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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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監視させてもらう

「この四人ですか? レオン王子やリーファさんって、絶対大丈夫だと思うんですけど」

「そう言う考えが一番危ない。安全そうな者が危険な可能性もある。だからこそ、安全そうな者から調べる」

「なるほど。わかりました。出来る限り監視します」


 私はキースさんが怪しいとふんだ四名の者を監視することになった。

 ビーを付け、皆の生活を覗かせてもらう。キースさんもサキアさんが怪しいとふんでいるのか、ちゃっかり混ぜてきている。

 教師で元近衛騎士のゲンナイさんといういかにも正教会と繋がってそうな者もしっかり調べなければ。

 レオン王子とリーファさんの生活を覗き見するのも少々申し訳ないが、安全の確保のためだ。仕方がない。


 私は八日間ほど、ビー達を使って四名の生活をしっかりと調べる。そればかりに気を取られていたら普通の生活がおろそかになってしまうので、休み時間の合間などに防犯カメラを調べるくらいの感覚でいようと思う。


「ええっ! ニクスお兄ちゃんが大怪我っ! い、行かなきゃっ!」


 メロアはメイドからニクスさんの怪我を知り、いてもたってもいられなかったのか爆速で走り去る。

 どこにニクスさんがいるのか知っているのだろうか。

 ビーがメロアの姿を追うとウルフィリアギルドの方にちゃんと向かっているので、知っているらしい。

 無断欠席したら成績に響くと思うのだけど、さすがに身内の不幸だから仕方がないか。


「なにっ、ニクスが大怪我っ! ウルフィリアギルドで寝ていると……、行かねばっ!」


 ニクスさんが心配なのはメロアだけではなく、フェニル先生もだった。

 だが、今、フェニル先生に外に出られると困る。ニクスさんを心配する気持ちもわかる。

 そのため、ビー達で隠しながらニクスさんのもとに向ってもらうことにした。

 フェニル先生の体を光学迷彩で隠し、運んでもらう作戦だ。周りからビーに包まれたフェニル先生は全く見えず、無事にウルフィリアギルドに到着したと報告を得る。


 その間に、私は朝食を得た。パンと肉、野菜、豆類のスープ、どれも美味しい。でも、昨日の状況が今も軽く手の平に残っているような感覚がして、洗っても落ちない油のように私の心をもやもやさせた。


 ――ベスパ、ゲンナイ先生とリーファさん、サキア嬢、レオン王子の様子を事細かに盗撮してくれる。これはキースさんの依頼だから、仕方がない。犯罪じゃないから、とことんお願い。なんなら、スージアの発言が正しいのか判断材料にしたい。


「了解しました!」


 盗撮が大得意のベスパはビー達を使用し、ドラグニティ魔法学園の中にいる、四名の人物に的を絞って、生活を監視する。

 朝食を取っている間も片目を瞑り、瞳の裏に四名の姿を見る。


 ゲンナイさんはあさっぱらから、剣を振っており、上裸でいい汗を掻いていた。剣士というのは皆、身体つきがいいのが何とも怪しからん。

 胸から腕にかけての筋肉の付き方が、現役その者。近衛騎士が出来そうなくらい衰えしらずだ。


 リーファさんは朝食……ではなく、料理を作っていた。

 満面に笑みを浮かべ、食材を丁寧に切り野菜を一部ハートにしたが、頬を赤く染めた。頭を振り、野菜をパクリと食べる。

 頬を叩いてから料理を再開。なにしているのかと思えば、サンドイッチを作っていた。

 一個ではなく、二個、三個、四個……、ざっと八個ほどサンドイッチを作り、木製の容器に入れてバスケットにしまう。

 声が聞こえないが、胸に手を当て、空を軽く眺めている乙女っぽい表情を見る限り、愛する者への料理だろう。マルティさんの幸せ者め。


 サキア嬢はあさっぱらから、お風呂……。見てはいけないと思いつつ、私も同性だから別にいいやと思い、黒い髪を艶やかに保つためのオリーブオイルっぽい品を丁寧に手櫛で梳きながら塗っている。

 高い窓から差し込む陽光に当てられている彼女の姿が、あまりにも美しく、敵だとしてもあっぱれなプロポーション……。

 美しすぎて嫉妬心すらわからない黒の艶が出た長い髪を整え終わると、腰に手を当て、呼吸を整えている。その姿が武士に近く、凄い洗礼されていた。瞑想の類だろう。心地よい朝を過ごしている。


