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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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私がSランク冒険者?

「あぁ、キララちゃんに乱暴にされると胸がどきどきしちゃうのにゃ……」


 彼女が変な性癖に目覚めそうだったので、これ以上手出しできず、私は自分が座っていた席に戻る。


 トラスさんがいるのは心強いが、小さなバルディアギルドでも問題を起こしかねない彼女がウルフィリアギルドの本部に来て大丈夫だったのだろうか。


「はぁ、シグマさんも心配しているだろうな。いや、逆にトラスさんをおい出せて清々しているかも……」

「にゃぁ~、そんなこと言わないでにゃ~。ニャーは一年後、絶対に帰るのにゃ。王都は人と獣族がいっぱいで息苦しいのにゃ~」


 トラスさんは私のもとに戻って来て、抱き着いてきた。

 顔見知りなので、友達みたいな雰囲気を醸し出しているが、この方と友達になった覚えはない。


「早く昼食にしないと、昼休憩が終わりますよ」

「はっ、そ、そうなのにゃ。ここは王都の冒険者ギルド……。午後からずっと暇だと思ってたのにゃ」

「そんな訳ないでしょ。と言うか、大体の企業は午後にずっと暇じゃないと思いますけどね」


 トラスさんは、食堂のおばちゃんにお金を払おうとしてポケットの至る所に手を突っ込むが、私の方を向いて泣き着いていた。

 どうやら、お金が銅貨一枚もないらしい。

 部屋に置いてきたようだ。

 でも、戻るのも面倒だから、お金を貸してほしいと。彼女は戦い以外、とことん駄目な獣族のようだ。


 私は銀貨数枚を手渡し、今後、何かしら手を貸してもらえるように借りを作っておく。

 

 トラスさんは昼食にありつけたようで、私の隣で両手を握り合わせ、神に感謝してから食べ始める。

 私の隣に座られても困るのだけど……。


「あぁ~、トラスさん、こんにちは。やっと到着したんですね」


 反対側の席に青髪の獣族が座った。

 その顔と声から、私の知り合いだとわかる。

 ニクスさんと結婚する相手のミリアさんだ。

 彼女は両手を頬に当て、トラスさんが食べている肉料理を見ながら微笑む。


「み、ミリア。これは、ニャーの肉なのにゃ。あげないのにゃ」


 ――私のお金で買ったのに。


「えぇー、一口くらい良いじゃないですか~」


 愛くるしく、口を開けていると骨付きの焼かれた肉が飛び込んでくる。

 持ち手に手が付いており、たどってみると赤髪の冒険者だった。


「ほら、ミリアの好きな骨付きのガッルスの肉。他の人の食べ物をたかろうとしない」

「むぅー、はぁーい」


 ミリアさんは骨付き肉を骨付きのまま、バリバリ食す。いや、顎どうなっているの……。まあ、食べられるのならいいのだけれど。


「トラスさん、こんにちは。キララさんも……こんにちは」


 赤髪冒険者のニクスさんは私の姿を見ながら、苦い顔で笑った。


 首元にちらりと見える白金の板がついたネックレスが目に留まる。

 そのネックレスはSランク冒険者の証……。いやいや、さすがに見間違いだろう。


「ニクスさん、なんか白い板が見えるんですが?」

「あぁ、えっと、説明するとこの前のプテダクティルの討伐数が多すぎてSランク冒険者になれるくらい点数が盛られちゃって……」


 ニクスさんは泣きたそうな顔で呟いた。

 確かに大量のプテダクティルを狩ったのはニクスさんとミリアさん、ハイネさんの三人だ。

 だが、それは私の手助けがあったからで。


「キアズさんにも説明したんだけど……、その、問題ないって言われちゃって」

「えぇ、おかしいですよそんなの。正直、ニクスさん達は、まだSランク冒険者ほどの実力がないと思います。身の丈に合った階級じゃないと早死にしますよ」


 身の丈に合った仕事、身の丈に合った学校、身の丈に合った生活。

 すべて自分の実力で決まる。

 自分の実力がないのに、海外で働いても路頭に迷うだけ。

 運よく最下位では入れた名門大学でも単位が取れず留年し続ける可能性が高い。

 宝くじが当たって八億円を手にしても本物のお金持ちじゃないから、あっという間にスッカラカン。

 すべて自分の身の丈に合っていない生活だから、結局破綻してしまう。


 冒険者はSランク冒険者とAランク冒険者の差が大きすぎる。

 あの数のプテダクティルを倒しているからといってそうやすやすとなれるわけない。

 まあ、八〇〇羽くらいいたかもしれないけど。


 Sランク冒険者とAランク冒険者は雲泥の差がある。

 全体の一〇パーセントがAランク冒険者で、全体の一パーセント未満がSランク冒険者だ。

 何万人もいる冒険者の中で八組程度しかいないのだから、相当高い位なのに……。


「キララさん、僕たちと冒険者パーティーを組んだ時があったでしょ」

「ありましたね。一年半ちかく前に……」

「その時のパーティー、今も継続中だったみたい……」


 ニクスさんは右手で後頭部を掻き、左手で白金プレートを持っている。


 いや、おかしい。


 私は冒険者登録されていないはずだ。

 なぜ冒険者として入っているのだろうか?


