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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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ルークス王国のお金事情

 私はクレアさんに頭を下げた。

 ルドラさんやマルチスさんはものすごく忙しい。

 本来なら、商品を受け取ってもらうのすら難しいのに、多くの借りのおかげで見てもらえる。それだけでも大きい。

 新しいブランドの服が大手ブランドに潰されないよう、大手の販売業者に話を持ち掛けたかいがあった。伝手は作っておくべきだな。


 私とクレアさんは戻って来たビー達の持っている依頼達成書にハンコを押していき、仕事を終える。

 午前中で終わってしまえるのもこの仕事の良い所だ。

 王都にいる人たちはお金持ちだが、時間がない。

 仕事ばかりで雑用は他人にやってもらいたがるため、仕事がなくならない。

 お金の流れは血の巡りと同じだ。

 お金が国を生かしている。

 お金の流れが滞れば国の経済は傾き、危険な状況に陥るのだ。


「最近、ウトサが高くてお菓子も高いのよねー。ほんと、体に危険なウトサがあるという噂も聞くし。ウトサの販売制限は国王が定めたのだから仕方ないのだけれど……」


 クレアさんは食堂で定食を頼み、白パンをちぎって食べながら呟いていた。


「ウトサの購入が滞っていると他の国に知られたら、結構痛いですよね……」

「そりゃそうよ。だって、シーミウ国はウトサを買ってくれるルークス王国の品を沢山買ってくれていたんだから。逆に、ウトサを買わなくなったら、いずれお金持ちのシーミウ国がルークス王国の品を買ってくれなくなる。他国が目を付けてシーミウ国のウトサを沢山買って仲が良くなれば、その間に割り込むのも難しい。だから、ウトサの値上がりは一時的なものだと思うけれど……」


 ウトサはシーミウ国の特産品で甘味料としてあまりに優れている。

 甜菜やサトウキビに近い素材から作るのが一般的だ。

 資料でしか知らないけれど、シーミウ国あたりの気候でよく育ち、他国に出荷されているらしい。

 加えてソウルもシーミウ国の特産品で、塩味を持った品だ。

 どちらも、料理をおいしくさせるために必要な品で、他国が欲しがっている。

 そのため、他国との戦争が多かったそうだが、ルークス王国と親しい仲になり、いざとなればシーミウ国を守る条約を結んでいる。

 その代わり、ルークス王国に積極的にウトサとソウルを流してもらい、こちらの商品も買ってもらっている。

 ただ……、正教会が作り出した魔造ウトサの影響で国が一瞬滅びかけた。

 その結果、ルークス王はウトサを購入できる者にいったん制限を付けた。

 そうなったら、怒るのは国民だけではなく、シーミウ国の者も怒る。

 だから、サキア嬢が偵察に来たわけだ。

 商人のルドラさんやマルチスさんのおかげで、商売ルートの方は確保されつつある。

 だが、大量に売買出来ない状況が続けば、お金を儲けるためにシーミウ国も条約を破棄せざるをえないかもしれない。

 そうなったら、最悪戦争が起こるかも……。


「ルークス王国がシーミウ国の条約破棄を理由に国に進軍する可能性はゼロじゃないですよね?」

「まあ、今のところはね。現ルークス王は戦争が嫌いだから、穏便にことを進めようとしていると思うけれど、軍事力の差はあまりに大きいから、戦争するとなったら勝てる。勝てる戦いをしないのはなぜかと、五大老や大臣たちの間でも良く言われているそうよ。記事に乗ってたわ」


