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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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マルティさんを好きになった理由

 マルティさんは立ち上がってリーファさんに抱き着こうとしたのかもしれないが、力が入らず立ち上がれない様子だ。

 その姿を見て、リーファさんはマルティさんの近くにより、視線を合わせるため、中腰になる。


「僕、リーファちゃんにふさわしい男に成りたいんだ。皆から虐められて情けない僕がリーファちゃんにふさわしい相手だって、皆が思うような男に……。誰からも、リーファちゃんにふさわしい男は僕しかいないって知らしめたいんだ」


 マルティさんはリーファさんの肩を掴み、そのままぎゅっと抱き寄せる。


 私からすれば、そこまで思われていたら、十分なのだけど……。


 同じように思っていたのか、リーファさんの顔が真っ赤っかになっていく。

 顔が交差する位近くで抱き合っているため、顔は見えていない。

 我慢できなかったのか、瞳から涙がボロボロ溢れ出てきて華奢な腕でマルティさんを抱きしめる。


 すすり泣くリーファさんの背中をマルティさんが優しく撫でている姿はあまりにもおあつい……。

 私がこの場にいるのがやはり場違いな気がしてならない。

 とりあえず、イカロスの体に魔力を流し、疲れを緩和させる。


「お、おぉ……、すげぇ……。体が軽くなった!」


 ぶろろんといななくイカロスは私の周りを小刻みに周り、大きな体で擦り寄ってくる。

 感謝の気持ちを伝えてくれているらしい。

 だが、その光景を見たレクーがむっとなり、イカロスと私の間に割り込んでくる。

 三歳ごろになっても甘えん坊は治らず、私を取られたと思ってしまったようだ。全く、可愛いやつめ。


 同じようにマルティさんの方も痛みを緩和させようとおもったが、リーファさんに止められる。


「これは、マルティ君にとって良い薬だから。治さないで。この痛みがなくなるまで、練習しちゃ駄目だからね」

「そ、そんな。今週は授業参観もあるのに……」

「授業参観の前に体を壊したら意味ないでしょ。その日の前にキララちゃんに治してもらえばいい。だから、我慢して。ね?」

「うぅ……。わかった……」


 マルティさんは大切な許婚に練習のし過ぎを言い渡され、渋々頷いていた。

 リーファさんは彼の頭をよしよしと撫で、額に軽くキスする。


「ちょ、リ、リーファちゃん。いきなり……」

「が、頑張ったご褒美。私にできることなら、何でもするから。だ、だって、私、マルティ君の妻だし……」


 リーファさんは指先を突き合わせながら、耳にまで血を巡らせる。


 マルティさんからはあまりにも色っぽい横顔が、見えているだろう。

 彼の喉が動き、生唾を飲み込んでしまうほど今のリーファさんは色っぽい。

 ここでがっつかないのが、草食系なのか紳士なのか、はたまた心から好いているからなのか、わからないがマルティさんは息を吸って落ち着きを取り戻す。


「リーファちゃんも気を付けてね。乗バートンやバートン術の練習だけじゃなくて、魔法や剣術、勉強だって人一倍努力しているでしょ。凄く辛いだろうに、笑顔で皆に接している姿は僕の憧れなんだ。だから、リーファちゃんも僕に何でも言って。出来る限り、力になるよ」


 マルティさんは眼鏡を掛け直し、リーファさんの手をぎゅっと握りしめると笑顔を向けた。

 彼女の顔がさらにさらに赤くなって、熟したソラルムのように真っ赤に染まる。

 針で頬をつつけば血が吹き出しそうだ。


 紳士な姿、自分でも理解しているであろう美貌を使わない誠実さ、相手を思いやれる男の優しさに触れているリーファさんの心がマルティさんにがっちりと掴まれているのがわかってしまう。


