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『ゴミ』スキルだと思われている『虫使い(蜂)』が結構使えるんですけど!<異世界冒険食べ物学園ダークファンタジー(仮)>  作者: コヨコヨ
ドラグニティ魔法学園に入学 ~王子のことが大好きな令嬢と大嫌いな令嬢編~
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魔術部

「か、かっこいぃい~っ!」


 ミーナは完全に見惚れており、武術にのめり込む寸前だった。


「わ、私もあんな凄い演舞が出来るかな」


 メロアも真っ赤な髪がふわりと浮きあがるほど興奮しており、やる気に満ちている。


 ――こりゃ、乙女どころじゃないな。


 護身術程度なら女子でも日常で扱えるはずだが、武術となるとなかなか難しい。まあ、ここは日本じゃないから問題ないか。


 私は見様見真似で拳を放ってみるが、フルーファに鼻で笑われる程度。武術が絶対に出来ないフルーファにすら笑われてしまうのだから、実力は察する。


「相手を倒す武術は私に向いてないな。力が無さすぎる」

「キララ様の力が強かったらもう、化け物としか言えませんから、人間にとどまっていていいのではありませんか?」


 ベスパは私の頭上を飛び、非力なことが人間だとわからせてくれる点と教えてくる。まあ、言われてみたらそうなのだけど、八キログラムも持てない体じゃ非力すぎるでしょ……。


「武術に入るのは無理かな。あぁ、ミーナとメロアの二人と部活が一緒にならなかった。全部一緒だったらつまらないか……」


 フルーファの背中に乗り、第三闘技場に向かう。観客席に移動し、多くの貴族たちがバートンをゆっくり走らせている姿を見る。


 運動着姿のリーファさんは真っ白なバートンのファニーの背中に乗り、段差を優雅に飛び越えていた。ちょっと、バートン術っぽいが、その先にある平均台をゆっくり歩く。

 平均台の太さはざっと八〇センチメートル。バートンの横幅は一メートル以上あるので、少しずれたら滑り落ちてしまうだろう。だが、ファニーは下を見ることなく、首をもたげ、前足を高く上げながらスタスタと歩いていく。


「うわぁ、ものすごく綺麗……」


 その姿はランナウェイを歩く脚が超長いモデルがカッコよく歩いている姿にそっくりだった。ファニーの背中に座っているリーファさんも身振り手振りで優雅さを披露し、全く荒が無い。


「ふぅ……。で、出来ますわ。わたくしなら、出来ますわ!」


 リーファさんの後方からドレス姿のローティア嬢がバートンに乗りながら、呼吸を整え、低めの台を共に乗り越えていく。平均台に差し掛かろうとするも、バートンが怖がって避けてしまった。


「まだ難しいですわね……」


 ローティア嬢はバートンの首を撫で、ちゃんと労わっている姿を見せていた。その点で好感が持てる。


 失敗したローティア嬢の後方から赤っぽいバートンに乗ったレオン王子が台を共に乗り越え、平均台を素早く通る。優雅さは無いが、平均台を乗り越えただけでも、凄い。ほとんどの貴族が平均台で止まっていたので、中々乗りこなせている。


