表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
1049/1149

倒し方

 ――王都を襲った個体と同じかな。だとしたら、やばい。フェニル先生でも普通に手こずっていた。音速で等速直線運動とか、普通に戦闘機じゃん。それを地上から倒すって普通に無理じゃね。


 私は冒険者達を送っても的になるだけとしか考えられなかった。

 でも、プテダクティルの戦い方は良くも悪くも一辺倒。

 ミサイルのように地面に突き刺さるしか能がない。

 まあ、あんな強い衝撃が跳ね返ってくるのだから、脳を守るために頭蓋骨が異様に硬く大きく進化したのだろう。

 その影響で脳が超小さいと考えてもいい。サイと同じ感じかな。そのおかげで、倒し方はいたって簡単。

 地面に突き刺さっているプテダクティルの首を切る。ただそれだけ。でも、攻撃を躱してからの後手攻撃が必須条件だ。


「さて、頭が悪い魔物は人間と虫を区別できるかな」


 私は作戦を思いつき、ベスパに伝える。


 ――ベスパ、ビー達に人の形を取らせて上手く的に見せかけて。衝突する瞬間にばらばらに離れさせるよう指示して。


「なるほど、ビーを囮にするわけですね」


 ――そう言うこと。移動速度が速くて団体行動が得意なら、死なずにプテダクティルを地面に突き刺さるように誘導できるはず。

 あれだけの加速から停止するのはほぼ不可能。地面に突き刺さるのは目に見えている。その間に他の冒険者に倒させるよ。


「了解です!」


 ビーはどこにでもいる。当たり前のように東の渓谷にもいる。

 ベスパが光り輝くと、草むらや木の上、土の中などからどんどん出てくる。

 人の形を取り、ホログラムを魔力で照射することによって、もう、そこに人がいるとしか思えないほど完璧な的が出来た。

 まあ、頭がいい魔物なら簡単に攻撃してこないと思うが、脳が小さいプテダクティルは人の形を見つけるや否や、急速落下し、地面に向かう。


 ビー達は衝突する瞬間に解散し、プテダクティルだけが地面に突き刺さった。地面に突き刺さったプテダクティルはあまりにも間抜け。翼を羽ばたかせ、嘴を必死に抜こうとする。

 その間は無抵抗なので背中の方から首元をズシャっと切りさけば勝てる。

 そう思っていたのだが、肝心の冒険者達がその場にほとんどいなくなっていた。


「仕方ない、ニクスさんに英雄になってもらおう」


 私はその場に残っていて、実力が確かにあるニクスさんにビー通信で連絡する。


「あー、あー、ニクスさん、聞こえますか?」

「え……、き、キララさん」

「ニクスさん、今から、私がプテダクティルを大量に地面に落とします。間抜けな恰好で動けなくなっているプテダクティルの首を切り割いてください」

「プテダクティルを地面に落とす。ど、どうやって……」

「えっと、木陰に隠れてください」


 ニクスさんは木陰に移動し、少なからずプテダクティルの視線から免れる。先ほどニクスさんがいた場所にビー達を集め、人の体を模した存在を出現させる。


「ギャァアアッ!」


 プテダクティルはビー達が生み出した偽物の人間に向って突っ込んできた。あまりに速く、地面が陥没し巨大な爆風が起こるが、その場に人間の姿はなく間抜けなプテダクティルの塔が立っているだけだった。


「ニクスさん、今のうちです。頭上のプテダクティルに気を付けて地面に刺さった個体を倒してください」

「な、なんだ今の。人が消えて。って、言っている場合じゃない。わかった。すぐに倒すよ」


 ニクスさんはプテダクティルの首を『確定急所』を使って確実に倒した。

 剣が壊れ、倒す手段がなくなっていると思ったので周りの木々を使ってビー達に木剣を作らせる。


「はは……、ほんと便利だなぁ。懐かしい感じがするよ」


 ニクスさんは空中に浮いている木剣を手に取り、プテダクティルの首をかたっぱしから切り落としていく。『確定急所』の一撃は計り知れず、太いプテダクティルの首が刃も付いていない木剣でぶった切れるのだ。

