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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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授業参観

「全く、これだから低級な者達は苦手なのよ。わたくしにこのような辱めを受けさせて、ただで済むと思っていますの?」

「ローティアさんの笑い声、きゃはは~って、可愛かったね~」

「ほんとほんと、いつもがみがみ言っているのに、笑っている声は赤ちゃんかと思った」

「ローティアも笑うんだね。やっぱり、笑っていた方が楽しいよね~」

「心からの笑いは何もかも吹き飛ばせる。辛くても笑っていればどうとでもなる。笑う癖は悪いことじゃないと思うぞ」


 私達はローティアさんの威圧に全く屈さず、逆に口角を上げて笑って見せる。


「もう……、何なのよ、あなた達……、普通じゃないわ……」


 ローティア嬢は私達が全裸で仁王立ちしている姿を見て、クスクスと笑っていた。

 やはり、女の子は笑顔が一番。涙が最終兵器と言われているが、笑顔のマシンガンも同じくらい強い。ずっと笑顔でいる女子は最強なのだ。


 私達は体を洗い、脱衣所に出る。濡れた体を乾いた布で拭いた。

 ローティア嬢の髪を乾かしたあとブラッシングしていると、彼女は聞こえるか聞こえないかというぐらいの声で、


「……あ、ありがとう」

「えー、何か言いましたか~? 小さすぎて、聞こえませんでした」

「く、芋娘の癖に生意気よ。あ、ありがとうって言ったの! ちゃんと聞いていなさいよ!」


 ローティア嬢は大きな声を出し、周りに引かれていたが、すぐにしゅんっと小さくなると周りが笑う。

 それにつられて、ローティア嬢も軽く笑っていた。ほんと冒険者に適性のある女子達の集まりというくらいだから、もっと野蛮かと思ったが豪快な者が多いだけだ。


 私はローティアさんの耳元に顔を近づけ『どういたしまして』と呟く。


「なにか困ったことがあったら、何でも相談してください。私達は同じ寮の仲間ですし、会社を経営している同業者でもあり、心を通わせた友達なんですから」

「ば、バカじゃないの。わ、私とあなたには埋められない差があるんだから……」


 ローティア嬢は唇を噛み締め、鼻をすする。彼女に仲間がいなかったのか、同じように友達が少なかったのか、どちらにしろ心細かったのは確かだ。

 仲間がいるだけで、心強い。

 仲間がどれだけ弱くても、一緒にいてくれるだけで落ちつくものだ。その相手が、ビーくらい弱いとしても。


 私は八号室に戻り、勉強を開始。

 朝と夜に勉強すると決めているので、特に何も疲れることなくすらすら解ける。

 その間もカーレット先生を見張るが、特に目立った変化はない。

 もしかすると気づかれていて、連絡を取らないようにしているのかもしれない。


 カーレット先生は窓を開け、空を見ながらどこか寂しそうな顔を浮かべている。

 何かしら思うところがあるのだろうか。心に穴が開いているのだろうか。そんな、悲しそうな瞳だった。


 私は勉強を終え、フルーファの毛をブラッシングした後、ベッドに倒れ込み、眠りにつく。

 メロアとレオン王子に接触してくるかもしれない第二王子に出来る限り注意しておかなければ。


 四月二四日になった。授業参観は今日から。四日後の四月二八日に一年八組の授業参観がある。

 授業参観は非常に大規模で、一年から三年までの親が授業を見に来る。

 三年生や二年生の進路相談もあるといい、一年生のこれからの勉強や部活動などの相談もできるそうだ。

 なので、多くの親や親族がドラグニティ魔法学園にやってくる。


 朝から、ドレス姿の婦人や高級な燕尾服を見に纏った紳士がバートン車から降りて、胸を張りながら学園の敷地中に入っていた。

 今、学園の中は一種の戦場と化している。

 子供の関係はバチバチだし、なんなら親の関係もバチバチだ。


 位がほぼ同じ家の親はどちらの子がより優秀かで競いあうし、なんなら持っている服装や一緒につるんでいる友達なんかも評価に値するらしい。

 何とも面倒な見栄の張り合いだ。

 その点、私やミーナ、モクルさんと言った者達は親が遠く離れている場所にいるため、見に来る人がいない。

 でも、どんな人でも推薦状があればドラグニティ魔法学園に出入りできる。


 モクルさんは学園の先生に頼んで冒険者ギルドに申請を出しており、スカウトと言うか、自分の姿を見てもらって値踏みしてもらうようだ。

 評価点を貰えれば、冒険者ギルドで一番のランクからではなく、中間くらいから始められる。

 なかなか大きな利点があるみたい。それを聞いていたのか、ミーナもフェニル先生にお願いして申請を出していた。

 近くにモクルさんがいたからのっかったのかもしれない。


 私は朝から空気が重い冒険者女子寮の食堂で食事をとっていた。

 周りの者はほぼ貴族。

 別の教室の者が多く、今日授業参観をこなすクラスもある。

 だから、本当にピリピリした空気感だった。


 逆に私はその雰囲気が面白くて仕方がない。

 周りが危機感に陥っている中、自分だけ試合場にいないような感覚。

