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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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頑張りすぎ

「さ、サキアさん、いきなりだけど君をもっと知りたいんだ。この後も話さない?」


 スージアは早速作戦に乗り出した。自分の悠々自適な生活のためなら行動は早いのか。

 上手くいけば、私から未解決問題の半分が教えてもらえるという報酬が彼を突き動かしていると思われる。


「え、ど、どういうこと……。そ、そんな、スージアさんからデートのお誘いなんてー」


 サキア嬢は両手を握り合わせ、長い黒髪を止めているバタフライが翅を軽く動かす。あのバタフライにもサキア嬢の感情が左右しているのだとしたら、心が揺れ動いているということか。

 まあ、ペットは飼い主に似るなんてよくいうし、一番近くにいるバタフライが喜ぶということは、サキア嬢も喜んでいると解釈できる。


「じゃあ、キララさん、ごめんなさい。私はスージアさんとお話があるから~」


 サキア嬢は私とスージアの間に突っ込んできて、お尻で腰を軽く押し、離れさせてくる。なかなか強引な女性だ。

 清楚的な見た目とは裏腹に、自分の狙った獲物は絶対に誰にも取られたくないといった精神の持ち主だろうか。


「あ、あはは……。じゃ、じゃあ、キララさん、また教室で」


 スージアはサキア嬢の隣で軽く微笑み、私に手を振って図書室から出て行った。


「あの二人を放っておいて大丈夫かな」

「どうでしょうね。ビー達を付けてもいいですが、あのバタフライに感づかれるんですよね。私も何度叩き落とされたか……」


 ベスパはバタフライに嫌われていた。なぜ嫌われているのかわからないが、精神的に嫌いなのかもしれない。


「じゃあ、ビーじゃなくてディアにお願いしようか」

「えぇ、ディアですか。でも、ディアはバカですから」

「ベスパ様、酷いですよっ! 私は馬鹿じゃありません!」


 ディアは私の胸から手に移動すると手の平の上を超高速回転していた。もう、早すぎて手の平が焼けそうだ。


「はははははははっ~! 見てください、この移動速度! 私は頭がいいです!」

「…………心配だな」


 私とベスパの声が軽く重なる。ビー達の方が完璧に動かせるのでブラットディアよりも信頼度は高い。

 でも、ベスパやビー達がバタフライに感づかれるとなると、使うのは少々怖い。どちらも怖いなら。


「ネアちゃん、お願いできる?」

「私ですか?」

「アラーネアの巣を学園の至る所に作って犯罪を見張る役目にしようかなと思って。アラーネア達は巣で動かずにじっとしていることが多いでしょ。なら、苦じゃなんじゃないかな?」