 クレアさんは新聞のような情報誌を開き、私に見せてくる。

 戦争という嫌な文字が並び、不満が募るのはシーミウ国だけではなく、ルークス王国民もそうだ。


 美味しい品が食べられないという現実が辛いのはわかるが、それは王都だけの話であって田舎はそもそも甘い品やしょっぱい品が食べられない。

 ルークス王は田舎の方にも目を向けてくれているのだろう。

 もし、王都で質の悪いウトサが蔓延れば、いずれ田舎にも質が悪いウトサが流れていく。

 貴族が儲かっている理由は田舎の土地に住む人々が税金を納めてくれるからだ。

 根っこが枯れたら花は咲かないのと同じように、田舎の人々が消えれば王都にお金も流れず、国が亡びる。


 そこまで見越しているのなら、やはりルークス王は賢王と呼ぶにふさわしい人物だろう。私はルークス王を押すが、目先のことしか考えていない貴族も多いようす……。


 この状況で正教会が魔造ウトサを売り出せる体制になってしまったら、最悪な事態になる。

 ウトサの制限を解除した瞬間、正教会の魔造ウトサが広がり、解除しなければシーミウ国との貿易が廃れ、国のお金回りが弱まり国力低下につながる。

 どちらに転んでも、国が弱まるのは間違いない。


「ルークス王はソウルを多く輸入してウトサ分を埋める方針を立てる、か。なるほどね。ソウルも大切だ……。でも……」


 もし、ソウルまで魔造ソウルなんて出て来たもんなら、もう国が……。


 私は嫌な想像しか出来なくなってきた。

 正教会は現ルークス王が嫌いなのだろう。

 改革派と思われる第二王子のキアン王子を押すくらいだし、自分達の利益しか求めていない。

 その彼らの大きな目的もわかっていない。

 国が滅びかけている現状が理解できていないのだろうか……。


「生憎、ソウルの値段は安くなって、多くの人が幸せになれるか。一時かもしれないけれど……」


 ソウルとウトサの構造は塩と砂糖と同じく、全く違う。

 ソウルはミネラルだから鉱物の類で、ウトサは炭水化物だ。

 作り方も全然違うから、魔造ウトサを作るのに何十年もかかったと考えると、魔造ソウルを作るのも時間がかかると思われる。

 でも、女神は何もしなければあと八年程度で世界が滅びるといっていた。

 その話を考慮すると八年以内に魔造ソウルも生み出されるのか。


「キララ、何深刻な顔しているんだ?」


 私の膝に顎を乗せて来たのはモフモフしたフェンリルだった。

 小型犬くらいに小さくなっている彼は尻尾を振り、肉を欲している。

 私が買った魔物のステーキ肉を食べさせてあげると、お腹を見せながら喜び出す。

 お腹を摩ると、驚くくらい元気になっていた。


「……はぁ~、肉もいいが、魚も食いたいな」

「文句言わないの。肉を食べさせてもらっているだけ、ありがたいと……」


 肉、魚……。シーミウ国から魚は運ばれてこないのだろうか。

 シーミウ(海)の魚を見た覚えがほぼない。料理に使われるたんぱく質は魔物の肉や川魚ばかり。

 魔法で冷凍しながら運べば沢山輸入できるんじゃないの?

 シーミウ国の品で別の品を買えば戦争が回避できるんじゃ。そう簡単でもないのかな?

 疑問は尽きないが、私はただの村人だ。

 国を動かすほど大きな発言権は持ち合わせていない。


「にゃぁ、にゃぁ、にゃぁ~。酒が飲みたいニャァ……」


 どこからか、怠け者の猫の声が聞こえる。

 受付嬢もずっと働いているわけではなく、昼休憩に入ったようだ。

 懐中時計を見ると午前一二時。

 お酒は駄目だろ。午後の仕事に支障が出る。

 もしかすると、バルディアギルドの時は飲んでいたのかもしれない。


 私が知る獣族の中で一番強いトラスさんが今年入って来た受付嬢の方の中で一番情けない姿をさらしていた。

 このままだと、新人の子達がトラスさんの話しを聞かなくなってしまう。


「トラスさん、そんな猫背でいたらお婆ちゃんみたいに思われますよ」

「にゃぁ~、キララちゃん、そこは勘弁してにゃ~」


 トラスさんはテーブルに突っ伏し、心からの声を漏らしていた。

 背筋を伸ばすだけでもシャキッとして見えるのだから、やらない手はない。

 常に背筋を伸ばしていないから疲れてしまうのだ。


 私はトラスさんの両手を持ち、背中に回って軽く引っ張る。

 すると、トラスさんの背中がS字に戻り、しっかりと伸びていた。


「こ、これ、胸、ぱっつぱっつで……。ニャっ!」


 トラスさんの制服の胸ボタンが弾け、綺麗な柔肌が露出する。

 ぷるりと震えるその脂肪は男性冒険者を悩殺し、女性達を苦笑いさせた。これだから巨乳は。


「なんで、制服の大きさがあっていないんですか?」

「だ、だって、入ったばかりだし、獣族用の服じゃないし」

「まあ、ないなら仕方ありません。ちょっと直しますから、じっとしていてください」


 私はネアちゃんにお願いし、弾けたボタンを縫い直してもらう。

 胸のボタンを閉じようとするが、胸がパツパツすぎて閉まらないので、そのままぱっくり割れた状態にした。

 その上から上着を羽織れば、そこはかとなく卑猥な受付嬢の雰囲気になる。


「キララちゃん、さすがのニャーでも恥ずかしいのにゃ……」

「別にいいじゃないですか、減るもんじゃないですし……。そのままで過ごしたら、ちょっとは人目を気にするようになるんじゃないですか」

「ニャァ~、キララちゃんが意地悪するのにゃぁ」


 トラスさん用の内シャツをベスパに作ってもらい、彼女は女性用の脱衣所で服を着替えてきた。

 薄茶色の内着が彼女の虎茶色の髪に良く似合っている。

 首元に付いているリボンは赤く、羽織っている紺色の上着は清楚の雰囲気を醸し出していた。

 スラッと長い脚はミニスカートが映えまくっており、すべすべの太ももの内側が何とも聖域のように見える。

 彼女は化粧一つしておらず、もとから大きな切れ長の目に高い鼻、すべすべの肌……。少々赤い唇。

 もう、若々しい一八歳の状態をそのまま維持しているような見た目。

 そこで止まっているのが羨ましい。

 私は子供っぽいままで止まってしまっているので、一八歳くらいの見た目で止まってほしかった。

 これから成長すれば、何とかなるだろうか。


「いや~、苦しかったニャ~。キララちゃん、ありがとうなのにゃ」

「他の方と衣装は合わせた方がいいので、新しい服を買ってくださいね」

「まあ、着られるまで着つづけるにゃ。キララちゃんの服は着やすいから重宝しているのにゃ。特に、下着の類は最高なのにゃ~」


 トラスさんは頼んでもないのに、ミニスカートの裾をもってひらりとめくり、聖域を見せてくる。

 周りの男性達は悩殺され、女性達は引いていた。

 私はこの変態猫野郎の尻尾を掴み、グイグイと引っ張る。


「にゃ、や、やめ、そ、そこは駄目なのにゃ、尻尾は弱いのニャァ~」


 トラスさんは甘い声を辺りに響かせ、テーブルに突っ伏していた。脚が伸び切っているため、お尻が高く浮いている。むっちむち……。

 尻尾を手放すと、彼女はヘロヘロと膝を床に付ける。

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