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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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痴漢の現行犯

「キララさんも写本を体験してみますか?」

「そうですね……。ちょっとしてみようかな」

「何か好きな古い魔導書を選んでください。私は新しい紙を持ってきます」


 サキア嬢は私にノルマを押し付けようとしているのか、すぐに行動していた。


「好きな古い魔導書って言われてもな。別にどんな魔導書でもいいと思うけど。ベスパ、八八八八八番の魔導書を持って来てくれる」

「了解です」


 ベスパは大量の本がある図書室の中を飛び回り、背表紙に張り付けられている番号を見て古い魔導書を持ってくる。

 もう、何十年前の魔導書だというような古びた本が私の前に置かれた。今にも朽ち果てそうになっており、早く写本しないと魔導書が読めなくなってしまう。

 魔導書に付いた埃やカビをある程度綺麗にした後、題名を読んでみる。


「悪魔に関する基本知識」

「運が悪い……」


 私は言葉すら聞きたくない存在の本を引き当てた。八〇〇万冊もあるほんの中から、なぜ悪魔に関する本を引き当てられるのか。どうせなら背番号が六のごろにしておいてほしかった。


「キララさん、紙とインクを持ってきました~」


 サキア嬢は大量の紙と黒いインクが入ったボトルを置く。羽根ペンも貸し出されているようだ。


「サキアさんはどの魔導書を選ぶんですか?」

「え、わ、私ですか? 私は、キララさんと一緒に写本しようかなーと思いまして」


 サキア嬢は笑みを引きつらせ、私に仕事を押し付けようと目一杯抵抗してくる。あんがい、仕事が嫌いなのかもしれない。したくないことはとことんしたくない人間かな。


「私が本を読むのでサキアさんが文字を書いてください。私、字が下手くそなので書いても何が書いてあるか読めない時がありますから」

「キララさんの字が下手。そ、そんな弱点が……」

「いや、弱点と言うような短所じゃありませんよ。まあ、字が不細工なのはカッコ悪いですけどね」


 私は背表紙八八八八八番の悪魔に関する基礎知識という本を開いた。

 ものすごく古びており、何年前に書かれた本なのか、わからない。ところどころインクが剥げ、読みにくい所があった。

 ほんと、一〇〇〇年くらい眠っていたんじゃなかろうか。

 でも、ドラグニティ魔法学園の創業は八八〇年くらいなので、それ以上の年代となると本当に国宝になってもおかしくない重要文化財なのでは。

 そんな本を私達学生が手に取っていいのだろうか。まあ、本当に大切な本や魔導書は国が保管しているはずだし、手にとって問題ない品だろう。


「悪魔とは、天界と対をなす魔界から現世に出没した存在。多くの生き物を殺し、現世を魔界と同じような環境に作り替えようとした影響が今のなお残っている……」


 私は文章を読みながら、サキア嬢に伝えた。サキア嬢の文字は達筆でシーミウ国の方なのに、ルークス語が私よりも上手に書けていた。

 顔がものすごーく嫌そうだが、彼女の仕事なのだから、頑張ってもらわないとな。


「すべての悪魔がどうなったのか、わからない。勇者たちがいなければ、世界は悪魔たちに支配されていた。勇者の力は悪魔に有効だということだろうか。はたまた、聖剣の方が悪魔に効果があったのだろうか」


 本を読んでいて何となくだが、あまり悪魔についてわかっていないらしい。でも、当時の人々がどんな感情を抱いていたのかわかった。

 昔から勇者や剣聖、賢者、聖女がいて、悪魔たちもいた。

 勇者達が悪魔を倒した、又は封印してくれたから無事だったものの、その状況が今、現世で再集結してしまったわけか。何と運が悪い。


「はぁー、もう、疲れましたー。手が動きませんー」


 サキア嬢は羽根ペンを置き、体を伸ばした。大きな乳が張り出され、存在を主張している。


「じゃあ、そろそろ、交代ですね」


 サキア嬢はまだ二ページも進んでいないのに、交代を要求してきた。仕方がない……。


「ベスパ、写本を手伝って」

「了解です」


 私は本を読み、ベスパはお尻から出した針に黒いインクを付けて紙に文章を書いていく。まあ、私が文字を書くよりもマシだ。一冊の本を読むのにざっと三時間ほどかかったが、写本しながら読んでいたらもっと時間が掛かっていただろう。


「よし、書き終わりました」

「すぴぃ~」


 サキア嬢は大きな胸を枕にしながら、眠っていた。その姿はまさにお姫様。黒髪のお姫様といったら日本の城のお姫様を想像するが、まさにそれ。平安貴族を彷彿とさせる美貌と、ぷるっぷるの唇、長い黒いまつ毛、寝息ですら色っぽく見えるのはさすがに大人び過ぎている。


