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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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子供に興味ない

 剣術の授業のため、このまま第一闘技場で待っていた。

 休み時間の一〇分と言えど、丁度集まっているので仲間内で戦いの想像を膨らませながら動きを確認する。

 ライアンの汎用性が高いプルウィウス流剣術とスキルの『障壁』、メロアの高火力と素早い動き、私の魔法と援助。

 結構いいバランスのはずだ。

 回復役があと一人いれば、普通にパーティーとして成り立つだろう。

 タンク、アタッカー、サポーター、ヒーラーと言うのが冒険者の簡単な関係図。

 この四種類の役割を担えれば、一人であっても問題なく戦える。

 つまり、フェニル先生は全てを担えるだけの強さがあるということ。まあ、傷を負っても問題ないのだから、出来てもおかしくない。


 私は軽く相談を終えた後、回復してもらった体で五分間走りまくった。


「す、少し走れる距離が増えた……」


 私は授業の前に体力を使い果たし、完全に疲れ切った状態でまた疲れる剣術の授業を受ける。

 ふにゃふにゃの体でも全力で鎖剣を振るい、型だけは崩さない。

 力は抜けているので素振りは綺麗なものだった。試合形式になると、力がないので軽く吹っ飛ばされる。

 地面をゴロゴロと転がり、砂まみれになることもしばしば……。体力がないので仕方がない。

 相手も申し訳なさそうにしているのが逆に申し訳なくなってくる。


「キララ、ふにゃふにゃすぎるぞ」

「うぅ、疲れて体に力が入らないの。ちょっと走りすぎた……」


 ライアンの手を握り、引っ張り上げてもらう。


「ほら、かまえ……」


 私はライアンの腑抜けた構えを見て、木剣を鎖剣で跳ね上げる。手から離れた木剣は地面に落ち、鎖剣の穂先を首に持って行く。


「油断は大敵だよ」

「い、いや、今のはさすがに……」

「死んでいると思ったら、生きていて不意打ちを食らうことだってある。仲間かと思ったら敵だった可能性もある。疑いの目を掛けるのは悪いことじゃない。自分の身を守るために必要なこと」

「はぁ……、考えすぎだって」


 ライアンは手をあげ、苦笑いを浮かべていた。

 そういう考えが、危険なのだが。

 私が剣先を首から離れさせると、彼は生身のまま拳を私につき着けてくる。やけになって私に似たような攻撃を放って来ているのだろうか。

 後方に下がり、体勢を立て直そうとするが、脚がプルプルと震えており、疲れから動かなかった。

 そのまま、後方に倒れ込むかと思ったが……。


「おっと、危ない危ない」


 ライアンは私の体をそっと抱え、倒れないようにしてくる。

 紳士だが、顔が近い。狙っていただろといいたくなるが、マグレだと信じたい。

 ものすごーくうざい顔、私の間抜けな姿を見て内心笑っているのだろう。

 彼の胸ぐらと手首を掴み、靴裏を鳩尾付近に当てる。そのままお尻を地面におろし、背中で体を支え、巴投げで吹っ飛ばした。


「ぐへっ!」


 ライアンは地面に背中から叩きつけられ、肺の空気を吐き出し、情けない声をあげている。

 子供のくせに大人をからかうから痛い目を見るんだ。

 私は体に着いた砂をはたき、砂を落として痛みに藻掻いているライアンのもとに向かう。


「私、子供に興味ないから」

「はは、なにを言っているかわからないな」


 私はライアンの手を握り、軽く引き上げる。

 私達は別に特別仲がいいという訳ではないが、どこかしら波長が合うという感じだ。

 きょうだいっぽいのか、何ともいえない居心地の良さ。

 幼馴染というのがしっくりくるかな?

 気さくな所が、話しやすいのかもしれない。私の少年っぽさと彼の遊び心が合うのかも。


「二人共、剣を使って防御と攻撃をしなさい。戦場で剣を捨てるのは命を捨てるのと同じだ」


 ゲンナイ先生は私達の姿を見てはっきりと指導してきた。

 まあ、剣士が剣を捨てたら、死んだも同然か。

 私は魔法使いだから剣がなくても戦える。今は剣術の授業だから、魔法は関係ないとみなされている。


「は、はい」


 返事してもう一度剣の打ち合いを再開した。別の人とも当たり、体が倒れない程度に力を抜いて攻撃を入れ込む瞬間だけ力を込める。

 メリハリをつけると戦いに緩急が生れるので、相手も反応するのが難しいはずだ。

 少しずつ強くなれば、卒業するころには剣と魔法を使えるようになっているかも。その間に、生き残れたらの話だけど。


 私達が剣の訓練をしている間、ゲンナイ先生は特に変わった動きを見せていなかった。

 ただ、一つ気になったのが、レオン王子を指導するときだけ、やけに熱心というか、距離が近い。

 王族相手に贔屓するような先生でもないと思うが……。

 レオン王子に語り掛けながら、誠心誠意教えているように見える。


 レオン王子はもとから、アンテナが立っておりメロアと接触するとき以外は特に普通。

 ローティアさんと話すときは塩対応だ。今朝の自主練しているローティア嬢を陰から見ていた彼と、昼頃に来るとふんでわくわくしていた姿を見る限り、本心は私が見ている彼ではない。

