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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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業務改善

「キララさんとフェンリルは仲が良いわね。羨ましいわ。私もフェンリルと仲良くなりたい」


 クレアさんは食事を終えたのか、私の方を見て美味しそうなケーキを見つめる子供のような瞳を向けてくる。

 高くて買えないのといわなきゃいけない母親ではないので、フェンリルの体を抱き上げ、彼女の膝の上に乗せた。

 今は中型犬くらいの大きさなので、撫でるのも容易だ。


「キララの知り合いだったな。仕方ない、特別に撫でさせてやらんこともない」


 フェンリルはお腹の側面を向け、撫でてもいいと体現した。

 クレアさんはその姿を見て、晴れやかな笑顔になった後、両手で毛を鷲掴み、撫でるというより引き抜いていた。


「ぐわぁぁぁああああ~っ! な、なにをするっ!」

「ちょちょちょ、クレアさん、なにしているんですか!」

「暑そうだなと思って……」


 ――この人、動物を飼った経験がないんだったな。にしても普通、毛を毟ろうとするか。


 私はクレアさんにフェンリルの体を普通に撫でさせた。彼は神獣なので、毛を多少毟られたところで、すぐに生えてくる。

 そのため、何ら問題ない。久しぶりの痛みを感じて、喜んでいるんじゃなかろうか。まぁ、そんな訳ないか。


 クレアさんとフェンリルはしっかりと触れ合い、心を暖める。

 昼食が終わったのは一時すぎ、食事を始めたのが午前一一時頃だったと考えると、三時間もこの場にいたらしい。

 なにしていたかといえば、ただのおしゃべりだ。ほんと、時間が溶ける溶ける。気の合う人とのおしゃべりほど時間が過ぎる遊びもないだろう。


「もう、午後一時なのね。家に帰ってルドラ様のために家事しなくちゃ」

「クレアさんは家事までしているんですか」

「ある程度ね。ルドラ様の服とか、シーツとか洗濯したり、部屋の中を掃除したり、無駄に広いし多いから案外大変なのよね~。でも、ルドラ様の役にたっていると思うとやめられなくなっちゃったわ~」


 クレアさんは普通の貴族ではないが、普通の貴族よりもいい女に思えた。

 こんな女性を落としているルドラさんはさすがというべきか。

 なんなら、ルドラさんの弟のマルティさんもリーファさんという超絶いい女を落としている。やはり、マドロフ家の男はモテるんだな。マルチスさんの教育のたまものかもしれない。


「じゃあ、キララさん、私は先に帰るわね」

「はい、今日はとても楽しかったです。また、お邪魔しても良いですか?」

「もちろんよ。楽しみにしているわ!」


 クレアさんは両手を握りしめ、軽く飛び跳ねる。大きな胸がばるんばると跳ねまくり、存在を主張してきた。

 少し前まで、Dカップくらいだったのに、一年くらいでJカップ、なんならHカップに到達しようとしている。なんてことだ。

 私はAAカップで止まっているのに、一年で三カップも上がるってどういうこと?

 毎日ちゃんと眠っているのに、成長がない私の胸はどうなっているの。

 

 最後の最後で、クレアさんに格の違いを見せつけられ、妙に落ち込んでしまった。まあ、くよくよ考えていても仕方がない。

 頬を軽く叩いて、キアズさんに会いに行くと決める。

 今の魔物や王都周りの状況を聴いておきたかったのだ。仕事が忙しいようなら、またの機会としよう。


 受付嬢にキアズさんと話がしたいと伝えるとキアズさんの方も、私と話がしたいそうだ。今朝、私が来たとキアズさんに報告してくれていたらしい。そのため、時間がすぐに取れた。

 ギルドマスターの部屋に向かい、扉を三回叩いて名前をいう。


「キララですけど」

「どうぞ」


 中から、か細い声が聞こえてきた。取っ手を持ち、引っ張ると椅子に座るキアズさんの姿があった。食事を摂っているのか不安になるほどやつれている。仕事が多忙なのかな。


「キアズさん、大丈夫ですか? なんで、そんなにやつれて……」

「いやはや。キララさんのおかげでウルフィリアギルドの仕事は上手く回っています。冒険者ランクを上げる点数の倍増という提案は素晴らしい効果を発揮し、上手い具合に仕事の分散に成功しました。その反面、大量の依頼書を判定し、受付するのに大量の時間と体力が奪われ、それを管理している私もまた、体力が奪われ……」


 どうやら、仕事が分散され、効率よく回ったのは良いのだが、仕事の内容が多すぎてギルド職員の人数と仕事の数が合わなすぎるという文句だ。

 まあ、会社が大きくなればなるほど、大量の訳が分からない業務が増える。ハンコなんていちいち押さなくていいだろとか、なんで、いちいち同じ資料を作らないといけないんだとか。