「レオン君、やるね~」

「リーファさんにはまだまだ及びませんけどね」

「一年生のこの時期に平均台まで越えられる子は中々いないよ。日頃の成果が出ている。そのまま続けていたら、もっとうまくなるよ」

「ありがとうございます。王子としてバートンを上手く乗りこなせるようになってみせます」


 レオン王子はリーファさんと軽く話し合っていた。


「むむむぅ……、リーファ様。この完璧な大貴族であるわたくしの、真の好敵手ですわ」


 すでに婚約しているリーファさんに敵意むき出しの自称完璧大貴族のローティア嬢は金髪立てロールを風になびかせ、やる気に満ち溢れたいい表情を浮かべている。

 やはり、冒険者女子寮に入っただけあり、心に宿る闘志は熱い。誰かをライバルにしないと気が済まない性格なのか……。

 だからこそ、凄い成長しているともいえる。自分に勝てるか勝てないかわからない相手を好敵手とすることで限界を越えるサイクルが組まれていた。

 その工程が仕組まれているのか、たまたまかわからないが、ローティア嬢をここまで連れて来た要因なのは間違いない。


「えっと、リーファさんって兼部しているんですよね。生徒会長もしているのに大変じゃありませんか?」


 レオン王子はバートンをゆっくり歩かせながら、優雅に会話している。


「そりゃあ、大変だよー。でも……、好きだから」


 リーファさんは頬を赤らめさせ、左手で黄色の長い髪を耳に掛ける。うっすらと滲み出ている汗が首筋を潤し、光の反射を助長して色っぽく見えすぎている。


「やっぱり、バートンが好きだと乗バートンも上手くなるんですかね?」

「う、うん、そりゃそうだよ。バートンが大好きになれば、必然と乗バートンも上手くなる。当たり前だよ……」


 リーファさんは頬をくれない色に染め、元気よく言い放っていた。


「もう、マルティさんがバートンバカだったから、始めた癖に……」


 ファニーはリーファさんの言葉に小言で反論していた。どうやら、リーファさんの発言は誤りがあるらしい。

 バートンから好きになったわけではなく、マルティさんの方から好きになったようだ。まあ、どちらが先でも結果良ければすべてよし。

 ほんと、ラブラブすぎてにやけが止まらないね、まったく~。二人だけの厩舎でこそこそチュッチュしているんじゃないの~。愛を呟き合ってたりするのかな~。きゃぁあ~。


「キララ様、あまり過度な想像すると、顔が酷いことになりますよ」


 ベスパは私の頭上をブンブンと飛び、軽く警告してくる。


「んんっ、そうだね。あまり調子に乗ると、鼻血が出ちゃう……」


 リーファさんとレオン王子、ローティア嬢がいる乗バートン部に平民が入る余地などなく、観察しているだけで精一杯だった。

 その後、外の運動を軽く見て回った。だが、どこもかしこも、私の趣味嗜好と全く合わない。


「うぅ。どこもパッとしなかった……」

「外の部活は難しいんですかね。なら、園舎の中でおこなわれている部活を見に行きましょう」


 ベスパに連れられ、私は学園の中でおこなわれている部活を見に来た。

 吹奏楽部という楽器を扱う部活を見ると、皆本気で楽器を演奏している。

 私が引ける楽器なんてカスタネットとトライアングル、タンバリンくらい。あれは練習しなくてもある程度できてしまうので、意味がない。

 そもそも、この世界の楽器と地球の楽器の形が少々違うので、演奏できる気がしなかった。


「次にいこう……」


 私達は別の教室に移動する。魔術部、魔法学部、薬学部。もう、学園の講義か何かかと思うほど、じーっと教科書とにらめっこしている眼鏡をかけた少年少女たちが、教室で椅子に座っていた。真面目過ぎる。


「皆、勉強しているのかな……」

「そう言う訳でもないようですよ」

「え?」


 ベスパはぶーんと部屋に入っていき、視覚共有で教室の中の風景を私に見せてくる。


「落書き。恋文。嫉妬を込めた怪文書。な、なにこれ……」

「皆さん、勉強以外のこともしています。普通に集中力が切れているようですね」


 ベスパは空中で止まり、あくびしていた。あんたが一番集中していないでしょといいたい。


「まあ、ちゃんと勉強している子もいるにはいますが、八分の一程度ですね。他の者は外の部活に入りたくなかったのでしょう。勉強しないのであれば、部活と言えない気もしますけど」


 ベスパは腕を組みながら、首を振っていた。


「まあまあ、勉強って辛いからさ、そう、長い間出来るもんじゃないんだよ。集中力も鍛えないと、時間が短いままなのは仕方ない」


 私は八分の一の者達に申し訳ないと思いながら、図書室らしき場所に入る。

 広大な部屋の中に大量の本が敷き詰められた本棚が壁一面を埋め尽くしている。圧迫感を得るかと思えば、全然受けず、逆に広すぎて晴れやかな気分になった。


「いったい何冊の本があるんだろう……」

「少なくとも八〇〇万冊はあるかな」


 木製の受付の奥に座っていたのは黒ぶち眼鏡をかけた紫髪のスージアだった。図書委員の仕事をしっかりとこなしているのかな。


「ここは魔術部と魔法部、薬草部が主に活動している学園で一番大きな図書室だよ。もっと専門的な魔導書が保管されている図書室もある。でも、ここの迫力に比べたら、行く気が起きないよね」


 スージアは饒舌に喋り、笑っていた。居心地が良すぎて普段とは違う喋り方になっている。


「もう、キララさんはそんなこと聞いてないと思うよー」


 サキア嬢はなぜか、スージアの隣に座り、肩に身を寄せていた。


「ちょっと、あまり近づかれると、本が読めないんだけど」

「ちょっとくらい私にも構ってほしいなー」

「うるさい。僕は本が読みたいんだ」

「むぅぅ~」


 サキア嬢は頬を膨らませ、本に嫉妬していた。いや、もう、メロメロになっているんですが、なにがあったんだろうか。

 私は二人の元から離れようとした。でも、サキア嬢が受付から出て私のもとに歩いてくる。


「キララさん、来てくれたんですね。嬉しい」


 サキア嬢は両手を握り合わせ、微笑む。裏表がない笑顔に見えるが、笑い慣れている気がしてならない。


「ちょっと時間がつくれたので……」


 私も平常心を装いながら、笑みを浮かべる。こっちも波瀾万丈の芸能界を笑顔一本で生き残って来た元トップアイドルなのだ。一二歳の小娘に負けるほどやわではない。


「じゃあ、一緒に魔術部で活動しましょうか」


 サキア嬢は私の手を握ってスタスタと歩き出す。いきなり触れられた手は柔らかく、しっとり滑らかなきめの細かいお嬢様の手……ではなく、マメだらけで硬い剣士の手だった。

 その点から努力を欠かさない者だとわかる。この方が諜報員だと思うと、やるせない。


「ささ、座って座って~」


 サキア嬢は周りに人気が無い広いテーブル席に座らせてきた。


「えっと、魔術部って何しているんですか?」

「えっとですね。だいたい、写本ですね。古い魔導書を持ってきて、新しい本に書き写しています。その中で魔術に対する深みを見出し、自分から研究する意欲を湧き立たせるとかなんとか……」


 サキア嬢はぽかーんと口を開けながら、聞かされた内容を大まかに私に伝えてくれた。


「へぇ……、そう言う部活ですか」

「もちろん、魔術をもっと研究したいのなら、実験室で研究も出来るそうですよ。私はそこまで興味が無いので、スージアさんにくっ付いて遊んでいます」


 サキア嬢は頬に手を当て、笑ってみせた。ほんと、無垢な笑顔で、愛くるしい。その笑顔を作っているのだとしたら、笑顔の天才だ。


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