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梅雨中の晴時

バートン達の足跡はモークルたちの足跡にかき消され、地面は凸凹状態になっている。


『…また雨が降れば元の状態に戻るか…』と私は開き直る。


運動出来なかったストレスを散歩で発散したバートンやモークル達は厩舎に戻り、生き生きした姿を見て私は満足する。


「さすがに…メークルたちは無理だよね…」


私は一応ベスパに聞いてみた。


「はい…メークル達は食事しか考えていませんから。私の声に耳を傾けてくれません…」


メークル達には我慢してもらうしかない…。


――もっと地面が乾いたら解き放ってあげるから…。それまで食事で気を紛らわしてもらおう。


「さてと…レモネの木はどうなっているかな…雨の日が長かったから腐ってないと良いけど…」


私は以前、雨が降っていたにもかかわらず、レモネの木を川の近くにしっかりと植えておいた。


私はそれを今、確認しに行くため川に向っている。


「あ、見えてきた…」


ネ―ド村と同じく、川の近くに植えたレモネの木はしっかりと立っていた。


「川の増水を考えておいてよかった。…そうじゃないと流されてたよ」


レモネの木近くまで地面は川の流れと同じ波紋を作っていた。


増水時にレモネの木近くまで川の水が来たのだろう。


それでも、レモネの木は腐らず、青々とした葉を生い茂らせている。


レモネの木の無事を確認した私は、レモネを籠いっぱいに入れる。


そして、ふら付きながらも、重たい籠を家まで持って帰った。


6日前…私はチーズを初めて販売する日を明日に決めてしまっていた…。


私は…忙しいにも関わらず自分で言いだしたのだ…。


言ってしまったのだから…責任をもって行わなければならない。


言い出しっぺの私は、ベスパにお願いし数10本の牛乳パックを家まで運んでもらった。


天気が良くなったお陰か、やる気が凄く湧いてくる。


今日雨が降っていたら「めんどうだな~」と思いながらやっていただろう。


気分のいいお陰で『チーズを作り終わった後、何しようか…』といった先を考える余裕まである。


「よし! チーズを作るぞ~」


私は沸騰しない程度に牛乳を温める。


レモネを半分に切り、レモネ汁を搾る。


温めた牛乳にレモネ汁を加え素早く混ぜる。


固まってきたら、網籠の上に布を敷き鍋の中身をそっと流し込んでいく。


チーズを作る際に出てくるホエイは網を抜け下に置いてある他の樽に入るようにした。


モークルの皆が頑張って作った乳を一滴も無駄にはしない。


布にはレモネの酸によって固まったチーズがバラバラになっているので布をぎゅっと絞り、形を整える。



これを一工程としてあと19回、私は繰り返さなければならない。


――1回の工程に体感で約15分くらい…。つまり…285分…4時間45分…あ~考えない考えない…。今はチーズを作る作業に集中!


先ほど12時の鐘が鳴ったところだ…。


――まだ時間はたっぷり有るのだから焦らず正確に…。不純物が入らないようにしないと…クレームが来ちゃう。


お母さんは今猟師さんの所に行っており、昼は帰って来れないと言っていた。


つまり私がみんなの昼ご飯を作らなければならない。


――この工程を行いながら…。こんなの…晴れてなかったらやってられないよ!


そんな愚痴を口に出して言いたくなるが、もう既に後ろから足音が聞こえてくるので私は叫ぶのを止めた。


「姉さんただいま。今日の仕事は半分終わったよ」


「こっちも牛乳運ぶの終わった」


ライトとシャインは二人同時に家へ帰ってきた。


残りはお父さんのみ。


「姉さん、今日はチーズを作っているんだね」


「そうだよ…、私が言いだした仕事だからね…」


「あ~、明日初めてチーズを売るんだっけ…。露店が埋まる程、村人は欲しがっているんだから20個なんて余裕で無くなると思うけど…」


「うん…でも今…頑張って作っても20個が限界だからさ…。とりあえず、20個販売してみようかなと思って…。もしチーズが好評なら少しずつ売る量を増やしていければいいかな…。まぁ…甘い考えなんだけどね」


『ぐ~~』×2


ライトとシャインのお腹はタイミングよく同時に鳴った。


双子はお腹の鳴るタイミングも同じらしい…。


「あ~…、お腹減ったよね、昼食作るから二人ともちょっと待ってね」


私は急いで昼食を用意する。


「えっとえっと…黒パンに…チーズをのせて。『ファイア』であぶる…」


すると固形だったチーズは溶けだし、ほどよく焦げ目がついたところでスプーンを使い薄く延ばす。


「うん、良い感じ! 次に…さっき絞ったホエイを使って…スープにしよう」


ホエイを温め、山で見つけた食べれる山菜と木の実を適量加え、乾燥させた蜂の子を…何とか目を瞑りながら少々加える。


ホエイに残るレモネのさわやかな香りと牛乳の優しい甘さが合わさり、塩分はなくとも其れなりに食べられる味になっている。


「よし…これでいいかな」


テーブルに4人分の昼食を並べ、お父さんが帰ってくるまでお腹を鳴らしながら私達は待つ…。


「ただいま~。いや~お腹減ったな…」


「お父さん早く! お腹が減って死にそう!」


シャインはお父さんを急かし、スプーンとフォークをテーブルに叩きつける。


「ごめんごめん…それじゃあ戴こうか」


私達は両手を合わせ、目を瞑り祈る。


30秒ほど祈った後、静かに目を開け私達は食事を楽しんだ。


私達はおなかが空いていた為、少量の昼食を一瞬で食べ終わる。


3人はまた牧場へ残りの仕事を片付けに向かった。


「さ…私も残りのチーズを作らないと…。時間が余ったらもう一つ試したい方法があるんだよね…」


私は黙々と作業を進め、2~3個チーズを作ってはベスパにお願いして倉庫に運んでもらい、連携して効率化をはかる。


途中から桶の代わりに使い終わった牛乳パックへホエイを入れていくようにした。


そうすれば後でホエイを使う際、すぐ取り出せて使いやすいと考えたのだ。


このように作業しながらも考えを巡らせ、時間を生み出せるよう努力する。


「これで…20個目…は~終わった!!」


昼の鐘が鳴った後にまだ次の鐘は鳴っていないため、午後5時は過ぎていないようだ。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


もし少しでも、面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、差支えなければブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


毎日更新できるように頑張っていきます。


よろしければ、他の作品も読んでいただけると嬉しいです。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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