 まあ、当日は相当緊張するだろうが、周りに仲間もたくさんいるので怖がり過ぎると逆に不自然だ。


「はぁ、お父様とお母様が来てしまう……」

「うちもよ。どうしましょう、まだ、男性とお友達になれていないのに」

「うぅ、もし、授業中に当てられて答えられなかったらどうしよう、お父様とお母様に恥じをかかせてしまうわ」


 今日授業参観がある者は頭を抱えながら、自分の心配より自分に対する評価が下がるのを心配していた。

 失敗はつきものなのに、失敗は許されないという風潮でもあるかのよう。

 やはり厳しい家は少々可哀そうだ。

 私が失敗したら、家族に大笑いされて励まされるのに……。それくらいの気楽さが子供に取ってストレスがなくて丁度いい。


「皆、緊張しすぎだって~。もっと気楽に行こうよ~」


 ミーナは珍しく早起きしており、握り拳を作って力こぶを見せながら尻尾を振っている。気楽すぎるのもどうかと思うけどね。


「そうよ、失敗なんて滅多にしないし、怖がって体が強張っている時の方が失敗するわ」


 メロアは終始落ち着いた言動で、核心をとらえている。やはり優秀な家系だなぁ。精神状態もいつも通り。ニクスさんが絡んでいないだけで、凄い安定している。


「あぁ、ニクスお兄ちゃん……。今、近くに来ているらしいし、見に来てくれるかな。一七歳の若さでSランク冒険者になれるなんて、やっぱりニクスお兄ちゃんは凄いっ!」


 メロアはどこから取り出したのか、ニクスさんの肖像画に陰でブチュ~っとキスしていた。

 やはり、彼が絡むと彼女はバカになってしまうらしい。

 まあ、確かにSランクになったのは凄いが、影に私の存在がいることは秘密にしておかなければ。

 最悪、焼き殺されかねない。


「はぐ、はぐはぐはぐはぐ……。沢山食べて、体力をつけておかなければ」


 モクルさんは今日もやる気満々でお腹が臨月かと思うくらい膨らむほど料理を食べていた。

 そのすべてが体の活力になるのだから燃費が悪い体だ。でも、爆発力はさすがの一言。


「スゥ……はぁ……。スゥ……はぁ……」


 冒険者女子寮の寮長であるパットさんは腹式呼吸が止まらない。ずっと緊張している。

 彼女も三年生で進路が掛かっている。

 まだ、三年生になったばかりなのに、そこまで焦るのだろうか。

 結婚相手がいない女子は大学に行くか、仕事するかの二択だろう。

 大学側の推薦も掛かっているのかな。

 まあ、大学も授業参観で今後伸びそうな子を選ぶのかもしれない。そこでもれてしまったら、再度引っ張り上げられるのは難しいのかも。


 一年生は人数が多いので厳選されるわけじゃない。

 一方、三年生は一〇〇人程度。その中から優秀な者を選ぶのは難しくない。

 この前の市場で優秀な演奏家ばかり選ばれて、王都で演奏できるくらい優秀なのに選ばれなかった演奏家たちはそのまま、悔し涙を流す結果に終わる。

 いつか拾い上げられるかもしれないが、苦悩が続くのは人間なら誰も経験したくない。

 出来るなら、すぐに大手に巻かれたいものだ。三年生も同じ気持ちなのだろう。


「もぐもぐ、もぐもぐ……。あぁー、肉、美味しぃー」

「キララ様はあまりにも、危機感がなさすぎると思うのですが」


 ベスパは私が分けたパンや肉の欠片を手に持ち、口に運んでいる。


「別に危機感がない訳じゃないよ。今は感じていないだけ。どうせ、感じてくるんだから、切り離せるときは何も考えない。その方が心が疲れないんだよ」

「キララ様なりの防衛術ということですね。なるほどなるほど。私も無意味なことは考えないようにしますか」

「無意味なことって?」

「パンを右手で食べるか、左手で食べるか。肉を口の中に入れて食べるか、パンにはさんで食べるか。などですかね」

「確かに、無駄な思考だね」


 私達はバカになったようなあほずらで、朝食を得る。

 その間、カーレット先生の姿を見ていた。

 今日、サキア嬢と情報を交換するために最後までしっかりと観察する。

 今まで、彼女がおかしな行動を見せたのは休みの日、レオン王子を一発で見つけたスキルを使用した瞬間くらい。あの時から、スキルを使用していない。


「はぁ、情報を探る方ってなかなか面倒なんだね……」


 私は情報を探られる方だったので、パパラッチや盗撮、尾行、という犯罪行為をこなしていた者達の苦悩がわかってしまう。

 わかりたくもなかった。

 尻尾を中々見せない相手を調べるのが、これほど大変とは……。


 私の情報を取ろうとしていた情報誌の人達、大変だっただろうな。私の浮ついた情報一つ取れず、上司に滅茶苦茶怒られていたことだろう。いい気味だ。


 食事を終え、ミーナとメロアの二名と共に園舎の八階にある教室に向っていた。

 その間、多くの親が園舎の中に入っていく姿を目にする。

 護衛や執事、メイドも同行している場合が多い。

 そのため、一世帯に四名以上いる。

 一年生の教室はざっと八〇人ほどいるから、教室に三四〇人くらいがぎゅうぎゅう詰めになるということ。

 授業どころじゃないと思うが、そこは上手くやるのだろう。

 護衛は外で待っていてもらうとかかな。

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