 そう考えると、レオン王子に掛かっているのは軽い催眠か。

 好きな相手と嫌いな相手を入れ替えるとか。

 人間にも暗示を掛ければ辛いわさびを甘く感じさせたりできる者がいる。

 あれが本当かどうかわからないけれど、可能性はゼロじゃない。人間は良くも悪くも暗示にかかりやすいのだ。


 でも、私が見ていたボーっとしているレオン王子はどういう状況なのだろうか。何かしらの催眠が掛かっていて命令を執行し終え、何も考えられなくなっているからボーとしていると考えてもいいだろうか。

 仮説ばかり立てて、考えていたら、失敗するし見極めるのが大切だな。

 私はゲンナイ先生とレオン王子の接触を見ながら、集中する。


「でーい!」

「あだっ!」


 スージアの情けない攻撃が頭部に直撃し、頭が割れるような刺激が入る。

 相手を見ると、クスクスと笑い、嫌な笑顔を浮かべていた。舐めたガキだ……。

 私が剣術に集中していないのをいいことに、今までの腹いせを返してきやがった。


「あはははっ! 一本入った、一本入った!」

「ぐぬぬぬぬぬ……、この野郎……」


 私はスージアの眼鏡をぶっ壊してやろうと剣を振るう。だが、疲れているせいで、線がブレブレになり全く当たらない。

 そのせいでさらにからかわれるしまつ。

 子供にからかわれているとわかっていても、妙にむしゃくしゃしてしまうのも疲れているからだろう。

 ほんと、保育士さん達は尊敬する。あんな、体力お化けの子供達とよく毎日遊んでいられるよな。

 もっとお金をあげてほしいけど、ものすごく低賃金で働かされていると思うと忍びない。

 この世界の保育士の値段も低そう……。でも、保育士って女性が多いと思うけど、こっちの世界は男性が働いているのかな?

 保育士の仕事も男性が入れば多少なりとも楽になるんだろうけど、コンプライアンスなんていうのがあるからなー。

 一部の暴走変態のせいで女の子を真面な男の保育士に預けたくないという親がいる。

 そんなこと百も承知だろうけど、男の保育士さん達は頑張っているだろうよ。

 一部の暴走変態が数万人の真面な者達を苦しめている現状が、今の世界と近しい部分がある。

 捕まえたところで、男の保育士さん達の印象が悪いままなのは変わらない。

 それを言うなら、女医だってそうだな。医者は男って言う印象が強いから、色々言われるだろうけど、頑張って働いているんだから、良いじゃん。

 そう考えると、男や女が同じように働けるアイドルはまだ平等なんだろうか。いや、あれは顔やコネの世界だから平等じゃないか。


「おー、キララ、キララー」


 近くからスージアの声が聞こえ剣を振るう。からぶって体がコマのようにクルクルと回り、その場にずっこける。

 あまりにも情けない仕草にスージアだけではなく他の者もクスクスと笑っているように見えた。

 そう見えるだけで、実際に笑っているものは少ないかもしれない。

 勝手に自分の頭の中で、想像してしまうのが悪いのだ。そういう点を気にしなければ、もっと生きやすくなるはずなのに、周りからの印象を気にしてしまうのが現代人という者。

 簡単に周りからの視線を気にするなという方が難しい。対策するなら、一つの事柄に没頭する必要があるかな。


「おっらああああああああ!」

「どわあああああああああっ!」


 私の不意打ち紛いな攻撃にスージアの大きな声が重なり、眼鏡が吹っ飛んだ。

 どういう原理かはわからないが、スージアが顔を振ったとたんに眼鏡がぽーんと飛び、私の視線を奪う。眼鏡が本体とでも言わんばかりの存在感を放っており、地面にポトリと落ちると、スージアはその場にヘロヘロと倒れ込んだ。


「あぁ……、眼鏡、眼鏡……」


 まだ、立てない赤子のような体勢になっているスージアに地面に落ちた眼鏡を渡す。目が見えない相手に不意打ちをするほど鬼畜ではない。

 私達は出来る限り訓練した後、体がフラフラの状態で五限目に挑む。

 もう、魔王と戦っているのかと思うほど辛い。非常に眠たくなる授業で、容赦なく殺しにかかってきていた。

 四人が眠り、三人がギリギリ聞いている中、一人黙々と勉強している強者がいる。

 パーズだ……。あの男は一〇分の仮眠で一日過ごせる化け物だ。

 そのスキルを私にくれ~!

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