「…………スージアさん、サキアさんが寝ちゃいましたよー。って、あれ?」


 私は受付の方に視線を向けた。だが、受付にスージアの姿がない。どこかに、行ってしまったようだ。


「スージアさん、どこに行ったんだろう」


 私は辺りを見渡す。ほとんどの者が眠り、机に突っ伏している。何とも不思議な光景だ。

 ざっと八〇人くらいいる気もする図書室にいる者全員が眠っているなんて。逆に私が眠っていない方が悪いと思うくらいだ。


「……すぴ~」


 私は周りの空気に合わせて寝たふりをかます。私だけどっきりに掛けられている可能性も無きにしも非ず。

 皆が眠っている状況なら、どっきりを掛けられた人も寝たふりをするのではないかという何とも変な実験に掛けられた時を思い出す。


「やっと眠ったか。魔法の耐性がありすぎるだろ……」


 どこか聞き覚えのある声が寝息しか聞こえない図書室で響く。


「さてと調べもの、調べもの。まだ図書室に置かれていないかな……」


 声の主がスタスタと歩く音が、図書室の広い空間に響く。足音が響く間の長さからして、身長一六〇センチメートル程度、声質は男っぽいが、まだ声変わりしていないくらい。


「これだけの本が保管されているなんて、ドラグニティ魔法学園は凄いね。城塞都市アクイグルより発展しているよ。にしても、皆、眠っちゃって面白い光景だ」


 ペラペラと流暢に喋り、完全に聞き覚えのある少年の声質と一致した。

 ここで起きて顔を確かめたいところだが、なにが目的なのか知る必要がある。無暗に起きるわけにもいかない。

 一時間か、二時間ほど寝たふりしていた。まあ、結果、寝てしまったわけだが、目を瞑って静かな部屋でじっとしていたら、寝落ちしてしまうのも無理はない。


「うぅん……、ふわぁ~」


 目を覚ました時、周りの者は未だに眠ったままだった。隣を見ると黒ぶち眼鏡が微妙にずれ、大きな目をかっぴらき、紫色の瞳を私に向けているスージアがサキア嬢の大きな乳を鷲掴みにしているではないか。


「……スリーっ!」


 スージアが何かしらの詠唱を呟こうとしたが、すでに遅い。

 手の平の先に『ウィンド』の魔法陣が展開され、黒ぶち眼鏡を吹っ飛ばす勢いで放った。


「くっ!」


 スージアは風の塊を顔面に受け、後方に吹っ飛ぶ。軽く脳震盪になったのか、目を回し、動けなくなっていた。


「すぴぃ~、むにゃむにゃ。もうぅ、スージアさん、くすぐったいよぉ……」


 サキア嬢は未だに眠っており、涎を垂らしていた。先ほど、スージアに触られていたことなど梅雨しらず、呑気なこった。まあ、知らない方が良いかもしれない。


「ネアちゃん、スージアの手足を縛ってくれる」

「わかりました」


 私はヘアピンに擬態していた、ネアちゃんを手に取り、伸びているスージアの手足を縛る。四月一五日午後五時四八分、容疑者スージアを現行犯逮捕。

 同級生のサキア嬢の胸を鷲掴みにしている痴漢行為として拘束。


「ベスパ、スージアをもって、場所を移動しようか」

「どこが良いですかね?」

「うーん、人目が付きにくい所が良いけど、今の時間なら、教室が丁度いいかな」

「了解です」


 ベスパはスージアを持ち上げ、そのまま、一年八組の教室まで向かった。

 私は昇降機を使って八階まで移動し、そのまま教室に入る。


「う、うぅん。な、なにが起こった……」


 スージアは椅子に縛り付けられた状態で目を覚ました。


「スージアさん、おはようございます。ここは教室ですよ」

「き、キララさん。え、えっと、さっきのは気の迷いで。い、いやぁ、まさか、あの瞬間に目が合うとは……」


 スージアは笑ってごまかそうとしていたが、胸を揉むなど痴漢以外の何ものでもない。


「スージアさん、同級生だからといって許可もなしに胸を揉むのは痴漢行為ですよ。最悪、犯罪です。バレなければ良いと思っていないですよね? 多くの者を眠らせていたのもあなたでしょう。もしかして、あそこにいた女の人全員に痴漢していませんよね?」

「さ、さぁ。そ、そんな無駄な行為するわけないでしょ……」


 スージアは視線をそらし、吐き捨てる。


「私の胸を触りましたか?」

「え? 胸ないじゃん。ぐはっ!」


 スージアの眉間に空気を圧縮した『ウィンド』を放つ。


「つまり、触るような胸がないということですか……。へえへえ、まさか、スージアさんがここまでムッツリ変態野郎だったとは」

「な、なんでそうなるんだ。ぼ、僕はそんなバカなことはしない。さっきのは気の迷いで、毎回くっ付いてくる腹いせに」

「サキアさんの胸を触っていたことを責めているわけじゃありません。私達を眠らせていったい何をしていたのか、教えてください」

「さ、さぁ。な、何のことかな……」


 スージアはまたもや視線をそらし、私の話を聞かなかった。何か隠していることがあるのは確実。


「うーん、こういうことはしたくないんですけど……」


 私はディアをスージアの顔に付ける。


「な、なに、ぶ、ブラットディア……。ちょ、ちょっと、な、なんでブラットディアが!」

「スージアさんはブラットディアがお好きですか?」

「す、好きなわけないでしょ! 見るのも嫌だよ!」

「はははははっ! 私の姿を見ておののくがいいっ! 人間よっ!」


 ディアは強者にでもなったつもりなのか、スージアの顔を這いまわっていた。目の周りや耳元、首などをがさがさと。ゴキブリに顔の周りを這いまわられると想像するだけでもいやだが、その状況を見るのは何とも滑稽だ。


「う、うあぁ、うあぁぁあぁ、ちょ、や、やめ……。なんて言わないよ。これくらいなら、我慢できる」

「ああ、そうですか。じゃあ、何匹まで我慢できますかねー」


 私はブラットディアたちを呼び、スージアの足もとに集めていく。

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― 新着の感想 ―
4/8に入学式で今は4日後なのだから4/12じゃないでしょうか
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