ネ―ド村からの帰還
積み込み作業は、時間がかかると思っていた。
しかし、それほどかからずレモネとレモネの木で荷台をいっぱいに出来た。
「いっぱい取れたね…結構重そうだけど大丈夫かな…」
「大丈夫なんじゃねえか、これくらいなら余裕で引いて行けるぜ…」
レモネでいっぱいになった荷台をウシ君は軽々動かしている。
「それじゃあ、いったん村に帰ろうか。私たちも仕事を手伝わないと牧場は回らなくなっちゃうから」
レモネとレモネの木を積んだ荷台はネ―ド村を通過していく。
「キララさん、もう帰るんですか? もう少しゆっくりしていけばいいのに」
「早く帰らないとお母さんに怒られちゃうからね、それにまたすぐ会えるよ。今度の休みにまたネ―ド村に来るから。あ…そう言えば、はいこれ」
私は、昨日オリーザさんから貰ったパンをデイジーちゃんに渡す。
「え…パンですか。こんなに沢山」
「うん、いっぱいもらったんだけど…私、そんなに食べきれないから、村の人と分けて食べてよ。まだ1日しか、経ってなから美味しく食べられると思う。何ならちょっとあぶってみても美味しく食べられるよ」
「キララさん、ほんとに何から何までありがとうございます! 皆もきっと喜んでくれると思います。いつかこの恩は必ず何かで返しますので、えっと…絶対に返しますから。楽しみにしていてください!」
――ほんとは『お礼なんてしなくていいよ』と言いたいところだけど、デイジーちゃんがそこまで言うなら…。
「分かった、楽しみに待ってるよ」
「はい!」
私はネ―ド村を出発した。
――ネ―ド村の人たち…大分元気になってよかったな。家は壊されちゃってたけど、前よりも綺麗な家が作られ始めてたから、結構いい感じの村になるんじゃないかな。ボロボロだと魔物に壊されちゃうかもしれないし。今回はその魔物に壊されてたんだけど…それに、雨が増えてくるから、野宿はきついし。
ネ―ド村を出た時には晴れていた空へ少し雲が掛かっていた…。
「あ~まずいな…雨降ってきちゃいそうだよ…。そりゃもう6月だからね、気候はほぼ地球と一緒だから梅雨の時期に入ってきちゃうんだ…。雨だと大変なんだよな、色々と…」
空はだんだん暗くなっていき、雫が1つ…また1つと、その数を増やしていく。
そして、いつの間にか天気は雨となってしまった。
「ああ~もう、やっぱり降ってきちゃったよ…。でもこれでレモネを洗う手間は省けたけど。問題なのは早くしないと地面がぬかるんじゃうんだよな。コンクリートで固められている分けじゃないし」
私が通っている道は普通の土砂で作られた道。
周りには草が何食わぬ顔で生えており、整備など全くされていないような獣道だ。
当然雨が降れば地面は緩くなってしまう。
私達の引いている荷台は、結構重い。
その為、泥濘にはまったら面倒になるのは間違いない。
私達は早めに移動し、何とか本降りになってくるまでに村へ帰ってこれた。
レモネでパンパンになった荷台をウシ君と一緒に牧場まで運びぶ。
ウシ君は小屋へ、荷台は倉庫の隣へ移動させた。
ひと段落終えた私は、一度家に戻り報告する。
「ただいま~。ふ~疲れた」
「あら、お帰りなさい。やっぱり昨日には帰って来れなかったわね。ちゃんとデイジーちゃんたちをネ―ド村に運んであげられたの?」
「うん…何とかね、デイジーちゃん達をネ―ド村まで送って行ったときにはもう大分暗かったの。だからネ―ド村で一晩過ごして…さっきレモネをいっぱい取ってきたんだよ」
「それは大変だったわね…。ほらキララ、梅雨の準備をしないと。貴方も手伝って」
「え~いまから~、私ちょっと疲れちゃった~」
「そんな愚痴言ってないで、早く家に上がりなさい。風邪ひくわよ」
「は~い…」
今日の仕事を終えたお母さんは家の中で黙々と何かを縫っている。
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