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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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カーレット先生の監視

「ありがとう、キララさん! これで、この後の部活にいける!」

「よ、喜んでもらえてよかったです……」


 私は苦笑いを浮かべ、モクルさんはそのスポーツブラを付けたまま、走り去っていった。

 だが、どちらにしろブラジャーだ。

 彼女はブラジャーを曝した状態で走っているのと同じ。黙っておこう……。

 周りから「あれはブラジャーではなく、ああいう服なんだろうな」と思われればそれでいい。

 でも、私だけはあの服がブラジャーだとわかってしまうため、吹き出しそうになる。


「はぁ……、自然委員の仕事は終わった。後は監視か」


 私は仕事を終え、昼食を得に冒険者女子寮に向かった。

 モクルさんは新しい運動着に着替え、口をもごもごさせながら出ていく。どうやら、もう昼食を得てしまったらしい。早すぎる。


 私は手洗いうがいを済ませ、食堂のおばちゃんから料理が乗ったお盆を受け取る。

 テーブル席に座ってから、ビー達の視界を借りる。

 まさしく、食事しながらのテレビ観賞と同じ。

 本当はどちらかに集中した方がいいのだけれど、なぜかやってしまう。

 携帯電話を見ながらの食事、テレビで映画やドラマ、アニメを見ながらの食事、止められないくらい楽しいのは確かだ。でも、どちらも効果が半減してしまうというのが、人間の頭の悪いところだ。


 私は食事せず、いったん映像の方に意識を向ける。


 現在、乗バートンの先生兼乗バートン部の顧問である、カーレット先生を監視していた。

 今回は一人だけなので頭がパンクせずに細部まで調べられそうだ。


 乗バートン部は昼休憩の真っ最中。

 貴族たちはそれぞれ購買に行く、持参した料理を食べる、食堂に向かう、といった方法を取り休憩していた。


 カーレット先生は第三闘技場の観客席でパンを貪っている。なかなかワイルドな食事だ。


「カーレット先生、お疲れ様です」

「おう、生徒会長、お疲れ様。どうかしたか?」

「い、いえ、今日もお昼は別の場所で食べてきますね」

「そうか。午後一時すぎからまた練習だ。いつも通り、新入生たちの良い手本になってくれ」


 カーレット先生は部員のリーファさんの肩を叩きながら、笑っていた。その姿からは、別に悪い人に見えない……。


 リーファさんはそのまま、マルティさんがいるバートン術部の方に足を運ぶ。彼にサンドイッチを食べさせ、幸せそうな時間を過ごしていた。

 休みの日までイチャイチャしやがって。間接キッスして、きゃ~って、お前らキス出来るだろうが。さっさとしろや。っと、口調が荒くなってしまいそうなほどもどかしい。


「うぅん……」


 カーレット先生は顎に手を置き、第三闘技場の広いバートン場を見ていた。

 なにを考えているのかまでは読み取れないので、脳内で考えられるとどうしようもない。少しでもいいからぼろを吐いてくれればいいのだけれど……。


「どうやって、上手く見せるか。綺麗に、優雅に、カッコよく……。難しい所だ」


 カーレット先生の視線の先に、バートンに乗っているレオン王子がいた。

 彼も乗バートン部なので毎日練習している。お昼休憩なのに他の皆よりも多く練習したいからか、ずっと、一人で練習している。休憩も大切だと知らないのだろうか。


「レオン王子、もう昼休憩だ。今は休め」

「わ、わかってます。あと少しだけ、練習させてください」

「たく……」


 カーレット先生は後頭部を掻き、やる気があるレオン王子を何とも面倒臭がっていた。

 まあ、部員に怪我があったら先生の責任になるので、目が離せないのだろう。

 彼女も部活にずっとつっきりで疲れているはずだ。休みたくても休めない状況ほど辛いことはない。そんな雰囲気をぷんぷんと放っている。


 レオン王子は結局午後一二時三〇分ごろまで練習していた。

 その後、カーレット先生は観覧席をはなれ、闘技場の内部に移動する。

 そのまま、ビーが付いていくと、どこからかパーッと光が放たれた。

 カーレット先生ではなく、別の誰かが何かしらスキルを使った模様。

 闘技場内なら魔法やスキルを使用しても問題ない。ただ、闘技場の中にある通路で何かしらスキルを使うのは危険だ。そのことについて、カーレット先生が生徒を叱っていた。

 そんな彼女はトイレに向かう。

 トイレまで覗くのは犯罪臭がすごいが、私も女だから別に問題ない。

 いや、カーレット先生のトイレを真上から観察するわけじゃない。ドアの裏で待っているだけ。アイドルのコンサートでトイレ待ちしている気分だ。


 パーッと光が放たれる。扉の先から……、淡い光だ。


 何かのスキルを発動した模様。すぐに、光は消え、カーレット先生が扉から出てくる。

 彼女のスキルはこのような場所でも使えるということだ。

 戦いのスキルではないっぽい……。

 スキルの当たりと外れの差が大きいので、彼女が物凄く強いスキルを持っているともいえない。

 ただただ、便秘にならないようにするスキルかもしれないし、お尻を拭かなくても綺麗になるスキルかもしれない。

 まだ、相手を覗くスキルや通信するスキルだと断定できず、お腹の中に便が溜まっているようなもどかしい気持ちだ……。あ、アイドルはトイレなどしないけどね、ってそれじゃあ人間じゃないやないかい。


