性がある。

 そもそも、マルティさんが囲まれているのはカーレット先生の指示、又はバートンに洗脳している者の仕業だ。

 でも、生徒を救助しているカーレット先生を捕まえることはできない。

 彼女は先生として正しい行動をとっているように見えるから……。

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