 まあ、一撃必殺なので木剣は一度の攻撃で破損する。生憎、ビー達に掛かれば泥団子を作るよりも簡単に木剣を生み出せるのでニクスさんは武器のことを考える必要がない。


「ミリア! ハイネ! 今から、プテダクティルを駆除していく、僕の命令に従うんだ!」

「りょ、了解!」


 ニクスさんの男気溢れる声にミリアさんとハイネさんは目をハートにするかの如く、色っぽい状態で大きな声を出した。

 まあ、今のニクスさんは少々カッコよすぎる。まさしく英雄という言葉が一番よく似合う状況だろう。


「今、この場に残っている冒険者達も力を貸してくれ! 今なら、あの大群にも勝てる!」

「な、なにを言っているんだ。あ、あの数のプテダクティルに勝てるわけないだろ……」

「そ、そうだ。そうだ。もし、あの個体が前、王都を襲った個体と同じだったら俺達なんてあっという間に餌になっちまう。Sランク冒険者くらいじゃないと……」

「なんなら、あのフェニルですら、普通に手こずっていたじゃねえか! お前みたいな若造が太刀打ちできるわけないだろ!」


 ニクスさんの声に腰が抜け逃げられていない情けない冒険者達が口々に叫ぶ。

 ほんと、その間にプテダクティルの獲物になっているとわからないのだろうか。


 ――ベスパ、ビーのマネキンを躍らせてプテダクティルの気を引いて。少なからず動いている個体の方が目を引くはずだから。


「了解です」


 ベスパは光り、人の形を集団で取っているビー達は民謡を踊ったり、アイドルのように可愛らしく身振り手振りで踊ったり、激しいブレイクダンスもお手の物。

 様々な踊りが辺りで行われ、プテダクティルの特攻攻撃が連射された。


 大量の土煙が巻き起こり、木々が風圧で吹き飛ばされそうになっている中、冒険者は一切傷なし。

 地面に八本のプテダクティルの塔が現れ、好機に見舞われる。


「はぁああああっ!」


 ニクスさんは誰よりも早く動き出し、空中に浮遊している木剣を掴むと思いっきりプテダクティルの首を切り裂いた。眩い光りと共に木剣の破砕音とプテダクティルの首がずれ落ちる瞬間が重なる。

 休む間もなく、次のプテダクティルに向かい、木剣の命と引き換えに魔物の命を奪っていく。

 ミリアさんとハイネさんもそれぞれの武器を使い、プテダクティルを確実に倒していた。


 ――ベスパ、拡声器。


 ベスパは地面でへたり込んでいる冒険者達の前に移動する。そのまま、私の声を翅の空気振動で再現し、拡声器のように大きな音を辺りに広げる。


「あー、あー、初めまして。腰抜けの皆さん。そのまま腰が抜けた状態で、若い冒険者におんぶにだっこされますか? 多くの危機をそうやって逃げて来たんですか~。ぷぷぷっ、情けな~い。見てくださいよ。若い子の方が頑張っていますよ。もう、おじさん冒険者は引退したらどうですか~?」


 私は冒険者達を煽る。一般人を煽っても何ら効果ないが、血気盛んな騎士や冒険者を煽ると。


「な、なんだ、どこから声が。だが、この俺様が腰抜けだと……」

「多くの危機を逃げて来たって?」

「おじさん冒険者……、引退……」


 腰が抜けて動けなくなっていた冒険者達は私の煽り攻撃を受け、額に静脈が浮かぶ。そのまま、勢いよく立ち上がり……、


「ふざけるなぁああああああああああああっ!」


 冒険者たちは煽りを簡単に受け、喧嘩っ早い性格を丸出しにした。そのまま、地面に突き刺さっているプテダクティルに攻撃を仕掛けていく。

 これで、ニクスさんとミリアさん、ハイネさんの三人に加え、逃げ腰だった冒険者達が加わり、どうにかプテダクティルの王都侵入を防げそうだ。

 ただ……。


「く、明かりが……」


 午後五時三〇分を過ぎ、四月の日の入りは案外早いため、真っ赤な光がどんどんなくなっていく。

 そんな状況でも空に蠢く黒いプテダクティルは容赦なく、真上から降り注いでくる。体が黒いのに加え、光がない状態でも地面にいる人の位置が音波か何かでわかるのか、狙いを外さず突っ込んでいた。


「ハイネ! 明りを頼む!」

「ああっ、わかっている! 『ライトボール』」


 ニクスさんの一言でハイネさんは当たり前のように光の玉を手の平に出現させてしまった。

 その瞬間、空を飛んでいたプテダクティルを一気に刺激し、八頭ほどのプテダクティルがハイネさんの真上から降り注ぐ。


「な……! ハイネ!」

「ちっ……、来るな、ニクス!」


 ハイネさんはすでに回避ができないとわかっているのか、大きな声を出しながら、その場で停止していた。

 音速で真下に向かうなど普通の魔法じゃ間に合う訳がない。でも、私の魔法なら。


「『転移魔法陣』展開」

「了解!」


 ベスパは音よりも早い、光並みの速度なのでハイネさんの頭上に一瞬で移動し、私の魔力を使って直径八メートルほどの大きめの転移魔法陣を展開した。

 プテダクティルはいきなり停止できない。そのため、八本のミサイルのような攻撃は『転移魔法陣』の中に吸い込まれて行った。あの中は魔力が粒子ほどに分解される。

 全身が入ってしまえば体が粒子となって魔法に耐性がない生き物や魔物は元に戻らない。


「な……、なにが……、起こった……」


 ハイネさんは瞳を光らせており、何かを見ていた。魔力だろう。つまり、目の前にいるベスパも見えている可能性が高い。まあ、私と目が合っていた。十中八九見えている。


「ハイネさん、光を辺りに向けてください」

「あ、あぁ……」


 ハイネさんは『ライトボール』を辺り移動させた。光に反応してたプテダクティルが地面に急降下し、地面を穴だらけにしていく。

 大量のプテダクティルが地面に衝突したため、空に飛んでいる個体の数が大量に減っていた。

 もう、イカの漁のように光に反応したプテダクティルが誰もいない場所に突っ込んで行く。

 あまりにも、簡単に引っかかるので本来、夜は動かないようにしていると思われる。なのに、王都の近くにやって来て団体行動をとるなんて。やはり、何かおかしい。

 渓谷の中に問題があるのだろうか。もしそうだとしても、夜中に探索するのは危険だ。まあ、私が調べるわけじゃないし、良いか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