表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
1079/1149

スージアと密会

「つ、疲れた……」


午前八時を過ぎた頃、スージアが額に汗を浮かべながら教室に走り込んできた。

一応急いできたようなので、怒りはしない。


「遅刻」

「いや、午前八時でしょ」

「午前八時前にくるのが礼儀だよ」

「それはキララの考えだよ。城塞都市アクイグルでは五分くらいなら許してくれる」

「それこそ、そっちの考えでしょ……。って、まあいいや。さっさと座って」


 スージアは黒ぶち眼鏡を掛け直し、椅子に座った。

 その姿は普通の学生。なのに、城塞都市アクイグルの諜報員だ。

 誰が何なのか、本当にわからない。


「はぁー。サキアさんをまくのに苦労したよ」

「未だに良い調子みたいだね。嘘なのに」

「別に嘘じゃないよ。僕もサキアさんのおっぱいが大好きだからね」

「最低……」

「何とでも言うといいさ。おっぱいは至高だからね」


 スージアは黒ぶち眼鏡を掛け直し、堂々と言い張る。

 こいつは別の意味で捕まえた方がいいかもしれない。


「さてさて、結界でも一応張っておく?」

「私、結界の魔法は使えないけど、スージアは使えるの?」

「まあ、普通じゃ使えないけど、魔法陣から発動すれば可能だよ」

「でも、それじゃあ簡単に解読されるんじゃないの?」

「そうだけど、ないよりはましでしょ」


 スージアは大きな魔導書を開き、呪文を唱えだした。魔力を注ぐと魔導書が輝き、部屋いっぱいに魔法陣が広がる。そのまま、半球状の結界が張られた。


「疲れる……」

「体力がないんだね」

「まあね。魔導書を使うと普通ならもっと楽なんだけど……」

「質が悪い魔法陣なんだね」

「む……、悪かったね、質が悪い魔法しか使えなくて」


 スージアは頬を膨らませ、なぜか怒っていた。どうやら、自分で書いた魔法陣らしい。

 それで結界が発動できるんだから大したものだ。やはり、秀才なのは間違いない。


「じゃあ、一応、もう一つの結界紛いな処置を施しておこう」


 私は結界の周りにブラッドディアを敷き詰め、魔力の侵入を防いだ。

 これで万が一、結界が突破されても魔法の攻撃は受けない。


「情報収集は上手くいった?」

「まあね。サキアさんは白で間違いない」

「本当に!」

「うん、だって、下着が真っ白だったからね」

「…………」


 こいつ、一回殴ってもいいかな? いやいや、眼鏡を叩き割るか。

 落ち着け、私。子供に何をカッカしているの。

 相手は一二歳の子供。中学一年生はこんなもんでしょ。腹式呼吸、腹式呼吸。


「本気で言っているの?」

「やだなー、冗談だよ冗談。こういう冗談はルークス王国じゃ通じないの?」

「知らん。私がそういう冗談が嫌いなだけ」

「はぁー、なんか、硬いなー。僕たち、もう少し打ち解けられたと思っていたんだけどなー」

「別に打ち解けたわけじゃないでしょ。私がスージアを諜報員だと知っただけ」

「それを言うなら、キララも諜報員紛いなことしているんじゃないの?」


 スージアは微笑みながら聞いてきた。なんとも、陰湿な微笑みだ。

 私の行動を知っているような顔。


「何のこと?」

「やだなー、隠す必要ないでしょ。だって、サキアさんのバタフライが物凄く反応するって困っていたもん。彼女のバタフライはビーが近寄ると無性に叩き落としたくなるんだって。変わった性格だよね」

「はは……、そうだね。でも、ビーくらいどこにでもいるでしょ」

「うん、どこにでもいるね。でも、お風呂まで覗くのはさすがにどうかと思うよ」

「…………」


 スージアは興味津々な表情で私を見ている。

 彼はサキア嬢の裸見たさに、私に何か話を持ち掛けてきているようだった。

 君がしているのは犯罪だよね? 僕は知ってもどうでもいいけど他の人が知ったらどうなるかな? みたいな脅しに思える。

 でも、残念ながら私にそのような証拠はない。


「なんで、お風呂を覗く話が出てくるの? 意味がわからないんだけど」

「だって、普通ビーがサキアさんのバタフライが気づく範囲で飛ぶわけないもん。彼女がシーミウ国にいた時は全く近づかれなかったらしいからね。全世界のビーが全く同じ個体なわけじゃないけれど、王都とシーミウ国はまだ近しい。同じビーと考えるのが普通でしょ。なのに、ここら辺にいるビーはものすごく寄ってくるんだって。それって、何かに操られているとしか思えないよね?」


 スージアは微笑みながら頬に拳を当て、肘を机に置く。

 僕は全部知っているけど、これ以上話す必要ある? みたいな余裕な態度が何ともうざったい。

 どうやら、彼にも私の腹を割って話せとお願いされているようだ。


「同じ犯罪者同士さ、腹を割って話そうよ。僕、キララとならもっと仲良くなれる気がするんだけどなー」

「何とも嘘くさい演技。頭は切れるのに演技が下手なのはもったいないね」

「おやおや、何とも口調が恐ろしい。キララって相手で本当に顔を変えるよね。そういう性格かな~?」

「嫌な相手と話す時は嫌って思うでしょ。それと同じ。私はスージアが嫌だから、嫌な顔しているだけ。別に、私に嫌な顔されても何も思わないでしょ。あなたは女をおっぱいで選ぶ男なんだから」