 もう、彼女の眼中にどれだけイケメンが現れようと、お金持ち、王族が求婚して来ようと、跳ねのけてマルティさんに抱き着くだろう。そんな未来が手に取るようにわかる。


「マルティくん……。浮気したら殺す……」

「こ、殺すって……。良いよ、別に。浮気なんて微塵もする気がないから」

「マルティくん……」

「リーファちゃん……」


 両者はぎゅっと抱き合い、ラブラブなバカップルの姿を私にこれでもかと見せつけて来た。

 だが、嫌な気はしない。

 別に、私がマルティさんを好いているわけではないし、この二人は幸せになってもらいたいという気持ちの方が強い。

 そのまま、キスしちゃえと思っているのは私だけじゃないはず。


「じゃあ、私が背負って寮まで連れて行くよ」

「い、いや、それじゃあ、よからぬ噂が立てられちゃうよ」

「私は別にいいけど……」

「いや、僕、どれだけボコボコにされるか……。リーファちゃんの愛好団体が僕を張りつけに八つ裂きにしてくる未来が見えるよ」


 動けないマルティさんは私がビーの力を使ってドローンで荷物を運ぶように空中に浮かせ、学者寮まで運ばせる。

 イカロスは私とリーファさんで一緒に厩舎に移動させた。


「ねえ、キララちゃん。この前、マルティくんに何を言われたの?」

「え、何の話ですか?」

「ほら、ここの厩舎の裏で、こそこそ話していたでしょ。あの時、なんて言われたのかずっと気になっているんだけど」

「えっと、マルティさんに口止めされているので、言えません。でも、リーファさんにとって悪いことじゃないですよ。むしろ良いことです」


 マルティさんは武神祭の時、バートン術の勝負で一位になり、リーファさんに告白するという大きな目標を私に話してくれた。

 すでに婚約しているのだから、告白する必要はないのだけれど、彼は気持ちを伝えたくて仕方がないらしい。

 彼の言う、誰からも認められる男というのが、何かで一番になった者。

 自分の一番得意な競技で強豪がはびこる中、一番を取れば誰もが認める男だという証明になると考えているのだろう。

 ほんと、男ってバカだ。

 女はそんなものがなくても、一切気にしないのに、勝手に見栄を張っている。

 でも、彼が決めたのだから、私は応援するだけ。

 リーファさんに話せるわけないし、事実は伝えず、普通にいい話だったと伝えた。


「はぁ。マルティくんが無理しないように私がちゃんと見てあげないと……」

「リーファさんっていつからマルティさんのことが好きになったんですか?」

「え、えぇ……。き、聞いちゃう~?」


 リーファさんは私の顔を見ながら、にこにこした笑顔を浮かべ、近づいてきた。

 コイバナが出来るとわかるや否や、彼女は胸の内側の熱を吐き出すように話してくる。


「私がマルティくんと出会ったのは、もう、ほんと八、九年くらい前かな……。私のお兄様であるカイリ兄さんがマルティくんのお兄さんであるルドラさんと仲良くなったのがきっかけ。えっと、今、カイリ兄さんが二一歳くらいだから私が五歳くらいの時にあったのかな」

「へー、カイリさんがなんでルドラさんと仲が良くなったのか謎ですけど……」

「昔は寮が一緒だったんだって。カイリ兄さんは騎士寮じゃなくて、冒険者寮でルドラさんも学者寮じゃなくて、冒険者寮に入ってたんだよ」

「冒険者寮が人気だったんですかね」

「そうだろうね。まあ、カイリ兄さんはお父さんのこと尊敬しているけど好きじゃないみたいだし……」


 リーファさんは視線を落とした。

 家族関係はそこはかとなく悪いのかな?

 でも、カイリさんもいずれは家に戻ると言っている。

 お父さんの方も、リーファさんとマルティさんの婚約を許可するくらいだから、いい人だろうな。


「カイリ兄さんがルドラさんと遊ぶ時があって、その時、私とマルティくんは仲良くなれた。昔は何も考えず、遊んでいたんだけど……。少しずつ、なんか、いつもと違うなーって思い始めたの」

「何がいつもと違ったんですか?」

「マルティくんが私を狂暴な犬から守ってくれたことがあって、それからなんか、いつもと違う感覚が心の中で芽生えたの。最近までずっとわからなかったけど、たぶん、その時からマルティくんのことが好きになってたんだと思う」


 リーファさんは指先をツンツンとつつきながら、はにかんでいた。当時を思い出し、感情に浸っている。


「それでね。カイリ兄さんとルドラさんが少し疎遠になってから、私とマルティくんも軽く疎遠になった。中等部は違う学園だったから一二歳の時にマルティくんとドラグニティ魔法学園で再会したの。もう、その時は挨拶もよそよそしくて、昔みたいにリーファちゃんじゃなくてさん呼びになっていた。仲が悪い訳じゃなかったたんだけどね」

「それで、去年、さん呼びからちゃん呼びに戻ったんですよね」

「うん、キララちゃんのおかげでね。そのあたりかな……、マルティくんがバートン術に必死になって取り組んでるって知ったのは。そこから、もう、胸の内側にくすぶっていた感情が爆発しちゃって……。あぁ、スキィ~って、なっちゃった……」


 リーファさんは大きな胸に手を当て、ギューッと手の平を握る。

 結構力を入れており、どれだけ心臓が締め付けられたのか、想像に容易い。

 彼女の顔は、今も熱っていた。顔に現れやすい性格だ。

 カイリさんの妹だけあって、顔は絶世の美少女。大きくなれば、マザー張りの色気を醸し出すに決まっている。

 そんな彼女が一見さえないマルティさんが大好きなんて、どれだけの学生が気づいているだろうか。


「マルティくんのことを思うと、もう、夜も眠れなくて、体がうずうずして……どうしようもなくなっちゃうときが多々あるの。私、どれだけマルティくんのことが好きになっちゃったんだろうって逆に怖くなる時もある。でも、彼を好きになれた私は自分が誇らしいの」


 リーファさんは垂れた金髪を耳に掛け、少し上を見る。

 空に現れ始めた星を見ている彼女の瞳は星空を映したようにキラキラと輝いていた。

 やはり、恋する女の子はとても魅力的だ。

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