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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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実戦訓練

「無理無理っ!」


 ライアンはすでにミーナに抜かれている。

 だが、状況を把握し、メロアと彼女を挟み撃ちにする作戦に出る。

 作戦は色々考えたが、一対三の戦いを常に繰り広げるというのが私達の最善策。

 少しでも連携が崩れれば、相手に戦況を覆されるだろう。


「よっ! メロア、今から武術部の成果を見せるよっ!」

「望むところ!」


 メロアは真っ赤に燃えていると錯覚するほど赤いグローブを握りしめ、硬い拳を作る。

 ミーナと彼女は互いに拳を打ち付け合い、武術部の成果をいかんなく発揮していた。


 ミーナの動きをよく知るメロアだからこそ、彼女の高速移動も予測出来ていた。


「ライアン、あんたも早く入りなさいよ!」

「無理無理っ!」


 メロアとミーナの戦いはすでに飽和している。

 その中にライアンが入る隙は一ミリもなかった。

 入ってしまえば、体中あざだらけになってしまうだろう。

 それがわかってしまうライアンは一歩引いた位置で、メロアとミーナの隙を伺っていた。

 決してサボっているわけではないが、サボっているように見えるのは彼の陽キャ気質な性格ゆえだ。


「はああああああああああああああああっ!」

「おらあああああああああああああああっ!」


 ミーナはスキルを少しずつ使用し、メロアは常に『ブースト』のスキルを使用している。

 そうしなければ、一撃で吹き飛ばされるのだろう。

 だから、拳がぶつかり合うと巨大な爆発音が何発も響く。

 闘技場が揺れているんじゃないかと思うほどの轟音で、外にいた知らない貴族たちが慌てるほどだ。

 爆撃を受けているわけではないので安心してほしい。


「さ、フルーファ。あそこに突っ込んできて」

「……はい」


 私の脇で伏せていたフルーファはむくりと起き上がる。大層嫌そうな顔だ。

 そりゃあ、ライアンでも入りたくないというのだから、フルーファも入りたくないと思うだろう。

 だが、ライアンよりもフルーファの方が動きが機敏だ。隙間に入って相手の視界を少しでもずらすだけで充分。


「ふっ!」


 フルーファは人間が到底不可能な低すぎる姿勢で走り、ミーナとメロアの間に入り込む。

 ミーナの視線がフルーファの方に持っていかれた。

 フルーファの陰に隠れるメロアの姿を一瞬失っただろう。


 すでにメロアはミーナの背後に立っており、『ブースト』で加速した拳が打ち込まれる。


「はあっ!」


 ミーナの頬に真っ赤に燃える鉄拳が打ち込まれ、彼女は吹っ飛ばされる。

 だが、メロアの体も高く舞い上がった。どうやらタダでやられなかったらしい。

 ミーナも拳を振り上げてカウンターをメロアの顎に決めていた。


 闘技場の観客席にいつの間にか座っていた貴族たちはおおーッという声を上げ、盛り上がっている。


 可愛い女の子たちが殴り合っている姿を見て笑っているとは、何とも趣味が悪い貴族たちだな。

 でも、確かに白熱しているので見ていて楽しいか。


「はぁ、はぁ、はぁ……」

「悪いな、ミーナ、後隙はからせてもらうぜ」


 ぐらついているミーナのもとに待機していたライアンがすぐに駆ける。

 判断が速い。

 中堅を担うのはライアンが得意そうな戦い方だ。

 彼のスキルは『シールド』と言い、カイリさんの『バリア』ほど硬くないが、魔力消費が比較的穏やかなのが特徴だ。

 一撃で壊されることがほとんどだが、相手の意表を突くことが上手いライアンにとって攻撃と防御を担えるいいスキルとなっている。


「はあっ! つっ!」


 ミーナの拳が半透明な『シールド』に阻まれ、一瞬止まる。

 だが、すぐに『シールド』は破壊され、その後ろからライアンが木剣を持ちながら突っ込んでいた。

 ミーナは拳が『シールド』の位置で止まっており、反動を付けなければ力が伝わらない。


「プルウィウス流剣術……、マゼンタ撃斬っ!」


 ライアンが頭上に持ち上げた木剣が燃えたように、錯覚する。

 だが、実際に燃えているわけではない。

 地面を踏み込み、剣を振りかざすという動作が全て一回で完結していた。

 力が流れていく間に威力が増し、ミーナに襲い掛かる。だが……、


「ぐぬっ……、パンチっ」


 ミーナはライアンの懐に一瞬で潜り込む。

 腕を振りかざす必要もないほど、拳が加速した。そのままライアンの鳩尾に打ち込まれる。


 ライアンは後方に吹っ飛ばされた。あれはもう完全に伸びたと思っていたが、


「来るよな」


 ライアンはにやりと笑って、腹部にぶ厚めの『シールド』を張っていた。


 ミーナはまたしても攻撃が当たらず、困惑した表情を浮かべている。


 ライアンは後方に『シールド』で足場を作って前方に跳躍。