「その通り」


 スージアは指パッチンして、笑っていた。

 やっぱり眼鏡を割ってやろうかな。入学していた当初は何とも体調が悪そうな顔だったのに、魔造ウトサの質が悪い魔力を抜いたらこの通り元気になっちゃって。

 はぁ……。あのまま、陰湿にしていてくれればよかったのに。

 まあ、私の前以外はそういう姿で接しているから別にいいのか。


「それで、サキアさんの話に戻るけど、実際どうなの?」

「だから、白だってば。確実とまではいかないけど、彼女は敵じゃない」

「そう……。じゃあ、サキアさんにウトサを食べさせられてスージアは質が悪い魔力で頭を痛めつけられていた……。なんでだろう」

「うーん、キララ。僕を諜報員だと知っているのはキララだけ?」

「まあ、はっきりと知っているのは私だけ。でも、スージアを諜報員と疑っていたのはキースさんだよ」

「ん~。なるほど。そういうことね~」


 スージアは後頭部に手を当てていた。

 そのまま、私と同じように椅子の後ろ脚の二本でバランスを取る。

 眼鏡が光ると彼がスキルを使ったとわかった。


「僕は初めからキースさんに目を付けられていたわけだ。いやはや、やっぱりあの人も切れ者なんだね~。サキアさんは白だけど、黒でもある」

「どういうこと……」

「サキアさんも諜報員だよ。でも、ルークス王国と同盟国のシーミウ国の諜報員。初めからキースさんとサキアさんは会って情報を交換していたんじゃないかな。僕たちと同じようにね」


 スージアは笑いながら、何でもわかってしまったとでもいわんばかりの発言……。

 ものすごく癪に障るが、彼のスキルは『思考速度上昇』だ。

 多分、私と同じかそれ以上の回転速度だと思う。

 眼鏡の探偵を彷彿とさせる推理力でも見せてくれそうな雰囲気を醸し出しているのだから、本物だろう。

 生憎、死人が出ていないので死神ではなさそうだ。


「はぁ……、でも、僕はキララと出会えてよかったよ。始めから目を付けられていたのなら、完全に失敗するところだった。捕まって留置所行はさすがに嫌だからね」

「まだ、仮定に過ぎないでしょ。そんな簡単に話を纏めないでくれる。そういうのが一番危ないんだよ」

「僕の仮定は今まで外したことがないよ。サキアさんと沢山話したし、情報も軽く整理したし、間違っていないと思う。逆に、サキアさんが悪だったら、僕はどうなっているか。もう、この世にいなかったかもしれないよ」


 スージアは眼鏡を外し、きめが細かい布でレンズを綺麗に拭いていた。

 やはり、彼は眼鏡を外すとなかなかのイケメンだ。コンタクトレンズにすれば、多くの者を魅了する男前な学生になるが、そうなったら確実に犯罪行為に走るだろうから、私は彼をイケメンにしない。

 このまま、根暗っぽい顔のままでいてもらおう。


「はぁ……、そうなると、サキアさんは敵じゃないし、なんなら、私は初めから騙されていたわけか」

「そういうこと。サキアさんと繋がっているキース先生にキララは彼女が敵だと思い込まされていた。それはなぜか……」

「なぜ……?」

「さぁー、僕も知らない。直接聞いたらいいんじゃないの。どうせ、そっちも繋がっているんでしょ。なんか僕の周りの女の子がおじさんに取られちゃってる気分で凄く嫌な気分だけど」

「残念ながら、私はキースさんに取られるような玉じゃないよ。にしても、あなたはどこまで見えているの?」

「ん、別に。僕はキララから未解決問題の内容を教えてもらって、自国から抜け出して悠々自適に暮らすつもり。学園を卒業したら大金で豪遊するさ」


 スージアが大金を持ったら、ベッドの上が大量のおっぱいであふれかえるだろう。

 だが、そのようにお金を使っていたら、彼はいつの間にかスッカラカンにされる。

 でも、彼は頭がいいから女性の悪意に気づけるのかな。いや、どれだけ頭が良くても、男は女に弱い。どちらもしかりだけど……。


「じゃあ、その頭脳は何も使い道がないってこと?」

「まあね。僕の頭は僕のエロイ想像を確実に遂行するためにある。まずはサキアさんのおっぱいを……んんっ」


 スージアは至高の頭脳があるにも拘わらず、バカだった。

 やはり、天才とバカは紙一重というし……。

 彼のような者を仲間に引き入れている私もバカなのかもしれない。

 でも、賢い人がいれば、私の考えも上手く纏められるはず。


「スージア。私にその頭をちょうだい」

「え、俺、殺されるの?」


 スージアは体を抱きかかえ、絶対、意味がわかっているのに震えていた。

 彼の冗談に乗っている暇はない。

 今日だって軽い情報を交換する程度だったのに、すでに私の犯罪行為を彼に知られている。

 キースさんとサキア嬢の繋がりを知らせてくれたのは良いことか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