「…………ひゅ~、ひゅ~」


 私の隣にいるトラスさんは下手くそな口笛を吹き、こっちの話に一切混ざろうとしてこない。

 彼女は当時、私とニクスさん達をつなげてくれた人物なわけだが、何となく概要が見える気がして来た。


「トラスさん、なにしたんですか?」

「い、いや~、キララちゃんとニクスくん達がブラッディバードを討伐に行ったとき、さすがに未成年が依頼に行ったら不味いかなーって思って、キララちゃんの偽物を書類に書き込んじゃった」


 トラスさんは他人事と言いたそうに笑いながら呟く。


 彼女の発言から推測するに、過去の私はニクスさんのパーティーメンバーとして正式に配属されており、そのまま記録として残されていたと。

 そうなると、私が倒したプテダクティルの個体もニクスさん達の冒険者パーティーの得点になり、普通にSランク冒険者入りが可能になってしまったってことか。


 今更、嘘だと報告したらトラスさんではなく、バルディアギルドのギルドマスターであるシグマさんの方に規則違反の罰則が入るため、無理くり明かせないという判断だったらしい。


「つまり、キララちゃんもSランク冒険者パーティーの仲間~、ってこと」


 私の背後に回って来たミリアさんはムギュっと背中に抱き着いてくる。


 私は苦笑いどころか、愛想笑いも出来ない状況に陥っていた。


 もし、このまま行くと未成年のSランク冒険者が爆誕してしまう。

 さすがにまずい。

 このままだと、ドラグニティ魔法学園も退学になりかねないのでは?


 どれだけ凄いことでも犯罪は犯罪。

 規則を破れば、国を守っても犯罪になるのだ。

 ゾンビを殺しても相手が国民なら犯罪になるのと同じ……。

 バレなきゃいいという問題ではない。彼らに回ってくるSランク冒険者の依頼を私もこなさなければならないといけないことになってしまう。

 そんなの危なすぎるし、荷が重すぎる。


「わ、私が説明してきます。き、キアズさんと仲がいいのでもしかしたら取り消せる可能性がありますから……」

「そうなの? なら、お願いしたいかな。出来るだけ穏便にしてほしいけど……」

「でもでも、私達も犯罪者扱いされない?」

「うぅん……。可能性はあるけれど、僕たちがSランク冒険者の仕事をこなせる技量が備わっていないから、危険だ」


 ニクスさんは目先の栄光に踊らされず、白金の首飾りを容易く外す。

 それができるのはさすがだ。もう、将来有望な優秀な冒険者だと物語っていた。

 きっと、彼らならいつかSランク冒険者になれるだろう。


『聖者の騎士』でも何十年も冒険者を第一線で戦い続けてSランク冒険者になったのだ。

 まあ、私が成人した瞬間、四人のパーティーメンバーを合わせればSランク冒険者ほどの実力は確かにある。


「はぁー、せっかくSランク冒険者の高みの景色に浸ってたのに……」


 ミリアさんも白金の首飾りを外し、私のもとに手渡してくる。

 ハイネさんもあとから合流し、話し合いの末、快く白金の首飾りを手渡してくれた。

 四枚目の私用の首飾りを手に取り、トラスさんの尻尾を握りしめて、共にキアズさんの部屋に向かう。


 キアズさんがウルフィリアギルドを操っているのだから、頼めば取り下げてくれるはずだ。

 彼は私に多くの借りがある。

 それをちらつかせ、トラスさんの失敗を心から伝えれば、わかってくれるはず。

 そう思っていたのだが……、


「Sランク冒険者は取り下げられない」

「な、何でですか!」


 高級な机に向かって台パン。私の手のほうが痛い。


「私だって疑問に思ったさ。名前が完全に一致しているし、ブラッディバードの討伐数とプテダクティルの討伐数が普通じゃないもん。年齢が違うけれど、これ、キララさんじゃんって」


 キアズさんがバカになってしまった?

 いや、わかっていたなら、取りやめてくれればよかったのに。


 彼は黒い椅子に深々と座り、羽根ペンで顔を掻きながらため息をこぼす。


「今、Sランク冒険者の数が足りていないのが現状です。出来るなら、Aランク冒険者からSランク冒険者になるための敷居を下げたいくらいなんですよ」

「だ、だからって、ニクスさん達にSランク冒険者の実力はありません。そんな彼らに仕事を任せるのは危険すぎます」

「でも、キララさんが入ればSランク冒険者の実力は確実にありますよね?」

「わ、私、未成年ですよ! 言っちゃなんですけど、未成年で冒険者になるのは犯罪ですよね! 何かしらの罰則を受けても良いですから、取り下げ、又は『妖精の騎士』から私の名前の破棄を……」

「気づかれなければ犯罪じゃないんだよ、キララさん……」


 キアズさんは悪い顔しながら、両手を握っていた。

 どう考えても、彼は何かしら考えている様子だ。嫌な予感しかしない。


「キララさんの年齢は今年で一三歳。資料に書かれていた年齢は一五歳、おととしだから、一一歳の時の資料なわけだ。今、架空のキララさんの年齢は一七歳。うぅん、わからないわからない」

「いや、わかるでしょ! 私、自分で言うのもなんですけど一七歳に絶対見えません!」

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