 彼は未だに攻撃の流れが続いている。確かにごうごうと燃えている木剣を勢いよく振り、ミーナに防御の体勢を取らせた。


 ミーナは腕輪が付いた腕を交差させ、木剣の衝撃を頭上で受け止めた。

 だが、地面に巨大な罅割れが生れるほどの力を受け、大変重そうだ。


 メロアの方は、体が動かずフルーファの背中で伸びている。

 今、動けるのは私だけ。スタスタと走り、踏ん張っているミーナの弱点である尻尾に抱き着いた。


「ふにゃぁうっ!」


 ミーナの体から力が抜け、へなへなになり、地面に倒れた。

 モフモフした尻尾をこれでもかと堪能した私はミーナを捕まえられたことよりも、モフモフしている尻尾の感触の柔らかさを得られた方が嬉しかった。


 周りからパチパチと拍手を受けているので、皆、軽く頭を下げるとキラキラとした硬貨が降って来た。

 ほんと、お金を投げるのが好きな人達だな。子供達が真似してたのは大人の影響だろう。


「はぁ……。キララ、尻尾を掴むのは反則~」

「ごめんごめん、でも、私がミーナを止めるにはこの方法しかなくてさ」

「他にもいろいろあるでしょ。お菓子で釣るとか、料理で釣るとか、お菓子と料理で釣るとか」

「食べ物しかないじゃん……」


 ミーナは魔力切れを起こし、その場にぺたりとへたっていた。

 だが、私の魔力がたっぷり込められたビーの子を食べると、むくりと起き上がって復活する。

 彼女にビーの子を持たせておけば、二度、三度と言う具合に復活し、戦えるのだ。

 そうなると、彼女と私の相性はかなりいいと言える。


「うぅ。頭が揺れる……。でも、モフモフ、きもちぃい……」


 メロアはフルーファの背中で日向ぼっこしていた。顎を勢いよく殴られて気絶していないだけすごいタフなんだよな。


「はぁ。やっぱり、俺の剣じゃミーナを制圧できなかったな……」


 ライアンは木剣の柄を見ながらため息をついた。

 彼が引き付けていたから私がミーナを捕まえられたのだから良いと思うが、男としての誇りがあるのだろうか。


「ライアン、落ち込まないで。いいマゼンタ撃斬だったよ」


 パーズはミーナを止められなかった。だから彼女を引き付けていたライアンを心から褒めていた。

 だが、その言葉をライアンは正直に受け取れない。

 自分ならもっと上手くマゼンタ撃斬が使えるのに、あの場で倒せていたのにと、言われているような顔だ。

 だが、笑顔は作り、腕を組んで「そうだろうそうだろう」と頷いて見せる。

 関係は悪くないのに、何ともギクシャクしている。


「キララは魔法を一切使わずにミーナを捕まえちゃったよ……」

「スキルを使っていないなんて、思えないですね」


 ミーナに殴られて戦意喪失しているスージアとサキア嬢は互いに私の方を見て、苦笑いを浮かべていた。

 私が出る必要がないくらいメロアとライアンが頑張ってくれた結果だというのに、私の評価を上げるような発言は控えてもらいたい……。

 私はミーナに殴られたくないから後方でじっとしてたなんて、言えない。


「スージアとサキアの連係はよかった。私とパーズでミーナをもっと足止めできていれば魔法と援助が生きたんだが……、力不足で済まない」


 レオン王子はチーム一の三名に頭を下げていた。

 王子が頭を下げている状況に三名はあたふたしている。

 腰が低い王子は鼻が高い王子と同じくらい扱いが難しい。

 自分達より位が何倍も上なのに、へこへこされたら、こちらが困る。


「じゃあ、二回目行こうか!」


 ミーナは空気なんて読まず、部活の気分で拳を付き上げる。

 元気が溢れているため、二回目も一回目と同じくらいの動きを見せ、チーム一とチーム二の者達の体に青あざを作らせた。

 私以外だけど……。


「ふっ! はっ! おらっ!」


 ミーナの拳が空を切る。

 モクルさんほどの爆発音はしないが、突き飛ばされた空気の刃で頬が切れそうなほどキレのある一撃だ。

 私が躱せている理由は単純に多くのビー達の脳を使って演算処理を施しているから。

 一秒でも先に動いておかないと、私の体はミーナに追いつけない。

 回避不可能な攻撃は鎖剣で防御する。

 剣を持っていた方がミーナの意識が剣に向かうのだ。

 この意識の移動が戦いにおいてものすごく重要に働く。


 ミーナの欠点はほとんど体で感覚を掴んでいること。

 戦いの勘が鋭いので、ものすごく厄介だ。でも裏を返せば来る場所がわかれば回避できる。

 不意打ちやカウンターをもっと織り交ぜた方が強そうだが、自分の動きすぎる体を制御するので精一杯なのだろう。


 鎖剣を手放すと、ミーナは鎖剣の方に視線を向ける。

 右手の甲でミーナの頬をぶち、ネアちゃんの糸が繋がっている鎖剣を遠心力任せに振るった。

 すると、するするとミーナの体の周りを鎖剣が周る。円運動する物体は半径が短くなるごとに速度が増すため、ネアちゃんの糸が彼女の体に高速に纏わりつく。

 一方向にしか巻かれていないため逃げ出すのは容易だが、隙を作るのは免れない。

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