 カーレット先生は蛇口をひねり、水で手を洗い、トイレを出た。

 そのまま、外に移動しバートンの世話にいくのかと思ったが、レオン王子がいる場所に移動した。

 レオン王子がいる場所がわかっていたかのような移動速度だった。

 バートンを世話しているのだから、バートン達が心配で足を運ぶのが普通じゃないだろうか?

 午前中からずっとバートン達の厩舎に移動していない。それは、なぜか……。


 ――バートン達の様子がどこからでも確認できるからか?


 そう思うと、トイレでスキルを使ってバートン達の様子を見て、レオン王子の居場所を探していた可能性も出てくる。

 まあ、私の勝手な憶測だけれど……。

 それにしても、レオン王子の場所を一発で当てられるのはおかしい。

 広いドラグニティ学園の中から、人ひとり見つけるのがどれだけ大変か。

 私のようなスキルを持っていれば簡単だけど、普通は難しい。

 ドームの中から一人の子供を見つけるのすら難しいのに。なんなら、スーパーの中でも子供は迷子になる。どれだけ探しても見つけられない時だってざらだろう。

 なのに、一発で行き場を当てた。

 まあ、部活動の先生だから生徒の食事場所くらい把握しているか?

 いや、ありえないだろう。なんせ、乗バートン部の人数は他の部活と比べてバカみたいに多い。その中の全員の食事場所を覚えるほど無駄なことはない。

 ほぼ全員貴族なのだから覚える価値がないというか、周りに隠れた執事やメイドがいるので比較的安全だ。

 そう考えると、カーレット先生がレオン王子を毎日付けていて、どこに行くのか把握しているということか。


 ――でも、入学してから休み中の部活は今日で三回目。三回同じ場所に居たからといって今日も同じ場所に居るとは限らないだろう。

 そもそも、彼は三回も同じ場所に居なかったと思われる。

 前回の監視の時にレオン王子も見ていたが、昼食の場所は違った。

 一回目は闘技場の観覧席、二回目は闘技場の裏、三回目は購買に行って道のベンチで食事。今回は初めての場所だ。それを一発で見つけるのはさすがにあやしい……。


「はぁ、もう少し乗バートンが上手くなれたらな。武神祭の時、バートンで歩かないといけない、そこでみっともない姿を見せたら、お父様にどう思われるか……」


 レオン王子はパンを小さくちぎり、胃が重たそうな顔で小さな一口を飲み込む。

 溜息が止まらず、何かしら思い悩んでいる様子。

 その姿を遠くから観察しているのがカーレット先生。

 まあ、王族が一人でいたら危ないのはわかる。その点を危惧して観察しているなら、教員の鏡というべきだろう。

 だが、あやしいとふんだ今の段階でそんな張り込みをされると疑ってしまう。


「レオン王子、お隣いいかしら」


 レオン王子の隣に来たのは今朝、私に売れ残ったドレスを卸したローティア嬢だ。

 部活中に汗を流したはずだが、すでに乾いた体操服に着替え直しており、汗対策を取っている。さすがだ。

 自慢のロール髪も汗っぽくないので、魔法かスキルか、何かしらで手入れしてきたと思われる。

 手もとにバスケットを持っている。

 彼女がベンチに座ろうとすると、レオン王子がハンカチを取り出してローティア嬢の座りそうな場所に敷く。そういうのは普通にこなせるんだ……。


「どうぞ」

「あ、ありがとうございますわ……」


 レオン王子の紳士的な行動にローティア嬢はすでにキュンキュンしているのか、頬を赤らめている。

 その姿を見ている私もキュンキュンしちゃっている。


 だが今のレオン王子は、メロアが好きな状態。本来なら泣いて喜びそうな状況だ。

 メロアがいないから私が近づいてフェニクスのフレアでアンテナを妨害してもいいのだけれど、最悪、カーレット先生に目を付けられるのでやめておく。


「お昼、まだでしたら、これ。一緒に食べませんか?」


 ローティア嬢は顔を赤らめながらバスケットを開ける。なかにサンドイッチが入っており、彼女の手作りだとわかった。


「サンドイッチ……」

「え、えっと、えっと……リーファ様がサンドイッチ作りに嵌っているそうで、わたくしも教えてもらったんですわ……。リーファ様の教え通りに作ったので、味は美味しいと思うのですけれど」


 ローティア嬢は毒見を自分で試し、毒が入っていないということを教えてからバスケットを差し出す。

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