 四人目のレオン王子は朝食を一人でとっていた。と思ったら、背後からライアンとパーズがやって来て、微笑みながら一緒に食事をとり始める。

 なんら、おかしな点はなく、誰も敵という感じはしない。このまま、何も見つからなければいいのだけれど。


「キララ、キララー、キララっ!」

「は、はいっ!」


 私は盗撮に夢中になり過ぎて、周りの声が聞こえていなかった。隣に座っていたのは金髪ロールがいつもながらに艶やかなローティア嬢。全然気づかなかった。


「もう、ぼうっとしすぎ。そんな、状態で食事するなんて、料理に対する感謝が足りていないわ」

「す、すみません。おっしゃる通りです……」


 私は打算的に食事をとっており、こんな豪勢な朝食なのに、感謝の気持ちが薄れていた。つまり、この環境に慣れてしまっているということ。

 人間の適用能力の高さに驚きつつ、もう一度両手を合わせて食材と料理に感謝の気持ちを込めて、いただく。

 ローティア嬢の貴族に対する心得を私も身に付ければ、学園でも浮かずに過ごせるはずだ。


「ごちそうさまでした」

「ふぅ……。今日も美味しかったわ」


 ローティア嬢は香り高いハーブティーを音もなく飲みながら、気持ちを落ち着かせている。

 元から、花の香りがしてとても心地が良いのにハーブの爽やかな香りまで漂って来て、ビーを簡単に寄り付かせてしまっていた。

 どうも、私はローティア嬢のにおいが好きっぽい。近くにいると穏やかな気持ちになる。

 蜂が花の蜜を集めたがるように、私もローティア嬢の周りをブンブン飛び回る姿が簡単に想像できた。

 私の性格がビーに寄り過ぎている。頭を振り、心を穏やかにした後、食器を食堂の流しに持って行き、料理人たちに感謝の気持ちを伝えた。


「あぁぁあぁぁあ~っ、寝過ごしたぁ~!」


 午前八時三〇分ごろ、寝間着姿のミーナが全力疾走で食堂にやってくる。その突進攻撃にぶつかれば、人は車にはねられたような重症を受けるだろう。あまりにも危険なので、すぐに壁際に非難する。


 ミーナは大盛り料理をお盆にのせてもらい、ガツガツ食していく。寝起きからよく、そんなに食べられるなといいたくなったが、食事中の彼女に私の声が届くとも思えないので、喋らない。

 荷物を取りに部屋に戻ると、布団の上がぐっちゃぐちゃになっているミーナの方と整理整頓が行き届いた私のベッドで性格の違いがよくわかる。

 ここで、ベッドの上を直しておいてあげるのが同じ部屋の者としての優しさか。はたまた、ミーナの寝汗のにおいを嗅ぎたくなっている私の習性か……。


 ミーナが使っていたベッドに鼻を近づける。やはり、獣族特有の獣臭がした。この香りは森の中にいるウォーウルフ達の子供のにおい。天日干しされたふかふかの毛皮のにおい。あぁ、懐かしい。匂いは頭にこべりつくのか、情景が視界の裏側にしっかりと浮かんでいた。

 匂いを嗅ぐだけで、ホームシックを少なからず回避できるのなら変態っぽい行動も強要しよう。今はミーナがいないのだから、問題ない。


「ふぅ……。良い感じ」

「キララ、きも……」


 床で寝転がっていたフルーファはぼそっと呟いた。


「は?」

「いや、何でもない……」


 フルーファは丸まり、ゴマ団子のような状態になった。彼の体を撫でて番犬替わりになってもらう。

 あのミーナだ、鍵を掛けるのも忘れるかもしれない。最悪、私やミーナの下着を盗みに来た変態をフルーファに対峙してもらおう。


 私はトランクを持ち、荷物の最終確認。体操服と今日の授業に必要な教科書類。板書を書き写す紙と羽根ペン、インクが入ったボトル。どれも、ベスパに言えばすぐに出してもらえるが、準備する癖がなくなってしまうともったいないので、本当に忘れた時だけ助けてもらおう。


「じゃあ、フルーファ、行ってきます」

「ふわぁ~い」


 フルーファはあくびで返事してきた。何とも覇気がないウォーウルフだろうか。あれで、魔物だというのだからいったい誰が信じるだろう。見た目が怖いだけの怠けた狼など大した防犯対策にならないかもな。怒らせたら首が折れるのはまちがいない。


 冒険者女子寮から出て、園舎に向かう。三方向から一本の大通りに出るのだが、そこで騎士寮と学者寮の者達も合流してくる。今日はメロアとミーナがいないので、私一人。

 ローティア嬢と一緒に歩いていたら、私が大貴族と歩いている女というふうに見られるので少々目立ちすぎるから、無理だ。その点をローティア嬢も踏まえてくれている。本当は私と一緒に歩きたいのかもしれないけど。


「おお~い、キララ、おはようっ!」


 一本の大通りに来ると、橙色の髪が特徴的なライアンが話しかけてきた。近くにパーズもいる。どうやら、レオン王子は別行動らしい。


「おはよう、キララさん。今日はいい天気でよかった」


 青髪を風になびかせ、眠気ゼロのパーズが空を見る。昨日の雨が嘘のように晴れており、心地よい風が吹いていた。眠気がないということは常に爽やかな顔が出来るということ。

 それだけで、常にイケメンな状態が保たれる。ほんと『完全睡眠』は良いスキルだな。


「おはよう、ライアン、パーズ。どちらも朝から元気だね」

「そりゃあ、美味しい料理を食って来たからな。お腹いっぱいでやる気満が最高潮!」

「朝から食べ過ぎたら、眠たくなるのに、お腹がいっぱいになるまで食べるんだから……」

「仕方ないだろ、どれだけ食っても値段は変わらないんだ。なら、沢山食ったほうが得だろ」

「そうだけど……、限度があるでしょ」


 ライアンとパーズ仲良さそうに話し合い、これぞ学生という雰囲気を放ちながら歩いている。

 別の国の者とは思えないほど流暢にルークス語を喋っているのが本当にすごい。同じ国から来たもの同士、その国の言葉で話すのが一番楽だと思うんだけどな。

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