「なるほど、良い考えですね。私の仲間なら、この広い敷地の中に沢山います。その者達に手を貸してもらいましょう」


 ネアちゃんの力を借り、スージアとサキア嬢を見張る用の防犯カメラの役目を与える。

 何かあれば、ネアちゃんが教えてくれる。

 まあ、防犯カメラ作動中と張り紙を張っておくと犯罪の抑止力になるが、この世界に防犯カメラなんていう道具は浸透していないので、ただの隠しカメラだ。

 一歩間違えれば私が犯罪者になりかねない。でも、残念ながら、アラーネアと私の繋がりを決定づける証拠が何一つない。

 そもそも、アラーネアが隠しカメラだと誰が思うだろうか。

 そこら辺にいる小さな蜘蛛が私生活を除いているなど、どう頑張っても見られないように防止できない。


「至る所にアラーネアとブラットディアが潜伏しているようだけど、どこにいるか全くわからないな。さすが弱い生き物。隠れるのが上手いね」

「いやぁ~、それほどでも~!」


 ディアは未だに手の平の上をグルグルまわっていた。今、走っていることすら忘れていると思われる。


 私はふっと手の平を払い、ディアを浮かせた。


「きゃぁあ~っ! ブラットディアよっ! 皆、逃げて~!」


 図書室の中にいた女子生徒が飛行しているディアの姿をみて泣きわめきながら逃げる。すると、多くの者が釣られてブラットディアに嫌悪感を抱き逃げ出した。


「ふふふっ、愚かな人間どもよ。この、私に恐怖し、逃げ惑うなんて……。ははははっ! 何たる高揚感。素晴らしい。おびえ、逃げまどえ、私に恐怖しろっ!」


 ディアの頭脳指数が三から三〇〇まで跳ね上がり、早口で何とも中二病っぽい発言していた。痛いので、やめてもらいたいのだが……。


「ふはははははははははははっ! はぶっ!」


 調子に乗っていたディアは丸められた紙の束でぶたれ、あっけなく死亡した。


「まったく、ブラットディアに怖がるなんて、皆バカだなー。弱い虫なのに」


 ブラットディアの生態を知っている者からすれば、何も恐れる必要がないとブラットディアは理解していないらしい。

 物理耐久が皆無なので、叩き潰されるだけで絶命する。

 まあ、ディアはすでに私の魔力で作られた魔力体になっているので、死なない。


「はぁ。ひどい目にあいました……」


 ディアは私の体を駆けのぼり、手の平の上に乗った。そのまま、胸にブローチとして擬態する。


「まったく、調子に乗るからだよ」


 私はディアを軽くしかった後、魔術部の部室である図書室から出て、園舎から外に向かう。

 外に移動した後、寄りたい場所があったので、脚を運んだ。

 マルティさんが練習しているバートン場だ。

 今日も今日とてバートン術を練習しているはず……。そう思って、ダートのバートン場近くにやって来たのだが。


「もっと、僕が強くならないと、イカロスが安心して走れない……」


 マルティさんは誰もいないバートン場の中を自分だけで走っていた。もう、トライアスロン以上にきつそう。

 忍者のような身体能力を見せびらかすテレビ番組が日本や海外で人気だが、そんなカッコいいものではなく汗水たらし、泥まみれ砂まみれ。

 足元なんて、砂が乾燥して体を擦り、炎症を起こしてしまう可能性だってあった。

 なんせ、バートンが走る場所を人間のマルティさんが走っているんだから。


「……マルティ君」


 マルティさんの姿を遠目から見つめていたのは頬や瞳を乙女の表情に変えているリーファさんだった。

 もう、バートン術の部活は終わったらしい。その後にこの場に足を運んでさらに練習するなんて、中々ハードだ。

 でも、今は練習しているわけではなく、愛しの許嫁を見て、心を熱々にしていた。

 あんな努力している姿を見せられたら、大概の女子はきゅんっとするわけですよ。それが、自分の夫ならなおさら……。


「くっ……」


 マルティさんは脚がもつれ、泥の地面に顔から突っ込んだ。

 眼鏡が泥に埋もれ、周りが見えないのか、四つん這いになって泥沼の中を探している。そのままだと最悪、眼鏡を割ってしまう可能性があった。


「ベスパ、マルティさんの眼鏡を避難させて」

「了解です」


 ベスパはぶーっと光の速さに近い速度で移動し、マルティさんの泥まみれ眼鏡を救出した。


「マルティ君っ!」


 夫の疲れ切った姿を見て、リーファさんは耐えきれずに飛び出した。


「り、リーファちゃん。ど、どこにいるの……」

「もう、マルティ君、頑張りすぎだよ。どれだけ走っていたの」

「え、えっと……昼ぐらいから。朝は体を鍛えて、昼から走ってた」

「それじゃあ、ずっと訓練しているようなものじゃない。ばかばか、体が壊れた意味ないんだよ。私、マルティ君が怪我しているところなんて見たくない」


 リーファさんはマルティさんの頭上に魔法陣を展開させ、水を流した。すると、マルティさんの顔や体についていた泥がすっかり落とされ、水も滴るいい男が現れる。

 やはり、眼鏡を外すとマルティさんは大分イケメンだ。


「ご、ごめん、休みだからちょっと張りきり過ぎちゃった……」


 マルティさんは前髪をかきあげ、オールバックのような髪型を作る。いつも、前髪を降ろした優等生みたいな雰囲気だが、今はやる気を出したイケメンみたい……。

 リーファさんは不意を突かれたような顔だった。マルティさんのイケメンの顔が胸に突き刺さったのかもしれない。頑張っていた陰キャっぽい幼馴染が実はものすごくイケメンだったなんて言う物語は地球じゃあり得ないだろう。

 この世界の美男美女は八割強。残りの二割だって、地球じゃアイドルとして活躍できるくらいのレベルだ。ほんと、女神はどれだけ美男美女を生み出したんだか……。その方が差別はなくなるかもしれないけど、だからといってないわけでもない。

 やはり、どれだけレベルを似通った状態にしても、差別はなくならない。

 私は田舎者や平民だと貴族から差別されている。可愛すぎて差別されている雰囲気もある。私は何もしていないのに。


「えっと、メガネ、眼鏡……」


 マルティさんが眼鏡を探しだす。

 ベスパが持っていると思い出し、水でしっかりと洗って返す。


「あ、ありがとう。って、キララさん……。どうしてここに」

「ちょっと気になっただけですよ。マルティさん。ずっとここで努力していたんですか」

「ま、まあね。僕は体が細いし、体力も無いから少しでもイカロスの力になれるよう、体を鍛えているんだ。たいして力が付いている気がしないけど……」


 マルティさんの見かけはひょろがりではないが、むきむきマッチョという訳でもない。いたって普通。多少筋肉はあるが、目を見張るような姿ではない。細マッチョの一個下くらいかな。


「マルティ君、無理だけはしちゃ駄目だからね。私、もしマルティ君が怪我したら、本気で怒っちゃうから」


 リーファさんはマルティさんの頬を両手で挟み、頬を摘まむ。


「は、はい。無理はしません……」

「よろしい。じゃあ、今日はもうおしまいね」

「え、もうちょっとしようと思っていたのに」

「お、し、ま、い、ねっ!」


 リーファさんは姉さん女房のように、中々きつい大きな声でマルティさんを威圧する。

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