 個人としては面倒でも、会社にとっては存続の危機につながる問題になりかねないため、全て廃止しろといえないのが現実。

 ウルフィリアギルドの中の問題をいくつも解決してきたが、そのたびに出てくる次の問題。

 もう、どれだけ業務改善しても、楽を知った人間は楽したがる者だ。

 目の前にいるキアズさんもまた一人。楽という快楽を知ってしまった以上、後戻りするのは困難。

 自動車免許を取る時はオートマの車に乗っていたのに、いきなりマニュアルの車に乗れといわれても難しいだろう。

 今まで出来ていたことが一気に出来なくなり、大量の手段によって脳が疲れる。

 車と会社は似たようなものだ。キアズさんは運転手。他の冒険者がガソリン、それを使って動かすのがギルド職員たち。


 そういえば、このウルフィリアギルドは何を目指しているのだろうか。行先がわからないのにずっと車を運転していられるほど、人間はバカじゃない。


「キアズさんはこのウルフィリアギルドをどのような会社にしたいんですか?」

「え……、い、いきなりですね」

「会社を経営するにあたって結構大切な話ですから」

「そ、そうですね。ウルフィリアギルドは魔物からルークス王国を守るために作られたそうです。逆に騎士団は他国から国を守るために作られた組織らしいですね。なので、私としては国が魔物の被害を受けないようにできる会社にしたい……ですかね」

「なら、魔物関連の仕事に絞るのはどうですか? それ以外の仕事は別のギルドに任せるとか。そうすれば仕事内容を減らせますよ」

「そ、そうかもしれませんが、今や、ウルフィリアギルドは魔物の討伐から、護衛、素材採取、未開拓地の探索、迷宮の探索などなど、大量の仕事が舞い込んでくる場所でして。いきなり魔物の仕事だけにするのは国も許してくれませんよ……」

「大きな会社にとって、一番大切なのはどこに力を注ぐかです」


 大切な力が色々分散していたら、その分、微妙な結果しか生まない。

 もちろん、全てに力を注ぐのが一番いいが、今のキアズさんの状況を見る限り難しい。


「キアズさん一人に対する負担が大きいのも問題ですね。各部署に代理を置いてまとめてもらうのも一つの作戦です。そうすれば、キアズさんが大量の資料を纏める必要もない」

「なるほど、仲介役を通すという作戦ですか。でも、そんな大切な役目を誰に……」

「そんなの知りませんよ。キアズさんの信頼できる相手に頼むしかないでしょうね。もちろん、賃金を増やしてあげないと仲介役は面倒なので怒りだすかもしれません。私としては大きな利益が見込めない仕事は切り落とすべきだと思いますよ。このままだと、会社の経営を圧迫し続けるだけの仕事になりかねません。どうせ切るなら早い方が得策です」

「うぅん、そんなこと、私の一存ではどうしようにも……」

「もう、小手先の解決案では難しいくらい業務改善してますし、それでも厳しい状況なら多くのギルド役員を雇うとか、仕事内容を仕事内容を減らさないと難しいと思いますね。もちろん、キアズさんがこのまま続けたいというのも悪くありません。何か転機が訪れる可能性だってあります。その前にウルフィリアギルドが潰れないと良いですけど……」

「うぐ、わ、私の代で潰れるなんてことがあっていい訳がない。ど、どうにかしなければ……」


 キアズさんはものすごく焦っていた。ウルフィリアギルドほど規模が大きいと管理も大変なんだろうな。

 はたまた、それ以外に何かしら裏があるのだろうか。

 ウルフィリアギルドは大きなギルドなんだから、多くの役員が手に入るんじゃないのかな。

 大きな企業には多くの新入社員が入る。多くの若手が来てくれれば何ら問題ないはず。


「キアズさん、新入社員っていないんですか?」

「それが、ギルド職員は中々大変な仕事でして、給料は良いんですけど人気がないというか。顔や見栄えも重要ですし、女性の方に来てほしいので平民の方が多いんですけど、十分な教育を受けていない平民が多いのが現状で」


 キアズさんは大っぴらにいわないが、頭が良くて美人で使いやすい平民の者が欲しいと思っているようだ。

 そりゃ、貴族の女性は働かないのが一般的。そんな中、冒険者ギルドの受付にいるのは皆女性。

 男性でもいいじゃないかと思うが、ギルドを利用する冒険者の楽しみの一つに美人な受付嬢と話というのがある。

 まあ、アイドルの握手会みたいなものだ。綺麗な人がいれば、男のやる気も上がる。それが生物学上の性。仕方がない。

 男の受付に男が向かうことはほとんどないので、仕事が回らないわけだ。


「なるほど、人材不足なわけですか。なら逆に冒険者の数が少ない地方のギルドに冒険者を送ってその代わりにギルド職員を連れてくるのはどうですか? この場で新人研修させるんです。逆もしかり」

「……それだ!」


 キアズさんは大きく立ち上がった。なにがそれなのか知らないが、彼の悩みを全て取り払う方法が思いついたらしい。

 私の一言で実現可能かどうかを考えられるのがすごいな。でも、上手く行くのだろうか。


「地方のギルドから受付志望の女性を集めて仕事を教え、優秀な者はウルフィリアギルドで働いてもらう。ウルフィリアギルドの支部や他のギルドとの連携もかねて、新人冒険者の育成も手掛けてもらう。そうすれば、王都だと難しい新人冒険者の研修を省けます!」


 キアズさんは両手を握り合わせ、彫りの深くなった顔で笑っていた。

 頭の中で大量のドーパミンが発生しているのかもしれない。でも、寝不足、過労の状態で考えた案など幼児が考えたままごとのようなもの。いったん眠って頭の中を綺麗にしてもらわないとな。

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